中国による日本産高性能ステンレス継目無鋼管に対する

平成 27 年 2 月 13 日
中国による日本産高性能ステンレス継目無鋼管に対する
アンチダンピング課税措置が WTO 協定違反と判断されました
~WTO 紛争処理小委員会報告書が公表されました~
WTO は、2 月 13 日(ジュネーブ時間)、我が国の申立てに基づき、WTO で審理されて
きた中国による日本及びEU産高性能ステンレス継目無鋼管に対するアンチダンピ
ング課税措置について、紛争処理小委員会(パネル)の報告書を公表しました。同報
告書は、中国のアンチダンピング課税措置は、損害・因果関係の認定や調査手続に
瑕疵があり、アンチダンピング協定に整合しないと判断し、中国に対し措置の是正を
求めました。
1.概要
我が国は、2013 年 4 月 11 日に、WTO に対し、中国による日本産高性能ステンレス継目
無鋼管に対するアンチダンピング課税措置についてパネル設置要請を行い、同年 5 月
24 日にパネルが設置されました。
我が国は、中国による当該措置について、損害・因果関係の認定や調査手続の瑕疵に
より、「1994 年の関税及び貿易に関する一般協定第 6 条の実施に関する協定(アンチダ
ンピング協定)」に違反すると主張していました。
その後、2014 年 2 月及び 5 月にパネル会合(口頭弁論)が開催され、この度、WTO はパ
ネル報告書を公表し、中国のアンチダンピング課税措置は、損害・因果関係の認定や調
査手続に瑕疵があり、アンチダンピング協定に整合しないとして、中国に対し措置の是
正を求めました。
2.パネル報告書の判断内容
パネル報告書は、以下のとおり判断し、中国によるアンチダンピング課税はアンチダンピ
ング協定に違反すると認定し、中国に対して措置を協定に適合させるよう勧告しました。
(1)中国による本件措置の決定は、ダンピング輸出による中国国内産業への損害・因果
関係の認定に瑕疵があり、アンチダンピング協定第 3.1 条、3.2 条、3.4 条及び 3.5 条に整
合しない。
(2)本件措置は、手続面でも、重要事実の開示その他の点に不備があり、アンチダンピ
ング協定第 6.5 条、6.5.1 条、6.9 条、7.4 条,12.2 条及び 12.2.2 条に整合しない。
(3)他方、アンチダンピング協定第 3.2 条、3.4 条の解釈その他に関する日本の主張の一
部は認められない。
3.今後の予定
当事国は、公表から 60 日以内に WTO 上級委員会に対して上訴することが可能です。
上訴がない場合には、パネル報告書の内容で WTO としての判断が確定することとなり
ます。
4. 参考
(1)本件に係る過去のニュースリリース
① 中国による日本産高性能ステンレス継目無鋼管に対するアンチダンピング課税措
置について WTO 協定に基づく協議を要請しました
・経済産業省ニュースリリース(平成 24 年 12 月 20 日付け)
http://www.meti.go.jp/press/2012/12/20121220003/20121220003.html
② 中国による日本産高性能ステンレス継目無鋼管に対するアンチダンピング課税措
置について WTO パネル審理を要請しました
・経済産業省ニュースリリース(平成 25 年 4 月 11 日付け)
http://www.meti.go.jp/press/2013/04/20130411004/20130411004.html
③ 中国による日本産高性能ステンレス継目無鋼管に対するアンチダンピング課税措置
について WTO 協定に基づくパネルが設置されました
・経済産業省ニュースリリース(平成 25 年 5 月 24 日付け)
http://www.meti.go.jp/press/2013/05/20130524005/20130524005.html
(2)高性能ステンレス継目無鋼管とは
石炭火力発電所の超々臨界圧ボイラ等に使用される高付加価値特殊鋼を指します。
(3)アンチダンピング課税とは
ある商品の輸出向け販売価格が国内向け販売価格よりも安く、その輸出によって輸入
国内における競合する産業が損害を被っていることが正式な調査により明らかになった
場合に、その商品に対して国内向け販売価格と輸出向け販売価格の差を上限とする関
税を賦課することをいいます。
(4)本件対象製品の対中輸出額について
高性能ステンレス継目無鋼管の我が国から中国への輸出額は、年間約 1.4 億米ドルで
す(2014 年)。
(5)WTO パネルについて
政府間の協議によって問題解決に至らない場合、パネル(第 1 審)という準司法的な第三
者機関が、WTO 加盟国の要請により、問題となっている措置の WTO 協定整合性につい
て審理・判断し、違反が認められる場合にはその是正を勧告します。パネルに不服のあ
る当事者は、上級委員会(第 2 審)に審理を要請することができます。
(本発表に係るお問い合わせ先)
・WTO 紛争処理全般について
通商政策局 通商機構部参事官(ルール担当)
(併)国際経済紛争対策室長 小野寺
担当者:田辺、宮岡、加納
電 話:03-3501-1511(内線 3056)
03-3580-6596(直通)
・鉄鋼産業について
製造産業局 鉄鋼課長 山下
担当者:木村、五十嵐
電 話:03-3501-1511(内線 3661~6)
03-3501-1926(直通)
・日中経済関係について
通商政策局 北東アジア課長 岩永
担当者:甲元、井上
電 話:03-3501-1511(内線 3016~9)
03-3501-0531(直通)