医法研ガイドライン改訂案に対するパブリックコメント[PDF 160KB]

【ご意見・ご質問の提出様式】
医法研・
「被験者の健康被害補償に関するガイドライン」改定案に関する意見
名前:内田英二
所属(法人名/部署名)
:昭和大学 / 研究推進室
意見:結論から申し上げますと、1.定義 2-3 中の「因果関係の認められるもの」は「因果関係を否定
できないもの」と変更し、またそれに応じて、4補償の範囲 4-1 補償しない場合の 4-1-1 も同様に修正
することを提案します。2.また、因果関係の判定について、外部有識者を入れた健康被害判定委員会
を設置することを盛り込んでいただくようにお願いいたします。
1.今回の GL 案(以下「本 GL」とします。)で「補償の範囲」が変わったために起こり得る社会の反
応と今後の医薬品開発への影響に懸念がありますので、ご意見申し上げます。
本 GL 2-3 で「治験に係わる被験者に生じた健康被害」を「・・因果関係の認められるもの」と定義
されています。同4.補償範囲の 4-1 補償を行わない場合として、4-1-1 で「因果関係が認められない
場合」としていますが、11 年 GL での「因果関係が否定される場合」と比べて明らかに範囲が狭められ
かつ不明確になっています。問題は、本 GL に従うと因果関係の判定結果が各社バラバラになり、治験
における補償の範囲が各製薬企業によって異なることになり、医療機関や被験者となる患者さんたちの
治験(全体)における補償制度に対する信頼が低下することに繋がる点です。本 GL 解説において、実
務上 Yes か No の二者択一であることを理由とされ、GCP 第 2 条の副作用に関するガイダンスやデータ
集積例、あるいはその他の判断基準を用いることで判断基準の合理性を確保するよう、各会社に呼びか
けていますが、定義と補償範囲を変えたことで対応にバラつきが出ます。
私は、直近 3 年間で 35 件の治験の医学専門家を受諾し(日・米を含む)、プロトコル・説明文書作成
だけでなく安全性報告の判断にも関わってきました。ここでは、治験薬との因果関係の判定を例に取っ
て上記の懸念を説明します:
通常、プロトコルでの治験薬との因果関係の判定は下記の 4 つが大多数です;
1)明らかに関連あり
臨床経過からみて治験薬との間に明らかに相関関係があり、かつ併用薬、併用療法等他の
要因が完全に否定される場合
2)おそらく関連あり
臨床経過からみて治験薬との間に明らかに相関関係があり、かつ併用薬、併用療法等他の
要因がほぼ除外される場合
3)関連あるかもしれない
臨床経過からみて治験薬による可能性を除外できない、かつ併用薬、併用療法等他の要因
が推定される場合
4)関連なし
1
臨床経過からみて治験薬による可能性を否定できる、又は併用薬、併用療法等他の要因が
原因と考えられる場合
11 年 GL では4)を補償対象としていませんでしたが(1),2),3)を対象)、本 GL によれば会社の判断に
よって「因果関係の認められるもの」として 1)のみを対象とすることもできます。会社によっては、
1)と2)を選択するところもあるでしょうし、11 年 GL と同様に1)2)3)を補償対象とするとこ
ろも出てくるでしょう。
言い換えれば、会社の考え方によって補償範囲が異なることを認めることになります。このことは、治
験を実施する医療機関にとっては依頼者が異なる個々の治験によって患者さん対応を変えなくてはな
らなくなるため大変な労力となり、治験実施全体を考えると大きなマイナスとなります。また、企業に
とっても他の会社の補償範囲が自社と異なることが、医療機関や患者さん側から指摘を受けると、その
たびに説明し了承を得る(得られればですが)作業が生じかねなくなるでしょう。
さらに、実際上、安全性報告が上記の 4 つのどれに当てはまるかを評価し判断することは簡単なことで
はありません。2)を3)にしたりあるいは3)を2)にしたりすることは、悪い意味でなくても起こ
りえます。本 GL が1)のみを対象として良いということなら被験者救済とは全くならず、GCP 第 14
条の主旨にも反するものとなるでしょう。
2.なお、本 GL7-1 で被験者に不服がある場合に関して、外部専門家による判定の記載がありますが、
本 GL の主旨は紛争解決ではなく被験者の速やかな救済であることを考えれば、この条項の持つ意味は
極めて限定されたものでしかない(これは 11 年 GL でも同じ)ことは言うまでもありません。
判定委員会は不服がある場合に限定するのではなく、各会社は因果関係の判定のために外部有識者を入
れた健康被害判定委員会を設置するようガイドラインで推奨すべきです。
この委員会は会社の判断の透明性を確保する上でも必要なことであると考えますが、上記1.の補償の
範囲(因果関係の特定)が各会社で異なることになれば、医薬品開発業界全体としては意味をなさなく
なることになりますので、上記1.の修正とペアでお考え下さいますようお願いいたします。
以上
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