Title 保証債務の「消滅における附従性」について : 主たる - HERMES-IR

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保証債務の「消滅における附従性」について : 主たる債
務の時効消滅は保証債務にどのような影響を及ぼすか
花本, 広志
一橋論叢, 109(1): 81-97
1993-01-01
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/12351
Right
Hitotsubashi University Repository
(81) 保証債務のr消滅における附従性」について
保証債務の﹁消滅における附従性﹂について
−主たる債務の時効消減は保証債務にどのような影響を及ぽすか1
花 本
広 志
債務が初めから成立しなかったり、債権老の同意のも
伴って消滅しても、それは債権者に特別の不利益をも
とに債務が消滅したのであるから、保証債務がそれに
保証債務は主たる債務に附従する。したがって、主
たらすものではない。これに反し、後者の場合には、
はじめに
たる債務が消滅するときは、その理由のいかんをとわ
て消減するのであり、前考とは利益状況を異にするか
︵2︶
いったんは有効に成立した権利が債権者の予期に反し
ず保証債務もまた消滅する。保証債務の﹁消減におけ
︵1︶
る附従性﹂については一般に右のように説かれている。
確かに、主たる債務が弁済により消滅したり、取り消
が時 効 に よ り 消 滅 し た 場 合 に は 、 保 証 債 務 の 附 従 性 か
また消滅するといえよう。しかしながら、主たる債務
解釈は、保証人の責任軽減をはかるために、政策的価
債務が時効消減すると保証債務も消減するという右の
れ自体から導き出すことはできないのである。主たる
務も当然に消減するという解釈を保証債務の附従性そ
らである。つまり、主たる債務が時効消減すると保証債
︵3︶
ら当然に保証債務も消滅するとはいえない。というの
値判断ないし利益衡量に基づいて保証債務の附従性の
されて消減したり、免除された場合には、保証債務も
は、前老の場合には、債権者が満足を得たり、主たる
叙
平成5年(1993年)1月号 (82〕
説によれぱ、保証人は、主たる債務を履行することや
そこで本稿では、わが民法の保証に関する規定の解
たらすことを約束するのであって、保証債務は主たる
が履行されたのと可能な限り同様の状態を債権者にも
﹁引き当てる︵目易冨サ8︶こと﹂、つまり、主たる債務
主たる債務者が履行することを約束するのではなく、
釈についても多大な影響を及ぼしたドイツ民法とわが
債務老に代わって債権老を満足させる保証人自身の債
^6︺
民法とを比較・検討しつつ、わが民法上、主たる債務
務だとされる。すなわち、ドイツでは、保証債務は主
たる債務の履行を担保する賞務であるとされているの
である。これに反して、日民四四六条は﹁保証人ハ主
︵7︺
タル債務老力其債務ヲ履行セサル場合二於テ其履行ヲ
為ス責二任ス﹂と規定している。本条について、起草
老である梅博士は、BGBのような規定のしかたもあ
るが、主たる債務と保証債務が別個の債務であること
︵8︶
を明確にするためにこのような規定にしたと述べて
一の内容を有し、主たる債務が履行されない場合に、
いる。また、通説によれぱ、保証は﹁主たる債務と同
︵9︶
る。BGB七六五条は、保証債務の定義につき、﹁保証
る﹂と定義される。わが国の保証の定義においても保
^10︶
履行されたのと同一の利益を与えようとするものであ
これを履行することによって、債権者に主たる債務が
う﹂と規定している。そしてその意味については、通
履行につき引き当てるべき︵9冨易訂ブ彗︶義務を負
︵5︶
人は、第三老の債権老に対して、その第三老の義務の
日本民法︵以下、日民という︶のそれとは異なってい
ドイツ民法︵以下、BGBという︶の保証の定義は
H 保証の定義
一一ドイツ民法との比較
について検討する。
は、どのような場合に、どのような方法を採りうるか
そして、主たる債務の消減時効完成に際して、保証人
の時効消減が保証債務にどのような影響を及ぼすか、
として全面的に適合するものではないと筆老は考える。
し、後に述べるように、右の解釈は、わが民法の解釈
︵←
範囲を拡張した結果であるという二とができる。しか
第109巻第1号
一橋論叢
秘
(83) 保証債務のr消減における附従性」について
一証債務が主たる債務を担保する債務であることは示さ
れているが、BGBに比べると、むしろ主たる債務と
保証債務とが別個の債務であることがより明確にされ
ているといえよう。
しかしながら、附従性は、主たる債務の履行を担保
︵u︶
するという保証債務の目的から導き出される性質であ
るから、保証の定義に関する右の差異は、本稿で問題
の保証債務の附従性の範囲に直接影響を及ぽすもので
はない。日.独いずれにおいても保証債務の右の目的
が承認されている以上、定義の差異は附従性の範囲に
とって表面的なものにすぎないからである︵ただし、
附従性を制限する一理由として別個債務性を挙げるこ
とはできよう︶。
ではないのでこれらについても略述する。
ω 成立における附従性
日.独いずれにおいても、主たる債務が無効であっ
たりまたは取り消された場合には保証債務もまた無効
であると解されている。保証債務が主たる債務の担保
︵13︶
を目的とするものである以上、その成立にとって主た
