レポート

(様式2別紙)
外国人非常勤職員のレポート
(1)日本とフランスの高校教育の違いについて
和光国際高校
フランス語非常勤職員
フィリップ
ベソ
日本とフランスの高校の違いにつきましては、最初に残った印象が日本の高校生は皆
制服を着ていることです。フランスでは国立の高校であれば高校生たちが自由に服を選
択できます。フランスの方は個人的な文化が強く、日本の方はもっと集団的な文化であ
ろうと思いました。フランスでは高校生との間の差がよく現れていて問題のきっかけに
なることがあります。例えば、流行っている服を購入できない生徒がうらやましいこと
などが良くあります。私は日本で高校生が制服を着て平等的な立場でいられているとい
う印象があり、それはいいところだと思います。
他に驚いたところは、日本の高校生がフランスの高校生よりもっと高校に通っている
ことです。授業の時間だけではなく、部活、文化祭などで高校で過ごす時間が多いです。
フランスの高校生は授業の時間だけを校内で過ごして授業が終わったらすぐ家に帰り、
できれば一番早く高校を出たいという気持ちがかなり強いと思います。スポーツ、また
は音楽の活動は高校以外で市に所属しているクラブで行っています。日本では、高校が
勉強の場所だけではなく、もっと広い生活のところになっていますが、フランスでは勉
強の場所だけだと思われています。
制服、部活などは外から見るとすぐ分かるものですが、教室の中になると、フランス
と日本の教育について何が違うでしょうか。私は最初に日本の高校で教え始めた時に日
本の高校生がかなり大人しいということに気づきました。フランスよりは先生が規律を
正しくする必要があまりないという気がしました。他方はフランスの高校で絶対に許さ
れないことが日本の高校で許されていることもあります。例えば、日本の高校生が教室
内でたまに寝ています。最初に生徒さんが寝ていて先生が何も言わないことに驚きまし
た。フランスでは、先生は生徒さんが寝ることを見逃してはいけなく、よく叱っていま
す。元気で勉強できるように高校生は自分の睡眠を守らなくてはいけないという責任が
あると思われています。
私は外国語非常勤講師ですので、日本の高校の環境で外国語の教育について述べさせ
ていただきます。フランスではフランス人の先生と組んでネイティヴの講師が教えるこ
とはほとんどありません。高校生は先生の説明を聞いたり教科書を見たりしている形で
外国語を勉強していますが、実践的に外国語を話す実力を鍛える機会がほとんどありま
せん。私が外国語講師として勤めている日本の高校では、高校生たちがネイティヴの講
師と接触することがよくありますので外国語を聞くだけではなく、自分で話すきっかけ
がフランスよりもっとあると思います。
ネイティヴ講師と地元の先生が一緒に教えることの他のいいところは、チームで授業
を行っていますので、どうして外国語の教育を改良できるか良く相談し合い、講師とし
てもっと育成されることができます。現在、和光国際高校のフランス語非常勤講師のチ
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ームは、教科書と説明だけで生徒さんたちの外国語のスキルが十分に進んでいないと考
え、授業の枠で生徒さんがもっと自分で話してみる時間をどうして作ればいいかと考え
ています。その結果、もっと実践的な教育方法を探り授業で実験してみようとし、その
実験の結果がよければ、報告を書き日本フランス語教育学会に投稿しようと考えていま
す。
そういう計画を立てたということは、ネイティヴ講師と地元の先生が協力的に教える
ことから生まれた計画だと思います。そういうわけでネイティヴ講師と地元の先生のチ
ームワークの利点を良く示していると思います。私は日本の高校の環境の特徴に合わせ、
生徒さんが外国語を身につけられるように頑張り続けたいと思います。
(2)日本とフランスの高校教育の違いについて
和光国際高校
フランス語非常勤職員
アレクサンダー・ステファノヴィッチ
日本の高校とフランスの高校の間には、共通点も相違点もありますが、相違点のほう
が多いと言えるでしょう。まず、一番重要な共通点は、日本の高校3年間が、フランス
の「リセ」という高校の3年間に相当することです。そして、日本の生徒もフランスの
生徒も月曜日から金曜日まで高校に通っています。それぞれの授業の内容はほとんど同
じで、フランスの高校生も国語、外国語、数学、化学などを勉強しています。
しかし、大学進学を目指しているフランスの高校生は、日本の高校生と違って大学入
学試験ではなく高校卒業試験を3年間準備していきます。「バカロレア」と言うその卒
業試験は、大きく3種類に分かれていて、一般バカロレア、専門バカロレア、工業バカ
