106 オレオサイエンス 第 15 巻第 3 号(2015) 特集序言 オレオナノサイエンス部会: シンポジウム報告と特集序言 -新たな医療のディメンジョンを模索するオレオナノサイエンス- 後 藤 了・島 田 洋 輔 (東京理科大学・薬学部) 平成 26 年 9 月 10 日,ロイトン札幌において日本油化学会第 53 回年会(平成 26 年 9 月 9 日~11 日)のプログラムの 1 つとして, オレオナノサイエンス部会主催のランチョンシンポジウムは満員で 開催された。 「新たな医療のディメンジョンを模索するオレオナノサイエンス」 を掲げた本シンポジウムでは,北海道大学で活躍する新進気鋭の二 名の若手研究者をお招きした。北海道大学は DDS(Drug delivery system)研究の拠点としても知られ,梶本和昭先生,秋田英万先 生の両先生には最先端の成果と今後の展望をご講演いただいた。 梶本先生のご講演は「脂肪組織の血管を標的とするナノ医療戦略」 という題目で,昨今の健康問題の 1 つとして挙げられる肥満をター ゲットにした内容であった。研究は主にリポソームと呼ばれるナノ粒 子の調製,動物実験で効果の実証であり,その薬剤含有リポソーム がどのように脂肪組織に到達し,いかにして薬効を発現するかといっ たメカニズム解明を研究のお手本のように明快にお話いただいた。 また,秋田先生のご講演は「細胞内環境応答性脂質様サーファクタントを基盤としたナノ DDS プラット フォーム;遺伝子送達技術を中心として」という,いわゆるオーダーメイド医療を目指した遺伝子治療につい て基礎となる概念から応用までを専門でなくともわかりやすい内容で説明して頂いた。秋田先生のグループに よって開発された『細胞内環境応答性脂質様サーファクタント(ssPalm)』の機能と性質に,今後さらに注目 が集まるだろうことが予想される。 今回は,両氏のご講演に加え,翌日のシンポジウムでご講演頂いた興和株式会社の鈴木先生,ならびに京都 薬科大学の小暮先生からのご寄稿を併せて,特集記事として掲載させていただいた。 最後に,このように有意義なシンポジウムを開催できたことに,講師の両先生,学会関係者および参列いた だいた学会参加者に篤く御礼申し上げる。 ― 4 ―
© Copyright 2024 ExpyDoc