る債務の存在が必要なのは当然であり、異論はない。
なお、将来の債務や停止条件つき債務についても保証
^M︶
債務は成立しうるし、また根保証も有効である。この
点に関しては、日・独止もに附従性が緩和されている。
② 内容における附従性
㈹ 主たる債務老の法律行為による内容変更
わが国では、主たる債務の内容に変更が生じた場合
には、それに応じて保証債務の内容も変更するとされ、
また、保証債務の態様は主たる債務のそれよりも重い
○ 保証債務の附従性
保証債務の附従性の内容ないし帰結としては、ω成
︵15︶
務に影響を及ぼさないが、利率を低くしたり、弁済期
くしたり、弁済期を短縮した場合には、それは保一証債
債務者と債権老の契約によって主たる債務の利率を高
ものであってはならないとされる。たとえば、主たる
立における附従性、②内容における附従性、㈹消減
︵存続︶における附従性、ω主たる債務者の抗弁権を保
︵12︶
証人が援用しうることが挙げられる。本稿で問題とし
ている の は ㈹ お よ ぴ ω で あ る が 、 ω お よ ぴ ② も 無 関 係
醐
一橋論叢 第109巻 第1号 平成5年(1993年)1月号 (84
︵16︶
を猶予した場合には、それは保証債務に影響を及ぽす。
また、主たる債務老と債権老との間で和解契約が締結
された場合には、その和解契約が主たる債務を拡張し
または加重するものでないかぎり、和解契約の効力は
︵ 1 7 ︶
保証債務にも及ぷとされる。右のことはドイツでも同
様である。BGB七六七条一項一文は﹁保証人の債務
については、主たる債務のその時々の現状が基準とな
る﹂と定め、同三文は﹁保証の引き受け後に主たる債
務老がした法律行為によって、保証人の債務は拡張さ
︵珊︺
れない﹂と定めている。したがって、保証の引き受け
後に主たる債務老が債権老との間で、利息、違約罰、
弁済期の短縮、抗弁権の放棄など、主たる債務を拡張
する約定をしても、それは保証債務に影響を及ぼさな
いし、逆に、主たる債務を減額し、またぽ軽減した場
合や、弁済期を猶予した場合には、それに応じて保証
債務も減額・軽減され、弁済期を猶予される。
^19︶
ここで、日本でもドイツでも︵ドイツではBGB七
六七条一項三文が明言しているが︶保証債務の内容に
影響を及ぼすのは、おおむね主たる債務老と債権老の
間の合意による主たる債務の変更であることに注目す
るべきであろう。﹁主たる債務の内容の変更が保証債
務の内容に影響を及ぽすのは附従性に基づく﹂という
とき、そこで問題にされているのは、実は主たる債務
についてのすべての変更ではなく、主たる債務老と債
権老との間の合意による変更であって、﹁法定の﹂変更
は念頭に置かれていないのである。
㈲ 主たる債務の法定的拡張
ところで、保証債務の範囲について目民四四七条一
項は﹁保証債務ハ主タル債務二関スル利息、違約金、
損害賠償其他総テ其債務二従タルモノヲ包含ス﹂と定
めている。本条は附従性から当然に導き出された結果
ではなく、保証契約に別段の特約がない場合の当事老
の意思解釈規定だと解されている。つまり、利息、違
約金、損害賠償その他の主たる債務に従たるものは、
本来、主たる債務とは別個の債務であるから当然には
保証債務の範囲に含まれないが、これらを保証債務に
含ませるのが当事老の意思に合致すると考えられたの
である。これに対して、BGB七六七条一項二文は
︵20︶
秘
(85〕 保証債務の「消滅における附従性」について
たは遅滞によって主たる債務が変更された場合にもこ
﹁前文︹七六七条一項一文︺は、主たる債務老の過失ま
それが保証人の不利益になっても保証債務に影響を及
原因によって拡張ないし変更される場合には、たとえ
主たる債務がBGB七六七条一項二文に所定の法定の
って拡張される場合には、それは附従性の関知すると
ぽすが、約定利息・違約罰等、主たる債務が合意によ
︵刎︶
とに適用される﹂と定める。日民四四七条一項とは異
なり、本条は、保証の引き受け後に主たる債務老の過
失また は 遅 滞 に よ っ て 主 た る 債 務 が 変 更 さ れ た 場 合 に
うことになるo
ころではなく、保証契約の内容とその解釈に依るとい
罰の定めに基づいて生ずる従たる債務については、保
ところが、前述したように、わが国で遅延利息や損
ついての規定であって、主たる債務の約定利息や違約
証契約の内容およびその解釈によるとされる。したが
たる債務が減額されるときは保証債務に影響を及ぼす
裁判上変更される場合には、附従性の原則により、主
また、主たる債務の範囲が、その他法律によりまたは
損害賠償義務や解除による原状回復義務などである。
なるのは、遅延利息、訴訟費用、債務不履行に基づく
って、本条によって保証債務の範囲に含まれることに
置くものである。したがって、これを逆にみれぱ、附
じ結果を招来するけれども、それは保証契約に基礎を
そして、日民四四七条一項は附従性を拡張したのと同
保証契約における当事者の意思解釈による帰結である。
する特別規定︵前注24参照︶に基づく帰結ではなく、
保証債務に影響を及ぼすのは、附従性や附従性を拡張
害暗償義務等、主たる債務の法定の拡張または変更が
︵21︶
が、拡張または加重されるときは影響を及ぼさないと
従性を拡張するような結果を招来するためには、当事
^23︶
^22︺
される。さらに、解約告知の費用や権利追求のための
者の意思がその基礎に置かれていなければならないと
③ 消滅︵存続︶における附従性
いえよう。
費用についても保証人は責任を負う︵BGB七六七条
