特別企画 4

特別企画
これだけは頭に入れておきたい
新入設計者のための機械設計
の心得(中)
装置を分解する過程を踏まえ構成を考える
前号の第 2 章で,装置開発に当たっては,機能
展開表(機構展開表)の作成が重要であることを
述べた。機能展開表は機械と一体で考えなくては
ならない。その際,
“機械とはそもそも何物だ”
ということに行きつく。現在,大学で機械工学を
履修した人以外の人達も機械設計に就いている。
そこで,機械装置の構成を今一度,原点に立ち返
ってみたい。
機械装置には必ずエネルギーの変換部分が存在
する。そのエネルギー変換部での作動流体との熱
量差が外部からのあるいは外部への仕事量となる。
このエネルギー変換部が存在しないものは,単な
る構造体(換言すればクラフト)と見做される。
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そもそも機械とはどん
なものか
―機械装置の機能を検証し具体
的な構造モデルを考える
従って,エネルギー変換部は必ず故障もするし劣
化もする。機械の信頼性,安全性を検討する際に
は,この構造の機能を適確に把握しておく必要が
ある。
機械の構造把握は,構成する物体を徐々に分解
してみると分かりやすい。修理屋が行う過程を思
い浮かべれば良い。例としてエンジンについて述
べてみる。
①の段階:
車を構成する主要な素であるエンジンを対象と
する
②の段階:
①の段階で得たエンジンをさらに分解すると,
● シリンダ
● ピストン
● クランクシャフト
● ピストンロッド
などのユニットあるいはサブユニットと呼ばれ
る部品で構成されているのが分かる。
③の段階:
②のユニットをさらに分解する。すると,例え
ばピストンロッドは,
● ねじ継手
埼玉大学 大滝 英征*
*おおたき ひでゆき:名誉教授,日本機械学会フェロー・名
誉員
第 59 巻 第 4 号(2015 年 4 月号)
● 軸受
● ロッド
などの部品で構成されているのが分かる。他の
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