1-7-1 氏名 國松 淳和 所属 国立国際医療研究センター病院 総合診療科 使用言語 日本語 対象者 医師・後期研修医(卒後 3 年目以上)・初期研修医(卒後 1-2 年目) タイトル 「菊池病らしさ」をつきつめる! 〜ACP から菊池病の臨床診断基準を〜 内容 菊池病は、臨床的にはself-limited、主として頸部の良性のリンパ節炎で、組織球性壊死性リンパ節炎としても知られ、 病理組織所見も確立し独立するひとつの疾患単位として認識されている。臨床症状にも特徴はあり、しばしば臨床的に 診断がなされるものの、確定診断は生検に依存している。米国では稀とされている一方、本邦では非常に日常的な疾 患で、多くが臨床診断されている。このような実態があるにも関わらず、生検以外の診断基準(臨床基準)はいまだ確 立されていない。 確かに菊池病は自然軽快しうる疾患である。しかし、臨床医がそう認識できるのは菊池病と診断できてからである。一部 の菊池病では、症状が重い(熱のグレード高い、遷延性などの理由で消耗が激しい)こと、また不明熱的様相となって 患者や患者の家族にとって不安が大きいこと、等が問題となる。そして、本邦で馴染みのある疾患と述べたが、まだまだプ ライマリケア・一般内科のような場で、疾患およびその診断アプローチが浸透されているとはいえない。これは、患者のアウ トカム改善を妨げているといえる。 菊池病の診断において問題となるのは、リンパ節生検をする・しないのジレンマである。発熱が遷延する菊池病疑いの患 者では、必ずリンフォーマとの鑑別が問題となる。高熱が遷延すると、消耗し、不安状態となり、ステロイドを用いた治療へ の誘惑が強くなる。しかし、菊池病疑いの診療において臨床医は生検なしにステロイドを投与することを普通ためらう。 一方でリンパ節生検は、invasiveであり、次の2点から、しばしば生検は見送られる。1つは、菊池病の病像に合えば 合うほど、良性という性質も相俟って経過観察で済むのではという誘惑が生じることである。2つ目は、患者は小児〜若 年者(やや女性が多い)が多く、美容的な点や、受けうる侵襲が見合わない点から患者から良好に同意を得難い点 である。 このような背景から、「生検に依存しない」実用的な臨床分類基準が臨床現場にはのぞまれている。菊池病が臨床診 断できるようになると、安心して経過観察できるようになることの他にも、メリットがいくつかある。 ①リンパ節生検の適応がわかる:菊池病らしくないときに、別の疾患をより考慮できるようになる ②菊池病の、疫学的な実態がつかめる ③“菊池病らしさ”が定量できれば、ステロイドの正当性が高まる 菊池病の確定診断はリンパ節生検の病理であることは論を俟たないが、臨床現場では実は生検によらない診断基準が 必要とされている。今回の ACP のセッションは、この菊池病臨床診断基準をつくるためのスタートアップミーティングにする 予定である。具体的には、私がまず自施設のデータと提案を呈示し、その後参加者の皆様と菊池病の診断についてディ スカッションします。そこで問題点を浮き彫りにし、菊池病の診断方法に関する多施設共同レトロスペクティブ研究を立ち 上げることを目標としたい。研究協力医療機関を募ることも目的のひとつである。
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