二項︶。
以上から、ドイツでは、遅延利息や損害賠償義務等、
緬
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第109巻第1号
一橋論叢
る債務老の債権に対して、相殺をもって満足を受けう
GB七七〇条二項は﹁債権老が、期限の到来した主た
わが国でもドイツでも、主たる債務の消滅は保証債
るあいだは、保証人は前項と同じ権隈を有する︹弁済
ω 弁済・免除・更改・相殺
務の消滅をきたすとされている。すなわち、主たる債
を拒絶することができる︺﹂と定めている。
︵25︶
務が弁済、免除、更改、相殺などの債務消減原因によ
の合意のもとに行われるのであるから、それに伴って
のは当然である。免除と更改は主たる債務老と債権老
から、主たる債務の弁済によって保証債務が消減する
老に満足を与えるもので債務の本来的消滅原因である
減時効を援用して保証債務の履行を拒絶することがで
消減するか﹂という問題と﹁保証人は主たる債務の消
によって消滅した場合、保証債務も附従性に基づいて
合である。わが国の判例・学説は﹁主たる債務が時効
そ二で問題は主たる債務が時効によって消滅した場
㈲ 消滅時効
保証債務が消減しても、債権老に不測の損害を与える
きるか﹂という間題を明確に区別していない︵前注3
って消減したときは保証債務も消滅する。弁済は債権
︵ 2 6 ︶
ものではない。免除や更改と異なり、相殺は債権老と
参照︶。しかしながら、時効援用の効果は人的範囲に
^27︶
主たる債務老の合意に基づくものではないが、反対債
日民もBGBも明文規定を置いている。すなわち、日
反対債権をもって債権者に対抗しうることについては、
とはいえまい。なお、保証人が主たる債務老の有する
であるから、これも債権者に不測の損害を与えるもの
債務の消減時効の援用は絶対的である︶というのであ
もし附従性のほうが援用の相対効に優先する︵主たる
保証債務の附従性が衝突するのである。したがって、
すとはいえない。つまり、ここでは、援用の相対効と
主たる債務の時効消滅は当然に保証債務の消減をきた
関して相対的であるから、このことを前提にすれぱ、
︵29︶
民四五七条二項は﹁保証人ハ主タル債務者ノ債権二依
れば、その根拠が示されなけれぱならない。ところが
権額について弁済があったのと同じ結果をもたらすの
リ相殺ヲ以テ債権老二対抗スルコトヲ得﹂と定め、B
︵28︶
舶
(87) 保1証債務のr消減における附従性」について
右の解釈の根拠は、政策的価値判断ないし利益衡量上、
釈に十分な根拠があるかである。冒頭で述べたように、
る債務の時効消滅が保証債務の消滅をきたすという解
そこで問題は、援用の相対効にもかかわらず、主た
討する︶。
はできないのである︵このことについては、次節で検
B七六八条をわが民法の解釈にそのまま導入すること
の履行を拒絶しうるだけであるから︵二二二条︶、BG
なり︵ニハ七条以下参照︶、BGBでは、債務者は債務
ろが、消減時効が債務の消減をきたす日本民法とは異
消減を主張することを保証人に認めたのである。とこ
主たる債務の消減時効を援用して、自己の保証債務の
に認めるBGB七六八条をわが民法の解釈に導入し、
その際、主たる債務老の有する抗弁権の援用を保証人
るこ と の 問 題 性 は 顧 み ら れ な か う た の で あ る 。 ま た 、
まった。主たる債務の時効消滅と附従性とを結ぴつけ
ることができるか﹂という別個の問題にすり替えてし
く、これを﹁保証人は主たる債務老の抗弁権を援用す
わが国の判例・学説は右の問題に明確に答えることな
い。さらに②は主たる債務の拡張ではあっても、附従
拡張の場合であるから、これにも直ちにあてはまらな
にはあてはまらない。また、②の場合は主たる債務の
債務老と債権老の合意に基づくものではないから、①
時効は、主たる債務の消滅の一場合であるが、主たる
礎を置くとき︵二二②㈲︶である。わが民法上の消滅
れが法定の拡張か︵ドイツ︶または当事者の意思に基
㈹ω︶、および②主たる債務が拡張される場合には、そ
たる債務老と債権者の合意に基づくとき︵二二②ω、
保証人に有利な変更およぴ消減に関しては、それが主
にかぎられている。すなわち、①主たる債務の内容の
響を受けるのは、日本でもドイツでも次の二つの場合
たように、附従性によって保証債務が主たる債務の影
拡張することは妥当でないと筆者は考える。すでにみ
そのために、援用の相対効を無視して附従性の範囲を
政策的価値判断ないし利益衡量は是認しうるとしても、
ばならないということにつきる。しかしながら、右の
援用の相対効に反して、附従性の範囲を拡張しなけれ
保証人の責任を軽滅する必要があり、そのためには、
87
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第109巻第1号
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性が拡張される場合であるから、同じく附従性拡張の
保証債務の履行を拒絶することはできないと解するこ
滅は保証債務の消滅をきたさないと考えられる。そこ
右でみたように、理論的には、主たる債務の時効消
定︵七六七条一項二−文︶が必要である。
れていなけれぱならず、ドイツではそのための特別規
ためには、わが国では当事老の意思にその基礎が置か
消滅﹂とバラレルに考えることは可能であるが、その
BGB七六八条は﹁[第一項]①保証人は、主たる債
ω BGB七六八条
ある。
