Sub-MICに おける各種 β-ラ クタム剤 の抗菌効果 松 本 文 夫 - J

Sub-MICに
お け る 各 種 β-ラ ク タ ム剤 の 抗 菌 効 果
松
本
文
夫 ・今
井
健
郎
神奈川県衛生看護専門学校付属病院内科*
高橋
孝 行 ・田浦
勇 二 ・国 分
同
加
藤
伸
勝 弥 ・桜 井
磐
検査科
郎 ・村
田
定
三
味の素(株)中 央研究所
(平成元年4月24日
β-ラ ク タ ム 剤 のsub-MIC濃
受付)
度 に お け る 臨 床 的 意 義 を 知 る た め に ,1/4MICの
β-ラ ク タ ム 剤 で
菌 能 ,お
よび 尿路 上 皮 細 胞 へ の付 着 能 につ い て
前 処 理 した 大 腸 菌 に 対 す る ヒ ト好 中 球 の 食 菌 能,殺
検 討 した 。Cefmetazole,cefpimizoleに
て 処 理 した 菌 で は 無 処 理 菌 に 比 べ
亢 進 が 認 め ら れ,ampicillin,mecillinam
,cefoperazoneで
た 。 ケ ミル ミネ ッ セ ン ス を 指 標 と し た 殺 菌 能 の 検 討 結 果 で は
亢 進 が,ampicillin,mecillinam,cefoperazoneで
は,使
制 率 は42∼56%で
,食
菌能
の 低 下 が 認 め られ
と 同様
に,cefmetazoleで
にcefmetazole,cefpimizoleで
著
あ った。 ま た付 着 能 の抑 制 は マ ン ノー ス感 受 性 株 だ け でな く
ン ノ ー ス 耐 性 株 に 対 し て も 認 め られ た 。 以 上 の 結 果 よ りcefmetazole
濃 度 に お い て も,細
中 球 に よ る食 菌 能 の
低 下 が 認 め られ た 。 上 皮 細 胞 に 対 す る 付 着 能 で
用 し た す べ て の 抗 菌 剤 処 理 で 付 着 能 の 抑 制 が 認 め ら れ ,特
明 で あ り,抑
,好
処 理 した 菌 で は,そ
菌 の 生 体 内 で のcolonizationを
,cefpimizoleはMIC以
減 弱 す る 一 方 ,好
,マ
下の
中 球 に よ る食 殺菌 を 促進 す る
可 能 性 が 示 唆 され た 。
Key
words:
sub-MIC,β-ラ
ク タ ム 剤 ,好
中 球,付
細菌感 染 症 に 対 す る抗 菌 剤 療 法 で は,原 因 菌 の薬 剤 感
受性,使 用 す る薬 剤 の吸 収,体
内分 布,代 謝,排 泄 な ど
着 能,ケ
ミル ミ ネ ッ セ ン ス
Sub-MIC濃
度 の 薬 剤 と これ ら 感 染 防 御 因 子 の 相 互 作
用 に 関 して は,好
中 球 の 走 化 性,食
菌 能5),血
清の殺菌
を勘 案 し,必 要 充 分 量 の薬 剤 が 感 染 病 巣 に 到 達 す る こ と
作 用 に 対 す る 影 響6)等 の 報 告 が あ る が,我
を 目途 に,使 用 設 計 が た て られ て い る。 しか しな が ら実
sub-MIC濃
際は,感 染病 巣 に お け る薬 剤 濃 度 は 最 小 発 育 阻 止 濃 度
す る 目 的 で,sub-MIC濃
度 の 種 々 β-ラ ク タ ム 剤 に て
(minimal
処 理 し た 細 菌(大
好 中 球 に よ る 食 菌 能,殺
inhibitory concentration,MIC)以
下で推
々 は 今 回,
度 に おけ る抗 菌 剤 の 臨 床 的 意 義 を 明 らか に
腸 菌)の
菌能
移 す る場 合 が 多 い と推 定 され る。 した が っ て使 用 薬 剤 の
お よ び 尿 路 上 皮 細 胞 に 対 す る 付 着 能 に 関 し検 討 を 行 な っ
総合 的有 効 性 を論 ず る にあ た っ て はMICの
た。
MIC以
下 の濃 度,す
なわ ちsub-MICに
み な らず
お け る薬 剤 の
I.
