平成 23 年度 家庭用品事故情報収集調査 イソチアゾリノン系防腐剤の皮膚感作性及び接触皮膚炎症例に関する文献調査 国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部 河上強志、伊佐間和郎、五十嵐良明 -------------------------------------------------------------------------------概要 我が国において家庭用品中のイソチアゾリン系防腐剤による接触皮膚炎がいくつか報告 されたことから、それらの皮膚感作性および接触皮膚炎症例に関する文献調査を行った。 イソチアゾリン系防腐剤は全体として皮膚感作性が強く、比較的低濃度でも感作が誘導さ れたり、惹起されたりする可能性があるため注意が必要であることが分かった。イソチア ゾ リ ン 系 防 腐 剤 の 中 で も 、 特 に 2-methyl-4isothiazolin-3-one ( MIT ) と 5-chloro-2-methyl-4-isothiazolin-3-one(Cl-MIT)の混合剤(例: Kathon®CG)は化粧品を はじめとして塗料、接着剤、トイレタリー製品など多種多様な製品に用いられ、多くの職 業性および非職業性の接触皮膚炎の原因物質として報告されていた。 2-n-Octyl-4-isothiazolin-3-one(OIT)については塗料中の防腐剤として使用されており職 業性接触皮膚炎の報告が多いが、近年、冷却ジェルや冷感タオルに用いられており、注意 が必要である。イソチアゾリン系防腐剤による接触皮膚炎は、製品と直接経皮曝露して生 じるものと、製品から室内空気中に放出し、空気を介した曝露により生じる(airborne contact dermatitis)2 種類が存在した。特に airborne contact dermatitis では、接触皮膚 炎のみならず目の充血、鼻炎、咳などの諸症状も併発し、入院が必要となった事例が報告 されている。今後、イソチアゾリン系防腐剤が使用される家庭用品の種類の増加に伴い、 消費者は室内空気等からの曝露によって接触皮膚炎を発症する危険性が増加する可能性が ある。 -------------------------------------------------------------------------------論文発表 河上強志・伊佐間和郎・五十嵐良明:イソチアゾリノン系防腐剤による接触皮膚炎 -家 庭用品に起因する症例を中心として, Journal of Environmental Dermatology and Cutaneous Allergology, 8, 147-161 (2014)
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