情報処理学会第 75 回全国大会 3S-6 遺伝的アルゴリズムを用いた 対話型時間割編成システムの開発 濱崎 拓† 筑波大学 情報学群情報科学類† 狩野 均‡ 筑波大学 システム情報系‡ 1 はじめに 時間割編成問題[1]とは、開設される科目が実施 される学年および時限を決定する問題である。時 間割編成問題を解くためにはカリキュラムに対 する専門的な知識が必要であり、その多くは計算 機内で表現しにくい。 従来、研究開発されてきた時間割編成システム [2]は、GUIを通して時間割の修正ができるが、修 正に時間がかかりすぎるという問題があった。 そこで本研究では、探索の途中でユーザが介入 することにより探索効率を上げ、さらに、GUIの機 能を改良することにより、修正時間の短縮を図っ た。 問題点2. 編成をすべて計算機に任せてしまうと、 ユーザの希望が反映されにくい。 対策1. ユーザによる科目配置の固定を行うことで、 探索範囲を狭める。 対策2. 科目配置の修正・固定をユーザに任せるこ とで、よりユーザの好みに近い時間割の作成 を可能にする。 3 提案システム 3.1 処理手順 提案するシステムの処理手順を以下に示す。 Step1. 科目データを入力 Step2. 初期集団生成 Step3. 世代ループ 1) 評価・交叉・突然変異・エリート保存 2) 指定世代でユーザによる科目固定・修正 Step4. ユーザによる科目配置の修正 Step5. 時間割を出力 2 研究概要 2.1 対象とする問題 本研究では実例として平成25年度以降の筑波大 学情報学群情報科学類の時間割編成問題を扱う。 この学類は4学年3専攻2学期からなり、各学期は前 半と後半の2つのモジュールに分かれている。この ため、①1年生、②2年生、③専攻A・3,4年、④専 攻B・3,4年、⑤専攻C・3,4年の5種類の学年・専攻 をそれぞれ各学期とも前半・後半の2モジュールに 分割した計20種類の時間割を同時に編成する必要 がある。 本研究における制約条件(全10制約)の例を表1に 示す。各制約条件には、その制約の強弱に応じて 制約違反点数を設定してある。 3.2 コード化 図1のように遺伝子座を「科目ID」、遺伝子を「そ の科目が実施される時限」とする。2時限以上にわ たって実施される科目は、遺伝子座を必要数用意 する。 表 1 制約条件の例 制約条件 特定の曜日に集中して科目を割り当 てない ある学年の必修科目と別の学年の必 修科目を同時間帯に割り当てない 履修順序の通りに科目を割り当てな ければならない 違反点数 2点 図 1 コード化 10点 20点 2.2 問題点と対策 以下に問題点と対策を示す。 問題点1. 探索空間が膨大であるために、通常の厳 密解法では対処しきれない。また、通常の近 似解法のみだと、収束に時間がかかりすぎる。 Development of Interactive System for Constructing Timetables Using Genetic Algorithm †Taku Hamasaki †College of Information Sciences, University of Tsukuba ‡Hitoshi Kanoh ‡Faculty of Engineering, Information and Systems, University of Tsukuba 2-365 3.3 対話型インタフェースによる科目配置の固定 と修正 本システムでは探索前、探索中、探索後の任意 のタイミングにおいて、簡単なマウス操作のみで 時間割内の科目配置を固定・修正することができ る。固定した科目配置は集団中の全ての個体に適 用され、その部分は以後、探索の対象から除外さ れる。ただし、科目修正に関しては表示している 個体のみの変更で、集団中には影響しない。時間 割内の科目にマウスを乗せることで、その科目が どの制約に違反しているか表示できるので、それ を見ながら修正することになる。その様子を図3に 示す。時間割内の「プログラミング入門Ⅱ」にマ ウスを乗せると、左下に違反情報が表示される。 Copyright 2013 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved. 情報処理学会第 75 回全国大会 4 評価実験 3.1節の処理手順からユーザによる修正を除いた ものに対して、探索途中における科目固定の有効 性を確認するため、科目固定を行わなかった場合 との比較実験を行った。科目固定は500世代ごとに、 違反点数0点の科目の中で他科目に影響を及ぼさ ないと考えられるものを固定した。また5000世代 を超えたところで、それまで固定していた全ての 科目の固定を外し、残りの探索を行った。科目の 固定回数は1試行あたり130回前後で、固定解除を 含めると260回程度になった。以下に示すデータは 30試行の結果である。 実験結果を図2と表2に示す。図2より、探索途中 に科目固定を行った方が、固定を行わない方より 収束が早いことがわかる。また、表2より、今回探 索を行った時間割は手動のものに比べ大きく改善 が見られた。科目固定ありの場合となしの場合を 比較すると、固定を行った方が良い結果が得られ た。これらより、科目固定機能の有効性が確認で きる。 また、上記の固定ありの時間割において、探索 終了後、GUI上で科目配置の修正を行った。その結 果、違反点数の最小値は4点まで減少した。修正に かかった時間も4.5分だった。なお、この時間割で 違反していた制約は「6限に科目を割り当てない(1 点)」が4つであった。 機能により、よりユーザの好みに近い時間割への 修正を可能にした。今後の課題としては、探索時 間の短縮ならびに探索途中における科目修正の結 果を集団中へ反映することなどが挙げられる。 参考文献 [1] Rhydian Lewis, survey of metaheuristic-based techniques for University Timetabling problems, OR Spectrum, Vol.30, No.1, pp.167-190 (2008). [2] 坂元, 狩野, 知識に基づく遺伝的アルゴリズムを用 いた対話型時間割編成システムの開発, 情報処理学 会 第65回全国大会 3K-1 (2003.3). 図 2 各世代における違反点数 表 2 比較実験結果 手法 手動 固定なし 固定あり 修正後 5 おわりに 科目固定機能による時間割編成システムを提案 し、その有効性を示した。また、科目配置の修正 最小値 153 9 6 4 違反点数 平均値 26.7 13.7 - 標準偏差 15.3 7.0 - 図 3 ユーザとの対話画面 2-366 Copyright 2013 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved.
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