ふかめよう 特別支援教育

平成 25 年度
特別支援教育コーディネーター指導者養成研修講座のまとめ
[養護教育センター]
ふかめよう
特別支援教育
~特別支援教育コーディネーターのための Q&A~
Q1
校内委員会は、どのように運営したらよいでしょうか?
Q2
校内研修は、どのように計画したらよいでしょうか?
Q3
ケース会議は、どのように進めたらよいでしょうか?
Q4
校内支援体制では、具体的にどのような支援を行えばよいでしょうか?
Q5
担任への具体的な支援の方法には、どのようなものがありますか?
[担任への支援
ワンポイント]
Q6
専科職員等(担任以外)の職員は、どのような支援ができますか?
Q7
TT の支援体制は、どのようなものがありますか?
Q8
情報の収集と職員への情報発信は、どのようにしたらよいでしょうか?
Q9
保護者との連携はどのようにしたらよいでしょう?
Q10 実態調査シートは、どのように活用すればよいでしょうか?
Q11 「個別の指導計画」は、どのように工夫して記録していますか?
Q12 評価は、どのようにしたらよいでしょうか?
[子どもの支援方法・指導法
ワンポイント]
はじめに
養護教育センターでは、特別支援教育コーディネーター向けの研修として、新任特別支援コーディ
ネーター研修(3 回)
、特別支援コーディネーター研究協議会(2 回)と特別支援コーディネーターの
経験者向けに本講座「特別支援コーディネーター指導者養成研修講座」(4 回)を開講しています。
また、これまでに本市の特別支援教育を確かなものにするために 4 冊のリーフレットも刊行し、全
教員に配布してきました。
平成 19 年度から始まった特別支援教育の考え方もほぼ定着してきたと思われます。しかし、運営
していく上で困ったり、悩んだりしている学校も多くなっている現状から、刊行してきたリーフレッ
トには書かれていない点について、詳しく知りたいという要望も出されるようになってきています。
そこで、本研修講座の受講者の皆さんに協力いただき、「特別支援教育コーディネーターのための
Q&A」として、12の質問を作成し、これまでの疑問に答える形で、より工夫できそうなことを提案
することにしました。
資料を作成していただいた受講者の皆様、さらには、講師としてご助言くださった養護教育センタ
ー学校訪問相談員の田中敏明先生に、深く感謝申し上げます。
平成 26 年 3 月末日
平成 25 年度特別支援教育コーディネーターの指導者養成研修講座
受講生・講師
若松小学校
古賀
一生
小谷小学校
石井百合子
稲丘小学校
齋藤
朋子
扇田小学校
岡田 直子
横戸小学校
林
直美
高洲小学校
山路 里美
あやめ台小学校
市原
尚子
花見川第二中学校
廣森 貴恭
幸町第一小学校
浅場
宏子
打瀬中学校
橋本 英子
みつわ台南小学校
柳澤
典子
講師:
養護教育センター
学校訪問相談員 田中
担当:
養護教育センター
指導主事
久保木 修
敏明
先生
Q1
校内委員会は、どのように運営したらよいのでしょうか?
(1) メンバー
校長、教頭、教務主任、各学年から1名、養護教諭、専科教諭、教育相談主任、(生徒指導主任)
特別支援学級担任、特別支援コーディネーター
など、全職員で共通理解を図ることが大事です。
(2)内容
校内委員会・会議
内
① 年間行事予定に年度
容
第1回校内委員会 新学級への引き継ぎ
初めに校内委員会を
職員会議
いれてもらう!
