室温インプリント用凹形状 PDMS マイクロギヤモールドの作製

室温インプリント用凹形状 PDMS マイクロギヤモールドの作製
婦木 陽介(7407)
指導教員:清原 修二 准教授
1.はじめに
ナノインプリントリソグラフィによる医療用 MEMS(Micro
Electron Mechanical System)用マイクロギヤの作製は,高スルー
プット,低コストで大量生産できるため,非常に効率的である 1)。
これまで室温硬化ナノインプリントリソグラフィ
(Room-temperature Curing Nanoimprint Lithography:RTC-NIL)で
ギヤ形状のパターンを作製してきたが,ギヤのパラメータが曖昧
であった。そこで,これらのギヤのパラメータを計算し,設計し
たガラス状炭素(Glass-like carbon:GLC)マイクロギヤマスター
モ ー ル ド を 作 製 し , そ れ を 用 い た 凹 形 状 PDMS
(Polydimethylsioxane)マイクロギヤモールドを作製した。
2.実験方法および装置
本研究ではマイクロギヤのピッチ円直径,歯数,モジュール,
歯厚を計算し,設計したギヤの形状の CAD データを作成する。
そのデータをもとに熱電界放出電子ビーム描画装置[ELS-7500EX,
㈱エリオニクス]で描画することで,凸形状 GLC マイクロギヤモ
ールドを作製した。その作製プロセスを図 1 に示す。GLC にポリ
シロキサンを 3000 min-1,10 s でスピンコートし,500 nm の薄膜
を生成する(a)。次に電子ビームで描画をする(b)。そして現象
液によりポリシロキサンにマイクロギヤのパターンが残る(c)。
その後,O2 イオンシャワー[EIS-200ER,㈱エリオニクス]で加工
し(d)
,残ったポリシロキサンを CHF3 イオンシャワー[EIS-200ER,
㈱エリオニクス]で除去することで(e),凸形状 GLC マイクロギ
ヤマスターモールドを作製した。
3.実験結果および考察
歯先円直径 dA=50 µm,モジュール m=2.3 の場合,計算により
求めた各パラメータはピッチ円直径 d=45.4 µm,歯底円直径
dB=39.7 µm,歯数 z=20,歯厚 s=5.3 µm となった。この計算結
果より図 3 に示す CAD データを作成し,GLC マイクロギヤマス
ターモールドを作製した。
(a)CAD データ
(b)GLC モールドの SEM 写真
図 3 GLC マイクロギヤマスターモールド
図 4 に歯先円直径 dA=50 µm の凸形状 GLC マイクロギヤマス
ターモールドと凹形状 PDMS マイクロギヤモールド断面プロフ
ァイルを示す。
(a)凸形状 GLC マスター
モールドの SEM 写真
(b)凹形状 PDMS モールドの
金属顕微鏡写真
図 1 凸形状 GLC マスターモールドの作製プロセス
また,作製した GLC マイクロギヤマスターモールドを用い,
シリコーン材料である PDMS[KE-106,信越化学工業 ㈱]と硬
化剤[CAT-RG,信越化学工業 ㈱]を 10:1 に混ぜたもので型取
りし硬化させる。1 次硬化は室温で 36 時間,2 次硬化は 75℃,15
min で行った。それにより凹形状 PDMS マイクロギヤモールドを
作製した。その作製プロセスを図 2 に示す。
図 4 本研究で作製したマイクロギヤモールド
4.おわりに
ギヤの各パラメータを計算してギヤの形状を設計し,凸形状
GLC マイクロギヤモールドを作製できた。また,それを用いた高
精細な凹形状 PDMS マイクロギヤモールドを作製することがで
きた。
5.新規性・特許性
室温インプリント用凹形状 PDMS マイクロギヤモールドの作
製プロセスが新規性,特許性を持つ。
参考文献
1) 婦木陽介,清原修二,石川一平,他:2014 年度精密工学会
関西支部学術講演会, pp.48-49(2014)
図 2 本研究で開発した凹形状 PDMS モールド作製プロセス
謝辞
本 研 究 の 一 部 は , 日 本 学 術 振 興 会 科 学 研 究 費 基 盤 研 究 ( A)
および豊橋技術科学大学高専連携教育研究プロジェクトにより
行われたことを付記する。