PEAK ∼東京大学のグローバル化教育

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PEAK
∼東京大学のグローバル化教育
東京大学 大学院総合文化研究科
附属国際交流センター長
矢口祐人
教授 日本の大学をもっと国際化をしなければならな
いという声が社会で聞かれるようになって久し
加速している。
東京大学ではその試みの1つとして、2012 年
い。その例として挙げられるのが、
留学生の数だ。
か ら PEAK(ProgramsinEnglishatKomaba)と
日本に来る学生(年間約 14 万人)も、日本から海
いう教育プログラムを駒場キャンパスで開始し
外に向かう学生(同約6万人)も、世界的に見れ
た。これは世界から優秀な学部生を集め、主に英
ば少な過ぎる。
しかもグローバル化が進む時代に、
語で教育して学位(学士号)を授与するものだ。
この2つの数は増えるどころか減少傾向にあるの
だから、先行きは明るくないと指摘されている。
学生国際交流強化の動きが加速
世界中から集い「駒場」で学ぶ
日本の大学が海外から学生を集めるにあたっ
て、最大の障壁は日本語という言語の壁である。
企業などからは、このままでは国際感覚のある
大学の授業を十分に理解できるレベルの日本語力
優秀な人材を集めることはできないという懸念が
を有する高校生は海外にはほとんどいない。どん
聞かれる。大学はグローバルな視野を持つ学生を
なに優秀であっても、日本語が分からなければ、
育てる努力をすべきだという要求は強まる一方で
東京大学をはじめとする日本の大学で学ぶことは
ある。世界的な競争力を維持しなければならない
できないのである。
組織からすれば当然の思いであろう。
それに対して PEAK は、高校まで日本語で教
教育の現場でも 21 世紀にふさわしい、グロー
育を受けたことはないものの、学力的に極めて優
バルな感性を育む必要性が強く意識されるように
秀な学生を世界中から集めて教育しようという新
なってきた。とりわけ文部科学省主導の「グロー
しい試みである。世界の大半の大学に合わせて秋
バル 30」や「スーパーグローバル大学創成支援」
入学とし、「国際日本研究」と「国際環境学」と
などを通して、学生の国際交流を強化する動きが
いう2つのコースを用意し、すべての授業を英語
で履修できるようにした。ただ、日本に来たから
には日本語も学んで欲しいので、入学後は日本語
学習を必修にしている。
その結果、これまで世界中から 70 人の学生が
入学し、東京大学で学んでいる。PEAK は小さ
なコミュニティながらも、出身国は日本、中国、
台湾、香港、韓国、インド、バングラデシュ、ベ
授業風景(国際環境学コース)
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2015 年 3月号
トナム、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、