平成 24 年度 家庭用品規制基準調査 冷感タオルに使用される

平成 24 年度 家庭用品規制基準調査
冷感タオルに使用されるイソチアゾリノン系防腐剤の健康リスク調査
国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部 河上強志、伊佐間和郎、五十嵐良明
-------------------------------------------------------------------------------概要
冷感効果を謳ったポリビニルアルコール(PVA)製タオル(冷感タオル)の使用に伴う
接触皮膚炎が報告されており、その原因は製品出荷時に使用されているイソチアゾリン系
防腐剤であると考えられている。これまでに我々は PVA 製冷感タオル中のイソチアゾリン
系 防 腐 剤 の 実 態 調 査 を 行 い 、 2- メ チ ル -4- イ ソ チ ア ゾ リ ン -3- オ ン
(2-methyl-4-isothiazolin-3-one: MIT)、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン
(5-chloro-2-methyl-4-isothiazolin-3-one: Cl-MIT)および 2-n-オクチル-4-イソチアゾリン
-3-オン(2-n-octyl-4-isothiazolin-3-one: OIT)が高頻度で製品に使用されている事、OIT
に関しては実験室内で製品の使用前洗浄を摸した試験の結果、製品中に残留しやすいこと
を明らかにした。冷感タオルは長時間皮膚に接触し、物理的にも皮膚を刺激する可能性が
高いため、ヒトが OIT 暴露の影響を受けやすい製品と考えられる。また、OIT は 2010 年
に冷却パッドの使用に伴う重大製品事故の原因物質とされている。そのため、基準設定の
必要性を検討するため、冷感タオルに使用されるイソチアゾリン系防腐剤の健康リスク調
査を行った。
本報告は 3 章から構成されており、第 1 章ではガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)
を用いた PVA 製タオル中の OIT 分析法の開発を行った。第 2 章では市販製品をその表示に
従って使用前に洗浄した際のイソチアゾリン系防腐剤の残留量を調査した。
第 3 章では OIT
の毒性に関する情報収集と暴露量の推定を行い、OIT のリスク評価を行った。
未洗浄の冷感タオルを分析したところ、OIT が主に検出される製品と MIT/Cl-MIT が主
に検出される製品が存在した。また、使用前洗浄しても全ての試料から OIT または
MIT/Cl-MIT が検出された。洗浄時に中性洗剤を用いると OIT 濃度が低くなる可能性が示
唆されたが、温水使用の有無やすすぎ回数の増減については効果が認められなかった。洗
浄前後の結果から、OIT の方が MIT/Cl-MIT よりも残留しやすい傾向が認められた。
-------------------------------------------------------------------------------論文発表
Kawakami T, Isama K, Ikarashi Y: Analysis of isothiazolinone preservatives in
polyvinyl alcohol cooling towels used in Japan, J. Environ. Sci. Health Part A, 49,
1209-1217 (2014)
-------------------------------------------------------------------------------学会発表
河上強志・伊佐間和郎・五十嵐良明:PVA 製冷感タオル中イソチアゾリノン系防腐剤の健
康リスク評価, フォーラム 2013 衛生薬学・環境トキシコロジー (2013.9, 福岡)