述のように、それはBGB七六八条にならったもので
抗弁権を援用することができると解されているが、前
わが国においても、保証人は主たる債務老が有する
ω 保証人による主たる債務の消滅時効の援用
とになる。
︵30︶
で問題は利益衡量上もそれでよいかである。思うに、
務老に属する抗弁権を援用することができる。②主た
結果である﹁主たる債務の時効消滅による保証債務の
主たる債務の時効消減により﹁当然に﹂保証債務も消
る債務老が死亡した場合、保証人は、相続人がその債
い。[第二項]保証人は、主たる債務者がその抗弁権を
滅するとするのは、債権老にとって酷であり、あまり
放棄するも、これによって抗弁権を失わない﹂と規定
務について制限的にのみ責任を負うことを援用できな
次節でみるように、保証人の保護のためには、催告・
している。本条にいう抗弁権には、同時履行の抗弁権
に一方的に保証人を保護するものであると思う。また、
検索の抗弁権︵日民四五二条・四五三条︶と、BGB
本条は、附従性原則を抗弁権に拡張するものと把握さ
条︶、不法行為の抗弁︵八五三条︶などが挙げられる。
︵31︶
条︶、弁済期猶予の抗弁、消減時効の抗弁︵二二二
︵一一=一〇条∼三二二条︶、留置権︵二七三条・二七四
七六八条同様、主たる債務老の消減時効を援用して保
証債務の履行を拒絶することを保証人に認めるだけで
十分であると考える。したがって、主たる債務老が自
己・の債務の消滅時効を援用しても保証債務は消滅せず、
保証人自身がそれを援用しない限り、保証人は自己の
(89) 保証債務の「消減における附従性」について
れている。
︵32︺
これらの抗弁権の中でもっとも中心的な問題となる
のが消減時効の抗弁である。七六八条には明示的に示
されていないが、消滅時効の抗弁が本条にいう抗弁権
に含まれることは理由書からも明らかである。判例に
︵33︶
よれば、保証人は、主たる債務が保証の引き受け後に
消減時効にかかったことを援用して、保証債務の履行
人はこれを援用して保証債務の消減を主張することが
できる。その際、主たる債務者が時効を援用したか否
︵36︶
かは関係がない。さらに、主たる債務者が時効利益を
︵37︶
放棄した後でも、保証人は主たる債務の時効消減を援
用しうる。
︵鎚︶
合において、保証人がこれを援用しうるか否かについ
以上のように、主たる債務の消滅時効が完成した場
にもそのまま導入され、主たる債務が時効消滅すれば
ては、BGB七六八条とその解釈が、わが民法の解釈
係属中に主たる債務の。消滅時効が完成した場合でも、
当然に保証債務も消減するという解釈と結びついて、
を拒絶することができ、また、保証人に対する訴訟の
︵肋︶
保証人は主たる債務の消減時効を援用することがで
とにかく主たる債務の時効が完成しさえすれば、保証
^35︶
きる。さらに、七六八条二項により、主たる債務者が
人はこれを援用して自分の保証債務の消滅を招来させ
うることになっている。
抗弁権を放棄しても、保証人はそれを失わないから、
主たる債務老が時効利益を放棄しても、保証人は債権
さて、右のBGB七六八条とその解釈は、わが民法
㈲ BGB七六八条の日民への導入
務の履行を拒絶することができる。
務は消滅せず、債権者は保証人に対して保一証債務の履
の消滅時効を援用したとしても、それに伴って保証債
であり、そうだとすれば、たとえ保証人が主たる債務
により消滅しても、保証債務は消減しないと解すべき
しかしながら、前述したように、主たる債務が時効
の解釈として採用されている。すなわち、判例・学説
行を求めることができるはずである。この結果、主た
老に対して主たる債務の消減時効を援用して、保証債
によれば、主たる債務が時効で消減したときは、保証
醐
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一橋論叢
の可能性はないし、消減時効完成後の債務について四
五五条が適用されるとは考えられない︶、右のような
る債務老自らが消減時効を援用すると、保証人は彼に
対して求償権を行使することができなくなり、保証人
利益衡量はなりたちえない。そこで、主たる債務につ
^39︶
に酷であるように思われるが、実は右のような酷な結
とすることができるが、保証人はそれによって自己の
用して自分に対する関係で主たる債務が消滅したもの
いて消減時効が完成した場合には、保証人はそれを援
は催告・検索の抗弁権があるからである︵四五二条.
保証債務も消滅したと主張することはできず、ただ、
果は常に生じるわけではない。というのは、保証人に
四五三条︶。すなわち、主たる債務の消滅時効が完成
援用した場合には、保証人は改めてそれを援用するこ
時効の利益を放棄し、その後、主たる債務老が時効を
なお、わが国の判例は、保証人が保証債務について
︵仙︶
絶することができると解すべきである。
適用︶に基づき、債権老に対して保証債務の履行を拒
︵ω︶
良証債務の附従性︵具体的には、日民四四八条の類推
する前に債権老が保証債務の履行を請求する場合には、
保証人は催告の抗弁権を行使して、まず主たる債務老
に履行を請求すべき旨を抗弁する二とができる。そこ
で、債権老が主たる債務老に履行を請求すれば、主た
る債務の時効は中断し︵一四七条︶、債権老が履行の請
求を怠った結果、主たる債務の時効が完成した場合に
は、保証人は四五五条により保証債務を免れる。むろ
とができるとしている。これに反して、通説は﹁時効
︵〃︶
による債権の消滅は、これによって利益を受ける老の
