12. 準備書についての知事意見及びそれに対する事業者の見解案

12.
準備書についての知事意見及びそれに対する事業者の見解案
環境影響評価法第 20 条第 1 項に基づく環境の保全の見地からの佐賀県知事意見及びそれに
対する事業者の見解案を以下に示す。
1.全般的事項
知事意見
事業者の見解
(1)事業の実施に当たっては、自然環境に与え
本事業計画の立案に際しては、その位置及び基
る影響を可能な限り回避、低減できるよう、環境
本構造の検討段階から、重要な動物種、植物種及
保全に最大限の配慮を行うこと。また、環境保全
び群落の保全の観点より自然環境の改変量を極
措置の効果の不確実性の程度が大きいものにつ
力抑え、工事施工ヤードは対象道路上を極力利用
いては、詳細な工事実施計画を検討する際に、環
し、工事用道路等についてもできる限り既存道路
境影響が最小限となるよう慎重に検討し、実施す
を利用するなど、環境影響を回避又は低減させた
ること。
計画としている。
今後、詳細の工事実施計画を検討する際には、
本環境影響評価の結果を踏まえ自然環境に与え
る影響を可能な範囲で回避、低減するよう配慮し
ていく。また、現段階で予測し得なかった著しい
影響が見られた場合には、環境へ及ぼす影響につ
いて調査し、必要に応じて適切な措置を講じるこ
ととする。
(2)事業の実施に当たっては、環境監視や環境
事業の実施に当たっては、工事関係者に対し本
保全措置の確実な履行を確保するために、責任者
環境影響評価の内容を周知し、環境監視や環境保
等を設置するとともに、工事施工業者等への指導
全措置の確実な履行を確保するために責任者等
に努めること。
を設置させるとともに、工事施工業者等への指導
に努めることとする。
(3)当該事業では、大規模な盛土工が行われる
当該事業では、大規模な盛土工が行われること
ことから、大量の搬入土が必要と考えられる。こ
から、大量の搬入土が必要となるが、近郊におい
のため、近郊において大規模な土砂採取を行う場
て大規模な土砂採取を行う予定はない。行う場合
合は、当該事業と一連の事業として環境への影響
は、当該事業と一連の事業として環境への影響に
について予測評価を行うか、事業実施の段階で採
ついて調査等を行ったり、事業実施段階で採取場
取場所の希少な動植物や周辺住居の生活環境へ
所の希少な動植物や周辺住居の生活環境への影
の影響を考慮し、必要に応じて保全措置を検討す
響を考慮する等、必要に応じ適切な措置を検討す
ること。また、他事業の建設発生土や購入土を利
ることとする。また、他事業の建設発生土や購入
用する場合は、調達先への環境配慮の周知に努め
土を利用する場合は、環境への配慮を行っている
ること。
調達先であることを確認する。
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知事意見
事業者の見解
(4)今後、事業開始まで長期間を要することが
今後、工事実施計画の詳細な検討に当たって
想定されるため、事業の実施に当たっては、周囲
は、環境影響評価の結果に基づき環境保全に十分
の生活環境や自然環境の変化、規制区域や環境基
配慮して行うとともに、事業実施段階には、周辺
準の変更等を確認し、必要に応じて再評価を行
の生活環境の変化、自然環境の変化、規制区域や
い、適切な措置を講じること。
環境基準の変更等を確認し、必要に応じ調査等を
行い適切な措置を講じることとする。
2.大気・騒音・振動
知事意見
事業者の見解
(1)工事の実施に伴う粉じん等、騒音、振動に
工事の実施に伴う粉じん等、騒音、振動につい
ついて、環境保全措置を確実に実施し、周辺地域
て、工事関係者に対し本環境影響評価の内容を周
への影響を回避・低減するとともに、住民等から
知すること等により環境保全のための配慮を確
苦情が発生した場合は真摯に対応すること。特
実に実施し、周辺地域への影響を回避、低減する
に、運行ルートや出入口が決定し、環境への影響
とともに、住民等から苦情が発生した場合は真摯
が大きくなると思われる地域については、事前に
に対応する。また、運行ルートや出入口が決定し、
地域住民等に対して十分な説明を行うこと。
環境への影響が大きくなると考えられる地域が
ある場合には、事前に地域住民等に対して十分な
説明を行うこととする。
(2)道路の供用に伴う大気汚染、騒音、振動へ
本事業計画の立案に際しては、その位置及び基
