情報処理学会第 74 回全国大会 3A-6 システム構成要素依存関係生成方式の提案 大松 史生† 小林 大樹† 1.はじめに IT システムの運用管理や障害監視、障害対応 を実施するにあたって、システム構成情報を CMDB(Configuration Management Database)等で 管理するのが一般的である。システム構成管理 において、サーバ・ネットワーク機器等の構成 要素間の依存関係を管理するためには、各機器 の詳細な構成情報を管理しておくことが必要で ある。しかし大規模な企業等における IT システ ム運用では、ネットワーク管理部門、業務シス テム開発部門、システム運用部門等、複数の組 織に分散してシステム構成管理が実施されてい るため、統合した構成管理が困難である。本稿 では、これら分散したシステム構成情報を統合 してシステム構成要素間の依存関係を管理する ための手法について述べる。 2.背景と課題 2.1.システム構成要素の依存関係 図 1 は、システム構成要素(サーバ)間の依存関 係を、一般的な Web 三階層モデルにおいて示し たものである。 ロードバランスによる冗長化 HTTP Webサーバ#2 HTTP Appサーバ OSクラスタによる冗長化 Appサーバ (ホットスタンバイ) ODBC DBサーバ コールドスタンバイ機 への手動切替 満† 菅野 幹人† 情報技術総合研究所† 三菱電機(株) Webサーバ#1 久保 DBサーバ (コールドスタンバイ) 図 1:システム構成要素の依存関係 図の様に、Web サーバはロードバランスによ る冗長化、アプリケーションサーバは OS クラス タによる冗長化、DB サーバはコールドスタンバ イ(手動切替)など、システムを構成する部位によ って冗長化の手段が異なる。この、冗長化の組 み合わせ・種類と、構成要素間の関係性を、依 A method to generate relationships from system configuration †Fumio Ohmatsu, Taiki Kobayashi, Mitsuru Kubo, Mikihito Kanno Information Technology R&D Center, Mitsubishi Electric Corporation 1-35 存関係と呼ぶこととする。システム障害が発生 した場合に、これらの関連性を把握することは 必須となる。 2.2.ITシステムの構成情報管理の課題 大規模な IT システムにおいてシステム構成情 報管理を行う際、IT システムの構成をスキャン し、CMDB に情報を蓄積する方式(方式①)がある。 ビューア APP 参照 CMDB 構成収集部 実環境 スキャン 登録 依存関係 生成部 図 2:IT 構成のスキャン ま た 、 別 の 方 式 ( 方 式 ② ) と し て 、 CMDBFederation(CMDBf)[1]がある。CMDBf はシステム の 構 成 情 報 を 保 存 す る MDR(Management Data Repositories)と呼ばれるデータリポジトリのデ ータを仮想的に統合するための、標準規格を規 定したものである。 しかし、これらのシステム構成管理手法を大 規模な企業内システムに適用しようとした場合、 以下の課題がある。 本番システムへの構成スキャン 本番システムに対して構成スキャンをする ためには、各種通信プロトコルのポートを 開放する必要がある。通常はセキュリティ 対策のため、必要外のポートは閉鎖されて いる。 冗長化構成の特定 本番システムに対する構成スキャンを中心 とした構成管理では、構成要素間の冗長関 係を自動的に判別することは困難である。 構成データの運用管理 各種構成データは、業務システムの所管部 門毎に管理されていたり、ネットワークに 関しては独立して専門組織で管理されてい たりするなど、情報の一覧性は低く、これ らを統一して管理することは困難である。 Copyright 2012 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved. 情報処理学会第 74 回全国大会 3.2.システム構成 図 5 に当該方式を実現するためのシステム構 上記課題に対して、各組織間の情報を統合し、 成を示す。 情報を可視化する手段を提案する。 業務システム ネットワーク システム 3.1.システム設計情報の利用 開発/保守部門 管理部門 運用部門 IT システムの設計情報を利用してシステムの 依存関係を自動生成することを考える。