提案
→
年間計画
スクリーニングの仕方
② 緊急性がなくても開
個別の指導計画の作成の仕方
第2回校内委員会 スクリーニングの結果をまとめ、報告
職員会議
催し、各学年の様子
を聞く。
支援の必要な子への共通理解
運動会での支援について提案
(支援を要する児童は、運動会練習や本番は苦手な行事になってくる。練
習が始まる前に、資料「ソーシャルスキル編Ⅱ」p16~p23に運動会
のことがのっているので一読し、個別の指導計画を立ててもらう。)
第3回校内委員会 ケース会議(指導の経過について)
研修
(特別支援教育についての資料の読み合わせ)
第4回校内委員会 ケース会議(指導の経過について)
指導計画の前期のまとめ(指導の評価と後期の方向性の記入)を各担任の
先生にお願いする。(その際、実態調査シートでチェックして伸びた所、
足りない所を見つけてもらう。)
第5回校内委員会 後期の個別の指導計画の立案(見直し)
第6回校内委員会 ケース会議(指導の経過について)
第7回校内委員会 振り返りのための名簿を各学年に渡す。次年度への引き継ぎもあるので、
学年で話し合ってもらうように伝える。(有効な手立て、言ってはいけな
いことなど)
第8回校内委員会 今年度の振り返り
支援を要する児童の話を各学年から聞く。
今年度の反省と来年度に向けて話し合う。
(3) 役割
・早期の気づき
・校内研修の推進
・実態把握
・個別の指導計画の作成(支援の手立ての検討)
・保護者との連携
・外部機関との連携
Q2
校内研修は、どのように計画したらよいでしょうか?
研修には、外部から講師を招く方法と校内で進める方法があります。外部から講師を招いた場合は特別
支援教育の概論や動向、支援方法など専門的な話を聞くことができ、校内で行う場合は具体的事例に沿っ
て進められる良さがあります。最近では、大学を出たばかりで新たに教師になった人も、長く教師を続け
ている人も、等しく新しい支援方法に触れる機会が必要と認識されるようになり、どの自治体でも教員研
修会の充実が図られるようになってきました。特に特別支援教育は、特別支援学級・学校のみでなく、通
常の学級における特別支援教育の定着や発展のためにとても重要な研修です。
現在、特別支援教育の研修会の内容として、①~④までが考えられます。
① 理解・啓発に関するもの(発達障害の特性、対応の基本を学ぶ等)
② 指導法に関するもの(学力、社会性、行動などのへの指導法等)
③ 自己研修の一貫として、公開セミナー等に参加した内容に関するもの
④ 学級づくり、集団づくりに関するもの
☆校内研修会実施に向けての取り組み☆
教師が各自のスキルと必要性に応じて選択できることが
どの教室にも支援を必要とし
望ましいです。(テーマは、明確に!)
ている子どもたちがいるという
〈例〉
・学級でできるユニバーサルデザインの視点
前提で、学ぶことを忘れないよう
・対象児への支援と評価法
にしましょう。
校内で指名されている特別支援コーディネーターの出番です!
新年度の4月が大切です。
研究主任と相談して日時等を決定しましょう。
講師に指導いただく内容と受講
講師や専門家等から支援策をしっかりと学び、今悩ん
者の要望のマッチングを十分に考
でいることを素直に語れ、学んだことをそれぞれの場で
えて、研修会を運営しましょう。
自信をもって実践していけるようにしていきましょう。
外部講師を依頼する場合
校内で進める場合
① 研修会の目的を明確に伝える。
☆ ケース会議(Q3 参照)
② 内容について講師のアイデアを聞き、や
☆ 特別支援教育校内委員会
りとりする機会を設定する。
(電話・メール)
養護教育センター指導主事・通常の学級/特別支援学級の担当者・特別
支援学校のコーディネーター、医療や療育機関・福祉や保健に関わる
機関の職員 等
☆ インシデント・プロセス法等による事例検
討
☆ 生徒指導コーナーの掲示等での情報交換
(全職員で共通理解を図る。)
参考資料『通常学級での特別支援教育のスタンダード』
(東京書籍)2010.8
Q3
ケース会議は、どのように進めたらよいでしょうか?
<できることから>
「とにかくケース会議をやらなくては・・・」ということではありません。ケース会議は、あくまでも
児童生徒を支援するためのツールなのです。
「ケース会議を行ったから、支援ができた」ではなく、ケース
会議を経て、実際にどのように職員が動けたのか、児童生徒を支えられたのか、ということが、最も大切
なことです。
「できることから、一つずつ」を合い言葉にして、具体的な支援を積み重ねていきたいものです。
「こんな時にどうしたらいいの?」と必要な時に会を開き、支援を検討できることが
大切です。一人で抱え込むことなく、関わりのある人たちで小さなチームを作って対応
してみましょう!
