原子力基礎工学研究 4 - 13 炉内 IASCC 試験キャプセルのための技術開発 -原子炉の安全を評価する研究のために- (a) (b) 図 4-28 セル内キャプセル組立 (a)予備照射した試験片を炉内試験キャプセルに組み込み、 (b)セル内にて遠隔操作型 溶接機によりキャプセルの組立溶接を行います。 㻝㻜㻜㻜 㻡㻜 㻝㻜㻜 㻤㻜㻜 㻠㻜 㻤㻜 㻠㻜㻜 (MPa) 㻞㻜㻜 㻜 㻞㻜㻜 㻞㻜(%) ● ■ ● 㻞㻢 㻞 ▲ 㻝㻚㻜㽢㻝㻜 㻌㼚㻛㼙 㻞㻢 㻞 ■ 㻞㻚㻡㽢㻝㻜 㻌㼚㻛㼙 㻞㻢 㻞 ● 㻟㻚㻥㽢㻝㻜 㻌㼚㻛㼙 㻟㻜㻜 㻠㻜㻜 㻡㻜㻜 試験温度 (K) ● ■ ▲ 㻝㻜 㻜 㻢㻜㻜 SCC 㻢㻜 破面率 㻟㻜 全伸び 降伏応力 㻢㻜㻜 ● ■ ▲ ● (%) Ỉ୰㻿㻿㻾㼀䠄⁐Ꮡ㓟⣲䠙㻤∼㻟㻞㻌㼜㼜㼙䠅 ୰ᛶᏊ↷ᑕ㔞䠖㻌㻞㻚㻜∼㻟㻚㻥㽢㻝㻜㻞㻢㻌㼚㻛㼙㻞 ヨ㦂 ᗘ㻚䠖㻌㻠㻞㻟∼㻡㻟㻟㻌㻷 㻠㻜 㼀㼔㼕㼟㻌㼟㼠㼡㼐㼥 㻷㼛㼐㼍㼙㼍㻌㼑㼠㻌㼍㼘㻚 㻺㼍㼗㼍㼚㼛㻌㼑㼠㻌㼍㼘㻚 㻞㻜 㻜 㻟㻜㻜 㻠㻜㻜 㻡㻜㻜 試験温度 (K) 㻢㻜㻜 図 4-29 空気中における引張試験結果 想定された高い照射量を受ける材料は、推定される予備照射中 のキャプセル外筒管の温度において十分な延性を示しました。 図 4-30 低速ひずみ試験(SSRT)より求めた SCC 破面率 想定された高い照射量を受ける材料において、推定される予備照 射中のキャプセル外筒管の温度では SCC は観察されませんでした。 照射誘起応力腐食割れ(IASCC)は原子炉炉心構造 材の安全を考える上で最も重要な課題のひとつです。そ の研究のために材料試験炉(JMTR)の炉内照射試験 で IASCC 挙動を再現したき裂進展試験を行うことが予 定されています。この試験を実施するためは試験片を IASCC しきい値以上に予備照射し、セル内にて別の炉 内試験キャプセルに再装荷し、組み立てる必要があります。 これを実現するためには、二つの課題を解決しなけれ ばなりません。一つは遠隔操作によりセル内で照射キャ プセルの溶接,組立を行う技術の確立であり、もう一つ は長期にわたり JMTR 炉内で照射を受ける予備照射用 キャプセルの構造材の健全性評価です。 まず、セル内でキャプセルを溶接するため新たにキャ プセルを回転させて周溶接を行う遠隔操作型溶接機を開 発しました。健全な溶接を実現するために、回転速度と 溶接電流をパラメータに試行を繰り返しましたが、通常 の溶接では健全な周溶接を行うことができませんでし た。そこで、一周目に予熱的に溶接熱をかけ、二周目に 本溶接を行う二周法溶接を行うことでキャプセルを溶接 し組み立てることができるようになりました。キャプセ ル組立溶接作業の写真を図 4-28 に示します。 次に、試験片の予備照射を行う予備照射用キャプセル の構造材の健全性評価を行いました。これは予備照射を 行うときには試験片だけではなくキャプセルもIASCC のし きい値以上の照射を受けることになるため、重照射を受け るキャプセル材料の健全性を確認する必要があるためで す。キャプセルと同じステンレス材を使用し、JMTR 炉内 に 20 年以上設置され中性子照射量 1.0 ∼ 3.9 × 1026 n/m2 の照射を受けた材料から試験片を製作し、空気中におけ る引張試験及び水中における低速ひずみ試験(SSRT) を実施しました。図 4-29 に空気中における引張試験結 果を、図 4-30 に SSRT より求めた試験片の SCC 破面 率を示します。予備照射中のキャプセル外筒管温度は 解析より 423 K なので、この結果と比較すると IASCC しきい値以上の重照射を受けた予備照射キャプセルの構 造材は使用温度において十分な延性を示し、SCC 破面 を示さないことが確認されました。これら二つの課題を 解決したことにより、原子炉の安全を評価するうえで重 要である寿命管理の研究に必要な炉内 IASCC 試験を実 施することが可能となりました。 ●参考文献 Shibata, A. et al., Development of Remote Welding Techniques for In-Pile IASCC Capsules and Evaluation of Material Integrity on Capsules for Long Irradiation Period, Journal of Nuclear Materials, vol.422, issues 1-3, 2012, p.14-19. 原子力機構の研究開発成果 2014 61
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