李希・省長による「2015年遼寧省政府活動報告」 1 2014 年の活動の回顧 ●経済運営は合理的な範囲。2014 年の省 GDP は 2.86 兆元で、前年比 5.8%増。実名制就職 者数は 101.7 万人で、都市登記失業率は 3.38%。CPI は 1.7%増。 ●発展の質と効率は安定成長。都市部住民一人当たり可処分所得は 2 万 9082 元で、7%増。 農村住民一人当たり可処分収入は 1 万 1191 元で、8.6%増。一定規模以上の工業企業によ るハイテク製品増産額は 7.8%増。 ●構造調整が進展。サービス業の省 GDP に占める割合は 41.8%。民間投資比率は 71.1%。 民営経済は 7.2%増。 ●社会事業の発展が加速。省党委員会、省政府が確定した 31 件の民生事業が完成。全省財 政予算のうち民生と直接関係する支出は一般公共予算支出の 70%以上を占める。 (1)旧工業基地の全面振興 ア 党中央、国務院の新たな振興戦略を貫徹し、35 の重大政策措置を 148 項目の具体的任 務に分け、責任分担を決め、一つ一つ着実に実施。 イ 政策とのリンクを把握。行政審査制度改革、国有資産・国有企業改革、都市化、民生 保障と改善に関する政策意見を打ち出し、国家戦略とマッチし、旧工業基地に長期にわた って存在する体制メカニズムの弊害を解決する政策の着手ポイントを探った。 ウ プロジェクトのマッチングを把握。署名した協力プロジェクトは 124 件で、建設中の プロジェクト投資総額は 8200 億元を超える。 (2)経済の安定成長 ア 交通、エネルギー、水利、電子通信などのインフラ建設を推進。北京-瀋陽旅客専用 鉄道遼寧区間工事開始、興城-建昌(当館注:ともに葫芦島)区間、灯塔(当館注:遼陽 市)-遼中(当館注:瀋陽市)区間,盤錦港アクセス道路など高速道路の完成。固定資産 投資は 2.4 兆元を達成。 イ 消費ニーズを拡大。電子ビジネスなど新型商業の発展。社会消費品小売総額は 1.18 兆 元で 12.1%増。 ウ 国際市場を開拓。輸出入総額は 1140 億米ドル、そのうち輸出は 588 億米ドル。サービ ス貿易輸出は 6.9%増。 エ 実体経済の健全な発展。小型・超小型企業に対し 25 億元の税収優遇。 「営改増(当館 注:営業税を増値税に転換する) 」の試みを拡大し、55 億元を直接減税。行政事務手数料を 取り消し・減免・支払い猶予し、一部の保険金の徴収を半減し、90 億元余りの企業の負担 を減らした。人民元・外貨建て借款 3231 億元を新たに増加、ノンクレジット・ローンも新 たに 4855 億元増やした。 (3)市場活力の活性化 ア 政府機能の転換を進めた。783 の省レベルの行政許認可権を削減・下部機関への移譲を 行い、省政府部門に残った 496 の許認可事項のリストを公開。 イ 工商登記制度改革を実施。営業許可書、コード付与書と税務登録の「一本化」改革試 行により、新登記制に基づく会社が 76%増。 ウ 国務院の批准により設立された大連金普新区において対外開放を実現。実際利用外資 は 274 億米ドル、対外直接投資は 35.2 億米ドルに達した。 (4)産業構造の調整 ア 科学技術、人材、情報化を遼寧に現代産業システムを作り上げる先決要素として重視。 国際的にも一流で、国内をリードする 57 の重大設備・製品を開発。206 の海外の研究開発 機関を受け入れた。有効な発明特許も 1.8 万件に達した。 イ 工業にかかる 5 つのプログラム(注)を実施し、70 件の重大工業プロジェクトが操業 開始。バイオ医薬、新素材、電子情報などの戦略的新興産業も徐々に発展し、重点産業ク ラスターによる販売収入は 10.1%増加。 