ん、保証人には催告の抗弁権を行使する義務はないけ
れども、これを行使しなかったことによる不利益は甘
意思によって終局的な効果を生ずるものなのだから、
保証人だけがその利益を放棄するつもりなら、それを
主たる債務者がその利益を受けようとする場合にも、
認めても、必ずしも保証債務の附従性に反するとはい
る債務の消滅時効が完成した後に債権老が保証債務の
履行を請求する場合には、催告の抗弁権や検索の抗弁
受すべきだといえるからである。これに反して、主た
権を行使しても無意味であるから︵もはや、時効中断
90
191) 保証債務の「消滅における附従性」について
えまいLけれども、保証人の右のような意思は例外的
であるから、それを認めるだけの特別の事情が存在す
︵蝸︶
る場合だけに限られるとする。
これに対して、筆老の見解によれぱ、右の問題に際
た。る債務の消減時効が完成した場合には、 保証人は右
︵蝸︶
の履行拒絶権を行使することはできない。
︵1︶ 我妻栄・新訂債権総論︵民法講義w︶︹一九六四︺
頁。森泉ほか・民法講義4債権総論︵有斐閣大学双書︶
四五一頁。於保不二雄・債権総論︹一九五九︺二二九
︹一九七七︺二〇八頁︵石外克喜︶。林良平・石田喜久
し困難は生じない。なぜなら、主たる債務老が自己の
債務につき消滅時効を援用しても、それは保証債務の
夫・高木多喜男・債権総論︵改定版︶︹一九八二︺三八
︵側︶
効﹂手研=⋮四号一一〇頁。同旨、塚原朋一﹁主債務
︵2︶ この指摘はすでに、半田吉信﹁保証債務と消減時
段梅謙次郎発言参照︶。
三︹日本近代立法資料叢書3︺︵一九八四︶三八六頁上
草老も同様に考えている︵法典調査会民法議事速記録
田昌道・債権総論︵下︶︹一九八七︺三八二頁など。起
九頁。平井宜雄・債権総論︹一九八五︺二三〇頁。奥
帰趨に影響を及ぽさず、保証債務は存続するからで
ある。すなわち、いったん保証人が自己の保証債務に
ついて時効の利益を放棄した以上、もはや援用するこ
とはできないと解するべきである。
︵価︶
三 むすぴ
私見をまとめると、次のようになる。①主たる債務
なく、﹁保証人は主たる債務の消減時効を援用しうる
︵3︶ もっとも、このことを直接肯定する判例・学説は
老の時効援用は絶対効か﹂金判八二六号二頁。
か﹂という形で問題をたて、これを肯定する。犬判大
が時効により消減しても、当然には保証債務は消滅し
ない。②債権老の請求前に、主たる債務の消滅時効が
1︶四八一頁。於保・前掲書︵前注1︶二四二頁。林
月二二日民集二一巻二五二〇頁。我妻・前掲書.︵前注
一二月一一日民録二一輯二〇五一頁。同昭和八年一〇
正四年七月二二日民録二一輯二=八七頁。同大正四年
完成している場合には、保証人は、主たる債務の時効
消減を援用することにより、自己の保証債務の履行を
拒絶することができる。これに反し、債権老の請求に
対して、催告・検索の抗弁権を行使せず、その後、主
班
(92〕
第109巻第1号 平成5年(1993年)1月号
一橋論叢
ほか・前掲書︵前注1︶四〇二頁など。
︵4︶判例・学説につきこのような評価をするのは、半
田・前掲︵前注2︶手研三三四号一一〇∼二一頁。
、三債権篇︹第二版︺︵一八九七︶ニニ四∼二二五頁︶。
考も同様の定義をしている︵梅謙次郎・民法要義巻之
なお、フランス民法は日民四四六条と同様の規定を置
いている︵二〇一一条︶。また、わが国の保証法は、直
るので、本来ならぱフランス法を迷比較の対象とすぺ
接にはフランス法の影響のもとに成立したと考えられ
︵5︶ ..ム易冨ブ8.、の訳語については、現代外国法典叢
書およぴ西村信雄編・注釈民法︵u︶債権②︹椿寿夫︺
説・判例が圧倒的にドイツの影響のもとに成立してい
きであろう。しかし、保証に関しても、わが国の学
一八二頁によった。その他、BGBの条文の訳につい
ては、現代外国法典叢書を参考にした。
ることに鑑み、本稿ではフランス法との比較を行なわ
︵6︶−く9望讐9屋9ω宍o昌昌93﹃昌冒︸胃o日雫
=︸昌o鶉gきε戸ド︸口g丙8巨守﹃ωg邑oく實−
ない。
く昌訂冒.N仁吻岬豪蜆1↓べOO丙N.一〇∴竃①昌O仁9ωO=目巨・
︵u︶ ω一彗9コ血目胃六〇∋貝︵=O∋︶一凹.20︵勺コ.Φ︶二
7竺巨一窪P旨一>=声︵畠OO①︶一<O﹃一︺①貝昌吻吻き㌣ミOO
冨︸二−思ωo邑呂↓①=一σ.>邑.㌧竃ドω﹄窒・我妻・前
寄−①︵=O∋︶∴岬甲Oεぎ昌①戸ω−冒Φ㊤[竃長3P
冒①①q①留昌一8;斗①ユ竺①目N昌一︸弓需;︸昌Ω①需一N−
掲書︵前注1︶四五一頁。平井・前掲書︵前注1︶二
三一頁。奥田・前掲書︵前注1︶三八一頁。
σ;=簑﹃O葛09びOぎ刃①一〇戸N.︸庄−宛8ミ宗H
︵7︶家三〇ぎ\−&鼻PO婁冒薄巨E冒匝ωo巨亭
ωo巨巨き︸堅旨啄9冨oo︵岩お︶一ω.H旨㊤]’
︵前注1︶二三一頁。奥田・前掲書︵前注1︶三八一
︵12︶ 我妻・前掲書︵前注1︶四五一頁。平井・前掲奮
∼二頁。BGBも次項以下で述ぺるように、成立にお
色g①昌目①qo胃︸︸胃oqωg四葺 匡くoo艘①ぎoコ旨o−
丙8巨8し.>昌.︵H竃o。︶一ω−8−
8=巨p雲彗串8津彗σ①峯紹=︸雪ω篶す8仁目﹂
ける附従性︵BGB七六五条・七六七条︶、存続・内容
︵七六八条︶について定めている︵ω.竃①昌εωら。讐O
における附従性︵七六七条︶、主債務老の抗弁権の援用
︵8︶ 起草老が参考にしたのはBGB第二草案七〇六条
︵9︶ 前掲速記録三︵前注1︶三八七頁上段梅発言。
︵13︶ 大判昭和一五年二月二四日新聞四五四四頁。梅・
︵句p昌︶’ω.8①︶。 .
