Title Author(s) Citation Issue Date Type コミュニティと経済発展 : 南アジアのフィールドから考 える 黒崎, 卓 創文, 488: 13-16 2006 Journal Article Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/10086/18889 Right Hitotsubashi University Repository 南アゾアのフィールドから 考 え る 卓 け実 験 に近 い環 境 で実 証的 に検 証 す る。 そ のよ- な検 証 作 業 に欠 か 崎 近 年 、 発 展途 上 国 におけ る貧 困 問 題 と そ の削 減 に世 界 的 な関 心 が ルド ワー ク の第 二局 面 と な る。 あ る程 度 のデ ー タが 集 ま れば 、 統 計 せな い家 計 や企 業 、 市 場 な ど のデ ー タを集 め る ことへ これが フ ィー 黒 ど の側 面 にお いて'絶 望 的 に低 い水 準 に悩 む途 上 国が 世 界 には数 多 し た場人口にど のよう な影 響 が 生 じ る かな統 引 的 に予 測 す る作 業 が 盛 手 法 を 駆 使 し て問 題 の分 析 に当 た る。 近 年 は'政 策 な ど 要 因 が 変 化 高 ま って いるO 保 健 ・教 育 ・所 得 な ど 、生 清 水 準 を左 右 す る ほと ん く存 在 す る。 先 進 国 から の開 発 援 助 の究 極 的 な 目的 を こ のよう な広 場 で活 かす こと' そ れが フ ィー ルド ワー ク の最 終 局 面 と な る。 ん に行 な わ れ て いるO こ のよ う な研 究 の成 果 を、 開 発 援助 な ど の現 義 の貧 凶 を削 減 す る こと にお く ことが 、 近 年 の潮 流 であ る。 例 えば ロ ックパ ントU 2 のポ ー カ リ ス-、 ホ ノによ る 「ジ ュビ - 1 ・二〇 開 発経 済 学 を専 攻 す る私 が ' 現 在 へ 力 を 入 れ て いる フ ィー ルドが 準 を向 ヒ さ せ る た め の政 策 のあ り方 な ど に ついて分 析 す る経 済 学 の 発 展途 上 国 の経 済 発 展 のメカ ニズ ムを探 りへ これ ら の国 の生 活 水 奪 、 具体 的 に は教 育 機 会 の剥 奪 、 医 療 サ ー ヒ ス への ア ク セ ス の欠 否 かだ けが 貧 困 の基 準 ではな い。 貧 困 と は、 所 得 以外 の側 面 で の剥 上 で鍵 と な る地 域 であ るC ただ し' 所 得 か 一定 水 準 に達 し て いる か い人 口 の絶 対 数 と いう点 では膨 大 であ り、 地 球 上 から 貧 困 を な - す 二 か所 あ る。 イ ンド と パキ スタ ン、 ど ち らも 所 得 が 貧 困線 に達 しな 一分 野 が 、 「 開 発経 済 学 」 であ る。 開 発経 済 学 者 に欠 か せ な い のが 終鳶﹄ ( 翻訳 ・早川萱 は' 二〇〇六年)な ど を 参 照 さ れ た いO 〇 〇 」 と名 づけら れ た最 貧 国 債務 の救 済 運 動 や、 ポ ノと協 力 し て貧 困削減 に取 り組 む経済 学者 へ シ ェフリ ー ・サ ヅク スの近刊 ﹃貧 E gI の フ ィー ルド ワ ー ク。 まず 途 上 国 の現 地 を見 てへ 現地 の問 題 を現 地 の が 低 所 得 と有 機 的 に関連 し た、 複 層 的 な概 念 であ ると捉 え る のが 、 如 、 健 康 な生 活 への脅 威 、 ジ ェンクー間 の不 均 衡 、 社 会 的 孤 立 な ど る。 