作用 を検 討 す る こ とが 重 要 と考 え ら れ る1)。Sub-MIC
(1)
濃度 の抗菌 剤 が 細 菌 の 形態,分
Ampicillin(ABPC:明
裂,病 原 性(付 着 能)に
及 ぼす 影響 に 関 して 多 くの報 告 が あ る が,い まだ そ の臨
床 的意義 は 明 確 で は ない2∼4)。
一方
,抗 菌剤 療 法 の有 効 性 を 決 定 す る重 要 な因 子 と し
て上 述 の諸 因子 の ほ か に,好 中 球 や 血 清 な ど生 体 の 感 染
(MPC:武
と 方
法
治 製 菓(株)),mecillinam
田 薬 品 工 業(株)),cefoperazone(CPZ:富
化 学 工 業(株)),cefmetazole(CMZ:三
mizole(CPIZ:味
(2)
の 素(株))を
山
共(株)),cefpi用 いた 。
使 用菌 株
の う ち,ヒ
用 を有す る種 々 の β-ラク タ ム剤 が 報 告 され て い る5∼7)
。
株 お よ びNo.116株
神奈川県横浜市磯子区汐見台1-6-5
料
使用薬剤
防御機 構 と薬 剤 との 相 互 作 用 も注 目さ れ つ つ あ り,近 年
これ ら感 染防 御 機構 に対 して活 性 化 作 用,ま た は相 互 作
*
材
当 病 院 尿 路 感 染 症 患 者 か ら 分 離 したEscherichia
coli
ト血 清 中 で 死 滅 す る こ と な く増 殖 す るNo.1
を 選 び,食
菌 能 お よび殺 菌 能 の 検討
CHEMOTHERAPY
1322
NOV.
に 用 い た 。 また 腎 盂 腎 炎 患 者 の 尿 か ら 分 離 したE.coli
時 間 培 養 した 。 培 養 後,菌
11株 を赤 血 球 凝 集 活 性 お よび 上 皮 細 胞 へ の 付 着 能 の 検
ヒ ト新 鮮 血 清 を添 加 し37℃
し,HGSに
討 に用 い た。
(3)
最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)の
薬 剤 の 被 検 菌 に対 す るMICは
種 抗 菌 剤 を1,000μg/mlを
Broth(NB)を
用 い た 。各
最 高 濃 度 と して2倍 希 釈系 列
で 培 地 に 添 加 し,こ れ に最 終 濃 度 が108cells/mlま
たは
106cells/mlと な る よ う菌 を接 種 して,37℃18時
て2回 洗 浄 後,分
間培 養
り採 取 した 血 液 を,室
10min遠
光 光 度 計 にて菌 濃度を調
温 に て1時 間 放 置 後,3,000rpm
(7)
食 菌 能 の検 討
0.8mlのHGSに,1/4MIC濃
度 の抗 菌 剤 で処 理した
菌 懸 濁 液(107cells/ml)を0.1ml加
遊 液(105cells/ml)を0.1m1加
剤 濃 度 をMICと
1),37℃5分
した 。
調 製 はFicoll-Conray重
層法
え,次 いで好中球浮
え(菌:好
中球=100:
間 振 と う培 養 後 直 ち に氷 冷 し反応 を停止さ
せ た。HGSに
ヒ ト好 中 球 の 調 製
ヒ ト好 中 球(PMN)の
間 オ プ ソナィズ
心 分 離 し調 製 した。
後,肉 眼 判 定 に よ り菌 に よ る混 濁 が 認 め られ な い最 小 薬
(4)
て3回 洗浄 し5%
に て30分
整 し実 験 に使 用 した 。 ヒ ト新 鮮 血 清 は,健 常成人男子よ
測定
液 体 希 釈 法 に よっ て測
定 した。 培 地 と してnutrient
をHGSに
1989
て2回 洗 浄 後 牛 血 清 アル ブ ミンを0.5%
含 むHGSに
再 浮 遊 し,ナ ー トス メア(サ
クラ精機)に
よ った 。 す な わ ち健 常成 人 よ りヘ パ リ ン採 血 した 血 液8
て塗 沫 標 本 を 作 製 し,メ タ ノール 固定 後 ギ ムザ染色を行
mlを2%デ
な った 。 光 学 顕 微 鏡 下 で100個
キ ス トラ ン生 理 食 塩 水 溶 液2mlと
1時 間 室 温 に て 放 置 後,leukocyte-rich
酸 緩 衝 生 理 食 塩 水(PBS)に
m1に
重 層 し,1,500rpmに
混 和 し,
plasmaを
さ れ た 菌 数 を 測 定 し1個 あた りの好 中球 に食 菌 された菌
3
