税金読本(5-4)上場株式等の配当等の源泉徴収口座への受入れ

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特定口座での取得費・譲渡損益の計算方法
● 特定口座
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上場株式等の配当等の源泉徴収口座への受入れ
特定口座における取得費や譲渡損益の計算方法等は、基本的に、通常の株
式等の取引と同様ですが、
いくつかの点で特定口座特有の取扱いとなります。
源泉徴収口座に設定される特定上場株
源 泉 徴 収 口 座 に 上 場 株 式 の 配 当、
同じ銘柄の取得費は、別々の口座で取引していても合算し、総平均法また
式配当等勘定において上場株式等の配当
ETF・REITの分配金を受け入れるため
は総平均法に準ずる方法で計算するのが原則です。しかし、特定口座内の上
金や公募株式投資信託の収益分配金を受
には、所定の手続きが必要となります。
場株式等については、同じ銘柄を他の特定口座や一般口座で保有している場
け入れることができます。ただし、大口
一方、源泉徴収口座内で保有している
合でも、これらとは区分して計算されます。
株主が受ける配当金については、源泉徴
国内公募株式投資信託の普通分配金や株
収口座に受け入れることができません。
式ミニ投資の配当金などは、特段の手続
◆総平均法に準ずる方法で計算
源泉徴収口座を開設している投資家で
なしに、源泉徴収口座に受け入れられま
特定口座内で同一銘柄を2回以上にわたって取得した場合、取得費は「総
あれば、同一の証券会社の営業所の一般
す。
平均法に準ずる方法」で計算します。取得費には購入の際にかかった手数料
口座で管理されている上場株式等に係る
なお、証券会社により取扱いが異なる
配当金や公募株式投資信託の分配金につ
場合がありますので、くわしくは証券会
いても、原則として、源泉徴収口座に受
社にお問い合わせください。
◆他の証券会社などの特定口座から移管した上場株式等の取得費
け入れることができます。
(消費税含む)
、名義書換料等を含めます。
譲渡原価の計算の基となる取得費は、移管元の特定口座の移管日における
取得費を引き継ぎます。取得日は移管元の特定口座での移管前の譲渡実績に
基づき、先入先出法により判定した取得日を引き継ぎます。
◆特定口座で同じ銘柄を1日に2回以上譲渡した場合
同一銘柄を1日に2回以上譲渡した場合には、その日に譲渡した株式等の
すべてを、その日の最後の譲渡の時にまとめて譲渡したものとして取り扱い
ます。
特定口座
◆特定口座での取得費は別計算
●配当金・分配金の源泉徴収口座での受け取り
源泉徴収口座での受け取り
国内上場株式の配当金
(ETF・REITの分配金を含む)
手続きをした場合○(※1)
国内公募株式投資信託の普通分配金
外国公募株式投資信託の分配金
○
株式ミニ投資・るいとう・外国株式(※2)の配当金
○
※1 配当金の受取方法について株式数比例配分方式を選択する必要があります。
※2 国内上場外国株式を含みます。
配当等を源泉徴収口座に受け入れるための手続き
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上場株式等の配当等(ETF・REITの
とする上場株式等の配当等の支払確定日
分配金を含みます。詳しくは上記図表を
までに提出しなければなりません。
参照)を源泉徴収口座に受け入れるため
また、配当金の受取方法について、株
には、投資家は、まず、証券会社などと
式数比例配分方式を選択します。
の間で、上場株式配当等受領委任契約を
株式数比例配分方式とは、上場株式の
締結し、源泉徴収選択口座内配当等受入
配当金を、証券会社の取引口座の株式数
開始届出書を提出する必要があります。
(配当基準日現在の株式数)に応じて、
この源泉徴収選択口座内配当等受入開
証券会社を通じて受け取る方法です。
始届出書は、源泉徴収口座に受入れよう
この方式を選択した場合は、保有する
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国内上場株式の配当金はすべてこの方式
したがって、この方式を選択するため
で受け取ることになります。
には、特別口座に預けている上場株式を
ただし、保有する上場株式の一部を特