続 いて' 問 題 が 明 ら か にな った ら仮 説 を立 て' そ れ を でき るだ 人 々と 一緒 に考 え る こと、 これが フ ィー ルド ワー ク の第 一局 面 であ 13 創文 200( '7 側面 で の貧 困も深刻 であ るQ とりわけ、農村末端 で の教育 や保健 な 近年 の貧困分析 の特徴 であ るd イ ンド と パキ スタ ンは、所得以外 の で成功 を おさ めたイ ンド ネ シアの経験 を移転 しょ- と いう援助 プ ロ し て いると は青 いが た いO そ こで日本 の政府開 発援助が 同様 の事例 行政官 ・住民 双方 の能 力 不足、 予算執行 の遅 れなど から適 切 に機能 のパ ンジ ャー. フ平原 に位 置 す るH県 であ るO こ こは'香 り米 や水牛 日本 のプ ロジ ェクト の モデ ル地区 とな った のほ、 パキ スタ ン中部 . シ ェクーが始 まり、私 も これ に関与 す る こと にな った。 く把 握 す るため の情報 を持 ち、政策が適 正 に実 施 され て いるかを監 注目 を集 め て いる のが 、 コ- ユニテ ィであ る。 人 々 の こし スを 正 し の、 、 、ルクと い った特産 品 で知 られ る農 業地帯 で'夏 に訪 れ ると 一面 こ のよう な状 況 を解 決 す るため の担 い手 とし て、開 発経済 学者 の ど の基礎的 な サービ スの普 及 の遅 れ は、 見 る に堪 えな い状 況 だ。 だ から であ る。 し かし実 際 の フィー ルド で起き る こと、目 にす る こ 視 す る能力 を持 つのが地域 住 民 であ り、 そ の集合体 が コ- ユニテ ィ た要望が出 てく ることを期待 し て いた。 と ころが 返 ってき た のは、 てもら ったo我 々と し ては、道路 や摩 概 用水 、診療 所'学校 と い っ そ んな農 村 のあ る村 で住 民 を集 め て'村 に何 が 一番 必要 かを考 え に水 田が広が って いる。 に' コ- ユニテ ィと経済 発展 に ついて の雑感 を まと め てみた い。 と はこれ ほど単純 ではな いO以下、私 の フィー ルド で の経験 をも と 辛 で の経 済成長が 国民全体 に行き渡 らず、低 所得 に苦 し みへ教 育 ・保 っては診療所 や学校 は民間 の施設 ( サービ スの質 はよいが高価 であ る を膿 し てしま- には都合 が よ い。 ま た、生酒 に余裕 のあ る村 人 にと うだ ったQ宗 教的 な要望 には誰 も反対 できな いため、社会 的 な問題 て いる のは、宗 教的指導者 や生 活 に余裕 のあ る村 の有 力者 たち のよ 「イ スラ ム教 の祭礼 施 設 が欲 し い」 と いう要 望。 そ の意 見 を誘導 し 健 サービ ス へのアク セ スを持 たな い多数 の貧困層 を取 り残 し てしま 上、村 からも遠 い)を利 用 す れば よ い ので、村 から歩 いて いけ る公 パキ スタ ンでは現在'地方 分権化 政策が進 められ て いる。 これ ま ったと いう反省 のも と、分権化 政策 によ って政府 の質' ガバ ナ ン ス 立施設 の質が 悪 か ったり'機能 し て いな いこと に無 関心 な ことが多 にあ る ことを繰 り返 し説得 し、納得 し ても らうま でにかな り の時 間 ろうC こ のプ ロジ ェク-では' そ の主旨が貧 し い人 たち の生活改善 ニーズを聞 き出 す ことが でき るわけ ではな いことが わ か る好例 であ い。機械 的 に住 民 に意 見 を聞 - こと によ って' コ- ユニテ ィの真 の の質 を高 め て、貧 困削減 政策 を効率的 に進 めようと いう戦略 が前 面 ( Ci ︹ i N e コ に出 てき た のであ る。 異体 的 な仕組 みと し て新 た に設 け ら れ た のが 、ccB シ 工クーを提案 し、 これ に政府 が資金援 し、地域 のた め の開 発プ ロ一 Co mmu n i t yBo a r d ) であ る。CCB は地 域 住 民 が 自 発 的 に組 織 助 を行 な うと い-仕組 みだ。 し かし'新制度 導入 に伴 う混乱 '地方 1 4 創文 2006.7 と は いえ村 に学校 を作 る ことが 必ず しも 貧 し い人 た ち の教 育 ア ク はへ より直 接的 に教育 に関 わ って いる。商 イ 学校 が 増 設 さ れ てき た。 