数 を 算 出 した 。 対 照 と して 抗 菌 剤 未 処 理 の 菌 を用い同
等 量 加 えFicoll-Conray
て45min遠
に0.87%NH4Clを4ml加
え10分
心 した。沈 澱 物
間 ゆ っ く り と混 和
した 後,遠 心 して,沈 澱 した 好 中 球 をPBSに
よ うゼ ラチ ン加 ハ ン クス緩 衝 液(HGS)に
様 の操 作 を 行 な い,以
(PI)を
下 の 式 に従 いphagocytic
なる
懸 濁 し使 用 し
た。
phagocytic
(8)
index=
抗菌剤処理菌の食菌数/
抗菌剤未処理菌の食菌数
殺菌 能
殺 菌 能 の 測 定 は 楊 井 ら の 方 法8)に 準
(5)
nescence(CL)法
尿路 上 皮 細胞 の 調製
健 常 成 人 女 子5名 の 中 間 尿 を100∼150ml採
1,000rpm
10min遠
取 し,
心 分 離 に よ り尿路 上 皮 細 胞 を 得 た 。
つ い で1/15MPBS(pH7.3)に
て3回 洗 浄 し実 験 に 供
じ たchemilumi-
に よ り行 な っ た(Table1)。
に0.2mg/mlの
ル ミ ノ ー ル50μl,抗
処 理 菌(10gcells/ml)を200μl添
(107cells/ml)を100μl添
加 後,好
加
(6)
Sub-MIC抗
菌 剤 に よ る被 検 菌 の処 理
Heart
infusion broth(HIB,日
heart infusion agar(HIA,日
水 製 薬(株))ま
し10秒
に 従 いCL
indexを
水 製 薬(株))で37℃18
CL index=
時 間 培 養 した菌 液 を洗 浄 後HIBに
(日 立101型)に
て菌 濃 度 を調 製 した後(108cells/ml),
最 終 濃 度 が1/4MICと
Table
E. coli:
懸 濁 し,分 光 光 度 計
な る よ う抗 菌i剤を 添 加 し37℃2
1. Effect
Escherichia
coli
of sub-MIC
treatment
of bacteria
(9)
てCLを
ー ク値 を 測 定 し以 下 の式
算 出 した 。
抗 菌 剤処 理 菌 のCLピ
/抗 菌 剤 未 処 理 菌 のCLピ
ー ク値
ー ク値
赤血球凝集活性
被 検 菌 をHIB,ま
on the
中 球 浮 遊液
間 撹 拌 し た 後,
国)に
測 定 し た 。 反 応 開 始 後 のCLピ
たは
反 応 セル
生 剤 処 理 また は未
Chem-Glow-Photometer(Aminco,米
した。
index
算 出 した 。
て洗 浄 し
た。洗 浄 した 好 中球 を 最 終濃 度 が1×107cells/mlと
の 好 中球 を観察 し,食菌
リン
phagocytic
た はHIAに
activity
て37℃18時
of human
PMN
間培養し
VOL.
37
NO.
Sub-MIC抗
11
Table
2.
菌 剤 のE.coliに
Effect
of sub-MIC
on the
対 す る作 用
treatment
chemiluminescence
1323
of bacteria
of human
PMN
E. coli: Escherichia coli
た 後,PBSに
0.88,CPZが0.90,0.76,MPCが0.74,0.66で
トP1ま
懸 濁 し(5×108cells/ml)25μlを1.5%ヒ
た は モ ル モ ッ ト赤 血 球 浮 遊 液50μlに
℃2時
間 イ ン キ ュ ベ ー トし た 後,凝
加 え37
集 の有 無 を 判 定 し
た 。 ま た マ ン ノ ー ス 感 受 性 の 検 討 は 反 応 液 中 に α-methyl-D-mannose(MM)を
最 終 濃 度 が10%と
な る よ う添
健 常 成 人 女 子 の 尿 よ り 採 取 した 尿 路 上 皮 細 胞 のPBS
懸 濁 液(2×105cells/ml)0.5mRこ
抗 生 剤 処 理 菌 また は
未 処 理 菌(2×108cells/ml)0.5mlを
添加 し室温 に て
応 さ せ た 。 氷 冷 に よ り反 応 を 停 止 後,PBSに
て 洗 浄 し塗 沫 標 本 を 作 製 し メ タ ノ ー ル 固 定,ギ
後,光
学 顕 微 鏡 下 に20個
ム ザ染 色
の上 皮 細 胞 に付 着 した菌 数 を
Mannose
II.
