ボランティア活動の事故により賠償を請求された事例 スポーツ尐年団(剣道)がキャンプを実施した。その活動の中で、竹トンボを作って飛ばす活動を 実施した。小学5年生のA君とB君が近くで活動する中、尐年団の団長から「近くで飛ばしてはいけ ない。 」という注意をうけていたにもかかわらず、座ったままでA君は竹トンボを飛ばし1m以内にい たB君の体にあててしまい負傷させてしまった。B君(保護者)は、竹トンボを飛ばしたA君の両親 と尐年団の団長とを相手方として損害賠償を請求した。 * 裁判所はA君の過失を認めたか。 (どちらかに○) ・認めた。 ・認めなかった。 尐年団の団長は、尐年団後援会の会則に「本会は、総会において委嘱された奉仕指導者に対しては、 一切の責任を問わない。 」と規定され、B君の両親は、後援会に入会する際に、被害者に代わって、指 導者の指導上の過失に基づく損害を免責する旨を約したとの免責特約を主張した。 * 裁判所は尐年団の団長の主張を認めたか。 (どちらかに○) ・認めた。 ・認めなかった。 1 事故が起きる前に何をすべきだったか。 2 事故が発生した後の対応は、どうすべきだったのか。 リスク情報専門誌「予防時報」日本損害保険協会発刊 2005 年 221「ボランティア活動と法的責任」有住淑子 弁護士著 より引用 解 答 ○民事責任としての不法行為責任(注意義務違反)〔民法 709 条〕に関する裁判判例から 過失について ・・・認めた。 免責特約について ・・・認めなかった。 (理由) 裁判所の見解 尐年団の活動は剣道が主体であり、剣道は相手を攻撃する内容のスポーツであるの で、そのことによる事故の発生は十分に考えられるところ、規約は正当行為と評価さ れるものであるから、かかるところによる損害について指導者は責任を負わないこと を注意的に定めたものと解するのが相当であるが、本件の事故まで含むものというこ とはできない。 筆者の見解 もし、 「事故等の責任は一切負いません。 」との記載を承認して行事に参加した場合 はどうなのか。予想される事故の内容が具体的でない点で、合意の内容が曖昧であり、 実際に発生した事故に対して免責の合意がなかったと認定される場合が多いと思わ れる。また、不法行為に対して一切の損害賠償請求権を放棄する内容であるならば、 仮に、内容を十分に理解したとしても、公序良俗に反する合意とみられ、無効と認定 されることが多いと思われる。当然、ボランティアがそうした公序良俗に反した合意 を求めることは好ましくない。 上記から学べる事項 ・ 同意書や承諾書の意味は、活動場所の認知、活動内容の理解、活動への協力、個 人情報・肖像権の使用に関する承諾等に係る内容として解したほうがよい。 ・ 保険加入の必要性と場合によっては、子ども個人に係る保険加入の勧め 1と2のポイント *1について ・活動場所の事前点検・日頃の子どもの観察・日頃の保護者との関係づくり ・保険加入と適用範囲の確認・承諾書(同意書)による保護者の理解と協力 ・活動内容と想定事故(疾病)に対する措置策の通知(予防策・指定病院・お迎え等) ・活動内容と想定事故の対応策・活動前のオリエンテーション・活動時の巡回注意 *2について ・救急処置、病院搬送、保護者への連絡・保護者への事実説明と誠意ある対応 ・保険会社への連絡と手続き・保護者との相互連絡・お見舞いと謝罪(加害者と) ・教訓としての今後の対策説明・状況によっては保護者会開催による説明 ・上部組織、行政、学校等への報告・加害者側の継続的な相談対応
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