ひまわり新通信 6号 子宮/卵巣がんの早期発見と予防について 卵巣がんって予防できるの? 友達が(知人が)がんになったので私も調べて欲しいと その3.更年期症状などでホルモン補充療法(HRT) 受診する患者さんが増えています。 生活様式の変化に伴い、 をする場合は、子宮体がんの予防のために黄体ホルモンを 若年者の子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんが増加しつつ 併用します。そうすることで、HRTをしない人よりも体 あります。治療の進歩に伴い、がんも長く付き合う病気に がんのリスクは減ります。 なりました。今回はそれらの早期発見と予防について考え 卵巣がん てみましょう。 若年者の子宮頸がん 子宮頸がんの原因は、発がん性のある高リスク型HPV (ヒトパピローマウイルス)です。子宮頸がんは初期には 症状が出ないので、早期発見のために年 1 回は子宮頸がん 検診を受けましょう。 【予防】HPVワクチンで 16 型と 18 型のHPV感染を予 防することが可能です。20 代の子宮頸がんの 90%がこの 2 種類のウイルスが原因といわれています。 早期発見が難しく、進行するまで症状が出ないので 「沈黙のがん」とも言われます。超音波検査の有効性は証 明されていませんが、年 1 回の超音波検査で偶然にも早期 の卵巣がんが見つかる方がいます。当院でも数例ですがそ のような経験があります。 【原因】主原因は排卵です。排卵により卵巣はダメージを 受け、 損傷と修復を繰り返すことでリスクが高くなります。 【予防】無駄な排卵を起こさないことです。低用量ピルを 10 年以上服用すると卵巣がんを 80%減らせます。 卵巣がん の予防はピルの最も重要な健康上の利点だと考えられてい 子宮体がん(子宮内膜がん) ます。卵巣がんの予防のためにピルを飲んでいる方もいま 初期でも不正出血や褐色おりものなどの症状がありま す。ピルの副作用を心配する方もいるでしょうが、ピル服 す。子宮体がん検査(内膜細胞診)に超音波検査を併用す 用で全死亡率、全がん罹患率は減少します(2枚目の表を る(内膜の厚さをみる)ことで早期発見が可能です。 ご参照ください)。 【原因】卵巣から分泌される女性ホルモンには、卵胞ホル 漢方マメ知識 補中益気湯 モン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン) 父(79 歳)が 12 月にがんの手術を受けました。今では車 があります。子宮体がんの多くはエストロゲンが関係して も運転するし、生活に支障はないようですが、体が疲れる います。エストロゲンには子宮内膜を発育(増殖)させる せいかよく眠ります。体力回復に補中益気湯を処方しまし 作用があるからです(逆に黄体ホルモンは内膜を薄くしま た。消化吸収機能をよくして、元気をつける漢方です。病 す)。 後、術後の疲労や体力低下、夏バテなどに効きます。免疫 【予防】その1. 低用量ピルを飲むと内膜が薄くなります。 力を高める効果もあるようです。また、中に入っている「升 1 年の服用で子宮体がん発症が 50%減ります。長期服用で 80%減り、その効果は服用中止後 20 年間続きます。 その2.エストロゲンは脂肪でも産生されます。肥満の方 は子宮体がんになりやすいので体重を減らしましょう。 麻」という薬草には下がったものを引き上げる作用がある ので、子宮下垂(それによる尿漏れ)や気持ちの落ち込み にも効く場合があります。 2015 年1月 植田 啓 低用量ピルで全死亡率は 12%減少 全がん罹患率は 15%減少 低用量ピル服用者と非服用者の各疾患による死亡の相対危険度 (相対危険度 1.00 未満は減少する疾患です) 死因 相対危険度 全死亡率 0.88 全がん 0.85 大腸および直腸がん 0.62 胆嚢および肝臓がん 0.65 肺がん 1.22 メラノーマ 0.73 乳がん 0.90 浸潤性子宮がん 1.34 子宮体がん(内膜がん) 0.43 卵巣がん 0.53 主な婦人科がんの合計 (子宮頸がん,子宮体がん,乳がん) 0.63 中枢神経および下垂体のがん 0.84 部位不明のがん 0.88 その他のがん(上記がん以外) 0.83 全循環器疾患 0.86 虚血性心疾患 0.75 その他の心疾患 0.85 脳血管疾患 1.05 その他の循環器疾患 0.94 全消化器疾患 0.95 肝疾患 1.32 暴力による死亡 1.49 自殺 1.26 その他の疾患 0.84 参考文献:思春期学 VOL.32 NO.4
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