不動産のお役立ち情報 機械式立体駐車場の安全対策

不動産のお役立ち情報
2014 年 8 月 1 日
機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン
~駐車場利用者への注意喚起を徹底しよう~
機械式立体駐車場における一般利用者等の死亡・重傷事故は後を絶たない。このような痛ましい事故
を二度と起こさないために、国土交通省は、平成 26 年 3 月に「機械式立体駐車場の安全対策に関する
ガイドライン」※1 を策定した。ガイドラインでは、機械式立体駐車場に関わる各主体者が協力して安全
確保と安全利用に取り組むために、製造者・設置者・管理者・利用者の各主体に分けての取組みを示し
ている。駐車場を提供するビルオーナー及び利用するテナントとして、取り組むべきポイントを確認し
ていこう。
■どのような事故がどこで起こっているのか
【図表 1】は、平成 19 年 6 月から平成 26 年 1 月の間に起きた事故件数を表している。全件数は 207
件で、そのうち重大・致命的な事故については 26 件にも及ぶ。発生状況は、
「装置内に人がいる状態で機械が作動」115 件(56%)
【図表 1】報告事象の発生状況(計 207 件)
「人の乗降・歩行時の転倒・落下」23 件(11%)
「車両の入出庫時の衝突」16 件(8%)
「車両もしくはパレットが作動中に落下」14 件
(7%)と続いている。
【図表 2】は、事故の発生状況と発生要因につい
てまとめた表である。主な発生要因は、
「無人確認不足」91 件(44%)
「機械・電気の不良・劣化」31 件(15%)
「障害物」「不適切な自動車運転」「不適切な操作」
が各 16 件ずつ(各 8%)となっている。
【図表 1】
【図表 2】を合わせ見ると、操作する人の
ヒューマンエラーにより多くの事故が起きている
ようだ。
出所:国土交通省
※1
【図表 2】報告事象の発生状況と主な発生要因
発生要因
報告事象
装置内に人がいる状態で機械が作動
人の乗降・歩行時の転倒・落下
車両の入出庫時の衝突
車両もしくはパレットが作動中に落下
装置の非常停止
作動中の装置に侵入・接触
パレットが作動中に傾き
車両・パレット等機械装置が作動中に接触
その他
合計
※1
機械・電
無人
気の不
確認不足
良・劣化
91
不適切な
不適切な 危険源へ 制御設定
収容車
障害物 自動車運
外部侵入
その他
操作
の接近 の不備
制限超過
転
3
1
2
9
5
10
1
16
13
2
1
4
1
1
1
2
7
91
7
2
2
31
…平成 26 年 3 月 28 日付国土交通省報道発表資料
16
16
5
5
2
1
16
13
1
1
7
6
合計
2
115
23
16
1
14
2
10
8
7
2
6
4
8
5
6
207
※
出所:国土交通省 1
http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi09_hh_000022.html
※当記載の内容などは作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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1
【図表 3】報告事象の発生場所(計 145 件)
【図表 3】は事故の発生場所割合を表している。主
な発生場所は、「マンション駐車場」39%、「テナント
用駐車場」19%となっており、全体の 58%を占めてい
る。これらの駐車場は、利用者自身で操作を行う二段
式・多段方式の駐車場を設置しているケースが多く、
一人での操作中に事故が発生している事が考えられる。
同タイプの駐車場を利用する人は、一人操作の危険性
を認識しておこう。
※
出所:国土交通省 1
■安全確保と安全利用のポイント
ガイドラインでは、製造者・設置者・管理者・利用者の各主体に分けての取組みを策定している。今
回は、この中からビルオーナーとテナントの取り組むべきポイントを取り上げて説明したい。
1. ビルオーナーの取組み
ビルオーナーに対しては、「設置者」及び「管理者」※2 として、2つの立場での取組みが示されてい
る。
<ポイント①>
ハード面の安全確認をしてみよう
危険な場所が存在していないか、注意喚起は掲示されているか。今一度、現場を見てみる事で、
新たな目で気づく事も多いはず。気になる部分を発見した場合は、直ちに安全対策を講じよう。
<ポイント②>
メンテナンス状況を確認しよう
メンテナンス契約をメーカーと締結しているか、実際の点検結果で不具合等が出ていないか、指
摘がある部分は改善されているか、管理責任者を選任しているか。また、緊急時にどのような対
応をとればよいかを現地に明示しておこう。
<ポイント③>
テナント(利用者)へ正しい操作方法の説明・注意喚起を再度行おう
利用者の間違った操作方法・注意不足の状況を解消するために、ビルオーナーとして、利用者を
