【事例】各種測定実験の結果をもとにしたダイカスト金型の変形解析

特集
ダイカストにおける「可視化」最新技術
事例 8
各種測定実験の結果をもとにした
ダイカスト金型の変形解析
岐阜大学
新川
真人*、山 縣
裕**、寿金属工業㈱ 谷川
昌司***
ダイカストを構成する要素としては、金型、マシン、 金型構造のみならず成形機の構造にも起因していると
材料があげられるが、これらの中で金型は直接製品を
考え、稼働中の金型および成形機の挙動を各種測定器
得る重要な要因であると言える。そのため、金型に発
により評価した。その結果をもとにシミュレーション
生している現象を正確に捉えることは、良好な製品を
モデルを構築し、金型の変形解析を行った結果を紹介
得るうえで極めて重要である。
する。
金型の現象を把握するためには、各種センサや可視
各種計測器による測定
化技術を用いることが有効であると言える。しかし、
センサは設置している個所に発生する現象を定量的に
ダイカストによる鋳造工程を考えたとき、鋳造中の
評価するためには有力であるが、金型内部および金型
金型が変形する要因として考えられるものとしては、
全体の挙動を把握することは難しい。一方、可視化技
鋳造に伴う金型内部からの熱的変形、機械的変形およ
術は直接現象を観察することが可能であるため詳細な
び型締めに伴う機械的変形があげられ、これら各種要
検討が可能となるが、高温・高圧環境となる型内を可
因により金型は変形する。そこで、各種計測器を用い
視化することは技術的に困難を伴う。また、観察個所
て、シミュレーションモデルの構築に必要な情報を取
は金型材とは異なるという本質的な問題もある。そこ
得した。
で、コンピュータシミュレーションが有力な手段とし
1.金型温度
て考えられる。適切な境界条件やモデルを設定したう
金型表面温度を赤外線サーモカメラにより取得した。
えで計算を行えば、多くの有益な情報を得ることが可
一般に、型開き時の金型間隔および安全性の観点から、
能となる。このときには、各種センサによる計測や可
金型表面に対して斜め方向から熱画像を撮影せざるを
視化による検証結果をシミュレーションに組み込むこ
得ない。この場合、おおよその温度分布は測定可能と
とが必要となる。
なるが、画像が不鮮明であるなどの本質的な問題を解
本稿では、各種測定結果をベースとしたダイカスト
決できない。そこで、ロボットアームを活用し、金型
金型の変形解析手法について紹介する。金型の変形は、 表面を正面から撮影する手法を採用した。
*Makoto Niikawa:工学部 機械工学科 准教授
**Hiroshi Yamagata:同 教授
〒501−1193 岐阜県岐阜市柳戸 1−1
TEL(058)293−2517
***Syouji Tanikawa:生産技術部 次長
〒445−0892 愛知県西尾市法光寺町北山 1
TEL(0563)
56−7721
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図 1 に本手法により取得した熱画像と従来のよう
に斜め方向から取得した熱画像を示す。サーモカメラ
により金型を正面から撮影することによって、極めて
鮮明な熱画像を取得することが可能であることから、
細部の詳細な温度を測定できた1)。