であるが、それは現行BGB七六五条と同文である。
前掲奮︵前注1︶二三〇頁。日民四四六条参照。起草
︵10︶ 我妻・前掲書︵前注1︶四四九頁。同旨、平井・
㏄
前掲書︵前注10︶ニニ五頁。我妻・前掲書︵前注1︶
大判大正九年三月二四日民録二六輯三九二頁。我妻・
一頁。大判明治四〇年六月一八日民録一三輯六六八頁。
注5︶二三四頁。
前掲書︵前注1︶四六五頁。前掲注民︹中井美雄︺︵前
四五一頁・四五五頁。平井・前掲書︵前注1︶二三二
丙ΩN−寒しお一望彗昌畠雪宍o昌貝︵■O昌︶も﹄IO
∼三頁。奥田・前掲書︵前注1︶三八六頁。
︵17︶ 我妻・前掲書︵前注1︶四六五頁。前掲注民︹中
一頁。.広島地呉支部判昭和三五年六月二四日下民集一
井︺︵前注5︶二三三頁。奥田・前掲書︵前注1︶三九
︵︸目.①︶.二ぎ蜆丙N﹄ooニベΦべ丙N.蜆∴;饒目ggg︹o冒−
冒8冨﹃N冒−︸言①日雪=o訂目o窃①巨旨o戸NI>邑−㌧oo.9
︵18︶ 第一草案は日民四四八条と同様の規定を置いてい
一巻六号二三ハ九頁参照。
ζ雪丙N1︷︵勺8冨﹃︶∴向昭①﹃ミ2胃9ωO巨巨﹃8巨
↓−&け斥P凹.顯.O︵句目.べ︶1一ω1㊤蜆∴ρ⋮o巨く①−一ω.①蜆㊤
︸α1■︸霧冒ま﹃↓①芦9>=P岩OO戸ω.ω冨∴宛O巨〇一〇\
頁。奥田・前掲書︵前注1︶三八五∼六頁。BGB七
一四八頁。森泉ほか・前掲書︹石外︺︵前注1︶二〇八
︹椿︺︵前注5︶二二二頁。前掲注民︹西村︺︵前注5︶
主債務老が取消権を有している場合に関する規定︵そ
い﹂と定めていた。しかし本条は第二読会で削除され、
たる債務老が負う以上の責任を保証人として負わな
いる給付を無条件で約定した場合には、保証人は、主
または条件付きでのみ主たる債務老に義務づけられて
務老の負う義務よりも重い給付義務を負っているか、
た。すなわち、その六七〇条は﹁保証人が、主たる債
六五条二項参照。
れは本条の規制領域に含まれる︶が独立して、現行七
︵14︶ 我婁・前掲書︵前注1︶四六一∼二頁。前掲注民
[;冒畳彗月四﹄.o︵勺目.①︶二ω.ωg].
寄’ωω’<昌σ①目.昌閉吻ぎ蜆−﹃富寄﹂N∴零まOぎ\
丙N.ミー昌∴⋮旨9昌雪〆O昌昌−︵甲︸實︶も1PO︵句目−
︵19︶ ω訂冒9目胴9穴o昌旨一1︵︸o﹃昌︶一P與.O︵句P①︶’吻べ①べ
七〇条になった。
ω一凹目隻目o目ω﹃宍o∋8.︵■o﹃目︶一”1閏.O︵句P①︶’吻べ①蜆
↓庁〇一斤9PPO︵︸目−司︶二〇〇−oo−二≦①2︹=眈一印−印−O
︵15︶ 我妻・前掲警︵前注1︶四五一頁、四六四頁。平
︵︸pHH︶’ω﹄ω9
畠︶’ζミ丙N﹂o−;一刃Ω河戸︸庄﹂=’↓①戸量>目饒二
べ>畠’ω.竃ω∴屏需﹃\峯①く而易も.凹.O︵句戸Hω︶1一ω.
吻ぎ↓丙N、.︵冨冒目冒目ご雲斥彗房9雪一ω︸自巨冨g戸
井・前掲書︵前注1︶二三七頁。奥田・前掲書︵前注
︵16︶ 大連判明治三七年一二月二二日民録一〇輯一五九
1︶三八二頁。日民四四八条参照。
93
保証債務の「消滅における附従性」について
(93〕
これを保証債務の範囲に含ませている︵両老につき、
︵向鶴艘ミ①荒易も﹄.o︵ヨ.−ω︶1一ω.s蜆.︶。なお、弁
井・前掲書︵前注1︶二三一頁、二三八頁。奥田・前
三九年一〇月二二日民録二一輯二二三三頁。大判明治
二版︺︵一九五六︶二二七頁。前掲注民︹中井︺︵前注
ω富、和解契約の扱いについても日本と同じである
(94〕
場合には、保証人は猶予の効果を受けないものとする
︵21︶ 竃o巨き月ω1①塞[竃畠智彗戸凹.P◎︵︸目.①︶.㍍.
−=刃Ω肉穴︵⋮冒ヨ彗目︶ら.甘.◎︵句目lH㊤︶1一ζ竃寄.