<チーム支援>
「一人の児童生徒のために、一人の教職員が親身になって寄り添い、支援策を考える。」これは、有効
的な支援方法の一つです。しかし、二人、三人・・・と、複数の職員で児童生徒を見つめることで、そ
こから様々な支援策が生まれ、よりしっかりとした多面的な支援ができるはずです。「チームでの支援」
を念頭に、ケース会議の場でお互いに力を合わせていくことが望ましいことです。
〈例
時配
5分
話し合いの過程を、視覚的に
ケース会議の流れ 45 分バージョン〉
活
動
道
具
①はじめに
やすくなります。児童生徒の得
意なことや困り感が明確にな
○会議の目的・ねらい
・ホワイトボード
・出席者との役割分担の確認
・マーカー(黒)
・会議時間の目安の確認
10分
まとめていくと、情報が共有し
ると、話し合いが活発になり、
支援策のアイデアが生まれや
すくなります。
②情報交換
○事例提供者からの状況報告
・付箋
付箋は、参加者メンバ
ーに、支援のアイデアな
(情報の追加・整理)
どを書いてもらう時に活
25分
用します。
③支援策の検討
○行動の要因の検討
・時計、タイマー
○具体的な支援策の検討
・マーカー(カラー)
・セロハンテープ
5分
④まとめ
・マグネット磁石
○決定事項とその周知方法の確認
・デジタルカメラ
(次回の開催日の確認)
短時間で有意義なケー
ス会議を行うために、時計
やタイマーを活用します。
また、デジタルカメラで、
撮影すれば、記録も簡単に
参考資料『はじめようケース会議』
(神奈川県立総合教育センター)H21.3
なります!
Q4
校内支援体制では、具体的にどのような支援を行えばよいでしょうか?
◎コーディネ―ターは、支援を必要とする児童・生徒のために、次のような支援体制をとることができま
す。学校の実態に応じて、できるところから始めてみましょう。
※具体的な受け入れルートを校内で確立することで、担任の精神的な負担を軽減できます。
※該当児童・生徒にとっては、
「自分が○○になった時、○○したい時」に、誰が相手をしてく
れるのか、どこでクールダウンが可能なのかが分かっていることが大切です。
<ある学校での校内支援体制の取り組み>
認める・褒める・長所を見つける。
児童・生徒
適切な対応(温かい気持ちで関われ
るような学級経営、集団作り)
該当児童の観察
(朝の会・給食・休み時間・空き時間等)
担
任
(学習中、お遣いに行く)
担任の困り感の把握・担
(休み時間に話をしに行く)
任へのアドバイス
コーディネーター
保護者
事務室職員
ーー
保護者の希望や
※児童・生徒の受け入れ場所を
悩みの把握
増やすための支援の要請。
支援の相談・要請
(指導せず、受け入れる職員の存在)
「事務室の中には入れない」を確認。
校長・教頭・教務・養護教諭・空き時間の職員
入り込み指導
取り出し指導
T2 として、学級に
空き教室等を利用し
入り、集団内での個別
て、個別的対応での支援
支援を行う。
を行う。
※集団内で困り感を把握
※個別の指導計画を元に、
保護者の
したり、個別支援をした
了解のもと、
個別支援を行うこと
りする。
もある。学習の補充等を行う。評
価については、Q12 参照。
クールダウンのための
預かり
クールダウンできるま
で預かって見守る。
※落ち着かなくなったと
きに集団から離し、安全
に配慮しつつ対応する。
Q5
担任への具体的な支援の方法には、どのようなものがありますか?