特定する事、書面できちんと操作説明を行なう事、操作説明を受けていない利用者には使わせな
いなどの対策を行おう。
ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)で、ビルオーナー用チェックリストを
作成したので紹介する。所有物件の現在の状況について、チェックリストを活用して、確認してみよ
う。「NO」が付いた項目については、早めに対応策を検討しよう。
※2 …管理者とは、ビル管理会社の事ではなく、建築物の維持管理上の権原をもつ者をいう。
※当記載の内容などは作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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2
ビルオーナー用チェックリスト
分類
YES
NO
項目
・立体駐車場に必要な安全装置を備えている(最新の安全機能を備えている)
・装置の出入口及び周囲には、適切な柵等が設けられている
駐車場設備
・柵等は、隙間から装置稼働部に手や足等が届かない構造となっている
・安全に乗降りできるスペースが確保されている
・夜間も安全に利用出来るように照明設備は設置されている
・メンテナンス契約を結び、定期的にメンテナンスを実施している(1回/1~3ヶ月)
管理
メンテナンス
・メンテナンスにより指摘された不備箇所については補修を行っている
・管理責任者を選任し、装置の見やすい場所に掲示できている
・テナント(利用者)に対して、正しい操作方法・注意事項遵守の説明を書面で行っている
テナント
・利用者制限をおこなっている(説明を受けた者のみ操作可とする等)
・利用者が見える場所に注意喚起表示を行っている
出所:ザイマックス不動産総合研究所
2. テナント・利用者の取組み
テナントに対しては、「利用者」としての取組みが示されている。以下の点に留意して操作する事が
必要である。
<ポイント①>
利用するすべての人に、操作方法・注意事項をきちんと共有しよう
テナント窓口担当者だけではなく、利用者すべてに説明が伝わるよう、社内で情報共有を行う。
機械式立体駐車場の操作自体が重大事故に繋がる可能性を秘めた行為である事を再認識する事
も大切である。
<ポイント②>
装置内に人がいないか、近くに人がいないか、必ず安全確認を行った上で操作
しよう
普段何気なく操作してしまいがちだが、周りに危険が潜んでいる事を認識し、安全確認を十分に
行った上で操作をしよう。
<ポイント③>
ボタン押し補助器具等※3 を使っての不適切な操作は絶対にしない
操作を行う人が、その場を離れる事は大変危険な事である。危険を察知した際も、機器を止める
事が出来ずに重大な事故に繋がってしまう。不適切な操作は絶対にやめよう。
ビルオーナー用と同様、テナント(利用者)用チェックリストをご紹介する。これを活用して、利用
者に機械式立体駐車場の利用方法が浸透しているか、安全対策の指導出来ているか、徹底を図ろう。
「NO」が付いた項目については、必ず改善して操作を行おう。
※3 …機械式立体駐車場の操作ボタンをパレット到着まで押し続ける器具等
※当記載の内容などは作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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3
テナント(利用者)用チェックリスト
分類
YES
NO
項目
・説明を受けた人のみ利用者と限定している(操作説明を受けていない者は絶対に操作しない)
・ボタン押し補助器具等の不適切な器具は絶対に使用しない
利用者
・装置内に人がいないか自ら必ず確認した上で操作を行っている
・付近に子供が近づいていないか必ず確認している
・酒気を帯びた者は、絶対に装置を取り扱わない
出所:ザイマックス不動産総合研究所
■おわりに
駐車場に関するリスクとしては、法的責任が及ぶことにも留意しておきたい。製造者責任※4、説明義
務違反、注意義務を怠った過失等、さまざまな裁判事例もある。今後はガイドラインの策定により、今
までよりも高い注意義務が求められていくだろう。
今回策定されたガイドラインでは、機械式立体駐車場の製造から利用まで、関係するすべての人が一
丸となって取り組むべき問題として、「多重安全」という考え方が提起された。ビルオーナー・テナン
トとしても、自らの問題として現状を正しくチェックし、安全対策に取り組んでいきたいものだ。
以上
※4 …平成 26 年 7 月 25 日付「駐車場法施行規則の一部を改正する省令」で安全基準等についての内容が盛り込まれた。
平成 27 年 1 月 1 日施行予定。
http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi09_hh_000025.html
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