︵22︶ 望彗ま長雪宍o昌自−︵=o昌︶も−凹−◎︵勺目.①︶.一丙N.
ωs]∴ω1轟o房8勾亀旨甘⑭.
︵■oヨ︶一印■印.o︵︸p①︶二吻↓竃勾N﹄9この点につき
①−一宛9コ庁〆o\↓7o↓汗9pp◎︵︸目−↓︶.一〇〇.H0Nーこの占⋮
︵23︶ ω訂=oま町q雪宍昌目ヨ.︵匡oH冒︶’印.顯.O︵︸目.①︶二丙N.
につき既に、前掲注民︹中井︺︵前注5︶二二四頁。
H卜
は責任を負うと解されている︵前掲注民︹中井︺︵前注
張﹂だからだと考える。つまり、BGBの起草老は、
従性ゆえではなく、遅延利息等が主債務の﹁法定的拡
ろ、遅延利息等について保証債務が拡張されるのは附
︵刎︶ このことは附従性から説明されるが、筆者はむし
5︶二二五頁参照︶。なお、契約の解除による原状回復
BGB七六七条一項二文に所定の場合について、政策
ほか・前掲書︵石外︶︵前注1︶二〇八頁など。
掲警︵前注1︶三八二頁、三九五頁、四〇一頁。森泉
︵25︶ 我妻・前掲書︵前注1︶四五一頁、四八五頁。平
的に附従性を拡張したと考えるのである。
年六月三〇日判時四二一号六頁。最判昭和四七年三月
5︶二二九頁。原状回復義務につき、最大判昭和四〇
ωべN]∴ω$o9目o胃實穴o昌昌1︵匡o﹃目︶一與一PO︵︸⋮①︶.一
;O巨き月ω1①塞[竃長O彗月P凹.O︵句戸①︶’ω.
吻↓①↓宛N1①一−≦旨目oブ①目①H丙o昌昌1︵、①o=①﹃︶一芦凹−O
大判明治三八年七月一〇日民録二輯一一五〇頁。大
判明治三九年六月二日民録二一輯九一四頁。大判明治
二三日民集二六巻二号二七四頁。損害賠償義務につき、
注1︶二三八頁。松坂佐一・民法提要︵債権各論︶︹第
我妻・前掲書︵前注1︶四六八頁。於保・前掲警︵前
義務およぴ損害賠償義務については、判例、通説とも
費用、契約締結費用、催告の費用等についても保証人
書︵前注1︶二三五頁。また、訴訟費用、解約告知の
注5︶二二四頁︹中井︺、二〇五頁︹椿︺。平井・前掲
︵20︶ 我妻・前掲書︵前注1︶四六七頁。前掲注民︵前
既に、.前掲注民︹中井︺︵前注5︶二三四頁︶。
ことができるとされている︵ω冨∋g目oq胃六〇昌昌.
四三年四月一五日民録ニハ輯三一五頁︶。
第109巻第1号 平成5年(1993年)1月号
済期の猶予によって主債務者が支払不能となるような
一橋論叢
兜
︵勺PHω︶二吻司①べ丙N.蜆−一⋮①庄庁目9頸−與IO︵句PH−︶’ω1
轟べ∴奉①一︺雪一豆①︸冒鵯O巨戸旨ω−彗ガω.蜆霞∴
向窃R\峯2胃9嘗凹10︵句戸Hω︶二ω.ωミ∴宛9目−︹ぎ\
−&鼻9印﹄.○︵句P司︶’ω.HSl
︵29︶ 四宮和夫・民法総則︹第四版︺︵一九八六︶三二六
八三頁。奥田・前掲書︵前注1︶三九八頁︶。
︵30︶ 同旨、塚原・前掲︵前注2︶金判八二六号二頁。
頁。
↓①oo肉N.①−㊤1−≦饒コoす①﹃一R宍o昌昌.︵勺⑦︹工①﹃︶一印.PO
︵31︶ ω一凹巨2目藺q①﹃六〇昌昌1︵匡o﹃目︶一印.印.O︵︸戸㊦︶二吻
︵句戸Hω︶’ζ儘寄.ω‘
︵26︶ 更改につき、東京控判明治四〇年三月二三日新聞
ω↓印目2目oq①﹃穴o昌目−.︵■o﹃目︶一鵯.回1O︵勺戸①︶二岬べ①べ
に①OI
吻きoo丙N−−∴︸o=Nぎ一竃ω一ω.§①■z−奉岩oop
︵32︶ 書旨99撃六〇昌自−︵雰o訂﹃︶も﹄.◎︵句P畠︶’
四 二 七 号 五 頁 。 奥 田 ・ 前 掲 書 ︵ 前 注 1 ︶ 三 九 五 頁 。
丙N.①−o∴奉①一︺①i軸.申O︵句戸N㎝︶j−Eω畠自一ω.蜆蜆ool
︵27︶第三老が弁済した場合、主債務は第三老に対する
求償不当利得返還義務に転化することになる。このと
ωぎ]■本条は、普通法期よりも附従性の範囲を拡張し
︵33︶ 竃o巨き月ω.8ω[竃目智彗月凹.凹.O︵句戸①︶’一ω.