◎特別支援教育コーディネーターは、担任をしっかりと支援しながら、学校全体の職員間の支援方向をよ
りよく導いていく案内役です。
※担任から支援要請の声が上がるのを待つだけでなく、コーディネーターが率先して、学校全体の
実態を把握し、困り感が小さいうちに対処していきましょう。(早め早めの対応)
褒める
認める
児童・生徒
褒める・認める
褒める
認める
学習支援員
校内職員
担 任
・特別支援
(空き時間に学級に
入って支援)
(教科担任の観察)
教育指導員
同一の
同一の
支援方向
支援方向
等
コーディネーター
<ある学校での取り組み>・・・コーディネーターが担任外(少人数指導等)の場合
(4月)①職員会議で、校内支援体制を提案する。
②朝、休み時間、給食、空き時間等に各学級の様子を観察する。気になる児童・生徒がいる学級
の担任に言葉をかけ、毎日の様子を把握する。校長、教頭、教務、養護教諭とも、連絡を密に
取り合う。
③指導員がついている児童の担任や指導員と連絡を密に取り合い、両者の支援の方向性が同じに
なるよう双方の相談相手になる。
(5月)①各担任が記入した「支援区分シート(A 全校支援、B 部分的支援、C 学級・学年支援)
」に基づ
き、校内委員会で話し合い、全校の児童生徒の実態把握をする。
②担任による、気になる児童への観察・変容の報告。(校内委員会にて)
(6月)①「A 全校支援」の対象児の実態分析を担任がする際、担任が実態を取りにくい部分を、コーデ
ィネーターが手伝って実態把握をする。
(7月)①担任が、保護者の願いや担任の支援方法をまとめて「個別の指導計画」を作る際、具体的な計
画例の例示等をしたり、場合によっては、担任と一緒に指導計画を立てたりする。
※緊急性の高いと思われる児童・生徒については、臨時の校内委員会を開催し、指導の方向性を決
める。担任だけの判断ではなく、学校としての方向性を打ち出す。
※コーディネーターは、普段から各学級担任との情報交換を密にし、
担任が相談しやすい関係を作っておくことが大切です。
担任への支援
ワンポイント
☆言葉をかける、話を聞く☆
初めてコーディネーターになった方やまだ経験の浅い方は、必ずしも自分が的確にアドバイスしな
ければならないとプレッシャーに感じる必要はありません。担任の先生は子どもが落ち着かないこと
やトラブルばかり起こすことを“自分の責任・力不足”だと考え、悩んでいるかもしれません。その
ような時に言葉をかける、話を聞くだけでもずいぶん違うと思います。声をかけにくい場合には、定
期的に「困っていることはありませんか?」と問いかける調査用紙を、先生方に記入してもらうのも、
一つの方法だと思います。
☆アドバイス、情報提供☆
困っている担任の先生が求めているのは、ズバリこの部分だと思います。ただ、コーディネーター
が専門的な知識をもって必ずアドバイスできるとは限りません。アドバイスや対応は、校内で共通理
解を図り、複数の目で考えていくことが大切です。
また、コーディネーターとしては、次の「つなげる」という考え方も大切です。
☆つなげる、つながる☆
「つなげる」というと、支援の必要な子どもについて、医療、福祉、その他外部関係機関と連携を
図ることが思い浮かぶと思います。が、それ以前に、
「つなげる」には、担任の先生を、管理職や教務
主任、あるいは養護教育センター等につなげるという意味合いもあるのではないでしょうか。コーデ
ィネーターがアドバイスをしなければならないと考えるのではなく、専門的なアドバイス・情報をも
っている人につなげるということで、考えてみてください。また、自分自身もそのつながりを広げて
いくことが、コーディネーターとして大切なことです。コーディネーターは自分が中心となって動く
だけでなく、人と人をつないでいくことが重要な役割だと考えられます。
Q6
専科職員等(担任以外)の教員は、どのような支援ができますか?