本番シ 構成管理システム ④ 可視化機能 ステムからシステムの構成情報を収集すること ③ は困難でも、システムの設計情報のうち、スプ データ 各種ビュー 分析エンジン レッドシート等で定型化されたドキュメントに データ ② 統合 必要な情報が記載されているので、これを利用 エンジン ① 統合管理 する。 DB 例えば、システム設計情報の中には、図 3 の 様な CFIA(Component Failure Impact Analysis)分析 ネットワーク ・・・ 表[2]や、図 4 の様なパラメータシート(導入ソフ 構成情報 ネットワーク 業務システムA 業務システムB トウェア一覧)が存在している。これらの特性を 設計文書 設計文書 設計文書 利用する。 業務システムXXX CFIA分析表 図 5:構成管理システムの例 CI AAA機能 BBB機能 ・・・ 障害検知方法 取得するデータの場所とフォーマットは①の Webサーバ#1-1 L L S, P Webサーバ#1-2 L L S, P 統合管理 DB に保管しておき、②のデータ統合エ Appサーバ#1 F S, P ンジンが、DB やスプレッドシート等形式の異な DBサーバ#1 F F S, P るデータを取得する。取得したデータは③のデ Appサーバ#1(代替) P ータ分析エンジンに渡し、データ分析エンジン DBサーバ#1(代替) P Appサーバ#2 M S, P では、3.1 で述べた様な手段で依存関係を生成す Appサーバ#2(代替) P る。生成したデータは、②のデータ統合エンジ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ンが④の可視化機能に渡し、異なる部門で同一 図 3:CFIA 分析表 のビュー(システム構成要素の依存関係を可視化 する GUI)を参照可能とする。 ソフトウェア OS M/W サーバ名称 この手法では、既に管理されているシステム BBB XXX YYY AAA CCC ・・・ 6.1.1 6.1.0 1.5.1.1 9.5.0 9.5.1 6.1.0 ・・・ 構成情報に基づいてデータ統合を行うアーキテ Webサーバ ・・・ ○ ○ ○ #1-1 クチャを持つので、導入後も各部門における構 Appサーバ ・・・ ○ ○ #1 Appサーバ 成情報の管理が変わらないという利点がある。 ・・・ ○ ○ 3.システム構成要素の依存関係生成方式 構成情報 #2 DBサーバ #1 Appサーバ #1(代替) DBサーバ #1(代替) Webサーバ #1-2 ・ ・ ○ ○ ○ ○ ・・・ ○ ○ ・ ・ ・・・ ○ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・・ ○ ○ ・ ・ ・ ・ ・・・ 図 4:パラメータシート(導入ソフトウェア一覧) 例えば、図 3 の CFIA 分析表は、SPOF(Single Point of Failure:単一障害点)を検出するための手 段であるため、各システム構成要素の冗長化有 無と冗長化の種類は判別可能であるという特性 がある。一方でどの機器と組み合わせて冗長構 成となっているかの情報は持っていない。また、 図 4 の様なパラメータシートでは、各システム 構成要素に対する導入ソフトウェア(ファームウ ェア)の情報は判別できるが、冗長化に関する情 報は持っていないという特性がある。 これらの複数のシステム設計情報の特性から 自動的にシステム依存関係を生成する。 1-36 4.おわりに 本稿では、システム設計情報を利用してシス テム構成要素の依存関係を自動生成する方式を 提案した。本方式により、大規模な CMDB を構 築できなかったり、本番システムをスキャンで きなかったりするケースにおいても、有効なシ ステム依存関係の自動生成を実施することがで きる。今後は、本システムのプロトタイプシス テムを構築し、有効性、実装性、性能等の評価 を実施していく予定である。 [参考文献] [1]CMDBf Specification DSP0252 Version 1.0.1, http://www.dmtf.org/sites/default/files/standards/docu ments/DSP0252_1.0.1_0.pdf [2]ITIL サービスデザイン(IT Infrastructure Library), Office of Government Commerce, The Stationery Office, 2008 Copyright 2012 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved.
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