調 査 報 告 シカゴ 北 北米鉄鋼業 業界の動 向につい いて 本 年 10 月 に 発 表 さ れ た I MF 世 界 経 済 見 通 し に よ れ ば 、 2014 年 の 世 界 全 体 の 実 質 国 内 +3.3%と 、 7 月 時 に 比 べ △ 0.1%と とやや悪化するも、先進国・地 総 生 産 （ GDP） の 増 加 率 は + + 同 +0.5%） と 上 方 修 正 域 は +1..8%（ 前 回 比 ±0） と 堅 調 で あ る 。 な か で も 、 米 国 は +2.2%（ さ れ 、「 金 融 危 機 か ら 脱 出 し つ つ あ る 」 と 評 価 さ れ た 。 ま た 、 こ う し た 経 済 情 勢 を 受 け 、 2014 年 の 世 界 鉄 鋼 需 要 は 、+ +3%程 度 の 持 続 的 な 成 長 が 期 待 さ れ て い る 。今 回 は 、米 国 鉄 鋼 協会がとりまとめた年間鉄鋼統計レポートから米鉄鋼業界の産業動向について報告する。 １．北米における鉄鋼市場動向 2013 年 の 米 国 鉄 鋼 出 荷 量 は 9,542 万 ト ン と な り 、 前 年 比 で △ 0.5％ と 4 年 ぶ り に 対 前 年 比 で 減 少 に 転 じ る も 一 定 の 水 準 は 維 持 し て い る 。 直 近 5 年 （ 2009-201 3 年 ） の 年 平 均 成 長 率（ 以 下 下「 CAGR」 」）は 約 11% %（ 平 均 年 出 荷 量 8,6 00 万 ト ン ） と な っ た 。た だ し 、 金 融 危 機 前 も 含 め た 直 近 1 0 年 （ 2004 4-2013 年 ） で 比 較 す る と 、 CAG GR は +1% （ 同 9,700 万 ト ン ） となった。また、製品別出荷量の割合は図 2 のとおり。 （ 出 所 ： AIST） 図１ 米国鉄鋼出荷量推移 その他, 5% 線材 材, 3% 鋼管, 5% % 形鋼, 6% 厚板, 11% 鋼板, 54% 棒鋼, 16% （ 出 所 ： AIST T） 図２ 製 品 別 出 荷 量 割 合 （ 2 013 年 ） ― 15 ― 調査報告 シカゴ 鉄 鋼 需 要 を 市 場 別 に み る と 、NAFTA A（ 米 国 、カ カ ナ ダ 、メ キ シ コ ）で 生 産 さ れ た 鉄 鋼 製 品 の 約 2/3 3 はエンドユーザーに販売され、残りはサービスセンターや二次製品生産者向けと なっている。米国では、建築関係が最大の市場であり全体の 2 割を占めている。インフラ 関 連 や 商 業 用 施 設 の 建 築 の 増 加 に 伴 い 形 鋼 等 の 需 要 が 増 加 し た 。次 い で 自 動 車 向 け が 15% と比率が高く、この市場は高張力鋼を含む鋼板製品の最大消費地である。 その他, そ 17% 建築, 22% その他, 2 21% サービスセ ンター, 27% 自動車, 15% 自動 動車, 10 % 輸出, 35% % サービスセ セ ンター, 28 8% 輸出, 9% 家電 電, 2% 石油・ガス, 4% パイプ・ チューブ, 10% （ 出 所 ： AIST） 図３ マ ー ケ ッ ト 別 出 荷 量 割 合 （ 201 13 年 ） 次 に 、NAFTA の 粗 鋼 生 産 量 の 推 移 を み る と 、200 09 年 前 期 は リ セ ッ シ ョ ン の 影 響 が 強 く 、 生産レベルがピーク時の半分近くにまで落ち込んだ。その後、急速に回復するもリセッシ ョン以前の生産量には至っていない。2 2013 年 の 粗 鋼 生 産 量 は 前 年 比 △ 2%の 1 億 2,950 万 ト ン と な っ た 。 四 半 期 別 に み る と 、 足 下 の 2012 年 第 4 四 半 期 は 不 況 前 の 2008 年 第 1 四 半 期 よ り も △ 15％ ％ と な っ て い る 。