看護部だより - 在宅看護研究センターLLP

看護部だより
患者相談室の取り組み
「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業実習を通じて学んだこと
東医療センター 患者相談室 坂内 みゆき
当センター患者相談室は、院長の直属の機関として 2004 年 12 月 1 日設置されました。以来患者サービスの向上・改善をめざして活動を推進しています。
現在、患者相談室を担当する看護師は、専任の私を含め計 3 名の看護師が業務にあたっています。相談内容は、受診相談が最も多く、かかりつけ医に関する疑問
質問、病院や職員に関するご意見・ご要望など多岐にわたります。私たちが日頃心がけていることは、患者さんが適切な診療が受けられるよう支援するということで
す。
2013 年度の診療、医療相談は、延べ 5,765 件でした。その内訳は、診療相談 5,559 件(96%)、医療相談(主にクレーム対応)65 件(1%)、その他 141 件(3%)あ
りました。医療相談の主な内容は、「治療に対する不信感や不満」「医師や看護師の対応に関する不満」などでした。これらは、複雑化し長期化するケースもあり、最も
慎重に対応しなければなりません。日々の実践場面で多く聞かれることですが、「ひとこと話してくれたら良かったのに」という嘆きや「確認してほしかった」「説明してほ
しかった」という声を患者や家族、そして職員からも聞くことがあります。健康障害を持つ方々は医療者が想像する以上にさまざまなストレスを抱いているのです。しか
し医療者はそこに気づけない状況と対応しきれないジレンマがあると感じています。その背景に病院が高度医療化し臓器別・疾患別に分かれ cure 中心となっている
ことがあると思います。私たちは、医療人としてコミュニケーションを通じた説明や職員間の伝達能力、人との関係性を意識した対応ができるかどうかということが非常
に大切だと痛感しています。昨年の10月1日から8日間、「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業の実習が患者相談室で行われました。「地域」を支える地域
保健のハブ的施設を起業することをめざした研修プログラムの一環としての依頼でした。
実習生 17 名は、28歳から60歳代で看護領域の博士、看護の管理者、急性期病院看護師長、在宅訪問看護師,既に起業されている方など経験知が大変に豊富で
エネルギッシュな方々でした。3 つのグループに分かれ終日シャドウイングの形で実習は進められました。日々の振り返りで、その日の関わりについて検討を重ね、最
終日は参加者全体で「利用者・家族と医療者間を"つなぐ"看護実践」というテーマでディスカッションしました。そこでは大学病院への機能に対する期待と要望が多く語
られていました。実習生から「時間の限られた末期の患者さんに際しての保険制度についての知識を正しくもってほしい。病院は、在宅へ移行する時介護保険で動か
そうと考えがちであるが、医療保険で訪問看護は直ぐに対応がとれる。病院もそこを意識して地域につなげてほしい。」という意見を頂きました。特に往診医と訪問看
護が必要な患者さんについての連携では、cure 中心から care の視点に変わって患者さんをみていくためには、在宅の患者さんを良く知っている地域の医療者との連
携は必須だということを実感しました。
患者相談室は、地域とのつながりの一端を担っている部署であると自負しています。今回の実習受け入れの体験は、私自身の認識を変えてくれるものでした。それ
は、今まで大学病院という箱の中で相談対応業務をしていたにすぎない点です。患者さんは、いずれは地域に戻る方々であり、地域で暮らし続けるという視点で対応
することが非常に大切であることに気づかされたのです。
今回の実習を通じて、退院後患者さんが地域で安心して暮らしていくためには、病院と地域の訪問看護ステーションとの連携が非常に重要であると思います。看・看
連携の必要性をあらためて実感した実習となりました。患者相談室は、病院内の「かけはし」から地域への「かけはし」になれるよう努力していくと共に、患者の状態に
合わせた調整が取れるように対応を心がけて行きたいと思います。