音の可視化によるデライトデザイン技術に関する研究 デライトデザインというのは、我々が製品を使ったときに、ワクワクするとか、ドキドキす るとか、心地よい、といったような感性を刺激するような製品を設計することを言います。 これまでの製品は、性能や価格などで競争してきました。自動車の性能でいえば、燃費や安 全性、馬力などですね。しかし、このような性能重視だけでは製品が売れない、あるいは、 高く買ってもらえない時代になりました。 それで、ユーザーの感性に響くような製品を開発することが重要になっています。その中で も「音」に対する取り組みが注目されています。 先日の WBS というニュース番組で取り上げられていました。 http://wbslog.seesaa.net/article/412145416.html 下の写真は、東京オートショーで展示されたトヨタのスポーツカーですが、上からぶら下が ているのはヘッドホンで、自動車の音を聞かせています。このスポーツカーは、音を耳だけ ではなく、全身で感じるための仕組みが、エンジンルームに組み込まれています。 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1501/14/news043.html 鈴木・大竹研究室を中心として、昨年の10月から、設計者が、このようなデライトデザイ ンを行うのを助けるための技術開発プロジェクトがスタートしました。 ここでは、従来自動車メーカーのような巨大企業でしか取り組めなかったデライトデザイ ンの手法をデジタル化し、 多くの人に使ってもらえる、新しい CAD システムを開発します。 そのためには、製品から出る音と、ユーザーの感じ方をモデル化する必要があります。これ は中々難しい問題なのですが、このプロジェクトには、多くの専門家が参加しており、力を 合わせて、それを解決します。 その中で、製品からどのような音が、どこから出ているかを、より正確に計測し、モデル化 することが基本となります。本卒論では、下の写真のような、 「音の可視化」装置を導入し、 “ビームホーミング”という技術を使って製品からどのような音が出ているかを調べます。 この扇風機のようなところに、 50本くらいのマイクロホンが 着いています。 https://www.youtube.com/watch?v=e3zc5rwe8Vw マイクの音を解析することによ って、どの方向から、どのくら いの音が出ているかを可視する ことができます。 しかし、この方法はある1方向から聞こえる音のデータしか計測できないので、製品音を設 計する上では不十分です。また、 “方向”しか分からず、音源の位置までは特定ができませ ん。卒論では、対象物の3次元スキャンデータも利用し、複数方向からの計測データを統合 することによって、製品の3次元的な音源分布を解析する方法について研究します。 新素材部品のための内部 3 次元構造のモデリングに関する研究 3D プリンタのような技術によって、部品を製造する技術は Additive Manufacturing と呼 ばれます。様々な分野への利用が期待されており、特に、(言うまでもありませんが)従来 の製造技術では作れなかったような部品への適用が期待されています。 そのような部品の一つに、複雑な内部構造をもった部品があります。下の写真は、例題です が、従来 かたまり として設計されていたものを、格子構造にして、軽量化や熱対策をし ているものです。 www.fit-production.de ここで問題になるのが、このような格子構造をどうやって設計するか、ということです。格 子構造は、スケールによって以下のように分類できますが、難しいのはちょうど真ん中あた りのスケールになります。 © George Allen, SIEMENS 本卒業研究では、立体の内部をあるパタンで埋める、という問題を扱います。一定のパタン で埋めることはあまり難しくないのですが、設計者の要求に対して、格子の大きさを場所に よって変えたり、格子の方向(配向)を変えたりすることができるような手法について研究 したいと思います。 特に、鈴木・大竹研究室では、次世代航空機エンジン部品で利用される CMC (Ceramic Composite Matrix)という複合材料によるものを研究しています。 http://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000H24/121129_koukuuki/kouk uu5-8-4-1.pdf こ れは、特殊な素材でできた布(織物)を3次元的に組み上げて作る部品で、部品の形が決ま った時に、どのようにして3次元的に織物を校正して行くか、という設計問題を解く必要が あります。そのような部品の設計に適用できる技術の開発を目指します。現在商用のソフト ウェアに、netfabb というものがあり、 http://www.netfabb.com/structures.php 基本的な機能が実現されていますが、CMC は格子構造としては厳しい条件をもっており、 その条件を満たすような構造を生成することが問題となります。 鈴木・大竹研究室では、このように設計問題をデジタル技術で解決するデジタルエンジニア リングに取り組んでいます。興味のある学生諸君の参加を期待しています!
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