ま た 、NAFTA の 2013 年 の 設 備 利 用 率 は 74%と な っ た 。 （ 出 所 ： AIST） 図４ 北米における粗鋼生産量推移 ― 16 ― 調査報告 シカゴ ２．輸出入の動向（北米国別） 米 国 に お け る 鉄 鋼 製 品 は 輸 入 超 過 が 続 く も の の 、10 年 前 に 比 べ れ ば 輸 出 量 が 倍 増 し て お り 、 そ の 差 は 縮 小 す る 傾 向 に あ る 。 輸 出 量 は 、 2009 年 の リ セ ッ シ ョ ン 時 に 前 年 比 △ 32％ と 落 ち 込 む も 、 そ の 後 緩 や か な 伸 び を 示 し て お り 、 2013 年 は 、 前 年 比 △ 7.7%の 1,268 万 ト ン と な っ た 。 地 域 別 に み る と NAFTA 域 内 （ カ ナ ダ 、 メ キ シ コ ） 向 け で 全 体 の 8 割 以 上 を占めている。 米 国 に お け る 鉄 鋼 製 品 の 輸 入 量 も リ セ ッ シ ョ ン 時 に は 直 近 10 年 間 で の ピ ー ク で あ る 2006 年 比 で △ 37％ と な っ た が 、 ユ ー ザ 産 業 の 需 要 増 に 伴 い 右 肩 上 が り に 回 復 し 、 2013 年 は 前 年 比 △ 4.0%の 3,215 万 ト ン と な っ た 。地 域 別 に み る と ア ジ ア が 全 体 の 3 割 を 占 め て お り、内訳は韓国、日本、中国という順番であった。また、ブラジルからの輸入量の増加が 顕 著 で あ り 、 2010 年 に 比 べ 約 4 倍 増 （ 前 年 比 +13%） と な っ て い る 。 （千トン） 【輸出入の推移】 50,000 45,000 40,000 35,000 30,000 輸出 25,000 輸入 20,000 15,000 10,000 5,000 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 ― 17 ― 調査報告 シカゴ 【 地 域 別 （ 2013 年 ） 輸 出 （ 左 ）、 輸 入 （ 右 ）】 （ 出 所 ： AIST） 図５ 米国における鉄鋼製品の輸出について カ ナ ダ に お け る 鉄 鋼 製 品 の 輸 出 入 の 推 移 は 図 6 の と お り 。直 近 10 年 間 の 動 向 を み る と 、 すべての年で輸入量が輸出量を上回っている。リセッションを境に輸入量が飛躍的に増加 し 、輸 入 超 過 は 拡 大 傾 向 に あ っ た が 、2 2013 年 の 輸 入 量 は 前 年 比 △ 17% と 大 幅 に 減 少 し 、輸 出入量の差が減少した。 （千トン） 14,000 12,000 10,000 8,000 輸入 輸出 6,000 4,000 2,000 0 005 2006 20 007 2008 20 009 2010 201 11 2012 201 13 2 003 2004 20 （ 出 所 ： S tatistics Canada） C 図６ カナダにおける鉄鋼製品の輸出入 ― 18 ― 調査報告 シカゴ メ キ シ コ に お け る 鉄 鋼 製 品 の 輸 出 入 の 推 移 は 図 7 の と お り 。メ キ シ コ に お い て も 、す べ て輸入量が輸出量を上回っている。輸出は増加傾向が続くも、輸入がそれを上回るペース で 増 加 し 輸 入 超 過 が 拡 大 し て い た が 、2013 年 は 輸 入 量 が 減 少 し 、輸 出 は 増 加 し た た め 、輸 出入量のギャップは縮まった。 （千トン） 12,000 10,000 8,000 輸入 6,000 輸出 4,000 2,000 0 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 （ 出 所 ： CANACERO） 図７ メキシコにおける鉄鋼製品の輸出入 ３．