ロレアがあります。大学進学を目指し、普通教育課程を選んだ高校生は一般バカロレア
を受験することになります。一般バカロレアは受験科目によって、理系、文系、経済系
と分かれています。自分の行きたい大学の入学試験を受験する日本と違って、フランス
では基本的にバカロレアを取得した生徒が、バカロレアの受験科目によって自分の行き
たい大学の学部に願書を出すという仕組みになっています。フランスの大学はほとんど
が国立大学です。どの大学がどの専門に強いという違いはあっても、大学のレベルの差
はないとされています。しかも、日本とちがって大学ランキングなどはあまり目にする
ことがありません。けれども、「グランド・ゼコール」と呼ばれる普通大学とは違うエ
リート養成機関も存在します。大学にはバカロレアさえ取得していれば入学可能ですが、
このグランド・ゼコールに入学するためには、高校卒業後さらに2年間の準備学級を経
て、選抜試験に合格しなければなりません。
高校生の日常生活から見ると、フランスの高校には制服が存在せず、服装の規制をし
ている学校はほとんどなく、生徒は私服で登校しています。しかしながら、きちんとし
た服装で登校するのはもちろん、「女子はあまり濃い化粧をしないように」とか、「男子
はジョギングウエアを着て登校しないように」、のような規制もあります。唯一禁止さ
れていることは授業中に帽子をかぶることですが、それ以外は、各自個性にあった好き
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な装いができます。もう一つの大きな違いは、フランスの高校では部活のような活動が
ないのです。フランスの高校生はそれぞれの学校の有料スポーツクラブ(サッカー、バ
スケットボール、卓球、水泳など)に参加することは出来ますが、写真部や吹奏楽部な
どはまったく存在しません。
和光国際高等学校でフランス語の授業を担当している私にとって、日本人高校生は性
格がとても明るくて、勤勉な生徒です。フランス語の難しさに不安を感じる生徒、時々
意欲が欠けている生徒もいるというのは当然なことですが、そういう生徒は個人的にサ
ポートしてもらえればなんでも理解できる、ということは経験から分かりました。現在、
それを念頭に置いた私は、フランス語担当の同僚と一緒にもっと分かりやすい、生徒を
中心としたフランス語学習法を来年度から和光国際高校で実現しようと思っています。
そういった努力のおかげで生徒たちがフランスとフランス語についての知識をさらに深
め、彼らにフランスに対してのより大きな関心を呼び起こせることを心から願っており
ます。
(3)日本とドイツの外国語授業の違いについて
和光国際高校
ドイツ語非常勤職員
マライ
メントライン
日本とドイツの語学授業の違いについて説明したいと思います。その場合、まずは学
校形態の違いについて述べるのが適切でしょう。もっとも大きな違いとして、ドイツに
は「私立」の学校がほとんどないことがあげられます。基本的に、すべての子供たちが
公立の学校に通います。
ドイツの教育制度において、最初の 4 年間通うのはグルントシューレ(Grundschule)
です。5 年生以降にどのような学校に通うのかは、4 年生のときの成績で決まります。
振り分けられる先はギムナジウム(Gymnasium)、レアルシューレ(Realschule)、ハウ
プトシューレ(Hauptschule)のどれかです。それぞれ根本的に制度が異なるので、今
回は大学進学学校であるギムナジウムに焦点を当てたいと思います。
ギムナジウムは 9 年制(最近は 8 年に短縮されました)です。5 年生になると、英語
の授業がはじまります。7 年生のとき、第 2 外国語としてフランス語かラテン語か(学
校によってはスペイン語や中国語もあり)を選び、9 年生になると、第 3 外国語として
7 年生のときに選ばなかった言語を選択できます。
授業そのものは「参加型」で、生徒たちが積極的に発言し、教師の質問に答えたり、
教師の指導の下でディスカッションし、自分の意見を述べます。発言の多さや質で成績
の60%ぐらいが決まります。
授業の進め方の一つの例を挙げたいと思います。昔、私が参加したフランス語の授業
では、すべての生徒がフランス人になりきり、自分でフランス人の名前、誕生日、家族
構成や出身の町(フランスの)を選び、それをみんなにフランス語で紹介したりしまし
た。フランス語の授業の際には、ドイツ人としての自分を「捨て」て、フランス人にな
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ったつもりで授業を受けました。この授業では、先生からフランス人の名前で呼ばれま
