[18]貧血と検査Part2-悪性貧血

けんさの豆知識
2003 年 9 月発行
[18]貧血と検査 Part2―悪性貧血―
2010 年 12 月改訂
悪性貧血とは
ビタミンB12 の欠乏が原因となる貧血で、大球性高色素性貧血に分類されます。昔は、
原因不明で致死的な貧血であったことから、悪性貧血と名づけられました。現在はビタ
ミンB12 の非経口投与で劇的に改善されます。
舌炎、軽い黄疸、知覚・運動障害の神経症状を特徴とします。
【原因】⇒ビタミンB12 の欠乏・不足、内因子の欠乏(表1参照)
表1 大球性高色素性貧血の原因
Ⅰ
ビタミンB12 欠乏
1.摂取不足
2.吸収障害
II
極端な菜食主義
内因子欠乏
小腸疾患
競合
悪性貧血 胃切除
回腸切除
盲係蹄症候群 広節裂頭条虫症
葉酸欠乏
1.摂取不足
2.吸収障害
3.需要亢進
III
アルコール中毒
小腸疾患
短絡形成手術
薬剤
抗痙攀薬 経口避妊薬
妊娠 造血亢進 悪性腫瘍
その他
1.代謝拮抗薬
アメトプテリン 6-MP シタラビン5-FU 等
オロチン酸尿症 レッシュナイハン症候群
2.先天性酵素欠乏
フォーミミノトランスフェラーゼ欠乏症
【症状】⇒めまい、動悸、手足のしびれ、筋力低下、知覚障害など
※ひどくなると…記憶減弱、排尿障害、下痢、腹痛、手足の浮腫、舌が赤
くなってひりひり痛む、白髪化など
【検査所見】⇒末梢血液:大球性高色素性貧血
**詳細はけんさの豆知識[9]貧血と検査 2001 年2月発行をご覧下さい
血算
血液像
生化学
その他
赤血球数減少 ヘモグロビン低値
MCV高値 MCH高値
白血球数減少
⇒DNA合成障害により、赤血球だけでなく白血球や血小板も減少します
(汎血球減少症)
巨赤血球の出現 過分葉好中球の出現
間接ビリルビン増加 LDH増加
ビタミンB12 低下 葉酸低下
抗内因子抗体の出現 尿中メチルマロン酸排泄の増加
【治療】⇒ビタミンB12 の筋肉注射。予後が良好。*吸収障害があるため、内服では
なく注射で行います。
ビ タ ミ ン B12 の 必 要 性
ビタミンB12 は、血液を造るのに欠かせない栄養素で、葉酸と補い合って働きます。赤
血球の産生や神経の働きに関与し、胃粘膜から分泌される「内因子」という物質と結合
して回腸から吸収されます。悪性貧血の場合、胃粘膜の壁細胞に対する自己抗体の出現
により「内因子」分泌不全が起こりビタミンB12 の吸収ができなくなります。この結果、
ビタミンB12 の欠乏(=DNA(核成熟)合成障害)により造血障害がおこります
「菜食主義者」と「大酒のみ」の方はご注意!!
●ビタミンB12 は、1日の必要摂取量が微量です(成人男女で 2.4μg、妊婦・授乳婦で
2.8μg)。よほどの偏食をしない限り、不足は起こりません。しかし、動物性食品(肉・
魚・卵・牛乳など)にしか含まれないので、菜食主義の人は、サプリメントなどで補給
する必要があります。
●また、胃全摘のあとにもビタミンB12 の吸収障害が起こり、肝臓でのビタミンB12 の
貯蔵がなくなると症状があらわれます
●大酒のみで栄養が極端に偏っている人、ある種のてんかんの薬を長期服用している人
なども葉酸欠乏から悪性貧血になります。
ビタミンB12 による悪性貧血では、胃癌の合併が多いため
年1回は胃の検査を受けることをお勧めします