【講義Ⅰ】障がい者の権利擁護の実際と求められる支援の視点とガバナンス

障がい者の権利擁護の実際と求められる支援の視点とガバナンス
沖縄県社会福祉士会
竹藤
登
1.人権と権利
人権とは基本的人権ともいい、だれも侵すことのできない絶対的権利のことを言うのに
対して権利とは、個人的なもので契約等によって発生し、権利と義務の相対関係に立つ。
2.福祉基礎構造改革と福祉システムの変革
① ノーマライゼーション理念と財政改革(少子高齢社会)
② 措置制度(行政決定)から契約制度(自己決定権の保障)へ
③ 憲法 25 条の基本的人権の保障~憲法 13 条の個人の権利保障(幸福追求権)
第 25 条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活の権利を有する。
第 13 条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求にたいす
る対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の
国政の上で最大の尊重を必要とする。
④ 幸福追求権の保障~自己実現の支援
3.権利と義務
権利擁護システム
自己決定権という権利に対して利用者に3つの義務が課せられた。
① 自己負担義務
年金
サービスの自己選択と応益負担
助成金 負担限度額 生活保護制度等
② 自己責任義務
自己決定に対する自己責任
成年後見制度 情報公表制度
③ 自己主張義務
重要事項説明
説明責任と自己責任の支援
権利の主張をしなければ権利は保障されない。
苦情解決システム
オンブズマン
4.人権侵害防止(虐待防止法)
①
所得保障と負担軽減
成年後見人 自己主張の保障
生理的欲求と安心・安全の欲求の保障
身体的虐待・・・暴行・傷害・殺人・逮捕・監禁
② 介護放棄・・・・保護責任者遺棄
③ 精神的虐待・・・脅迫・強要・暴行・傷害(PTSD)
④ 性的虐待・・・・強姦・強制わいせつ・強要
⑤ 経済的搾取・・・窃盗・横領・詐欺・恐喝・私文書偽造
5. 権利擁護~ 人格の尊重 所属・愛情・自尊のニーズの保障と自己実現の支援
① 人格の尊重・・・・・・・・・個別として尊重、受容、自己決定の尊重
② 所属・愛情のニーズの保障・・居場所の確保と人間関係の調整
③ 自尊のニーズの保障・・・・・役割・価値の創造と成功体験
④ 自己実現の支援・・・・・・・ニーズの把握・目標設定と環境調整
6.障害者虐待を防止するためのガバナンスとリスクマネジメント
① 周知徹底 虐待とは何かを熟知し、すべての職員・関係者に周知する。
② 要因解析 虐待となる要因を解析し、極力排除する。
ハインリッヒの法則
300 の不用意なサービス提供が 29 の不適切なサービス要因と
なり、それが1つの重大な虐待につながる。
③ 虐待の要因
❶
介護者要因
ⅰ
無関心
虐待防止の周知徹底
ⅱ
介護疲れ
介護負担軽減
ⅲ
人格的要因
自己覚知
ⅳ
専門性の欠如
研修・スキルアップ
ⅴ
知識・技術不足
実務研修・スキルアップ
ⅶ
倫理性の欠如
倫理教育・人間性の向上
ⅷ
モチベーションの低下
職場環境調整 人間関係修復
❷
スーパービジョン
環境要因
ⅰ
密室化
施設開放
ⅱ
人間関係悪化
職場環境の調整
ⅲ
待遇悪化
待遇改善
ⅳ
指導者不足
指導者養成
ⅳ モラルハザード
ⅶ
職場環境の改善
ニーズに合わない支援方法 プランの見直し、徹底
ⅷ 情報不足
情報収集、情報開示
ⅸ
設備改善
建物及び設備の不備
④ 虐待要因の排除とマニュアル作成
❶
環境要因の排除と介護者(職員)の質向上
❷
虐待防止マニュアルの作成
7.権利擁護視点と支援者の役割
① 権利擁護の視点
福祉専門職の価値と倫理
② 虐待対応の視点
ネットワークの構築
③ 権利擁護の視点
自己決定権の保障と自己責任の支援
④ 苦情解決の視点
自己主張の保障と権利獲得
⑤ 幸福追求権の保障
エンパワメント支援
⑥ 自己実現の支援
総合的支援と高度な専門性