<対象の児童生徒に対して>
・その子の得意な分野を、新たに見出して
手先を使うことの多い音楽や家庭科、技術の学習や気づきを重視する理科の学習では、担任の授業では
見られない新たな姿を発見できることがあります。苦手な教科が多い子でも、好きなことや得意なことに
は、意欲的に取り組みます。その子の良さを発見し、担任等の関係者に伝えるようにしましょう。
・担任への情報提供を
担任が情報を得ることで、その子を認めて励ます機会が増えます。クラスの中でよい部分を認められる
ことで、同時に友達にもその良さが伝わり、仲間との関係も良くなります。
<他の児童・生徒に対して>
・他の児童・生徒に対しても十分なフォローを
支援が必要な子どもがいると、どうしても学級内では、その子にかかわる時間が多くなりがちです。そ
れにより、担任と他の児童生徒とのかかわりが、時間的・物理的に薄くならざるをえません。そこに専科
担当の職員等が入って、他の児童生徒とふれあうことで、対象の子どもを含めた全員が満足して、学校生
活を送れるようになります。
<担任に対して>
・要支援の児童生徒への関係づくりの時間を提供
音楽、家庭科、技術、理科などは、授業そのものは専科の担当職員が進めるので、担任が要支援の子ど
もに寄り添って、個別に学習支援をすることができます。場合によっては、担任による取り出し授業の時
間を設定することも可能であり、学習補完とともにその子との関係を深めることができます。
<その他>
・担任のように、じっくりと深くかかわることは難しいですが、反面、数多くの子どもと広くかかわれる
ので、情報収集がしやすい立場にいます。その中で得た必要な情報や支援のヒントを、担任等に提供で
きます。
・担任を一人にしないという点で、教室に入り、支援が必要な児童生徒に関わることができます。どの場
面で支援するといいのか、どんな時に入るのか、事前に担任と打ち合わせをしておくと、あわてずに支
援を行えます。
「ここをやっておくよ」
「この時間は見てるよ」と支援するだけで、担任の精神的負担が
大きく軽減できます。
・朝や帰りの会、給食時などに学級に入り、違った視点で要支援の子どもや周囲の児童生徒の様子を観察・
確認ができます。対象の子どもが不安定な時は、クールダウンのための補助役として個別に支援するこ
ともできます。
Q7
TTの支援体制は、どのようなものがありますか?
集団活動での個別支援や少人数による個別指導が必要な特別支援教育では、TT(チームティーチング)
は不可欠な指導体制です。ただし、複数の職員が計画なくかかわるだけでは、効果的な指導は望めません。
事前の打ち合わせをして、支援の内容(目標や手立て)を共通理解するとともに、しっかりと役割分担をして、
よい支援をしていきましょう。
一口に TT(チームティーチング)と言っても、役割やかかわり方は様々です。以下に、ある小学校での
支援パターンを示しますので、ご自身の学級・学校ではどの形がいいのか、参考にしてください。学習内
容や時期、本人の状態によって、複数のパターンもありえます。
<TT方式による児童生徒と教師の関係>
① T1・T2 は全く同じ立場で児童生徒全体の指導にあたる。
② T1 は全体指導をし、T2 は T1 の指導内容の補助をする。この場合、T2 の指導対象児は固定せず、
必要に応じて個別支援を行う。
③ T1 は全体指導をし、T2 はあらかじめ決めてある C5(特別の子)の個別補助をする。
④ T1 はグループ 1 を、T2 はグループ 2 を指導する。
⑤ T1 は全体指導をし、T2 は C5(特定の子)に個別に学習内容を指導したり、状況によってコーナ
ーや別室での学習をしたりする。
⑥ T1 は全体指導をし、T2 は間接的に児童生徒の指導にあたり、T1 の補助をする(記録をしたり、
授業に必要な教育機器や教材教具の準備をしたりする)。
⑦
①
②
C1
C1
C2
C2
T1
C3
T1
C3
T2
C4
C4
C5
C5
③
④
C1
T1
T2
T2
C2
T1
⑤
C1
C1
C1
C2
C2
C2
C3
C3
C4
C4
C4
C5
C5
C5
T2
⑥
T1
C3
T1
T2
C3
C4
T2
C5
※1 時間の中で、いろいろなパターンを組み合わせて行うこともあります。
検見川小学校編「まきのこ学級とふれあいの教育」より
Q8
1
情報の収集と職員への情報発信は、どのようにしたらよいでしょうか?
