平成 23 年度 家庭用品事故情報収集調査 家庭用品(冷却ジェル製品以外)中のイソチアゾリノン系防腐剤の実態調査 国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部 五十嵐良明、伊佐間和郎、五十嵐良明 -------------------------------------------------------------------------------概要 イソチアゾリン系防腐剤を使用したポリビニルアルコール(PVA)製冷感タオルの使用 に伴う接触皮膚炎が報告されていることから、2-methyl-4-isothiazolin-3-one(MIT)、 5-chloro-2-methyl-4-isothiazolin-3-one(Cl-MIT) 、2-n-octyl-4-isothiazolin-3-one(OIT) 、 4,5-dichloro-2-n-octyl-4-isothiazolin-3-one(2Cl-OIT)および 1,2-benzisothiazolin-3-one (BIT)の 5 種類について、冷感タオルおよびそれに類似した製品について実態調査と製品 の使用前に行う洗浄効果の検討を行った。対象とした製品は 27 製品であった。MIT および Cl-MIT は全 27 製品中 23 製品から検出され(検出率 85%)、その濃度は MIT が 0.29~154 μg/g-wet、 Cl-MIT が 2.2~467 μg/g-wet であった。OIT は 1 製品からのみ検出された (478 μg/g-wet) 。2Cl-OIT および BIT は全ての試料で不検出であった。MIT、Cl-MIT および OIT が検出された試料について、超純水(25±2°C)で洗浄効果を検討したところ、1 回目 の洗浄で MIT は 98%、Cl-MIT は 95%除去され、3 回洗浄後の試料中に残存する MIT およ び Cl-MIT はわずかであった。一方、OIT は 1 回目の洗浄で 45%、2 回目の洗浄で 25%、3 回目の洗浄で 12%(計 82%)が除去されるが、洗浄後の試料中に 18%が残存した。この傾 向は温水(40±2°C)を用いた場合にも同様であった。OIT は MIT および Cl-MIT よりも 疎水性が高く PVA に対して親和性が強いと考えられ、水や温水で洗浄しても完全には除去 できない可能性が示唆された。また、これらの製品の注意事項の表示には使用前の洗浄理 由や方法、防腐剤使用の有無などが明示されていないものがあり、消費者が洗浄不足の製 品を使用して接触皮膚炎を生じる可能性が考えられた。そのため、製造・販売者は表示の 改善や、可能な範囲で皮膚感作性が明らかとなっている防腐剤の使用を避けることが望ま しいと思われる。 -------------------------------------------------------------------------------論文発表 Kawakami T, Isama K, Ikarashi Y: Analysis of isothiazolinone preservatives in polyvinyl alcohol cooling towels used in Japan, J. Environ. Sci. Health Part A, 49, 1209-1217 (2014) -------------------------------------------------------------------------------学会発表 河上強志・伊佐間和郎・五十嵐良明:PVA 製タオル類に使用されているイソチアゾリノン 系防腐剤の実態調査, 日本薬学会第 133 年会 (2013. 3) 河上強志・伊佐間和郎・五十嵐良明:PVA 製冷感タオル中のイソチアゾリノン系防腐剤の 実態, 第 22 回環境化学討論会 (2013.7, 府中) 河上強志・伊佐間和郎・五十嵐良明:PVA 製タオルに使用されたイソチアゾリノン系防腐 剤の実態について, 第 50 回全国衛生化学技術協議会年会 (2013. 11)
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