証券会社の取引口座に振り替え、特別口
別口座
座を閉鎖する手続き等を行う必要があり
(注)
に預けている場合には、この
方式を選択することはできません。
特定口座と確定申告
5
● 特定口座
−5
ます。
配当等の受け入れをやめるための手続き
源泉徴収口座と確定申告
ただし、上場株式等の銘柄ごとに配当
当等(ETF・REITの分配金を含みます。
等について源泉徴収口座へ受け入れる、
源泉徴収口座の場合、特定口座内の譲
るか否かは、1つの特定口座ごとに選択
くわしくは前ページ図表を参照)の受入
あるいは、受け入れないかを選択するこ
渡益については、確定申告は不要です。
することができます。
れをやめたい場合には、証券会社に対し
とはできません。
つまり、投資家が特定口座内の取引を確
ただし、源泉徴収口座の場合でも、次
て源泉徴収選択口座内配当等受入終了届
なお、「源泉徴収選択口座内配当等受
定申告しなければ、源泉徴収だけで納税
のケースでは、確定申告を行う必要があ
出書を提出する必要があります。
入終了届出書」を証券会社に提出した場
が完了するわけです。いくつかの証券会
ります(特定口座を利用している場合の
終了届出書の提出日以後に支払いが確
合でも、特定口座を廃止しない限り、当
社等に特定口座を開設している場合、源
確定申告については、次の「簡易申告口座
定する上場株式の配当金や公募株式投資
該特定口座における上場株式等の譲渡所
泉徴収口座内の取引について確定申告す
と確定申告」の項を参照してください)。
信託の収益分配金から、受入れをやめる
得等の計算は引き続き行えます。
ことができます。
この点についても、証券会社などによ
したがって、終了届出書の提出前に支
って取扱いが異なる場合がありますの
払が確定した上場株式等の配当等につい
で、くわしくは証券会社にお問い合わせ
ては、源泉徴収口座で受け入れることに
ください。
特定口座
源泉徴収口座において上場株式等の配
①源泉徴収口座の譲渡益を他の口座の譲渡損と通算する場合
②源泉徴収口座の譲渡損を他の口座の譲渡益や上場株式等の配当等と通
算する場合
③源泉徴収口座の譲渡損を他の口座の譲渡益や上場株式等の配当等と通
算した後、なお残る損失を翌年に繰り越す場合
なります。
④前年以前から繰り越された譲渡損を控除する場合
上場株式等の譲渡損失と上場株式等の配当等との損益通算
源泉徴収口座に配当が受け入れられている場合
源泉徴収口座において上場株式等の譲
損益通算は、年末時点で譲渡損益が確
渡損失がある場合には、上場株式等の配
定した後に行われます。年の中途に、上
源泉徴収口座に配当が受け入れられて
マイナスの場合、すなわち譲渡損が発生
当等との損益通算が行われます。投資家
場株式等の配当金の受入れを終了した場
いる場合、特定口座年間取引報告書には
している場合は、その譲渡損について確
は原則として確定申告を行わなくても、
合も、同様に年末時点の譲渡損益確定後
譲渡損益と配当の両方が記載されていま
定申告するならば、必ず配当についても
証券会社が損益通算を適用して納税額の
に行われます。
す。確定申告の際には原則として譲渡益
申告しなければなりません。
と配当それぞれについて、確定申告する
これは、源泉徴収口座内で既に譲渡損
か申告不要とするかを選ぶことができま
と配当の損益通算が行われているため、
す。
配当について源泉徴収が行われていない
ただし、源泉徴収口座内の譲渡損益が
場合があるからです。
計算および納付を行います。
●源泉徴収口座に配当を受け入れた場合の確定申告の有無の組合せ
譲渡損益がプラスの場合
(注)特別口座は、株券電子化の際に、ほふり(証
券保管振替機構)に預託されていない株式の
権利を保全するために信託銀行などに開設さ
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れた口座です。特別口座に入っている株式は
そのままでは譲渡できず、証券会社などの取
引口座に移す手続きが必要です。
譲渡益
申告する
申告しない
申告する
○
○
配当
譲渡損益がマイナスの場合
申告しない
○
申告する
譲渡損
○
申告しない
申告する
○
○
配当
申告しない
×
○
○…この組み合わせの申告が可能、×…この組み合わせの申告は不可
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