す。
もちろん、授業がすべてディスカッションや発表ではありません。文法の講習の際な
どは先生からの説明のあと、配られたプリントやテキストの問題に解答したり、生徒ど
うし二人で練習したりします。
その際、ドイツの学校の机の形に意味がある気がします。日本と違い、一つの長テー
ブルに二人の生徒が座ります。常に練習相手が隣にいるのです。日本の教室にある、独
立した一人専用のテーブルは個人作業で集中するためには良いが、生徒どうしのつなが
りを促進する機能には欠ける気がします。
またドイツの場合、教室のテーブルが教壇に向かずに置かれることもあります。二人
用のテーブルどうしを正面からつなげて、いくつかの「島」を作ったりするからです。
これは生徒同士のつながり、ディスカッションのしやすさを優先させる場合のパターン
です。テーブルの並べ方は学年の初めに担任の先生とみんなで決めて、すべての授業に
適用されます。つまり、テーブルの置き方は科目によって決まるのではなくて、その時
のクラスのニーズや生徒の雰囲気によって決まるのです。「島」の並べ方のほか、「コの
字」(すべてのテーブルをつないで、一つの大きなコの形にするスタイル)も人気があ
ります。
以上の説明でわかるように、生徒たちが活発に発言するのがドイツの授業の特徴の一
つです。外国語の授業では、発音練習よりも、正しい語法の練習や、自己表現の練習が
重視されます。また、定期的に行われる試験は完全な筆記試験です。いわゆるマークシ
ート的な、多肢選択式の問題はありません。日本のテストで出題されるのと同様な短文
の作文や単語問題もありますが、一番多いのは、授業の中(や宿題として)読んだ本に
ついての質問を、文章を書きながら答えるパターンです。表現力やセンスが問われます。
スペルミスや明らかな内容的な間違い、質問に十分に答えていない場合は減点されます。
ドイツは様々な異言語の国に囲まれ、いろんな国の人が集まる場所です。毎日のよう
に外国語を話すことはありませんが、「違う国の人と接すれば、外国語が必要」という
実感は常にあります。
さらに、ドイツの大学には入学試験がないため(高校卒業試験の方が大事)、授業内
容が完全に「実践」を重視したものになっています。それはドイツ語の類縁語(英語や
フランス語)の場合だけでなく、中国語や日本語の授業でも同じです。そのおかげで、
少しでも自分の状況や考えを外国語で伝えられるような人材が育ちやすいという利点が
あります。その反面、基礎的な文法知識がさほど問われないので、もともと語学に強く
ない生徒はいくら努力しても授業スピードに追いつきにくいという問題があります。す
べての生徒に同様のチャンスを与えるという面では、日本の学校授業のほうが適切に機
能しているかもしれません。
以上、ドイツの学校授業の特徴について、体験を踏まえて実感的に書いてみました。
日本と比較して単純にどちらが良いというものではありませんが、何かしら、物事を考
える上での参考になれば幸いです。
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(様式2別紙)
(4)日本と中国の高校教育の違いについて
和光国際高校中国語非常勤職員
申
智瓊
日本と中国の高校の最大の違いは、「大学受験の為に占める時間の割合」だと思いま
す。
中国では、「良い大学に入れないとよい仕事が見つからない」という現実の元、皆
「世界一難しい」といわれる大学統一試験に合格するため、小学校から必死に勉強して
います。受験が迫る高校になるとその激しさがますますエスカレートします。
学校にもよりますが、大体朝7時半前後から午後5時半ごろまで授業があり、夜7時
ごろから9時半までは夜の自習時間になり、先生も交代で指導に当たります。宿題が大
量に出され、補習、小テスト、模擬試験なども頻繁に行われます。テストを行う度に、
成績を一覧表にして周知するようにします。生徒も保護者も成績の順位をとても気にし
ていて、落ちたら必ず手を打ちます。日本のような部活などは普通ありませんがあって
も体育系の課外活動で、その目的もあくまでも受験のための体力作りにすぎません。学
力は生徒を評価する唯一の基準、進学率は学校の優劣を判断する唯一の基準といっても
過言ではありません。
また、日本と違って、受験勉強も含め、勉強は基本的にすべて学校でカバーしていま
す。先生は生徒一人一人の進学志望先を把握し、受験テクニックが豊富な先生が細かく
指導してくれます。一応家庭教師などもありますが、日本のように塾など学校以外の施
設で勉強するということは基本的にしません。
一方の日本では、学生達は勉強だけではなく、部活もやって楽しく高校生活を過ごし
