第1章 佐賀市農業の特色と課題

第1章
佐賀市農業の特色と課題
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第1章
佐賀市農業の特色と課題
第1章
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佐賀市農業の特色と課題
佐賀市農業の特色
(1)水稲などの土地利用型農業が盛んである。
経営耕地面積10,900haの内、水稲が6,736ha、大豆が2,396
ha作付けされており、全体の約84%を占めています。
また、平坦地域においては、裏作の麦生産が全国有数の産地となっており、
7,110haが作付けされています。
農業経営の状況は、認定農業者、集落営農組織による農地集積が進んでいま
すが、米価の低迷や後継者不足により経営状況が厳しくなっています。
※データは第59次佐賀農林水産統計年報、佐賀県米麦大豆関係資料
(2)多様な農産物が生産され、食料の供給基地として位置付けられている。
中山間地域から平坦地域では、農地の標高差が500m
以上あり、気候や地形等を活かして、中山間地域では米や
レタス、ホウレンソウ、パセリなどの野菜、みかん等の果
樹、キク、トルコギキョウ等の花き、また平坦地域では、
米、麦、大豆、たまねぎをはじめ、イチゴ、アスパラガス、
トマト、ナス、キュウリなどの施設野菜や、バラ、電照キ
ク、ホオズキ等の花きなどの多様な農産物が生産されてお
り、日本各地への食料供給基地として重要な位置を占めて
います。
(3)佐賀県の中心的な市街地があり、多くの消費者を有する有利性がある。
市内に多くの非農家が居住しており、生産の場と消費の場が近接しているこ
とは、佐賀市農業の有利性となっています。
また、北部は大消費地の福岡市と隣接していることも大きなメリットとなっ
ています。
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佐賀市農業の特色と課題
(4)農地の利用率が高く、生産性の高い農業の展開が期待できる。
平坦地域では、ほ場整備・かんがい排水事業、大規模共同乾燥調製施設等の
整備が実施され、生産性の高い農業を展開できる汎用耕地や施設が整備されて
います。
表1
平坦地域におけるほ場整備実施状況
旧佐賀
諸富
大和
川副
東与賀
久保田
合計
地区数
18
1
2
9
3
2
35
整備面積(ha)
2,855
534
426
2,161
1,244
970
8,190
資料:佐賀市農業振興課、農村環境課
(5)環境保全型農業への意識が高い。
佐賀市農業振興基本計画見直しに伴うアンケート調査(平成24年度実施。
回答戸数4,179戸。以下、「基本計画アンケート調査」という。)では、多
くの農家が有機栽培や特別栽培など環境保全型農業に取り組んでおり意識は高
いと言えます。
図1
環境保全型農業(有機栽培、特別栽培)の取り組み
(%)
資料:基本計画アンケート調査
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(6)農業の6次産業化に対する関心が高い。
基本計画アンケート調査では、すでに12%の農家が農産物加工や直接販売
などの6次産業化に取り組んでおり、18%の農家が取り組みの意向を有して
います。
図2
6次産業化の取り組み
(%)
資料:基本計画アンケート調査
(7)グリーンツーリズムなど観光と組み合わせた農業振興を図ることができる。
北部地区は福岡市に隣接しており、現在も観光などと組み合わせたグリーン
ツーリズムが行われていますが、強化していくことで、さらなる農業振興が期
待できます。
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佐賀市農業の特色と課題
佐賀市農業の課題
(1)担い手の減少と高齢化が進んでいる。
基本計画アンケート調査では、農業後継者が「いない」
(36%)、
「まだわか
らない」
( 33%)の合計が69%と非常に高く、農業後継者が不足しています。
また、農業就業人口の60歳以上の割合が55%という状況は変わっておら
ず、このままでは担い手の減少は進んでいくと考えられます。
図3
農業後継者の有無
資料:基本計画アンケート調査
(2)土地利用型農業の経営の改善が必要である。
平坦地域における基幹産業である米・麦・大豆の土地利用型農業においては、
販売価格の低迷が続く厳しい状況の中、経営所得安定対策による様々な交付金
により一定の収入が確保され、農業経営は徐々に安定してきました。
しかしながら、米の需要見込みが減少する中で、平成26年度からは主食用
米に対する交付金減額や米の生産調整のあり方を含めた大幅な農業政策の見直
しが行われました。
今後の農業経営は、生産数量目標に沿った主食用米を生産することはもちろ
ん、大豆を転作の基幹作物として引き続き取り組むとともに、加工用米・飼料
用米・米粉用米の生産拡大、価格の安定した園芸作物の導入や加工・業務用向
けの契約生産など、経営の多角化が必要となっています。
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佐賀市農業の特色と課題
(3)耕作放棄地の拡大が懸念される。
基本計画アンケート調査では、高齢化や後継者不足などによる耕作放棄地の
発生が見られます。
現在、佐賀市地域耕作放棄地対策協議会を中心に、耕作放棄地の再生利用が
図られていますが、今後も農業就業者の高齢化が進むことにより耕作放棄地が
拡大することが懸念されます。
図4
耕作放棄地の有無
資料:基本計画アンケート調査
図5
耕作放棄地がある理由
資料:基本計画アンケート調査
(4)有害鳥獣による被害がある。
平成20年度から実施しているワイヤーメッシュ進入防止柵や箱わな等の設
置により、中山間地域では、イノシシによる農作物被害は減少したものの依然
としてイノシシなどの有害鳥獣による農作物被害が後を絶たず、農家の営農意