の影響について、交通量や大型車の混入率などの
本構造の検討段階から、良好な生活環境を保持す
予測条件と実績に差があり、環境影響の程度が著
るため、できる限り市街地・集落の通過を避ける
しいものとなるおそれがある場合は、事後調査を
等、環境影響を回避又は低減させた計画としてい
行い環境影響の程度を把握して、適切な環境保全
る。また、道路の供用に伴う騒音の予測値が基準
措置を講じること。
等を超える箇所については、遮音壁の設置及び排
水性舗装の敷設により騒音の影響を低減してい
る。
道路の供用に伴う大気汚染、騒音、振動への影
響について事後調査を行う予定はないが、交通量
や大型車の混入率などの予測条件と実績に差が
あり、環境影響の程度が著しいものとなるおそれ
がある場合は調査等を行い、必要に応じて適切な
措置を講じることとする。
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3.水質・地形及び地質・地盤
知事意見
事業者の見解
(1)橋脚工事の仮締切工事等(矢板打ち込み工)
橋脚工事の仮締切工事等(矢板打ち込み工)に
に係る水の濁りについて、環境保全のための措置
係る水の濁りについて、工事に起因して生じる水
は、可能な限り具体的・定量的な記載を検討する
の濁りの程度は、河川の深さ、流量、施工機械等
こと。また、施工時期を極力非出水期とするなど
により異なり、合理的で十分説明可能な定量的予
環境影響をできるだけ回避又は低減すること。
測は難しいと考えられるが、環境保全措置として
掲げた「施工速度を遅くする」ことは、工事によ
る振動や衝撃の時間的間隔を確保し、効果が確実
に期待できる方法と考えている。
今後、詳細の施工計画の立案にあたっては、過
去の類似事例を参考に具体の施工方法、施工時期
を選定しできる限り回避又は低減に努めること
とする。
(2)軟弱地盤の改良工事について、透水層に接
軟弱地盤の改良工事については、改良深度は洪
触しないことを前提条件に評価がなされている
積砂・礫層の透水層に接触しないことを前提条件
ため、改良深度の決定に当たっては、地質調査(ボ
に予測及び評価を行っている。改良深度について
ーリング)を実施し、前提条件の順守に努め、前
は、事業実施段階で詳細な地質調査(ボーリング)
提条件が変更される場合は再評価を行い、必要に
を実施し決定するため、予測条件下での事業実施
応じて適切な措置を講じること。
は担保されると考える。このため、前提条件の変
また、地質調査(ボーリング)において礫層が
更は想定しておらず事後調査を行わないことと
見られた時には水位の観測をしながら、地下水流
しているが、前提条件を変更する場合には、環境
に変化がないような対策を取るなど余裕を持っ
へ及ぼす影響について調査し、必要に応じて適切
た対応を行うとともに、事業の実施中及び実施後
な措置を講じることとする。
において地下水流、地下水位の変化について幅広
事業実施段階での地質調査(ボーリング)にお
く調査を行い、事後調査報告書に記載すること。 いて軟弱地盤の改良が必要な範囲に礫層が見ら
れた時には、工事に際し地下水の水位観測などの
環境監視を確実に履行することとし、監視により
予測し得なかった著しい影響が確認された場合
には、適切な措置を講じることとする。
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知事意見
事業者の見解
(3)事業実施区域及びその周辺の飲用井戸の設
本事業の環境影響評価では、「工事の実施(軟
置状況を把握し、軟弱地盤の改良工事の実施及び
弱地盤の改良)及び道路の存在による地下水の水
道路の存在による当該井戸に対する水位変動や
質及び土壌」の項目で地下水の水質の調査等を実
水質の変化等の影響について、予測・評価を行い、 施しており、調査結果によると海水由来のホウ素
その結果及び必要に応じて環境保全のための措
を除き水質汚濁に係る環境基準を下回っている。
置について評価書に記載すること。また、事業の
白石町への聞き取りによると、事業実施区域周
実施に当たり、予測し得なかった著しい影響が発
辺には飲用井戸としての利用が一戸程度みられ
生した場合は、専門家の意見を踏まえ適切な措置
るという情報を得た。事業実施の際には、事業実
を講じること。
施区域及びその周辺の飲用井戸の設置状況を把
握し、軟弱地盤の改良工事の実施等を勘案しつつ
必要に応じて保全対策を実施することとする。ま