情報の収集
① 学校に届く文書やリーフレット等の資料
② 研修への参加
③ 特別支援に関する図書の購入
④ 養護教育センター図書室の利用
⑤ 養護教育センター発刊指導資料や Cabinet や CHAINS の資料を利用
<知っておきたい情報>
内容
相談機関一覧
生徒への対応法
進路情報
2
①
方法
(どこを見ればよいか)
「すすめよう特別支援教育」P13~14 「はじめよう特別支援教育」P12
「はじめよう特別支援教育」P16~20 「つなげよう特別支援教育」P11~14
「つなげよう特別支援教育」P19~20 各学校から届く文書を保管
情報の発信
職員室での掲示
・ 教育センター適応・相談事業ポスター
・ 教育センター、養護教育センター教育相談の案内
②
印刷して配付
・学校へ送られてくるリーフレットや研修の案内
・研修等で得た情報
③
職員会議や職員打ち合わせでの連絡
・児童生徒の情報等、緊急性を考慮して
④
職員室の定位置にファイルして常備
・ 『養護教育センター発刊指導資料
(学校保存)』
○はじめよう特別支援教育 ○つなげよう特別支援教育
○すすめよう特別支援教育 ○「校内支援体制」はこうつくろう
○特別支援学校担任のためのハンドブック3冊(進路指導・自立活動・交流及び共同学習)
・ 『特別支援教育の教育関係機関(特別支援学校等)
』
学校要覧や説明会、入試要項などの資料を学校ごと分類する。
・ 『相談機関一覧』
相談機関のリーフレットや資料を機関ごとに分類する。
⑤
職員室の定位置にパウチして常備
・ 「主な相談・関係専門機関」の一覧表 (指導課発行)
・ 「子ども・若者支援機関マップ」(千葉市こども未来局こども未来
部健全育成課発行)
・ 外部機関のリーフレット(教育センター、養護教育センター、千葉市発達障害者支援センター、千
葉市児童相談所、千葉県子どもと親のサポートセンターなど)
⑥ 特別支援教育コーディネーターが校内職員向けの特別支援教育だよりを発行
Q9
保護者との連携はどのようにしたらよいでしょうか?
<保護者との面談で配慮したいこと>
・安易な励ましはさけ、傾聴を心がけましょう。
・まずは、保護者の気持ちをしっかりと受け止めましょう。
「お母さんも大変ですね。
」
「よく頑張っていますね。」
・保護者が悩んでいることについて、一緒に考えていく姿勢を伝えましょう。
・児童生徒の気になる学習面や行動面について、日々の記録をしっかりと取っておきましょう。具体的
な記録をもとに、面談に臨みましょう。
・気になることや問題点について触れる際には、なぜそのような言動を取ってしまうのかを一緒に考え
ていくようにしましょう。
・面談を繰り返しながら、信頼関係を築いていく中で、家庭の環境や生育歴も聞き取っていけるとよい
でしょう。
・一人で抱え込むのではなく、複数の職員での面談も検討しましょう。必要に応じて管理職等にも参加
を依頼していきましょう(ただし、圧迫感を持たれないように、人数には配慮をして)。
・子どもの状況に応じて、養護教育センターや教育センター等の相談機関を紹介することもありえます。
その際には、担任一人の判断だけで勧めることのないように、必ず管理職に相談しましょう。保護者
の了解のもと、相談機関を勧めた場合には、事前に連絡しておくと連携が図りやすいです。
うちの子のことをよく見て、わかって
くれている先生なんだな・・・
家では・・・
家でも・・・
そうですね。
学校では・・・
学校でも・・・
<日々の記録のポイント>
*まずは、普段の学校生活において、できているところやよいところ、責任を果たしていることな
ど、プラスの面をしっかりと記録します。
*そのうえで、学校生活での気になる場面や問題点、そう感じる場面などを。こうしたらうまくい
った、などの成功した手立ても記録しておくと、相談時に伝える良いポイントになります。
*それぞれについて、
「いつ、どこで、何をした」などを具体的に整理しておくと、わかりやすいで
す。
Q10
実態調査シートは、どのように活用すればよいでしょうか?
実態調査シートについては、これまでのガイドブック(養セの HP からダウンロード可能)で説明して
きましたが、こんなチェックの仕方もできるということを、A君の例で紹介します。
項目「学習態度」
1
課題に取り組めず、教室内をうろうろしたり、ロッカーの上に登ったり、学校の好きな場所(飼
育小屋等)へ行ったりする。
この内容をすべて満たす必要はありません。
1
課題に取り組めず、教室内をうろうろしたり、ロッカーの上に登ったり、学校の好きな場所(飼育
①
②
③
小屋等)へ行ったりする。
①
毎時間、ほとんど、課題に取り組むことができない。
②
取り組みきれない課題だと、離席して友達にちょっかいを出したり、ロッカーの上に登ったりす
る。
③
気に入った課題でないと、離室して好きな場所へ行ってしまう。
というように、対象の児童生徒の実態に合った視点に絞って、調査をしてみましょう。①について、あ
るいは①と③についてなど、細部の表現にとらわれず、
「学習態度」という項目として見ていくことが必要
だと言えるでしょう。
では、実際に実態調査シートをつけてみましょう。ここで大切なのは、複数の目でA君を見ることです。
例では、学習態度に限って考えています。
<A君を例に>
集団行動が苦手。
授業中でも友達にちょっかいを出す。
課題に対し、最後まで取り組めない。書字障害の疑いあり。
突然にキレることもあり、ドアを蹴る等、物にあたる。
離席または、教室から逃げてしまい、飼育小屋にいたり虫をい
じっていたりする。
A君の実態調査シートをつけてみましょう。
◎ 担任がつけると
◎ 専科教員がつけると
◎ 教務主任がつけると
◎ 合わせて考えると
Q11
「個別の指導計画」は、どのように工夫して記録していますか?
