中小企業論第 5 回 平成 27 年 5 月 8 日 海外の中小企業 1.海外の中小企業への関心 ▶世界で共有される中小企業問題 中小企業は、経済政策、産業政策、雇用政策の重要な対象であり、中小企業政策をもた ない国はない。中小企業問題は世界共通の課題であり、中小企業政策は、世界共通の関心 である。 ▶日本における海外中小企業への関心 ①日本の中小企業の現状への問題意識による国際比較。 ②経済発展や開発経済学からみた新興国や途上国における中小企業への関心。 ③日本企業の海外展開が増え、進出先、調達先、競合先として海外の中小企業との接触が 増えたことによる関心。 ▶イタリアへの関心と現状 イタリアの産業集積地域には、現在においても重要な輸出産業地域として国際競争力を 保持している地域が存在している。日本のかつての日用品輸出産地の多くが国際競争力を 失っている現在こそ、本来はこうしたイタリアの事例から学ぶことが多いと言える。 2.地域によって異なる中小企業の定義 ▶中小企業の定義 OECD は、 「中小企業について単一の定義ないし、従業者数が唯一の定義の基準である必要 はない。しかしながら、一般的に中小企業は、所定の企業者数よりも少ない従業者を雇っ ており、子会社ではなく、独立の企業と考えられている。この数字は国によって異なる。 ・・・」 としていた。 ▶ヨーロッパ、アメリカ、中国の定義 ①日本が従業者数、資本金額という規模のみを指標としているのに対し、ヨーロッパでは 大企業との資本関係の有無による独立性が重視され、アメリカでは市場の寡占状態によっ て産業分野ごとに中小企業の範囲が異なっている。アメリカでは、寡占度の高い産業分野 であれば、市場競争の活性化を促進させるため、中小企業の上限が上方に修正される。市 場競争を活性化させる担い手として中小企業を位置付けており、そうした考え方が中小企 業の基準にもあらわれている。 ②従業者規模をみるとその上限が地域によって異なっており、とくに中国における中小企 1 業の上限規模が日本などと比べるとはるかに大きい。 ③小規模企業について EU では、小規模(従業員 10~49 人)、マイクロ企業(10 人未満) と区別されており、またそれとは別に EU 内部の国によって「クラフト産業(企業)」という 規定がある。 3.タイの中小企業 ▶タイの中小企業 タイの中小企業と聞くと、日本のそれと比べて技術や管理レベルが相当に遅れていると いうイメージはないだろうが、タイの中小企業のなかには、相当に高い技術レベルを保有 する企業も少なくない。 ▶タイにおける中小企業の定義 タイにおける中小企業は、従業員数と土地を除く固定資産額によって、業種別に定義さ れている。ただ日本のように中小企業の定義のなかに小規模事業者が含まれているのでは なく、タイでは中小企業と小企業は明確に区分される。 従業員と固定資産額のうち、どちから一方が小企業に分類される場合には、どちらかが 中企業の規定内であるものとしても、それは小企業とみなされる。つまり、従業員数およ び固定資産額の両方が中企業の規定内でないと、中企業とはみなされない。 ▶中小企業の実体―日系企業の 2 次サプライヤ タイでは、日本的な生産システムや管理方式、とくにトヨタ生産方式や 3C・5S などを 積極的に導入し、生産性向上を意欲的に図る点にある。自動車産業に関していえば、これ まで日系の中小企業が取引していると思われた 1 次部品メーカーのサプライヤである 2 次 部品メーカーは、タイのローカル中小企業が供給するレベルにまで至っている。 ▶ASEAN ビジネスの展開 タイの ASEAN への強みは、国境周辺地域にアクセスがしやすいばかりでなく、文化・ 慣習などが近いことなどもあって、国境にまたがったクロスボーダー的な事業が展開しや すい点にある。 タイは、こうした ASEAN の強みを生かした事業展開を行うローカル中小企業が存在す る。 2
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