成
るMICを
11株 を 用 い,赤 血 球 凝 集 活
検 討 した(Table3)。
Broth法
に て培 養 した 場 合 に は11株
中5株 が モ ル モ
ッ ト赤 血 球 に対 し凝 集 活 性 を示 し,そ の うちい ず れ もが
マ ン ノー ス感 受 性(MS)で
あ った 。一 方,agar法
で培
養 した場 合 には11株
1/4MICのABPC,MPC,CPZ,CMZお
よ びCPIZ
培 養 した もの を,MR株
中4株 が ヒ ト赤 血 球 に対 し凝 集 活
をagar法
Table1に
に使 用 した 。
示 した 。
No.1株
のphagocytic
1.43,CPIZが1.23で
あ り,食 菌 能 の 亢 進 傾 向 が 認 め ら
が 各 々0.86,0.80,0.70で
た 。E.coli
No.116株
CMZ,CPIZは
index
あ り,抑
制傾 向 が 認 め られ
に お い て もNo.1株
と 同 様 に,
各 々1.30,1.16のphagocytic
を示 した の に 比 べ,ABPC,CPZ,MPCの
にて
り,耐 性 を示 した が,CMZ対
感 受 性 を示 した。 一 方,そ
MICは0.1∼6.25μg/mlで
(4)
が
対 し100μg/ml以
上 であ
して は6.25μg/mlで
あり
の他 の株 では 各 薬 剤 に対 す る
あ り感 受 性 を 示 した 。
赤 血球 凝 集 活 性 と上 皮 細 胞 に 対す る 付 着能 の 関
連
赤 血 球 凝 集 活 性 と尿路 上 皮 細胞 付 着 能 の関 連 をFig.1
β-ラ ク タ ム 剤 前 処 理 の 殺 菌 能 に 対 す る 影 響
各 種 β-ラ ク タ ム 剤 に て 前 処 理 し た 菌 の 好 中 球 に よ る
株 お よ びNo.116株
にて
をagar法
に て培 養 した も の を各 々選 定 し,以 下 の実 験
ABPC,MPC,CPZ,CPIZに
index
それはいずれ
も低 値 で あ っ た 。
殺 菌 能 をCLに
と してNo.4株
あ った 。
をbroth法
各種 β-ラク タム剤 に 対 す るMICは,No.8株
indexはCMZが
れ た 。 一 方,ABPC,CPZ,MPCはphagocytic
と してNo.1株
培 養 した もの を,ま た 凝 集 活 性 の な い株 と してNo.6株
に て処 理 した 菌 の 好 中 球 の 食 菌 能 に 対 す る 検 討 結 果 を
(2)
resist-
性 と マ ン ノ ース 感受 性 お よび 各 種 β-ラク タム剤 に 対 す
以 上 の結 果 よ りMS株
績
β-ラ ク タ ム 剤 前 処 理 の 食 菌 能 に 対 す る 影 響
E.coh
sensitive株(MS),Mannose
選 定 お よび各 種 β-ラクタ ム剤 に対 す る
性 を 示 し,い ず れ も マ ン ノー ス 耐性(MR)で
測 定 した 。
(1)
(3)
ant株(MR)の
腎 盂 腎炎 患 者 由来E.coli
付着 能
30min反
処 理 に よ り殺 菌 を受 け 易 くな って い る こ と
が 示 唆 され た 。
MIC
加 し行 な った 。
(10)
り,CMZ前
あ
よ り検 討 した(Table2)。E.coli
の 殺 菌 能(CL
が1.50,1.45,CPIZが1.16,0.89,ABPCが0.91,
index)は
No.1
各 々CMZ
に示 した。
赤 血 球 凝 集活 性 と上 皮 細 胞 付 着 能 は マ ン ノー ス 感受 性
で相 関 傾 向 が 認 め られ た。 す なわ ち,MS株
ス無 添 加 時,上 皮 細 胞1個 当 り72個
て,マ
ン ノー ス添 加 時 で は31個
は マ ン ノー
付 着 した の に対 し
に減 少 し,赤 血 球 凝 集
CHEMOTHERAPY
1324
Table
- MM:
without
ABPC:
3. Hemagglutination
a-methyl-mannose
ampicillin,
MPC
activity
+MM:
mecillinam,
NOV.
