ギリシャ:遠退く大統領選出

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ギリシャ:遠退く大統領選出、近づく総選挙
発表日:2014年12月24日(水)
~総選挙を睨んで政局が活発化~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
◇ 第2回投票での与党の大統領候補への支持は168票と、第1回投票から8票の増加にとどまり、29日に
予定される第3回投票で大統領を選出するには12票の上積みが必要となる。3回目の投票で大統領の
選出が出来ずに、来年1月末か2月初に前倒し総選挙が行われる可能性が高い。
◇ 総選挙を睨んだ各党の動きも活発化している。穏健左派の「民主左派党(DIMAR)」は、次期総選挙で
政権奪取を狙う「急進左派連合(Syriza)」との選挙協力を模索。連立政権に加わる「全ギリシャ社
会主義運動(PASOK)」ではパパンドレウ元首相が新党立ち上げの方針を表明。次期総選挙で中道左派
票の受け皿となるかにも注目が集まる。
ギリシャでは23日に行われた2回目の投票でも次期大統領の選出が出来なかったため、29日に3回目の
投票が行われる。第2回投票では与党のディマス候補への支持が168票と、第1回投票(160票)から8票
増加したが、選出に必要な200票には届かなかった。第3回投票では選出基準が180票に緩和されるが、与
党はさらに12の支持票を上積みしなければならない。3回目の投票で大統領の選出が出来ない場合、憲法
の規定に基づき10日以内に議会を解散し、総選挙を経た新議会の下で大統領の選出手続きが再開される。
2回目の投票で与党候補に支持票を投じたのは、連立を組織する「新民主主義(ND)」と「全ギリシ
ャ社会主義運動(PASOK)」の155名と無所属議員の13名(図表1)。与党が切り崩しを狙う「独立ギリシ
ャ人(ANEL)」と「民主左派党(DIMAR)」の議員は第1回投票に続き(投票直前に離党したDIMARの1議
員を含めた)全員が不支持に回った。大統領選出による政治的な混乱を回避するため、少数野党や無所属
議員を連立政権に招きいれ、新大統領選出後の2015年中にも総選挙を前倒しで行うとのサマラス首相によ
る21日の提案後も十分な支持票を集めることは出来なかった。首相周辺はさらなる説得工作を続けようが、
第3回投票で大統領を選出し、総選挙を回避できるかは微妙なところだ。
DIMARは次期総選挙で政権奪取を狙う「急進左派連合(Syriza)」との選挙協力を模索しているとの報道
もあり、それに反発した1議員が第2回投票の直前に離党した。同党党首はSyrizaが政権を奪取した場合
の大統領候補として名前が挙がっている。最近の世論調査でDIMARは議席獲得に必要な3%の支持票を下回
っており(1~2%程度の支持率)、一部の所属議員は総選挙前倒しにより議席を失うことに危機感を覚
えている。だが、現在9名の同党所属議員の多くはSyrizaとの連携を通じて支持の底上げを図る意向とみ
られ、3回目の投票で与党候補の支持に転じる議員はあくまで少数派(2~3名)と目されている。
議席獲得のボーダーライン上にいるANEL(2~4%程度の支持率)は、与党批判や国際支援の見直しを
求めてこれまで世論の支持を集めてきた経緯もあり、総選挙回避のために与党に協力する可能性は低い。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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先週にかけて、同党所属議員が元銀行家から与党の大統領候補への投票依頼を持ちかけられたとの買収疑
惑が浮上。与野党を巻き込んだ批判の応酬の末、司法当局は22日、買収の申し立てが十分な証拠に基づか
ないとして棄却した。この問題がANEL所属議員の投票行動に与える影響は不透明。同問題を巡る党の対応
に一部議員が反発を強めていると見られる一方で、買収疑惑のほとぼりが冷めやらぬ中で与党候補の支持
に転じることに及び腰となる可能性もある。
第2回投票で与党候補を支持しなかった12名の無所属議員のうち、DIMARからの離党議員を含めた数名は
第3回投票で支持に回る可能性がある。だが、無所属議員の多くは与党候補を支持しない方針を固めてい
ると目されている。こうしてみるとANEL所属議員の大量造反がない限り、総選挙を回避することは難しい。
連立与党内の亀裂も表面化している。パパンドレウ元首相は23日、年内にもPASOKを離党し、新党を立ち
上げる方針を表明した。元首相は29日の第3回投票で与党の大統領候補を支持することを約束しているが、
次期総選挙を睨んで1974年に実父で元首相が旗揚げしたPASOKから距離を置き始めている。2009年の総選挙
で40%以上の票を獲得したPASOKは、最近の世論調査で5~8%の支持率で低迷している(図表2)。
Syrizaが近年躍進を遂げてきた背景には、PASOKやDIMARから中道左派票を取り込んだことや、既存政党へ
の不満票で支持を広げた極右政党「黄金の夜明け(Golden Dawn)」が暴力事件への関与などで一時の勢い
を失っていることがある。新興の中道左派政党「河(To Potami<英語ではThe River>)」が一定の支持
を集めるなど、次期総選挙でSyrizaが政権を奪取するかを巡っては、PASOKの凋落で行き場を失った中道左
派票の行方が1つの鍵を握る。元首相による新党が中道左派票の新たな受け皿となるか、“過去の人”と
受け止められるのかにも注目が集まる。
(図表1)ギリシャ大統領選出で予想される投票
【賛成が確実視される政党】
新民主主義(ND)
全ギリシャ社会主義運動(PASOK)
第2回投票で賛成に回った無所属議員
【基本反対だが切り崩しを狙う政党】
独立ギリシャ(ANEL)
民主左派党(DIMAR)
その他の無所属議員
【反対が確実視される政党】
急進左派連合(SYRIZA)
黄金の夜明け(Golden Dawn)
ギリシャ共産党(KKE)
127
28
13
168
12
9
12
33
71
16
12
99
出所:各種資料より第一生命経済研究所が作成
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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(図表2)ギリシャの政党別支持率調査の推移
45%
40%
35%
新民主主義(ND)
30%
急進左派連合(SYRIZA)
25%
全ギリシャ社会主義運動(PASOK)
独立ギリシャ(ANEL)
20%
黄金の夜明け(Golden Dawn)
15%
民主左派党(DIMAR)
10%
ギリシャ共産党(KKE)
5%
前回総選挙
2012/12/6-10
2013/1/4-8
2013/2/1-5
2013/3/8-12
2013/4/5-9
2013/5/10-15
2013/6/14
2013/7/10
2013/9/5-10
2014/1/8-13
2014/2/3-7
2014/3/4-10
2014/4/1-8
2014/4/29-5/6
欧州議会選挙
2014/6/3-11
2014/7/1-9
2014/9/15-23
2014/10/13-20
2014/11/10-17
2014/12/10-17
0%
河(POTAMI)
出所:電子版kathimerini(Public Issue調査)より第一生命経済研究所が作成
以上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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