年頭所感 経済産業省製造産業局非鉄金属課 井上課長

平成27年
年頭所感
経済産業省
製造産業局非鉄金属課長
井上 幹邦
平成27年の新年を迎え、謹んでお喜び申し上げます。また、昨年は経済産業
行政に対する深いご理解と格別のご支援を賜りましたことを厚く御礼申し上げ
ます。
昨年の我が国経済を振り返ってみますと、日本が長い間抱えてきた悩みから
の脱却の第一歩を踏み出した1年であったと思います。デフレや円高を脱し、前
年に比べ10~20 円程の円安となり、また日経平均株価も50%程上昇し、多くの
企業において業績の回復が実現されました。
他方で、消費増税や、進行する円安による経済活動への影響等については動
向を注視していかなければならず、また被災地の復興、電気料金の高騰、女性
のさらなる活用等、我が国経済の競争力維持・強化にむけた課題も多数残され
ております。特に、昨年は日本チタン協会を含む電力多消費産業11団体から、
当省宛てにエネルギー政策に関する要望書が提出されました。製造産業界の皆
様にとって、電気料金の値上げは深刻な問題でありますから、当省としても引
き続き対策を講じていきたいと思います。
さて、昨年の日本経済を、製造業にスポットを当てて振り返ってみますと日
本のものづくりの力が大いに発揮された1年であったのではないかと思います。
初の国産ジェット機の完成や、次世代自動車の開発・普及、リニア新幹線の着
工決定等、日本のものづくりの力が結集されました。
こうした日本の製造業の高い技術力を活かし、グローバル市場における競争
力を更に強化していく上で、部素材産業の重要性、そして高機能化・高付加価
値化をはじめとするニーズは、年を経るごとに高まっております。スマートフ
ォンのプリント配線基盤や電子機器のリードフレームにおいては更なる薄肉
化・軽量化が、エアコンの熱交換器においても更なる熱交換率の向上が求めら
れており、鉄をアルミニウムに、アルミニウムをマグネシウムや樹脂素材に置
き換えることでこれらのニーズに対応する動きがあります。一方で素材は変え
ずに、優れた熱伝導性などの材料そのものが持つポテンシャルをさらに活かす
ことでニーズに対応している動きもあり、銅はまさにそのような素材の一つで
あると思っております。銅が持つ優れた電気伝導性、熱伝導性、高い加工性全
てを兼ね備えた代替材料は世の中に多くは存在せず、軽量化・燃費向上などの
ためにマルチ・マテリアル化が進められる中においても、これまでと同様に銅
が使い続けられている分野は多くあります。
また銅には、部素材としての一面だけではなく、優れた殺菌性・抗菌性とい
う一面もあり、この特性は院内感染や空港や港湾などからのウイルス侵入の防
止において効果が発揮されるのではないかと思っておりますので、銅がもつ高
いポテンシャルを活かしつつ社会からのニーズに貢献されることに期待してお
ります。
これから 2020 年にかけて、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた
インフラ整備そして都市部の再開発に伴う建設需要の増大が予想されています。
国内市場の頭打ちやリーマンショック等により、年産 100 万トンを大きく割り
込んでいた伸銅品生産量が今年度は 81 万 5 千トンにまで回復する見込みである
とお聞きしておりますが、銅業界の皆様におかれましてはこの機会に、さらな
る需要拡大に努めて頂きたいと思います。
当省では、昨年初頭に産業競争力強化法が施行されて以来、産業界の競争力
強化に力を入れて取り組んでまいりました。本法律にもとづき、企業実証特例
制度による企業単位での規制改革や、収益力の飛躍的な向上に向けた事業再編、
起業の促進などが行われてきました。非鉄金属業界においても、競争力強化の
手段として、事業再編は有効な手段であります。事業再編の具体的内容は、個
別の事情に応じて民間において自由に発想されるものでありますが、事業の切
り出し、統合等により経営資源をより有効に活用しながら、新商品開発や新た
な市場の開拓等の前向きな取組みがあれば、当省としても、産業競争力強化法
のスキーム等を通じて支援してまいりたいと思います。
最後になりますが、本年も相変わらぬ関係各位のご理解とご支援をお願い申
し上げるとともに、皆様のますますのご発展を祈念しまして、新年のご挨拶と
させていただきます。
平成27年元旦