of Escherichia coli/MICs
1989
of antibiotics
with ƒ¿-methyl-mannose
CPZ:
cefoperazone,
CMZ:
cefmetazole,
にCPIZ,CMZが
cefpimizole
強 力 な 抑 制 作 用 を示 し,各 々421
%,50.9%の
MS株
CPIZ.
抑 制 率 で あ っ た。ABPCは10.5%と
に 比 べ 低 い 抑 制 率 で あ った 。
III.
Sub-MIC濃
考
察
度 に お け る抗 菌 剤 の 臨床 的 意義 を解明す
る一 助 と して,sub-MIC濃
度 の各 種 β-ラクタム剤 によ
っ て前 処 置 した菌 の 好 中 球 に よ る食 菌 能,殺 菌 能,お よ
び 尿路 上 皮 細 胞 に対 す る 付 着 能 に関 し検討 した。
MS: mannose-sensitive
Fig. 1.
Relationship
acitivity
and
of Escherichia
尿 路 感 染 症 患 者 よ り 分 離 したE.coliを1/4MIcの
MR: mannose-resistant
between
adhesion
coli
各 種 β-ラ クタ ム剤 で 処 理 した 場 合,無
hemagglutination
to uroepithelial
ABPC,MPC,CPZで
cells
が 認 め られ,逆 に,CMZ,CPIZで
活 性 の な い株 と同 等(28個)で
あ った。一 方,MR株
は
処 理菌 に比べ,
は 好 中 球 に よ る食 菌 性 の低下傾向
は 亢進 す る傾 向が認
め られ た 。 また 好 中 球 の殺 菌 能 の指 標 と してCLを 測定
マ ン ノース 添 加 の 有 無 に か か わ らず 高 い 付 着 能 を示 し
した 結 果,ABPC,MPC,CPZで
は 低 下傾 向が,CMZ
た。
で は亢 進 傾 向 が認 め られ,CPIZで
はNo.1株
(5)
β-ラ ク タ ム剤 前処 理 の 上 皮 細 胞 付 着 能 に対 す
る影響
MS株
を1/4MIC濃
度 の各 種 β-ラ ク
りhost側
は共 に,い ず れ の抗 菌 剤 前 処 理 に て も
付 着 能 の抑 制 が 認 め られ た が,そ
明 な差 が 認 め られ た 。MS株
の程 度 は抗 菌 剤 間 で 著
で はCPIZ,CMZが
強 力な
抑 制 作 用 を 示 し,抑 制 率 は各 々55.6%,48.1%で
った 。ABPC,CPZは
て い る こ とが知 られ て い るが9),今 回 の検 討 では,parasite(細 菌)をsub-MICの
示 した 。
MS株,MR株
14.8%と
では亢進,
では 低 下 傾 向が 各 々認 め られ た。 好 中球は感
染 症 に対 す る宿 主 側 の 防 御 因 子 と して重 要 な役割を担っ
お よびMR株
タ ム剤 で前 処 理 した 際 の尿 路 上 皮 細 胞 付 着 能 をTables
4,5に
No.116株
あ
中 等 度 の 抑 制 であ り,MPCは
低 い抑 制 率 で あ った 。MR株
で もMS株
抗 生 剤 で処 理 す ることによ
の防 御 因 子(好 中 球)活 性 が相 対的 に亢進ま
た は 低 下 した こ とは,host-parasite-druginteractionに
お け るsub-MICの
意 義 を 解 明 してい く上 で 興味深い
結 果 と考 え られ る。 また 種 々 の β-ラクタ ム剤がhostparasite interactionに
対 して異 な る影 響 を及ぼすこと
が 示 唆 され た 点 は,臨 床 に お い て抗 生剤 を選 択する上で
同様
も重 要 な知 見 と考 え られ る。 今 回 は 宿主 側 因子 として好
VOL.
