全国大学国語教育学会における動向 第一 二五回広島大会の発表に見る

全国大学国語教育学会における動向
岩手大学
ジウムと二日目の課題研究発表。自由研
会場での自由研究発表、一日目のシンポ
日本国語教育学会は我が国最大の国語
(三つの話題)と公開講座といった構成
究と同時に行われるラウンドテーブル
-全国大学国語教育学会とは
教育団体だが、全国大学国語教育学会も
となっている。特に自由研究発表は計一
(分類は筆者
類してみる。
に多い順に分
内容観点ごと
容を下段に、
その発表内
がわかる。
生であること
教員と大学院
多くは大学
を示す。
発表者の内訳
された。上に
十五年、大学の国語教育講座を担当する
l 教育センター
O 二という近年では最大数のの発表がな
会員数千百人を超える学会である。昭和二
0
6
教員を中心に、国語教育研究の充実と発
展を期して結成されたこの学会は、今や研
究者のみならず、国語教育に関心を持つ人
いる。全国大学国語教育学会の会員はほ
たちに広く聞かれた学会として機能して
とんど日本国語教育学会の会員と思われ
るが、その逆の加入率はそれほどではない
のではないかという推測のもと、学会と
いう場において国語科教育学はどのよう
な状況や動向を示しているかを述べたい
.第-ニ五回広島大会の概要
第二一五回広島大会は、平成二十五年
十月二十六日、二十七日に広島大学にお
いて開催された。内容は二日間、二十一
2
9
2
5
2
2
2
0 私立大学教員
3 短期大学教員
2
0 国立教職大学院現職派遣教員
3 国立機関
2 元大学院
7 中学校教員
2 高専教員
国立大学教員
元国立大学教員
国立大学院生
私立大学院生
民問機関
小学校教員
高校教員
中高一貫教員
24 (学習材6、授業4、 表 現 、 文 法 、 文 学 各3など)
0歴史的考察
│第一二五回広島大会の発表に見る研究関心│
藤井知弘
国語教育・5
O言語事項関連
0書くことの指導
O指導法
1
3 (漢字、学習用語各3、 語 葉 、 伝 国 各2など)
1
1
9 (読書2、単元、対話、読解力 各 1
など)
0話す・聞く
8
O説明文指導
7
O文学の指導
5
0論理、クリテイカルな思考 4
Oメディア
4
4
0古典
3 (アメリカ 2、ドイツ 1
O海外の国語教育
)
Oその他
5 (教師、信念、演劇、生涯発達、カリキュラム 各 l
など)
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が最も多く、現在の国語教育に関わる研
こうしてみると、意外にも歴史的考察
ローチの方法があったこと(有津)、研
(深津)を聞い直す中で、様々なアプ
学際性にもある。議論は、研究が学習指
導の改善にどのように結びついてきたか
二O 一三年)はその広範な研究をここ十
教育学研究の成果と展望 E﹄(学芸図書、
いく中で、全国大学が集約した﹃国語科
a
v理論と実践の往還
窺える。かつて倉沢栄吉氏が﹁学習指導
の考えの根拠として機能していることが
を踏まえた上での考察は多く見られ、そ
しかし、学習指導要領の指導事項系統性
課題との差異を表すこととなっている。
見受けられず、実践上の課題と研究上の
た課題は、教職大学院生の発表上にしか
跡調査、内田氏の統計的手法による妥当
究﹂や藤森氏の抽出生徒の経年変化の追
学大学院が行ってきた﹁実践場面の研
いった問題関心を提示した。上越教育大
客観性や妥当性をいかに持ち得るのかと
ローチがその厚みをもってしでも、その
発言をしたが、質的な記述によるアプ
た展開がなされた。筆者も質疑において
る比較が必要であること(内田)といっ
あると思う。
をお勧めしたい。新たな発見がそこには
た。本学会員も全国大学に足を運ぶこと
られることを改めて認識することとなっ
として、また実践課題解決の為にも求め
いなければならないことを研究者の姿勢
関連性(レリパント)は常に往還し得て
ので、是非参照されたい。研究と実践の
年の研究成果の総括としてまとめている
研究者による研究関心が、細分化して
究課題よりも研究関心を引いている。学
(藤森)研究において統制群の設定によ
究が量的から質的に転換してきたこと
要領が最初にあるのではない﹂と学習者
性の検証などが、教育方法学と教科教育
の独断によっている)
る﹁単元を貫く言語活動の充実﹂といっ
校現場において現在最も関心を集めてい
れを整理する中で思い出していた。
中心の必要性を主張したことを筆者はこ
トのもと、堀江祐爾、佐渡島紗織、寺田
課題研究では﹁国語科カリキュラムの
再検討﹂として山元隆春氏コ lデイネ l
ることなどが確認されたものとなった。
学などを橋渡しするものとして有効であ
シンポジウムでは、﹁国語科教育学研
。シンポジウム、課題研究
表がどのようなアプローチとして国語科
守各氏による発表がなされた。紙幅から
究の方法﹂として前記のような各研究発
パネリストは有淳俊太郎、藤森裕治、深
の国語教育学者A- アップルビーが取り
紹介し得ないが、各氏においてアメリカ
教育学に機能してきたかが議論された。
津広明(教育方法学)、内田伸子(教育
上げられたことが共通点であった。
心理学)。学会のおもしろさは、他研究
領域の研究者を含んでの議論がなされる
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