ているようです。創造力を培う図工、生活と密接な関係がある家庭科など中国にはない
授業もあり、また文化祭の準備などを通じてチームワーク、団体主義の育成など生徒の
総合的な素質教育に力を入れています。私は日本教育のこういうところが素晴しいと思
います。部活は高校生活の一部分であり、高校生の生活を豊かにするだけでなく、生徒
の健全な人格の育成にも欠かせません。また、部活などを通じて、自分の特技を伸ばし、
自分がなりたい「将来像」のイメージも掴みやすいのではないかと思います。
日本の高校教育にちょっと気になることもあります。私が見た感じでは、学力の面で
は中国の生徒のほうが上です。日本は成熟して余裕のある社会ということも影響してい
ると思いますが、生徒の勉強に対する一生懸命さが足りません。授業中居眠りしたり、
変な姿勢で座ったり、授業と関係ないことをやったりする生徒をよく見かけます。中国
では、授業中にそういうことをする生徒がほとんどいません。もしいたら、先生に厳し
く注意されます。
また日本の高校ではいじめや、「空気を読む」といったような現象があり、生徒が必
要以上に人間関係に気を使っているように見えます。こういうところにエネルギーを使
うのはちょっともったいないような気がします。この方面では中国の学校はすごく単純
で、成績のよい子は皆の羨望の的になり、生徒は成績を上げる為に必死で、人間関係に
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それほど気を使いませんし、気を使う余裕もありません。
中国の「学力一辺倒」によって偏った人材が多く作り出され、社会問題となっていま
す。日本の知識教育と素質教育を同時に進める教育体制はバランスがとれていると思い
ますが、もう少し学力に力を入れたらより素晴らしいではないかと思います。
(5)スペインの教育
和光国際高等学校スペイン語非常勤職員
アルベルト・フォンセカ
ここではスペースの都合上、スペインの教育システムを評価する際に興味深いと思われ
る点の概要を、特に中等教育(日本の中等学校と高等学校に相当)に注目しつつ列挙する。
まず触れなければならないのは、近年スペインにおける教育システムが周辺各国と比肩
しうる優れた成果を上げていることだ。しかしながら、各種教育機関が充分に解決できて
いない固有の問題が以下のように存在している。
○落第:中等教育においては全国平均で約 25%の生徒が直面
○長期欠席:具体的なデータを出すのは非常に困難だが、社会の特定の層や民族、移民の
間で顕著
○エリート主義:社会のある層にとっては入学するのが大変に難しい私立学校の存在
○宗教教育:教室で宗教の授業を継続すべきか否かを巡る、賛成派と反対派の間の真っ向
からの議論
上記のような問題を抱えているスペインの基本的な教育システムを紹介しよう。義務教
育は 6 歳から 16 歳、すなわち初等教育から前期中等教育までであり、すべての国民が無
料で受けられる。
○幼児教育:0 歳~6 歳
○初等教育:6 歳~12 歳(2 年ごと 3 期に分割される)
○前期中等教育:12 歳~16 歳(2 年ごと 2 期に分割され、第 2 期が日本の中等学校に相
当)
○後期中等教育:16 歳~18 歳(日本の高等学校に相当)
○前期職業教育:16 歳~18 歳
○後期職業教育:18 歳以降
○高等教育:18 歳以降(以前は 5 年制、現在は 4 年制で日本の大学課程に相当)
中等教育(日本の中等学校と高等学校に相当)における最低限の必須科目を挙げておく。
○言語とコミュニケーション
a)スペイン語
b)文学 c)外国語
○数学
○歴史と社会科学
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○自然科学
a)生物
b)物理
c)化学
○工学
○芸術
a)美術
b)音楽
○体育
○宗教
なお、各種学校機関は大きく 3 つに分類される。
○公立学校:無料であり、行政当局が財政的な面も含め統括している。初等教育、前期中
等教育第1期までの義務教育を扱う。一部の学校では 4 歳から 6 歳までの幼児教育も行
われている。前期中等教育第 2 期と後期中等教育は中等教育機関で行われる。
○公的補助を受けた学校:私立ではあるが政府から多額の助成金を受けている学校。つま
り、助成金と保護者の負担で成り立っている。運営上の自由はあるものの、1 クラス当
たりの生徒数、時間割構成などについては行政当局による一定の条件が課せられる。
○私立学校:収入は生徒の保護者が払う授業料のみ。運営と時間割構成の自由度は大きい。
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