はじめて「個別の指導計画」を作成するときには時間もかかり、負担や不安を感じている先生もいるか
と思います。せっかく作成したならば、ぜひ活用できるようにして、必要性を感じていただければと思い
ます。以下を参照に、具体的な記録を残していけると、よいでしょう。
児童氏名(生徒氏名)
年
1年
組 担任
2年
組 担任
(男・女) 3年
組 担任
月
日生 4年
組 担任
5年
組 担任
年度入学 6年
組 担任
平成
家庭環境
諸調査・諸検査
相談歴
家族構成や特記事項があれば記入する。
医療機関や相談機関等とのかかわりがあった場合は記入する。
生活面、学習面においての目標
保護者の願い
学校や教師に求めていることなど
上記の内容で変更のない場合は 2 年生以降、繰り返す必要はない。
本人の願い
生活面
学習面
4~5月の担任の感じているこ
実態調査シートから読み取れるこ
と
となど
生活面、学習面の項目を取り除き、困っていることを中心に記
現在の状況
(よい点も含めて)
入してもよい。
今年度の目標
○
○
前期の目標
具体的な手立て
◎
☆
◎
☆
指
導
の
記
録
等
変
容
○
と
課
題
△
(
月
日記録)
保
護
者
の
願
い
後期の目標
具体的な手立て
◎
☆
◎
☆
指
導
の
記
録
等
変
容
○
と
課
題
△
保
護
者
の
願
い
次
年
度
に
向
け
て
(
月
日記録)
Q12
評価は、どのように行ったらよいでしょうか?
校内での支援体制を整えて児童生徒の支援を進める中で、「どのように評価をしたらよいのか」「児童生
徒や保護者にどう伝えていくか」という悩みに直面している先生は多いのではないでしょうか。
評価の方法については、いろいろなパターンが考えられます。普段の指導で配慮していることや児童生
徒の変容など、具体的な様子を伝えることができるように心がけていきたいものです。児童生徒にとって
どの方法がより適しているのかを、コーディネーターとしてどう提案するかが重要です。
♢学期末の評価
Q1
誰が、どのように評価したらよいか?
【ケース1】~算数の時間だけ取り出し指導を受けている A くんの場合~
他の教科は学年相応の観点で評価
できるけど、算数は下学年の課題に
取り組んでいるから同じように評価
するのは難しいな・・・。
A1-1
他の教室で取り出し指導を
受けているので、算数の学習
の様子を見てないな・・・。
取り出し指導を担当した教師が、その教科について評価する。
→ 積み重ねてきた取り出し指導の中で、取り組んだ課題やできるようになったことをもとに
評価をします。
A1-2
取り出し指導をした児童生徒に個別の自作テストを行い、担任または担当した教師が評
価する。
→ 学習した単元について、現在の A くんが身に付けている学力を客観的にはかることができ
るよう、学年にとらわれずに問題を選ぶことが大切です。その結果をもとに、観点別に評
価します。
【ケース2】~一斉授業の中で、個別の課題に取り組んでいる B さんの場合~
授業は一緒に受けているけど、
みんなと同じ基準で評価す
取り組んでいるのは一部の課題
ることが、本人にとってよい
や別の課題だから、評価するのは
ことなのだろうか・・・。
厳しいな・・・。
A 1-3
観点別の評価だけでなく、個々の実態に合った個別の評価をする。(Q5 参照)
→ 観点別の評価では「がんばりましょう」の評価が多くなってしまうかもしれませんが、担
任だからこそ知っている B さん自身の頑張りを評価します。
Q2
どのような形式で渡したらよいか?
