アジア市場経済学会 第 19 回全国大会 統一論題及び趣意書 アジア新興市場の多様性と可能性 ~ ポストチャイナを睨んだ日本企業の新たなる挑戦 ~ 現在アジアは、文化に宗教、政治や制度の違いなど国境の違いを乗り越えて多様性が統合さ れるように経済圏が形成されつつある。 日系企業を含む多くのグローバル企業が、安価で豊富な労働力の確保、巨大な市場への接近 を念頭に、中国市場へと進出していったが、チャイナリスクや賃金の上昇傾向の影響などを受 け、近年では、他のアジア新興市場への機能移転の動きも現れ始めている。縫製産業など労働 集約的な産業においては中国における生産から、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、ラオス など東南アジアにおけるメコン流域に位置づけられる地域へ、インド市場の周縁においてはバ ングラディシュなど南アジアに位置づけられる地域への機能の移転が進んでいる。これに対し 自動車産業など資本集約的な産業においては、地域市場ごとの多様な成長と連動した日系自動 車メーカーをはじめとして、韓国や中国メーカーの機能の展開・移転が進められている。少子 高齢化が進行する日本国内の市場にとって、日本企業が今後とも持続的な成長を維持させ続け ていくためには、グローバル化、すなわち経営資源のグローバル展開・移転は避けては通るこ とのできない重要な課題と位置づけられる。 そこで本大会ではアジア経済圏内に位置づけられた地域間における経営資源ネットワークの 再構築、地域ごとの市場特性にあった製品・サービス開発にともなう経営戦略の転換という見 地より議論が必要ではないかとの認識に立ち、提案に至った次第である。ここにあらためて第 19 回全国大会を青森大学にて開催するにあたり、統一論題として「アジア新興市場の多様性と 可能性 ~ポストチャイナを睨んだ日本企業の新たなる挑戦~」を提案するものである。 そこには、以下の論点が含まれる。 ① 多様性に満ちたアジア新興市場は、生産拠点としても市場としてもいまだ完成を見るに は至ってはいない。しかしながら地域としての統合化が進むにつれ、企業にとっては地 域資源の集積が見込め、かつ地域戦略にもとづいた事業競争の展開も可能になる。そこ で企業の規模、業種を問わず、日本企業がどのようにアジア市場を捉え、どのような戦 略展開をみせているのか、また、それを阻害する要因としてどのようなものがあり、ど のような対応が行われるべきかについて、積極的な議論をお願いする。 ② アジア地域の多様性を統合するキーワードとして“ASEAN”などグローバルガバナンス を通じた問題解決の試み、 “クラスター化”などネットワーク化を通じた地域資源の最適 化への試み、 “モジュラー化”などコモディティ化の進行と直結する効率的生産の追求の ための試みなど、多角的な取り組みを通じたアジア新興市場への接近が図られている。 アジア新興国に対して大型の援助や投資などが日々報じられる中にあって、その地域ご との特性に合った価値創造や問題解決、および日本国内への成果の還流を視野に入れた アジア新興国の可能性についての議論に期待する。 本統一論題のもとでのテーマは、多様な学際的な分野からのアプローチも可能な内容を含ん でいる。会員各位の統一論題及び自由論題への活発な応募を期待するともに、既存理論の更な る検証を進めながら、相互に刺激し合うことで、学会及び学会員の研究水準が一層向上し、学 会全体の国際化が図られることを期待する。 以上
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