す な わ ち パ キ スタ ンの農 村 部 の平均 像 は、 るた め に、 歩 いて いけ る近 - に でき るだ け 学校 が あ る よ- に公 立 小 資 源配 分 の問 題 を考 えるため の農 村 調 査 を 、 こ の州 のK 県 の辺 邸 な 働 撲 滅 運 動 に取 り組 む N G O と協 力 し て、 社会 開 発 と貧 E EI・家 計 内 健 で の達 成 度 合 も相 対 的 に遅 れ た後 進 州 であ るO 私 たち は、 児 童 労 ンド の 7 - ソド ラ ・プ ラデ ー / ユ州 は、 所 得 水 準 が 低 -、 教 育 や保 イ ンド の フ ィー ルド あ る程 度 の大 き さ の村 には必ず 小 学校 が あ るが 、 そ こ に いる教師 の セ ス改 善 に つなが ると も限 ら な いQ パ キ スタ ンでは、 就 学率 も 三品め 数 は しば しは 一名 き り、 よ- ても数 名 で' そ こ に五 学年 が 一箱 に学 地 域 で実 施 し てき た。 な か ったO 学 校 に t度 も行 って いな い子 ど も や、 一度 就 学 し たも の に通 っている のほ男 子 六〇 パ ー セ ソ-、 女 子 四六 ハ- セ ソー にす ぎ こ のN G Oが 介 入 を始 め る前 の調 査 では' 学 齢 期 の子 ど も で学校 ん で いる こと にな る。 公立 学 校 の教 師 の給 料 は安 いだ け でな -、 専 教 育 内 容 や教 育 の成 果 に応 じ て給 料 が L が るわ け で はな いO す ると のへ ド ロ ップ アウ - し た子ど も の学 校 に行 かな い理由 を親 に聞 いた 門 性 の高 さ ( 実 際 には学 歴 ) と年 功 序 列 で ほと んど決 ま る。 実 際 の 教師 が l名 し か いな い学 校 では' しば しは 教師 が ず る休 みをす るO 結 果 によ ると '教 育 は必 要 な い、 役 に立 た な いと親 が 判 断 し て いる ことが 非 常 に多 くへ 児童 労 働 の必要 と いう 理由 はあ ま り挙 げ ら れ な る内 容 は限 ら れ る。 こ のよう に質 の低 い公 立 学 校 で の教 育 を目 の当 か った。 実 際 ' 児童 労 働 が 家 計 に貢献 す る金 額 は それ ほど大 き - 紘 教師 が j =J勤 し てき た にし ても、 極 端 な複 式 学 級 のも と で生 徒 が 学 べ たり にす れば 、貴 重 な 労働 力 とも な る子供 を学 校 に行 か せ る必要 は け 、 教員の任命権な ど を s M c に任せる法案が審議 さ れ て いる。 教 与 す るs M c ( SchoolM ont t or t ng Comml t t ee) の設 置 を義 務 づ イ ンド では現在 へ す べ て の学 校 に' 地域 住 民 と生 徒 の親 など が 関 能 な公 立 小 学校 の質 が 問 題 と いう のは'納 得 でき る話 であ る。 な いから、 教 育 の必 要 性 に対 す る親 の理解 の低 さ や、 地 域 で利 用 可 な いと、 貧 困層 の親 が 考 え る こと は理 にかな って いる。 こ の文 脈 にお い て、 あ るC C B プ ロク エク - によ る農 村 道 路 整 備 て いると は言 い難 い状 況 であ った。 と こ ろが 、 道 が でき た こと によ か る ん で先 生 が こな い ので'休 校 が 頻繁 に生 じ へ 学校 と し て機 能 し 員 組 合 等 から の激 し い反対運動 によ ってま だ成 立 は し て いな いが 、 の事 例 は興味 深 い。 そ れ までの村 の小 学 校 は、 天気 が 悪 いと道 が ぬ って、 貧 困層 の子 ど も た ち ま でも が 隣 村 の大 き な学 校 に通 え るよう s M c のよう な組 織 が 重 要 な役 目 を 果 たす 改 革 は' 長 期 的 な方向 と にな った。 住 民 が農 村 道 路 の建 設 を計 画 し たと き に、 こ の副 次 効 果 ま で見越 し て いた かど う か は定 か でな いが 、 賢 明 な 選択 だ った。 