注)企業のレベルアップ、プロジェクトにかかる(数値)目標の達成、合併・買収、産業 クラスターの形成、省エネによる企業淘汰 ウ サービス業発展四ヶ年行動計画を実施し、工業企業から 1425 社の生産性サービス企業 を独立させた。観光総収入も 13.8%増となった。 エ 農業の基礎を強化。飲み水安全プロジェクトを実施し 120 万人の農村大衆の困難を解 決。食糧生産量は 350 億斤(当館注:1750 万トン)。 (5)社会事業の発展 ア 都市住民基礎年金の最低基準を月 55 元から 70 元へと向上。企業退職者の基本年金標 準を月一人当たり 2033 元まで向上。都市・農村の最低生活保障基準を平均 11.3%向上させ た。都市・農村住民基本医療保険政府補助基準を年一人当たり 320 元にアップした。保障 性住宅を 32.8 万戸完成させ、そのうちバラック地区の改善では 29.5 万戸を改築した。 イ 教育事業発展と医薬衛生体制改革の加速。農村で 69 万人の児童が義務教育(無試験で 近くの学校に入学できる)の恩恵にあずかった。54 のモデルとなる職業学校を建設。大学 を支援し 77 の一流の特色を持った学科を開設。20 の県クラスの公立病院で総合改革の試み を実施。一人当たり基本公衆衛生サービス経費基準を 35 元に向上させた。農村で無料の妊 娠前検査を 54 万家庭に提供。 (一人っ子同士の夫婦に 2 人目の子供を認める)「単独両孩」 政策の実施。 ウ 文化体育事業の発展促進。 エ 「碧水、青山、青空」三大環境保護プロジェクトの推進。省内 6 つの主要河川は一年 を通じ水質が安定し基準値を達成。遼河流域、大●(人偏に火)房水源保護区が国から初 の生態文明先行モデル区と認定された。緑化のため 334 万ムー(約 22 万ヘクタール)の造 林、草原の砂漠化対策を 100 万ムー(約 7 万ヘクタール)行った。空気優良指標達成日数 は 70.9%に達した。 (6)法律に基づいた行政を堅持し、社会の調和と安全を維持 ア 人民代表大会からの提案 539 件、政協遼寧省委員会からの提案 581 件を処理して報告。 省政府による規定と省人民代表大会常務委員会に審議してもらう地方性法規(条例に相当) 草案 13 件を制定。 イ 中央の八項目の規定と省党委員会の十項目の規定を貫徹。全省の「三公」(注)経費に かかる支出を前年比 23.1%削減。 注)公務員の出国旅費、配車にかかる経費、公的接待にかかる費用 ウ 安全な生産と食品・薬品の安全の把握確保に努めた。 エ 国防動員、沿海防衛建設、民間防空と民兵の予備役にかかる仕事を強化した。 2 2015年の活動にかかる総合的要請 今年の全省の経済社会発展にかかる主要な予測・目標は、GDP は約 6%増、固定資産投資 は約 6%増、社会消費品小売総額は約 11%増、輸出総額は約 5%増、一般公共予算収入は約 2%増。インフレ率は約 3%前後に抑える。実名制就職者数は 80 万人、都市登録失業率は 4.3%以内に抑える。 3 2015年の主要任務 (1)党中央、国務院の振興発展戦略にかかる措置を全面的に貫徹 ア 各政策を真剣に実施。 イ 改革の試行を積極的に勝ち取る。国有資産・国有企業改革、投資にかかる手続の簡素 化・許認可権を手放す(許認可性から届出制へ)、民営経済の発展、工業化と情報化の融合、 イノベーション企業百強などにおける試行を推進し、発展のボトルネックを解消する。 ウ 産業パークの建設を推進。瀋陽中国-ドイツ・ハイエンド設備製造業園区、大連中日 韓循環経済モデル基地、瀋陽と大連の軍民融合発展モデル園区の建設を加速。長興島石油 化学産業基地の建設を推進。 エ 重大プロジェクトの実施を加速。産業関連度が高く、製品の付加価値が高く、構造調 整の牽引力が強い重点プロジェクトを全力で推進する。