37
NO.
Sub-MIC抗
11
Table
4. Effect
of antibiotic
Escherichia
Table
5.
Effect
MIC抗
of antibiotic
treatment
coli to uroepithelial
の他 血 清 とsub-
生 剤 の 協 力 作 用 に 関 して,CPIZを
cefuroxime6),cefbuperazone10)等
treatment
coli to uroepithelial
Escherichia
中球 に 着 目 して 検 討 を 加 え た が,こ
菌 剤 のE.coliに
は じ め5)
報 告 され て お り,宿 主
状 態 を勘案 した 抗 生剤 の選 択 も留意 せ ね ば な らな い 問題
対 す る作 用
on the adhesion
of mannose-sensitive
cells
on the
adhesion
of mannose-resistant
cells
site側
の 因 子 と して 付 着 能 に 各 々 着 目 し,sub-MICsの
意 義 を 解 明 す べ く 検 討 を 行 な っ た が,こ
mized
hostの
問題
腎盂 腎炎 患 者 由 来E.coliの
尿路 上 皮 細 胞 に対 す る付
後,臨
著 明 で あ った。 広
瀬 ら4)SvANBERG-EDENら11)はsub-MIC濃
処 理 また は共 存 下 にてE.coliの
松 本 文 夫:
浅 野 英 夫,
3)
LORIAN
られ る。
関与 してい る報 告 が あ る12)。今 回,sub-MIC濃
生剤処 理 に よる付 着 能 の減 少 がMS株
株 に対 して も認 め られ た こ とは,こ
以外 の要 素 もあ る こ とを示 唆 す る も の と考 え られ る。
因 子 と して 好 中 球 機 能 に,para-
V:
Some
of
に よ るE.coliの
of
effects
penicillin
5)
28 (S-5):
of
subinhibitory
on
the
Staphylococci.
Chemother.
7:
structure
Antimicrob.
864•`870,
1975
広 瀬崇 興, 岡 山 悟, 西 尾 彰, 熊 本 悦 明: E.coli
の 尿 路上 皮 細 胞 へ の 付 着 能 に 対 す る抗 生 物 質 の 影
響 。 Chemotherapy:
だ け でな くMR
の作用 点 が マ ン ノー ス レセ プ タ ー の結 合 に関 与 す る部 位
以上,今 回 はhost側
4)
度 の抗
れ ら β-ラクタ ム剤
1985
Ceftizoximeの
1980
division
Agents
着 に マ ン ノ ー ス レセ プ タ ーが
実:
concentration
concentration
and
は,付
6∼12,
西 田
形 態 変 化 に つ い て 。 Chemotherapy
後 さ らに対 象薬 剤 を広 げ 検 討 を加 え る こ とが 必 要 と考 え
多 くのE.coliで
と り ま く臨 床 上 の 諸 問
村 川 武 雄,
104•`110,
強 力 な抑 制 作 用 を示 して お り,今
献
sub-MICsを
sub-inhibitory
るもの であ る。 また 今 回 の 成 績 ではCMZ,CPIZが
比 べ2∼5倍
床 的 有 効 性 も加 味 した総 合的 な
題 。 臨 床 と 微 生 物 。 12 (1):
2)
著 明 に減 少 した こ とを 報 告 して お り今 回 の 結 果 と一 致 す
ABPCに
他 の β-ラ
リ ド ン カ ル ボ ン酸 系 抗
文
1)
度 のABPC
上 皮細胞への付着能が
の 他compro問題
検 討 が 必 要 と考 え ら れ る 。
着 能 を検討 した成 績 で は,い ず れ の 抗 生剤 処 理 に て も付
着 能 の抑制 が 認 め られ,CMZ,CPIZで
菌 のvirulenceの
ク タ ム 剤 を 始 め ア ミ ノ配 糖 体,ピ
生 剤 の 効 果 等,今
と思わ れ る。
1325
OHNISHI
M,
H,
MOCHIZUKI
AC-1370,
on
30 (1):
KOSUZUME
H,
a new
SUZUKU
functions.
23
(6):
1982
INABA
Y,
semisynthetic
phagocytic
Chemother.
1•`6,
H,
FUJII
H,
R:
OKURA
Effects
cephalosporin,
Antimicrob.