た、その旨を評価書に記載する。
4.動物・植物・生態系
知事意見
事業者の見解
(1)事業実施区域は、希少種であるシチメンソ
ウなど自然発生的な植物が生育している。
事業実施区域及びその周辺は、シチメンソウな
ど希少な植物が生育している。また、シギ・チド
また、シギ・チドリ類の重要な渡りの中継地で
もあり、鳥たちの行き来が盛んな場所であるた
リ類の重要な渡りの中継地でもあり、鳥たちの行
き来が盛んな場所である。
め、環境影響を最小限に抑えるよう努めること。
本事業計画の立案に際しては、その位置及び基
本構造の検討段階から、地域の生態系の保全の観
点より自然環境の改変量を極力抑え、工事施工ヤ
ードは対象道路上を極力利用し、工事用道路等に
ついてもできる限り既存道路を利用するなど、環
境影響を回避又は低減させた計画としている。
事業実施の際には、工事関係者に対して保全の
ためのパンフレットを配布・説明するなど、環境
影響を最小限に抑えるよう努めることとする。
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5.歴史的文化的遺産
知事意見
事業者の見解
(1)当該調査区域には、国の重要文化財(建造
本環境影響評価では、対象道路が佐賀県杵島郡
物、1件)、国の重要伝統的建造物群保存地区(3
白石町を通過するため、事業実施区域の通過部で
地区)、国の登録文化財(9か所)、佐賀県指定重
ある白石町を対象とし指定文化財を確認し準備
要文化財(建造物、2件)、佐賀県指定重要文化
書に記載している。ご指摘の文化財等については
財を収蔵する寺院(2件)が存在するため、これ
鹿島市その他の隣接する市町に存するものであ
らの文化財に影響を及ぼすおそれがある場合は、 り、本対象道路が通過することもなく、本事業に
環境影響評価を行い、その結果について評価書に
より改変等を生じることはないため、環境影響評
記載すること。また、環境影響をできる限り回避
価の実施や評価書への記載は行わないものとす
または低減し、必要に応じて環境保全措置を講じ
る。
ること。
(2)事業実施区域内に一部が存在する有明海の
有明海の干拓堤防は一部事業実施区域内に存
干拓堤防は、白石町の干拓の歴史を物語る重要な
在し、さらに計画路線の一部が干拓堤防の近傍に
遺産であり、後世に残すべき遺産の一つと考えら
並行して通過するが、対象道路はその位置及び基
れることから、事業の実施にあたっては十分な配
本構造の検討段階から当該施設に直接的な改変
慮を行うこと。また、埋蔵文化財について、その
がないよう配慮している。
性格上しばしば未周知地区でも発見されること
事業の詳細化に際しては、有明海の干拓堤防を
があるため、事業の実施前に県教育委員会文化財
直接改変しない設計とするが、事業実施段階で当
課又は白石町教育委員会と協議を行うこと。
該施設に予測し得なかった著しい影響が発生し
た場合は、関係機関と協議・調整を行い、適切な
措置を講じるものとする。
埋蔵文化財については、事業実施の前に県教育
委員会文化財課又は白石町教育委員会と協議を
行うとともに、事業実施中に新たに遺跡等を発見
した場合には、「文化財保護法」に基づき、関係
機関と十分協議・調整を行い、適切な措置を講じ
るものとする。
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6.その他
知事意見
事業者の見解
(1)本道路は全区間に渡って佐賀平野の低平地
本道路事業は、全区間に渡って佐賀平野の低平
を通る道路計画の一部であり、準備書に係る一般
地を通る計画であるため、具体の道路構造につい
の意見の概要には、事業の実施による排水への影
ては、事業実施段階において、従来の浸水区域や
響についての意見が記載されている。ついては、 内水氾濫の形態を十分把握し、その影響が助長さ
当該事業の方法書についての知事意見で述べた
れないよう検討することとしている。検討結果に
ように、「従来の浸水区域や内水氾濫の形態を十
ついては、事業実施の前に地域住民等に対して、
分把握した上で、その影響が助長されないよう道
十分な説明を行うこととする。
路計画の検討を行う」とともに、検討結果につい
て、事業実施の前に地域住民等に対して、十分な
説明を行うこと。
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