ペトロチャイナ石油精製第一期プ ロジェクト、ペトロチャイナ遼陽石油化学の構造調整、中国兵器グループ遼寧華錦石油化 学の改造・拡張、大連恒力石油化学精油一体化、鞍山鋼鉄●(魚偏に發)魚圏第二期改造 などのプロジェクトを推進する。 (2)経済の安定成長を維持 ア 投資構造の最適化。北京-瀋陽旅客専用鉄道、省重点水供給プロジェクト、紅沿河原 発第 2 期、徐大堡原発などの重点プロジェクトの推進を速める。 イ 消費の拡大を成長の基礎とする。情報、住宅、観光リゾート、教育・文化・スポーツ、 介護・健康・家事、エコ消費など 6 つの領域の消費を重点的に推進。 ウ 輸出の増加を安定成長の支えとする。サービス貿易を発展させ、アウトソーシングの 競争力を高める。 エ 企業を安定成長の主体とし、企業の構造調整と科学技術によるイノベーションを支援 する政策措置を制定する。建築業、不動産業、金融業、生活サービス業などにおける「営 改増」の試みを推進する。 (3)重点領域の改革を推進 ア 行政許認可制度の改革を実施。 イ 国有資産・国有企業改革を引き続き深める。 ウ 民営経済の発展支援。 エ 予算管理の改革を深める。 オ 金融改革・イノベーションを推進する。大連商品取引所が、アジアの重要な先物取引 センターとなるよう支援する。 カ 事業単位の分類毎の改革を穏当に推進する。公用車制度も改革。 (4)イノベーションによる発展戦略 ア 企業のイノベーションの主体としての地位を強化する。 イ 地域のイノベーションシステムを改善。瀋陽、大連の国家自主イノベーションモデル 区の建設を勝ち取るとともに、瀋陽・大連ハイテク産業ベルトのイノベーションによる発 展を支援する。中国科学院との協力を強化し、瀋陽材料国家実験室とロボット・インテリ ジェント製造イノベーション研究院を建設する。 ウ 市場における競争、科学技術の畢竟、競争は人材の競争であるので、人材の養成、リ クルートに注力する。 (5)産業のモデルチェンジ・バージョンアップを推進 ア 伝統産業をバージョンアップさせる。情報技術と先進技術を利用して伝統産業を改造 する。デジタル工作機械、発電・送変電設備、石油化学と冶金設備、船舶など優位性があ る産業の拡大、自動車業界の競争力を強化する。 イ 戦略的新興産業の育成。ハイエンド設備製造業の発展。インテリジェント製造、民間 用航空宇宙、海洋エンジニアリング、軌道交通、新エネルギー設備などのハイエンド設備 製造業を重点的に発展させる。ロボット及びインテリジェント・プラントの発展を加速。 電子情報産業の発展に力を入れる。集積回路の設計、チップ製造、重点設備製造業を支援 し、集積回路産業チェーンを次第に完成させる。バイオ技術薬品、化学薬品、漢方薬など 新製品と新製法の開発、産業化の発展に注力する。民間航空産業パークの建設を支援する。 ウ 現代サービス業の発展。電子ビジネスの発展。三農(注)にサービスを提供する総合 プラットフォームを構築。瀋陽、大連の空港一体化・協力を深化させ、北東アジアの航空 の玄関となるハブを形成する。 注)農村・農業・農民を指す エ 観光産業を新たな成長ポイントとする。 (6)農業の現代化と農村改革の発展を促進 ア 農業発展の基礎を確かにし、農業の総合生産力を強める。食糧生産量を 400 億斤(2 千 万トン)前後に安定させる。 イ 農業構造の調整を推進し、現代農業モデルパークと無農薬有機農産品基地を建設する。 ウ 農村の総合改革を深化させる。 エ 県域経済の発展。一県一業を引き続き推進し、農産品をブランド化する。 オ 新しい農村の建設を強化する。農村に続く道路をのべ 4500 キロメートル改修し、村民 のイニシアティブに基づく村の中の道を 4500 キロメートル建設する。3.7 万戸の農民のラ ジオやテレビの視聴問題を解決する。