中畑龍俊

中畑龍俊
京都大学 iPS 細胞研究所(CiRA)副所長
臨床応用研究部門特定拠点教授
略歴
昭和
45 年
昭和
50 年
昭和
53 年
昭和 55-57 年
昭和
60 年
平成
3年
平成
5年
平成 11 年
平成 22 年-
信州大学医学部医学科卒業
信州大学医学部小児科助手
飯田市立病院小児科医長
米国南カロライナ医科大学血液内科リサーチフェロー
信州大学医学部小児科講師
同助教授
東京大学医科学研究所癌病態学研究部教授
輸血部長、小児細胞移植科長兼務
京都大学大学院医学研究科発達小児科学教授
京都大学 iPS 細胞研究所副所長、臨床応用研究部門特定拠点教授
主な学会活動
日本小児科学会(H18 まで理事、代議員)
日本小児血液学会(前理事長、H16 会長、名誉会員)
日本炎症・再生医学会(前理事長、H15 会長、名誉会員)
日本血液学会(H21 まで理事、H21 会長、名誉会員)
日本造血細胞移植学会(H21 まで理事、H12 会長、名誉会員)
日本遺伝子治療学会(理事、評議員)
日本再生医療学会(H21 まで理事、特別会員)など多数の役員
各種委員
日本学術会議連携会員
理化学研究所バイオリソースセンター材料検討委員会委員長
厚生科学審議会「ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方」に関する委員会前委員長
医薬品医療機器総合機構(PMDA)科学委員会委員、細胞組織加工製品専門部会部会長
日本専門医制評価・認定機構チーフサーベイヤーなど多数の役員
受賞
Awards: Mortimer M. Bortin Awards (1995 年、臍帯血造血幹細胞研究に対して)
iPS細胞を用いた今後の医療
中畑龍俊
京都大学 iPS 細胞研究所(CiRA)副所長・臨床応用研究部門特定拠点教授
2006年、京都大学の山中教授らはマウス成熟皮膚細胞にたった4つの遺伝子を導入すること
により、旺盛な自己複製能と多分化能を持った人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem
cell:iPS 細胞)の樹立に成功した。翌年彼らは、同様の手法を用いてヒト皮膚細胞からヒト iPS 細胞
が樹立可能なことを示した。この功績、すなわち「成熟細胞が初期化さ れ多能性を も ち 得る こ と
の発見」に対し て、2012年山中伸弥教授にノーベル生理学・医学賞が贈られた。
iPS 細 胞 は 1)旺盛な 増殖力を 持つ 、 2) ほ ぼ全て の細胞・ 組織 に 分化で き る 多能 性
(pluripotency)を 有する , 3)だれの成熟し た体細胞から も 樹立でき る , と いう 特徴を 持っ て い
る 。 iPS 細胞から は体外で心筋、 神経、 肝細胞、 膵β細胞、 様々な血液細胞、 骨、 軟骨、 内
分泌細胞など 様々な細胞を 分化・ 作出する こ と ができ る こ と から 、 再生医療の恰好な材料と
して期待されている。研究が進展した現在では、皮膚、末梢血液、骨髄、臍帯血などをソースとして、
さまざまな方法で iPS 細胞が樹立できるようになり、より安全な iPS 細胞作製法が確立さ れてき た。
ま た、多く の他家移植に使える よ う な健常人から の HLA ホモ iPS 細胞スト ッ ク の構築など 実
際の再生医療の開始に向けた広範な 検討が進んで いる 。 既に多く の疾患に対し て ヒ ト iPS
細胞由来の細胞を 用いた前臨床試験が行われ、 本年 9 月、 加齢黄斑変性の患者さ んに iPS
細胞から 分化さ せた網膜色素上皮細胞を 用いた再生医療が行われた。
iPS 細胞の持つ医療における も う 一つの画期的な点は、 さまざまな疾患の患者皮膚や血液から
疾患特異的 iPS 細胞を樹立できることである。疾患特異的 iPS 細胞から疾患に関係すると考えられ
る細胞に分化させ、その過程を正常 iPS 細胞と詳細に比較することにより、今までと全く違った手法
で疾患の本体に迫ることが可能となり、病因・病態の解明および新規薬剤や治療法の開発に応用
されることが期待されている。本講演ではわが国における iPS 細胞を用いた再生医療の現状、我々
が行っている疾患特異的 iPS 細胞を用いた研究を紹介し、iPS 細胞を用いた今後の医療の可能性
について考えてみたい。