特別企画 1

特別企画
これだけは頭に入れておきたい
新入設計者のための機械設計
の心得
(上)
グローバル化に対処する設計業務へ
まず始めに,設計業務の現状を頭の片隅にでも
入れておく必要があろう。多くの企業は,大手企
業から様々な仕事を受けているのは周知のことで
ある。そんな仕事の中でも,設計業務は大企業に
とって儲からないとも言われ,アウトソーシング
(外部委託)に出されている。それを受けるアウ
トソーシング側の業務は必然的に嵩んできている。
そこで,アウトソーシング側の中にもインドなど
海外で設計業務を受け持つ企業も出てきている。
設計というのは,元来企業にとっては命綱で,外
部への情報流出は極力避けたいはずである。
様々なことが錯綜,混沌としてはいるが,グロ
ーバル化時代の中で対応を誤るまいと各社必死の
1
まず日本の製造業の
歴史と現状を考えて
みよう
―変貌を遂げている製品開発
努力を重ねているのも事実だ。設計業務のあるべ
き姿については頻繁に議論も交わされてきている。
参考までに,表 1・1 はアウトソーシングとし
て設計業務を受けた企業の設計者の声を拾ってみ
たものである。苦渋に満ちた声が聞こえてくる。
なぜこのような声が囁かれるのか? それは,
設計の業務が極めて広範囲に渡るようになったに
もかかわらず,旧態依然たる姿勢から抜け出てい
ないからではないか。しかも,人手不足がそれに
拍車を掛けている。急遽設計業務を委託された人
にとっても,何が何だか分からないうちに仕事の
みが進んでいくのが実情ではないか。その一方で,
多岐に渡るようになった設計業務全般を見据え得
る組織体系作りやワークフローの管理が疎かにな
っているのも起因しているのではないか。
本稿では,設計業務に就く人の頭の片隅に少し
表 1・1 設計現場の声
埼玉大学 大滝 英征*
*おおたき ひでゆき:名誉教授,日本機械学会フェロー・名
誉員
第 59 巻 第 3 号(2015 年 3 月号)
・発注元は設計ができない。
・設計を分かっていないのに方法論は指定してくる。その
指定された方法論を無視するわけにもいかない。
・一応計算結果などを用意して,問題点を発注元に説明す
る。それでも「言われた通りにしろ」と言われる。
・当然,こちらとしては,指定方法で作業を進めた場合に
生じる問題に対し,何らかの安全策を盛り込むことにな
る。業務は煩雑化するばかりだ…
・言われた通りに作業したのに,ミスがあると責任を負わ
される。どうしたらいいんだ…
109