美しい故郷モデル村を 300 建設する。60 万人の貧困 者の収入増を重点的に支援する。 (7)新ラウンドの対外開放を実施 ア 「対外進出(原文:走出去) 」戦略を実施。国の「一帯一路」開放戦略に主体的に関わ り、大連、営口、丹東、錦州、盤錦、葫芦島の港を重要な接点、越境物流を牽引力とする 中国-モンゴル-ロシア経済回廊の建設の推進を速める。鉄道、道路、口岸などインフラ の一体化建設に入れる力を強め、巴新鉄道(注)の建設を推進する。 注)巴彦烏拉(内モンゴル自治区東部)と新邱(遼寧省西部)を結ぶ鉄道。 イ 対外開放のレベルを上げる。大連自由貿易園区を積極的に(国に)申請し、丹東が重 点開発開放試験区を、営口が中韓自由貿易モデル区を設立することを支援する。 ウ 外資利用構造を最適化する。 世界 500 強企業と業界のリーダー企業の誘致を強化する。 エ 地域経済協力を強化する。北京-天津-河北共同発展戦略に積極的に加わる。環渤海 地域協力を絶えず深化させる。 (8)三大エリア発展戦略と新型都市化の推進 ア 沿海経済ベルトの地理的優位性、先に開発を始めた優位性を発揮させ、大連の北東ア ジア国際海運センター、国際物流センター、地域的な金融センターとしての役割を突出さ せ、産業構造最適化のパイロット区、経済・社会発展の先行エリアの建設を速める。金普 新区の建設を実質的に進展させる。 「遼寧-満州里-ヨーロッパ」、 「遼寧-モンゴル-ヨー ロッパ」総合交通輸送大動脈と北極東北航路の建設に積極的に関与する。 イ 瀋陽経済区の新型工業化総合セット改革を深化させる。瀋陽・撫順の一帯化での更な る突破を先導役として、エリアの共同発展を全面的に推進する。 ウ 遼寧西北戦略を全面的に実施する。阜新等の資源型都市のモデルチェンジによる発展 を積極的に促進する。鉄嶺が保税物流センターを建設することを支援する。 エ 積極的かつ安定的に都市化を進める。新型都市化計画を科学的に制定する。 (9)エコ文明建設を強化 ア 碧水プロジェクトを実施する。 イ 青山プロジェクトを実施する。256 万ムー(17 万ヘクタール)の緑化造林、150 万ムー (10 万ヘクタール)の山を封鎖しての育林、90 万ムー(6 万ヘクタール)の草原砂漠化対 策を行う。 ウ 青空プロジェクトを推進する。PM2.5 の濃度を前年比 3%削減させる。 エ 東部山間部におけるエコ機能区の建設を強化する。 (10)民生の改善を重点とする社会建設の強化 ア 10 の重点民生プロジェクトを行い、44 の民生に役立つ実際的な事業を行う。 イ 就職を増加させる。 ウ 分配制度改革を深化させる。 エ バラック地区の改造を重点とする保障住居プロジェクトを引き続き推進し、21 万戸を 新しく増やし、そのうちバラック地区は 19.1 万戸を改築する。 オ 社会保障体系を改善する。 カ 都市・農村の貧困者の基本医療と重病救済制度を健全化させる。 キ 教育を優先的に発展させる戦略を堅持する。 ク 医薬・衛生にかかる体制改革を深化させる。 ケ 文化の建設を全面的に強化する。 コ スポーツ事業を発展させる。 サ 社会管理を強化しイノベーションを図る。 シ 安全の最低ラインを守る。 ス 民族と宗教に関する仕事の管理を強化する。 セ 軍と政府、軍と民衆の団結を強化する。 ソ 「第 13 次五カ年」計画をしっかりと作ることが遼寧省において小康社会を全面的に建 設していくことにとって、極めて重要。 タ 法治による(省)政府、サービスを旨とする(省)政府、信頼できる(省)政府、ク リーンな(省)政府、責任ある(省)政府を作っていくことこそ、各任務の保証となる。
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