高校生のための哲学サマーキャンプに参加を希望する高校生のみなさんへ 東京大学大学院総合文化研究科教授 梶谷真司 夏休みの 7 月 31 日と 8 月 1 日に「高校生のための哲学サマーキャンプ」を開催します。 東京大学の「共生のための国際哲学研究センター」(UTCP)は、広く若い人に哲学を学んでほしいと考えて います。そこで全国から高校生を集めて合宿をしよう!という企画です。 「哲学のキャンプなんて、何をするんだろう? 何か難しそうだな。」 そう思う人もいるでしょう。あるいは、中には哲学や思想、倫理が好きで、「面白そう!」と思う人もいるかもし れませんね。でも、どちらの人の不安も期待も、たぶん少しズレています。 ここで言う「哲学」は、一つの専門分野の知識を教えることではありません。だから、別に私たち教員や大学 院生が、みなさんに難解な哲学や思想を分かりやすく面白く解説する、なんて講義みたいなことをするわけで はありません。あるいはみなさんの難しい問いに私たちがズバリ答える!とか、一緒に考えよう!というもの でもありません。このキャンプで私たちが教えたいのは、「考える方法」と「語り合う方法」です。そしてその両 方にとって必要なのが「問う方法」です。 自らに問うことが考えることを促し、考えることが語ることにつながります。そして相手に問うことがその人に 考えることを促し、そうして語り合うことができるようになります。したがって、「どのように問うか」が重要になり ます。それが思考と討論に深さと広がりを与えるのです。 問い、考え、語る方法――これを身に付けられれば、どこからでも哲学を始めることができます。実際哲学は、 古今東西、そういう営みの中で誕生し、発展し、受け継がれてきたものです。それをわざわざ「哲学」と呼ぶ必 要もありません。問い、考え、語るという、このもっとも人間らしい営みを自分のものにできれば、どんなことで あれ、より深くより広く体験できるようになります。つまり、強さと豊かさを手にすることができるのです。 このキャンプで伝えたいのは、そういう広い意味での哲学的な態度です。そして何を学ぶにせよ、どのように 生きるにせよ、いろんなことが目まぐるしく変化し、昨日の常識が今日の常識ではなっていくような時代、これ から若い人たちにとっては、そのような態度こそが大切だ、そう私たちは考えています。 だから哲学が好きな人も、それほどでもない人も、哲学をよく知っている人も、知らない人も、ぜひ来てくださ い。参加資格は、「これからの若い人であろうとする人」、それだけです。そしてそのような仲間たちとともに問 い、考え、語り合ってください。きっと得難い体験になるはずです。私たちもその体験をみんなと共有できるの を楽しみにしています。
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