欲の減退が懸念される事態となっています。
また、最近では、アライグマなどの新たな鳥獣被害も報告されるようになっ
ています。
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(5)集落営農組織の法人化が急務である。
平成19年度の水田経営所得安定対策の導入に伴い集落営農組織が設立され
ました。
現在、120組織(うち、2組織が法人化)と929経営体の認定農業者に
より、農地の集積が進みましたが、多くの集落営農組織において、法人化に至
っていません。
(6)生産者と消費者の相互理解の浸透が重要である。
消費者の食の大切さや安全に対する意識はかなり高まってきており、国産や
県産、市産農産物へのニーズが高まっていますが、農地がもたらす多面的機能
(国土保全、景観など)や現在の農業が直面している問題(価格の低迷、担い
手不足、経営の悪化、耕作放棄地の増加等)が十分に理解されているとはいえ
ず、市民が農業・農地を支えるという意識に乏しい状況です。
また、生産者については、直売所などでの顔の見える販売が拡大してきてい
ますが、まだ大部分の生産者は、消費者が求めるニーズを直接聞く機会が少な
く、消費者のニーズに十分対応しきれていない部分があります。
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佐賀市農業の特色と課題
農業を取り巻く情勢
(1)担い手の減少と高齢化が進んでいる。
農業従事者の高齢化の進行に伴い長期的に農家数が減少していく傾向にある
中で、特に高齢農業者の離農が進むなど、担い手の減少が急速に進行していま
す。
(2)農業資材、燃油の高騰などにより農業所得が減少している。
国内における長引く景気低迷などによる農産物価格が伸び悩む一方で、農業
生産に必要な燃油や飼料などの生産資材価格は高騰していることから、農業所
得は減少傾向にあり、農業経営は厳しい状況となっています。
(3)多様化・高度化する消費者・実需者ニーズへの対応が必要である。
消費者の食生活の変化により、加工食品、弁当、惣菜等の調理食品(中食)
や外食が増加し、年齢や世帯構成などによって品質志向、価格志向、簡便志向
などの違いも見られるなど、消費者ニーズの多様化・高度化が一層進展してい
ます。
そのため、家庭用需要だけでなく、加工・業務用需要や食品産業との連携強
化を一層促進するなど、価格や品質、生産方法などにおいて付加価値の高い農
産物へのニーズに的確に応え得る生産体制への転換を促進していくことが急務
となっています。
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(4)食の安全・安心に対する関心が一層高まっている。
国内外での口蹄疫・高病原性鳥インフルエンザの発生や、近年の食品に関す
る不祥事・事件の発生などを契機に、食の安全・安心に対する消費者の関心が
一層高まっています。
(5)農地の多面的機能や農業・農村に対する期待が高まっている。
農地は食料を供給する機能のほか、国土の保全、水源のかん養、自然環境の
保全、良好な景観の形成等、多面的機能を有しています。
しかしながら、農村においては、過疎化・高齢化等により農業生産活動の後
退や集落機能の低下がみられ、農村文化の伝承や多面的機能の発揮に支障が生
じる事態が懸念されています。
一方、世の中は、ゆとりや安らぎ、癒し、心の豊かさなどの価値観を重視す
る傾向になってきており、その一つとして、豊かな自然環境や棚田などの美し
い景観、伝統文化に触れ合うことの出来る山里の暮らしなど、農村空間に対す
る理解と期待が高まっています。
そこで、これらの価値観を共有する都市住民等の参画を得ていく必要があり
ます。
また、世界的な不況により、雇用が不安定になっている現在、農業への就農
を希望する人が増えています。
これらの人々が農村における農業生産活動や地域活動の新たな担い手として
活躍できる仕組みを構築していくことが求められています。
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佐賀市農業の特色と課題
(6)TPPなど農業情勢が緊迫している。
担い手の高齢化や減少が進む中、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加
の有無により、消費者にとってはより安価な輸入農産物が手に入りやすくなる
可能性があることが考えられる一方で、「食」の安全・安心に対する不安も増大
しています。
また、交渉の結果次第では、水田農業を基幹とする本市農業だけではなく、
地域経済社会の維持発展にも大きな影響を及ぼすことが懸念されます。
さらに、平成24年度の日本のカロリーベースの食料自給率は39%と先進
国最低水準となっています。
このような中、世界の食料事情は、人口大国の中国やインドなどの経済発展
による食料需要の増大や砂漠化の進行、異常気象の頻発などによる食料供給の
不安定化が予想され、このまま輸入に依存すれば将来の食料危機又は、将来的
な食料の安定確保に不安が生じます。
図6
諸外国の食料自給率との比較(カロリーベース)
%
250
200
150
100
平成24年度 39%
233
187
50
130
121
93
65
59
56
50
39
0
資料:農林水産省
注1)数値は、平成21年(ただし日本は平成24年度の数値)
(7)環境保全を重視した農業生産への転換が必要である。
将来的に地球規模での化石資源・水資源の枯渇や、温暖化による影響等が不
安視される中で、農業が本来有する自然循環機能を発揮することにより、農業
生産の全体の在り方を環境保全に貢献する営みに転換し、農業が将来にわたっ
て国民の信頼を得て、持続的に発展していくことが必要です。
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