米国における鉄鋼生産に係る状況 米国鉄鋼産業はグローバルで競合する各社から構成されており、各生産拠点において生 産 性 や 設 備 利 用 率 の 向 上 に 取 り 組 ん で い る 。 米 国 鉄 鋼 生 産 の 設 備 稼 働 率 は 、 過 去 10 年 間 平 均 で 79％ で あ っ た が 、 2009 年 に は 約 5 割 ま で 落 ち 込 ん だ 。 リ セ ッ シ ョ ン 後 、 生 産 量 は 増加傾向であるが、引き続き生産キャパシティとのギャップは顕在である。 ― 19 ― 調査報告 シカゴ （ 出 所 ： AIST） 図８ 設備稼働率の状況 米国における主な鉄鋼メーカー群（米国粗鋼生産ランキングにおける上位であり、粗鋼 量 全 体 の 約 50％ を 占 め る 企 業 群 ） の 財 務 状 況 は 図 9 の と お り 。 2009 年 は 、 6 期 ぶ り に 減 益 と な っ た も の の 、2000 年 代 前 半 の 景 気 後 退 局 面 で 生 じ た 大 幅 な 減 益 に 比 べ れ ば 、影 響 は 軽 微 と み ら れ る 。そ そ の 後 、20 011 年 に は 黒 字 に 転 換 し た が 、20 013 年 は 、世 世界的な生産過剰、 需 要 低 迷 や 価 格 下 落 等 の 鉄 鋼 業 界 の 構 造 的 な 問 題 に よ り 、 2 012 年 に 続 き 減 益 と な っ た 。 （百万ドル） 8,00 00 6,00 00 4,00 00 2,00 00 純 純利益 0 設 設備投資 ‐2,00 00 ‐4,00 00 ‐6,00 00 ‐8,00 00 2002 2 003 2004 2 2005 2006 2 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 （ 出 所 ： AIST） 図９ 主要鉄鋼メーカーの財務状況 図 10 0 は米国鉄鋼業界において、鉄鋼 1 トンを生産する際のエネルギー消費量の推移で ある。米国鉄鋼産業は、長年にわたり鉄鋼生産や市場供給を安定的に行うことを確約して おり、それらを実現するために最新鋭の設備や技術を工場に導入するなど積極的な設備投 ― 20 ― 調査報告 シカゴ 資 を 行 っ て い る 。鉄 鋼 生 産 に 係 る 新 た な 技 術 の 導 入 や 鉄 鋼 生 産 現 場 に お け る 改 善 等 に よ り 、 1990 年 比 で は エ ネ ル ギ ー 消 費 量 で 28% %、CO2 排 出 量 換 算 で 35％ 削 減 し た 。プ ロ ダ ク ト の 生産量は増加するも、トータルのエネルギー消費量は減少するような業界は米国では鉄鋼 業界以外にはみられない。 （ 出 所 ： AIST） 図１０ 鉄鋼 1 トンを生産する際のエネルギー消費量の推移 図 11 は 、 鉄 鋼 1 ト ン を 生 産 す る 際 の 労 働 量 （ 時 間 ） の 推 移 を 示 し た も の で あ る 。 1980 2000 年 代 後 半 は 1/5 と な っ て お り 、労 働 生 産 性 が 向 上 し て き て い る こ と 年 代 に 比 べ る と 、2 が わ か る 。 米 国 鉄 鋼 業 界 全 体 で み れ ば 2013 年 は 単 位 あ た り 約 2 時 間 だ が 、 主 要 な 生 産 拠 点 で は 1 時 間 を 下 回 っ て お り 、 こ れ は 、 1980 年 代 以 降 、 設 備 の 大 幅 な 近 代 化 や 合 弁 ・ 企 業買収等による先端技術の取り入れを重ねてきたことに加え、これらを使いこなすことが できる高い技術力を持った労働力のおかげであると言える。 （ 出 所 ： AIST） 図１１ 鉄鋼業界における労働生産性の推移 ― 21 ―
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