たものだとされる︵前掲注民︹椿︺︵前注5︶一八三
き、右の不当利得返還義務のために保証債務が残存す
分とは無開係の主債務を弁済した場合には、主債務と
るか否かが問題となりうる。ドイツでは、第三者が自
頁︶。
︵肪︶ ︸O=Nべ9NNω∴O[O宍o巨①目N<①易カー㊤ooピHoべ−
︵34︶ 宛ON匿﹂竃一ω.H雷1
保証債務はともに消滅する。そして、この第三者には
主債務老に対する不当利得返還請求権だけが帰属し、
代リ其債務ヲ履行スルニ存ルヲ以テ主タル債務力時効
︵事実関係不詳。理由は﹁保証債務ハ主タル債務老二
︵36︶ 大判大正四年七月二二日民録二一輯二二八七頁
保証人に対するそれは帰属しないとされる︵︸o=
⋮U丙H竃9曽oI︶
︵28︶ 日民四五七条二項は、相殺によって主債務が消減
し、その結果、附従性により保証債務も消減するとい
う構造を右するが、主債務老の反対債権を処分する権
保証人ハ主タル債務ノ時効二因リ利ヲ受クヘキ者ナレ
時効ヲ援用スルコトヲ得ルモノナリ﹂という︶。我
ハ同条︹一四五条︺二所謂当事老トシテ主タル債務ノ
二因リ消滅スレハ保証債務モ消滅スヘキハ当然ニシテ
て消減する限度で単に弁済を拒絶する抗弁権を右する
限は保証人にはないから、BGBと同様、相殺によっ
と解するべきだとされる︵我妻・前掲書︵前注1︶四
蛎
保証債務の「消減における附従性」について
{95〕
四二頁。林ほか・前掲弩︵前注1︶四〇二頁。奥田・
前掲書︵前注1︶三九六頁。平丼・前掲書︵前注1︶
妻・前掲書︵前注1︶四八一頁。平井・前掲書︵前注
1︶二三八頁。於保・前掲書︵前注2︶二四二頁。奥
二三八頁。前掲注民︹中井︺︵前注5︶二三五頁。
︵37︶大判大正四年一二月一一日民録二一輯二〇五一頁
合について、保証人はこれを援用できるとした。判旨
︵主たる債務老が別訴で消滅時効を援用しなかった場
証債務の消減をきたすとするのも、このことが理由で
逆に債権者にとって酷である。
ある。しかし、それでは保証債務の附従性が強すぎ、
消減スヘキヲ以テ保証人ハ之二依リテ保証債務ヲ免カ
二於テ之ヲ援用セサルモ債務ハ時効ノ完成シタルトキ
テ時効ヲ援用スル以上ハ仮令主タル債務老力他ノ訴訟
其当事老ナルコト疑ヲイレス果シテ然ラハ保証人二於
できるのであるから、本文にいう﹁履行拒絶の抗弁﹂
従性に基づいて保証人はこれらを債権老に対して主張
よっても、消滅時効の援用以外の抗弁については、附
重くなったと考えられるからである。そして、筆老に
ば主たる債務が﹁債務ノ態様﹂につき保証債務よりも
行を請求できない債務﹂に変更されたのであり、いわ
︵40︶ 主たる債務は時効消減したのだから、それは﹁履
ルヘキモノトス﹂という︶。
債務二関スル消減時効ヲ援用スルニ依リテ直接二其ノ
放棄したのであるから、これらの権利がないからとい
弁権はないけれども、連帯保証契約によって、それを
︵41︶ 連帯保証の場合には、保証人には催告・検索の抗
もそれらと同様に考えられる。
債務ヲ免ルルコトヲ得ヘキヲ以テ右ノ法条︹一四五
う。同様に考えてよいと思われる。
って、先の利益衡量がなりたちえないわけではなかろ
︵43︶ 我妻・前掲書︵前注1︶四八二頁。結局は、自己
同昭和七年一二月二日新聞三四九九号一四頁。
︵42︶ 犬判昭和七年六月二一日民集一一巻一一八六頁。
条︺二所謂当事考二該当シ主タル債務ノ消減時効ヲ援
掲書︵前注1︶四八一頁。於保・前掲書︵前注2︶二
大判昭和六年六月四日民集一〇巻四〇一頁。我妻・前
︵38︶ 大判大正五年=一月二五日民録二二輯二四九四頁。
用スルコトヲ得ルモノトス﹂という︶。
援用していない事案である。判旨は﹁保証人ハ主タル
大判昭和八年一〇月二二日民集二一巻二五二〇頁
は﹁保証人ハ時効ヲ援用スルニ付テ直接ノ利益ヲ右シ
.︵39︶ 判例・学説が、主たる債務の時効消減が当然に保
田・前掲箸︵前注1︶三九五頁。林ほか・前掲書︵前
︵事案の詳細は不詳であるが、主たる債務老は時効を
注1︶四〇二頁。
第109巻第1号 平成5年(1993年)1月号
(96〕
一橋論叢
%
の保証債務についての放棄の意思表示が、主たる債務
についての放棄の意恩を包含するか否かという問題に
帰着する︵林ほか・前掲箸︵前注1︶四〇二頁︶。
︵44︶ 判例.学説によると本文の問題がいたずらに複雑
化するのは、それらが主たる債務の時効消減による保
証債務の消減を認めるからにほかならない。
︵45︶ 本文の場合とは異なり、保証人が保証債務につい
て時効利益を放棄した後に、主たる債務の消減時効が
完成する場合は、本文で検討した通常の場合と同じで
︵蝸︶ 筆老の見解とは異なり、ドイツの判例は、保証人
ある。
に対する訴訟の係属中に主たる債務の消減時効が完成
した場合にも、保証人に履行拒絶権を認める︵前注
35︶。しかしながら、それはBGB七六八条という明
文規定が存在するからであり、そのような規定のない
わが国では、ドイツの判例と異なる解釈をすることも
可能であろう。
︵関東学院大学専任講師︶
97
保証債務の「消滅における附従性」について
(97〕