874•`880,
Agents
1983
of
CHEMOTHERAPY
1326
6)
奥 村 和 夫,
横 田
健,
加 藤 日 出 子,
逵
彦 二:
NOV.
coff. Houghton
York.
血
清 ま た は 多 形 核 好 中 球 共 存 下 に お け るCefuroximeの
殺 菌 効 果 に つ い て:
(S-6):
7)
76•`82,
ANDREANA
M,
A,
of
hibitory
P,
UTILI
Increased
Escherichia
coli
in
of
isolated
Chemother.
楊 井 正 紀,
森
rat
25
剛 一,
R,
DILILLO
phagocytosis
and
treated
concentrations
Agents
10)
9)
健,
関 口玲 子:
with
AHLSTEDT
and
Antimicrob.
(2):
182•`486,
福 田 友 子,
辻
1984
芳 郎:
30:
SVANBERG-EDEN
subin-
cefamandole
livers
Chemotherapy
11)
ヒ ト
12)
多 核 白 血 球 の ル ミ ノ ー ル 添 加 に よ るchemiluminescence測
定 の 検 討 。 医 学 の あ ゆ み112
(10)
594•`596,
横 田
chia
coli
cells
in
T-1982
and New
(Cefbuperazone)
to
ampicillin.
1978
I,
Life
of
INFLUENCE
Elle
OF,ƒÀ-LACTAM
SUB-MIC
AND
OF
BY
mannose
ON
epithelial
(Suppl.1):
N:
121•`
Adherence
human
mucosal
receptors.
Nature
cells
265:
AT
THE
COLI
AND
KILLING
PMN
FUMIO MATSUMOTO1), TAKEO IMAI1), TAKAYUKI TAKAHASHI2),
YUHJI TAURA2), KATSUYA KOKUBU2), IWAO SAKURAI2),
NOBUO KATO3) and TEIZO MURATA3)
1) Department of Internal Medicine and 2) Clinical Laboratories , Kanagawa
Prefectural Midwives and Nurses Training School Hospital.,
1-6-5 Shiomidai, Isogo-ku, Yokohama 235, Japan
3) Central Research Laboratories , Ajinomoto Co., Inc.
The
therapeutic
Phagocytosis
coli,
human
pre-treated
MIC.
The
with
untreated
bacteria
also
was
increased
lin,
to
significance
by
mecillinam
uroepithelial
with
concentrations
inhibit
of
bacteria,
bacteria
or
at
and
pathogenicity
the
were
an
with
of
of
with
bacterial
strains.
the
host
adherence.
and
defense
such
cefmetazole
mechanisms
and
against
1/4
cefoperazone-treated
treated
inhibited
inhibition
at
compared
chemiluminescence,
when
treatment
and
Thus,
decreased
studied.
Escherichia
increased
or
by
on
cefoperazone
was
measured
cefpimizole
42-56%,
and
mecillinam-
PMN,
was
examined
bacteria
ampicillin-,
of
were
mecillinam,
cefmetazole
and
rate
mannose-resistant
cooperate
of
activity
Cefmetazole
inhibition
concentrations
cells
cefpimizole-treated
phagocytosis
treated
sub-MIC
uroepithelial
ampicillin,
and
bactericidal
at
human
cefpimizole,
cefoperazone.
cells
to
cefmetazole-
The
when
antibiotics
adherence
whereas
decreased.
may
the
and
cefmetazole,
phagocytosis
mannose-sensitive
of ƒÀ-lactam
PMN
,
concentrations
SHARON
to
K
Escheri-
1977
ESCHERICHIA
HUMAN
tract
6
D,
coli
STENOVIST
of
urinary
ANTIBIOTICS
PHAGOCYTOSIS
T,
adhesion
subinhibitory
MIRELMAN
by
CONCENTRATIONS
ADHERENCE
by
Escherichia
623•`625,
Metini-
in
Infection
mediated
(1921):
1982
STANBERG
human
vitro
of
of
20•`28,
C,
S:Decrease
124,
OFEK
1980
METCHNIKOFF O,
Co., Boston
と血 清 ・補 体 お よ び 白 血 球 の 協 力 的 殺 菌 作 用。
PERNA
G:
Gentamicin
8)
27
1979
RUGGIERO
killing
Chemotherapy
Miflin
1989
was
with
bacterial
was
ampiciladherence
observed
in
cefpimizole
at
bacterial
infections
both
sub-MIC
and