高精細インプリント用 PDMS モールドの作製 山田 千紘(7419) 指導教員

高精細インプリント用 PDMS モールドの作製
山田 千紘(7419)
指導教員:清原 修二 准教授
1.はじめに
室温インプリントにおいて,凸形状 GLC モールドによりイン
プリントを行うと最終的な形状は凹形状になる。これでは,フ
ラットパネルディスプレイ用ナノエミッタなどの凸形状の加工
に応用できない 1)。そこで,凹形状の PDMS モールドを提案し
た。そのため本実験では,室温インプリントにおいて用いる
PDMS(Polydimethylsiloxane)モールドにおける重要なパラ
メータであるゴム硬度について検討した。ゴム硬度は,一次硬
化や二次硬化の際に変化し,その加熱温度や加熱時間,硬化時
間によるゴム硬度の変化について検討した。
2.実験方法および装置
図 1 が PDMS モールド作製方法である。
(a)~(c)において,
主剤である KE-106(信越化学工業㈱)と硬化剤である CAT-RG
(信越化学工業㈱)10:1 の重量比で 10 分間,混ぜあわせる。
(d)
において,5 µm 径ドットパターンの凸形状 GLC マスターモー
ルドをモールド用の型に入れ,それに(c)の溶液を入れる。そ
して,
(f)において,それを脱法装置に入れて一次硬化が完了
する。
次に,
PDMS モールドをGLC マスターモールドから離し,
電気炉で加熱すれば二次硬化が完了である。以上により,GLC
マスターモールドと逆の凹形状 PDMS モールドが作製できる。
(a)
Prepare
main component [KE-106]
and curing agent [CAT-RG]
at the mass ratio of 10 to 1
(e)
Mix main component
and curing agent
(f)
Pour PDMS
into mold holder
図 2 二次硬化加熱時間におけるゴム硬度の変化
図 2 より,75 ℃で 15 min 加熱したときにゴム硬度が目標値の
60 に最も近い 58 なり,それ以降ゴム硬度は一定値となった。
したがって,75 ℃,15 min ときを PDMS モールド作製の適切
な条件とした。
,
Y
X
,
GLC
(b)
5µm
5µm
Degas with vacuum
degassing apparatus
and room temperature cure
,
,
GLC
(c)
Agitate PDMS
with spatula
(g)
GLC
Mold
holder
(a)GLC マスターモールド
(b)PDMS モールド
図 3 本研究で作製したモールドの SEM 像とその断面プロファイル
GLC
(d)
Put Convex GLC master
mold into mold holder
Y
X
Release PDMS
from mold holder
(h)
Heat PDMS
with electric furnace
図 3 より,高精細な凹形状 PDMS モールドが作製できた。
[BMINI-1,NITTO KAGAKUCO,Ltd]
(i)
Concave PDMS mold
図 1 本研究で開発した PDMS モールドの作製方法
以上により作製された PDMS モールドの一次硬化の時間とゴム
硬度の関係や二次硬化の加熱温度,加熱時間とゴム硬度につい
て検討した。
3.実験結果および考察
図 1 の(a)~(e)の工程まで行い,
(f)の工程を一次硬化
という。その一次硬化の時間によりゴム硬度がどのように変化
するかを検討した。12 h においては,全く硬化せず液体のまま
であった。24 h における PDMS モールドは少し粘性が残ってお
り,離型性が悪かった。その後,徐々にゴム硬度が増加し,36 h
経過後ゴム硬度が 35 になりその後,時間が経過してもゴム硬度
は変化せず 35 で一定値になった。
次に,図 1 の(h)における二次硬化の加熱温度,加熱時間と
ゴム硬度の関係について図 2 に示した。二次硬化加熱温度を 45,
60,75,85,100,125,150 ℃と変化させ,また,それに対す
る加熱時間も 5,10,15,20,25,30 min と 5 min 刻みで変化さ
せゴム硬度の変化について検討した。
4.おわりに
室温インプリントに用いる PDMS モールドの重要なゴム硬度
についての一次硬化や二次硬化の時の変化について検討した。
一次硬化では,ゴム硬度が 35 で一定になった。75 ℃,15 min
においてゴム硬度が目標値である 60 に最も近く,高精細な
PDMS モールドが作製できたので,これを RTC-NIL に用いるこ
とにより,凸形状の DLC ドットパターンを形成する。
5.新規性・特許性
新規性は高精細凹形状 PDMS モールドを室温ナノインプリン
トに用いることである。特許性は,高精細凹形状 PDMS モール
ドを用いて室温ナノインプリントにより凸形状機能性ナノデバ
イスを作製することである。
参考文献
1)清原修二,石川一平,松田将平:コンバーティック,Vol. 42
No. 3,pp.36-40(2014)
謝辞
本研究の一部は,日本学術振興会 科学研究費 基盤研究(A)
および豊橋技術科学大学高専連携教育研究プロジェクトにより
行われたことを付記する。