09 徳島県 阿南市立那賀川中学校 2年 廣瀨 萌瑚

平成 26 年度「土砂災害防止に関する絵画・作文」作文中学生の部 優秀賞(事務次官賞)
「我が家のタイムライン」
ひろせ
も こ
徳島県 阿南市立那賀川中学校 2年 廣瀨 萌瑚
お盆休みが終わり、楽しい家族旅行の相談をしていた家族もいただろう。久しぶりに田舎の実家
に車を走らせ、帰省してホットしていた人もいたに違いない。今年8月 20 日、ヒロシマ。たくさ
んの「幸せ」を土砂災害はあっという間に残酷に奪ってしまった。テレビの画面を通じて流れる映
像は、現実として信じられず、ショックで勝手に涙が出てきた。
自分の住んでいる土地が「まさ土」と呼ばれる水を含むと崩れやすくなる地質だと知っていた人
はどれくらいいたのだろうか。また、近くで起きた 1999 年の土砂災害を知っていた人はどれだけ
いたのだろうか。ニュースで様々な情報を知るにつれ、私の心の中に、大きな悲しみと、やるせな
さと、たくさんの疑問が湧いてきた。
私の住む阿南市も1級河川那賀川の最下流に位置し、過去幾度かの洪水被害に遭っている。今年
もヒロシマの土砂災害より少し前の8月 10 日、台風 11 号の影響による大雨で中流域の鷲敷地区や
加茂谷地区では中学校の2階まで浸水するなど大きな被害を出した。洪水被害低減、発電や工業用
水の供給のために複数のダムが設けられているはずなのにどうしてこんなことが起こるのだろう
か?
父に話すと「疑問があるなら実際に見に行こう」ということになり、家族で那賀川上流にある1
番大きな「長安口ダム」を見学に行った。巨大な施設でその大きさに息をのんだ。しかし、見学に
来ていた近所の人の話では台風の時は「もう少しであふれそうで心配だった。」とのことだった。
どれだけ綿密に放流の量を計算しても下流域の降水量までなかなか予想できない。特に最近のゲリ
ラ豪雨を予測することはとても難しいことだと思った。
足を伸ばして、「土砂崩れの跡」を確認に行った。民家がまばらになった頃、野生のシカが出現
した。驚きながらも山の中に入っていくと、まだ真新しい大きなブロックで覆われた川岸があらわ
れた。すぐ上の山は大きく削られ、周囲には崩れてきたらしい大きな岩が点在していた。山肌が異
様な形に変わっていて見ているだけでも思わず恐怖を覚えた。
NPO法人・土砂災害防止広報センターでは、私たちにできる災害への準備として、4つの方法
をあげている。
まず、1つ目は「危険な場所を知る」ためにハザードマップの確認や危険箇所を示す看板の確認。
2つ目は土砂災害の多くは大雨が原因の場合が多く、降り始めからの雨量が 100 ミリを超えると
土砂災害が起こりやすくなるため常に「雨に注意する」こと。
3つ目は「土砂災害の前触れ」として「山鳴り」や「川の濁り」「地鳴り」などに注意すること。
最後に避難場所や方法を確認する「避難の仕方を身につける」ことが提案されている。
しかし、こういった情報は自分の住んでいる地域や家屋の状況等にあてはめ、自分で考えてこそ
生きてくるように思える。大雨が降っている状況で外の様子をうかがうこと自体が困難だ。そのう
え、冠水する私の家の場合、2次被害の危険も伴う。
同級生に聞いてみると、天気予報や災害情報よく使われる言葉の意味を知らない人も多い。「土
砂災害警戒情報」「避難勧告」「避難指示」などの意味を理解することも大切だと思う。
土砂災害に対して「もっと自分たちのできることはないだろうか・・・・・・。」ダムや土砂災
害地の見学の後、家族で真剣に考えてみた。
ちょうどテレビで山口県防府市などが気象庁と連携して整備を進めている「台風用タイムライン」
を取り上げていた。「タイムライン」とは災害が発生する時刻を「0時」として、事前にやらなく
てはならないことを時系列に示したものだ。例えば 24 時間前には「避難所の計画と準備」11 時間
前までには「避難勧告」の発令と「住民避難開始」。9時間前までには「避難指示」といった具合
だ。これは私たち「住民」も事前に防災のために連携できる大きな目安になるのではないだろうか。
父に話したら、「それでは我が家のタイムライン」を作ろう。ということになった。
天気予報等で「1日前」になったら、まず、家族で「避難場所」と「避難ルート・避難方法」を
確認する。親戚等への連絡方法も再確認しておく。次に「避難勧告」が発令されたら、予め決めて
いる「避難場所」に避難開始する。といった、我が家のルールを決めた。
私の学校の校訓は「いのちを大切に」だ。「防災は空振りは許されるが、見逃しは許されない」
という言葉がある。今回のヒロシマを教訓にし、「いのちを大切に」私たち自身が防災に積極的に
努めることこそ、かけがえのない犠牲者の皆さんに対する私たち一人ひとりの「責任」だと今、強
く心に思う。