構成管理クエストIV 導かれしCIたち~埋もれた

OW02 CMDB で管理するべき IT 資産とは何か
要旨
1.
はじめに
あなたは、他の担当者からシステム運用を引き継いだり、自分の担当ではないシステム
の障害対応を任されたりしたときに、そのシステムの構成情報が把握できなくて困ったこ
とはありませんか?
構成情報が正確に管理されていないと、障害対応の際、必要な情報を探すことに余計な
手間がかかってしまい、対応が遅れてしまう恐れがある。これは、家やオフィスが散らか
っていて、必要なモノを見つけることができず、本来やりたいことができない状況と似て
いる。
ただ、
「モノ」については、棚やクローゼットなど収納すべき場所に片づければ良いが、
構成情報などの目に見えない「情報」はどのように管理すればよいのだろうか。これら「情
報」も同様にそれを保管する場所を決め、いつでも取り出せる状態にしておく事が重要で
ある。IT システムに関しても同様で、それらの構成情報を管理する収納庫こそが、「CMDB」
と言われるものである。
2.
CMDB とは
CMDB(Configuration Management DataBase)とは、IT サービスを構成する資産とその関連
性といった構成情報を、一元的に管理するデータベースのことである。
IT サービスマネジメント、ITIL における構成管理プロセスのコアとなるもので、IT サー
ビスを構成するハードウェア、ソフトウェアといったサービス資産を CI(構成アイテム)と
いう単位で登録し、その関連性及びステータスをデータベースにて管理する。データベー
スにて一元管理することで、システム全体の正確な構成情報を参照でき、障害発生時やシ
ステム変更時などに、その影響範囲をすばやく確実に特定することができる。その結果、
システム運用の品質向上、効率化を図ることができる。
3.
CMDB 導入状況についての仮説
前述のように、CMDB を利用するメリットがあるにも関わらず、このようなデータベース
で一元的に管理している企業は少ないのではないかとの仮説を立てた。なぜなら、当研究
グループのメンバー所属の企業でも、CMDB を導入して一元的に構成管理を実施していると
ころはなく、Excel 等で作った台帳などで管理しているのが現状で、構成情報が点在化して
いるような状況であることが多かった。
そこで、この仮説を裏付けるために、ユーザー会会員を対象に CMDB に関するアンケート
を実施した結果、以下のような理由から導入を見送っている企業が多いことが判明した。

コストが高い(初期コスト、維持管理コスト)

構築、運用可能な人員がいない

構成管理よりも優先すべきシステムがあり、手がまわらない
2014 Beacon Users' Group
OW02 CMDB で管理するべき IT 資産とは何か
要旨
4.
課題についての考察と検証
アンケート結果を基に、CMDB の導入時の課題についてディスカッションを重ねた。
なぜ CMDB を導入している企業が少ないのか、どのように工夫すれば CMDB の導入がスムー
ズに進むのかを議論した。その結果、下記2つの課題を解決しないことには導入が広がら
ないのではないかと考えた。
① 運用設計が困難
② コストメリットが不明瞭
構成管理において、具体的に CI をどのような粒度で管理していくべきかについては、各
担当者が一番頭を悩ますようである。そこで、当研究グループでは、CMDB の運用設計の段
階で、考え方のベースとなるような「CI 管理モデル」を提起することにした。
CMDB の導入を検討するなかで、
各企業がどのようなことを重視するかによって CI の粒度、
範囲が変わると想定される。その目的に応じた「CI 管理モデル」を提起することで、運用
設計が効率化され、CMDB 導入が進みやすくなるのではと考えた。
次にコストの面であるが、市販の CMDB ツールは一般的に高価であり、手が出しづらいも
のである。ただ、CMDB を構築するうえで、情報の自動検出機能等を備えたツールが無いと
CMDB 自体の運用に手を取られ、余計な手間がかかってしまう。そこで当研究グループでは、
オープンソースソフトウェアの「CMDBuild」という構成管理ツールを用いて、CI 管理モデ
ルによる構成情報の可視化について検証を実施した。
5.
提言・まとめ
構成管理の導入には、単に CMDB ツールを導入するだけではなく、自社に則した十分な運
用設計が不可欠と考える。CMDB はあくまで構成管理の目的実現の為の手段であって、それ
自体を構築することが目的ではない。単にツールの導入で終わるのではなく、構成管理の
目的を実現することが重要である。
ただ、運用担当者の業務負荷軽減、効率化だけを目的にしていては、CMDB 導入でコスト
メリットを享受するとは言い難い。昨今の事業継続に不可欠な IT サービスにおいて、その
サービス停止がもたらすビジネスインパクトのリスクを抑制することが真の目的ではない
だろうか。
このようなリスクを分析し安定した運用を実現するためには、IT サービスを提供する上
でリスク要因となる要素すべてを管理対象とすべきである。ハード、ソフトといった「モ
ノ」だけでなく、サービス提供を担う担当者やそのスキルの多寡もリスクとなりえること
から、
「ヒト」とその属性まで管理すべきだと考える。このように、構成管理における CMDB
は、運用現場レベルの効率化、利便性を考えながらも、IT サービス全体の品質向上、リス
クマネジメントまで考えて作り上げていくべきであると提言する。
以上
2014 Beacon Users' Group