15 創文 200( )7 出席 率 を 上げ へ教 育 の質 の向 上 に つなが って いる ことが 知 ら れ て い コ、 . ,ユ ニテ ィによ る公立 小 学 校 の監 視 が 、 教 師 ・生 徒 両 方 の出 勤 ・ を これ ま で地 域 住 民 が 行 ってき た ヒ 了 フヤ地 域の事例 な どが あ り' し て は正 し いと思 わ れ るO イ ンド にお いても 'SMc のよう な 活 動 複 数 の 有 力 地 享 同 士 が 激 し い派閥 争 いを行 な い' そ れ ぞ れ の地 主 と ト関 係 =垂 直 的 ヒ 下 関 係 と '血 縁 に基 づ- 一族 意 識 のも と、 村 内 の 奉 仕 す る土 地 な し世 帯 と いう 二 つの階 層 間 のパ - ロン ・ク ライ エ/ か った のが '南 アノ ア の多 - の地域 であ るo 人が 集 ま って' 共 通 の開 発 問 題 を話 し合 う よう な土 壌 が 伝 統 的 に薄 によ って特 徴 づ け ら れ てき た。 し たが って、 貧富 の差 に関 係 な く村 関係 を も つ土 地 な し層 が そ の地 主 を支 持 す ると いう水 平 的 対抗 関 係 る。 と は いえ 現在 の法 案 は拙 速 であ り、 実 現 性 に乏 し いと の意 見 も 強 い。 私 たちが 調 査 し て いる南 イ ンド の州 でも ' S M c に学 校 の運営 向 き の理由 も あ る か' s M cが 地 域 住 民 によ る公 正な監 視 に つなが であ る。 教 員組 合 から の反 対 に は' 既得 権 益 を守 り た いと いう後 ろ - よ うな単純 な問題でな いこと は明 ら か であ るO 不 用 意 に こ のよ う ぅ か。 c c B や s Mc のよ う な制 度 を導 入 す れは ' す べ て- まく い いる こと は、 こ のよう な社会 にお いて を拝 せ ると いう考 え は、 地 域 住 民 の能 力 を超 えるよう に思 え る から らず 、 逆 に地 域 のボ スによる慈 恵 的 な 運営 をも たら し て教 育 の質 を ど のような意味 を持 つのだ ろ 近 年 の開 発援 助 政策 にお いて、 コ- ユニテ ィ の役 割 が 強 調 さ れ て む し ろ悪 化 さ せ かね な いと いう、 も っとも な理 由 も あ るC たな制 度 ・仕 紳 みが へ 既 存 の階 層 関 係 に風 穴 を開 け る可能 性 を秘 め つなが り かね な いO 他 方 、 注意 深 - こ のよう な制 度 を 用 いれば 、 新 な制 度 を導 入 す れば 、 既存 の社会 的 な分 断 を さ ら に強 化 す る こと に * 多 いこ の言 葉 、 イ ンド や パ キ スタ ン社 会 にと っても 難 し いよ う で、 仕 組 みだ から であ る。 南 アジ ア農 村 の経 済 発 展 にお いて、 共 同体 的 ニテ ィ」 の成 員 と し て当 然 の発 言 を期 待 す る のが 、 これ ら の制度 ・ て いる。 そ れ ま で ま った- 発 言 力 を持 たな か った階 層 に、 「コミ ュ しば しは 、 ヒ ソデ ィ1語 や ウ ルト クー語 の ア ル フ ァべ ッ- で 「コ- 色 彩 を あ る程 度 伴 った コ, r ,ユニテ ィが ' (′後 、 多 く生 ま れ て いく こ 最近 は日本 語 でも カタカナ書き され ることが ・ーコ- ユニテ ィ」 と ユ ニテ ィ」 と いう英単 語が たど たど し- 記 さ れ て いるQ 単 な る地 域 と を夢 見 つ つ、 ま た フ ィー ルド に向 かう私 であ るO ( くろさき ・たかし 一橋大 r・縫済研究所教授/E発経済 学) 住 民 を集 合 的 に指 す のであ れは 、 私 の フ ィー ルド のど こ に行 っても 「 共 同 体 」と いう ニ ュア ン スが あ る はず だD 南 アノ ア の伝 統 的 な農 村 社 会 の多 - はへ農 地 を代 々保 有 し てき た地 主 ・自 作 農 と、彼 ら に 1 6 創 文 2006 7
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