A2-1
通常学級用、個別用の2枚を渡す。
A2-2
表紙はみんなと同じもの、中身は個別のものを渡す。
個別の評価は、
・学習内容、目標
・手だて
・学習の状況
表紙は同じ
中身は2通り
この3点を記述します。
個別に評価したほうがよい
教科のみで構いません。
【通常学級用】
♢日常的な評価
1.
【個別用】
児童生徒にとって、評価は自分を見つめ直すきっかけであり、その後にどう生かすかが大切です。
作品の掲示や、互いの作品へ相互評価を行って、理解を深める。
例①
児童の作品やカードを掲示し、教師が児童に頑張りやよさをコメントと
して書く。
例②
2.
友達同士で付箋などを利用し、思ったことを書き貼っていく。
授業の中で、一人一人のよさを評価する。
例①
授業中に、一人一人の考えや作品のよさを取り上げて、具体的に価値づ
けていく。
(「○○さんには、こんな素晴らしいところがあるんだね。」と共感と
尊敬が生まれる。)
3.
指導目標に対する判断基準を折り込む。
例①
4.
1時間のうち30分は学習に参加し、残りは自分用の教材に取り組む。
複数名での確認、数値(頻度など)の記録等をする。
子どもの支援方法・指導法
ワンポイント
◇何度、練習をしても漢字が書けるようになりません・・・。
書くことが苦手な子にとって、何度も繰り返し書かなければならない漢字練習は、苦痛でしか
ありません。逆に学習への意欲を失うことにつながってしまいます。その子がどのような特性を
もっているかで、学習方法も変わってきます。
⇒ 細かく書くことが苦手な子には、マス目を大きくし、一文字の大きさを大きくする(書く文字数を減ら
す)。
⇒ 目で見たものを覚えることが得意(視覚優位)な子には、漢字の分解(へん、つくり等)をする。漢字
パズル、パソコン等を使っての書き順学習なども有効。
⇒ 耳からの情報を得ることが得意(聴覚優位)な子には、
「立つ、木、見る」で“親”などの音声化、
「日
(陽)と月」は“明るい”など意味を含めた提示、漢字九九でリズムに合わせての学習、など。
* 漢字だけが書けないのか、ひらがなやカタカナも同様か、実態把握が同時に必要です。
◇板書をとるのが遅く、ノートがいつも書き終わりません・・・。
なまけていると思われがちですが、目の動きの困難さや短期記憶などの弱さから、書きたくて
も素早く書けないという状況が考えられます。無理やり書かせようとすると、本人の意欲を削ぐ
原因になります。
⇒ なるべく一時間の中で消さずに残しておけるような板書計画を立てる。
⇒ 書くことを拒絶する子には、
「一行目だけ」
「赤で囲った問題文だけ」など、書く量や内容を限定しては
じめてみる。
⇒ 教科や内容によって、本人が取り組めるプリントを準備し、重要な部分だけ穴埋めにする方法も。
* プリントは該当の子だけでなく、クラス全員に使うことで他にも救われる子がいるはずです。
◇行事前になると落ち着かなかったり、学校を休んだりしてしまいます・・・。
普段と違う活動に抵抗を持つ子は、少なくありません。こだわりの強い子にとっては、日課が
変わるだけで、苦しくて寝付けなくなったり、パニックを起こしたりすることもあります。その
子にとってどのような形で参加することがベストなのか(どうやったら参加できるのか)を考え
ることが大切です。
⇒ 本人が不安に思っている場合は、事前になるべくその不安を軽減してあげることが大切(前年度の写真
やビデオを見せる、どんなことをするかを具体的に説明する等)
。
⇒ 必ずしも「みんなと同じ」ではなく、部分参加や内容の一部変更などを、あらかじめ本人や保護者と相
談しておき、スムーズに当日を迎えられるようにする。
* うまくいったら、さりげなく「よかったね」
「次も大丈夫だね」と伝えてあげましょう。成功経験
の積み重ねが、自信につながります。