事前評価書(294KB) - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

事前評価書
作成日
平成27年1月13日
1.プロジェクト名
バイオマスエネルギー技術研究開発/
セルロース系エタノール生産システム総合開発実証事業
2.推進部署名
新エネルギー部
3.プロジェクト概要(予定)
(1)概要
1)背景
バイオエタノール生産技術開発については、バイオ燃料技術革新計画(20
08年3月 バイオ燃料技術革新協議会)の技術革新ケースとして、生産コス
ト40円/L、GHG(greenhouse gas:温室効果ガス)削減
率50%以上(対ガソリン)の技術を持って、2020年に年産10~20万
kL規模での実用化を実現すべく取組んでいる。
この中でNEDOは、【セルロース系エタノール革新的生産システム開発事
業】
(以下「セル革事業」)により、食糧と競合しないバイオマス原料の栽培か
らバイオエタノール生産プロセスまでを一貫したセルロース系バイオエタノ
ール生産システムの開発を2009年度~2013年度で行ってきている。こ
れまでの技術開発により、食糧と競合しない草本系又は木質系バイオマス原料
からのバイオエタノール生産について、大規模安定供給が可能なセルロース系
目的生産バイオマスの栽培から前処理工程、糖化工程、発酵工程及び濃縮・脱
水工程を含むエタノール生産プロセスまでの一貫生産システムを構築し、研究
開発を実施することにより環境負荷・経済性等を評価した。
[2009-2013の成果の概要]
【バイオエタノール一貫生産システムに関する研究開発】
① 「セルロース系目的生産バイオマスの栽培から低環境負荷前処理技術に基
づくエタノール生産プロセスまでの低コスト一貫生産システムの開発」
(以
下「草本系」):多収量草本系植物による原料周年供給システムについて、
熱帯においてネピアグラスの大規模栽培実証試験を行い、生産性50t/
haを達成し、有機物施用の効果、圃場条件の違いによる生産性の増減に
ついて知見を得た。また、エタノール生産プロセスについて、前処理プロ
セス、酵素糖化プロセス、発酵蒸留プロセスのベンチプラントを建設し、
試験を実施した。その結果、酵素コスト10円/Lに目処をつけ、エタノ
ール発酵収率で目標値(C6糖:95%、C5糖:85%)を達成するな
どそれぞれの要素技術の目標を達成し、2013年度の事業終了時の目標
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として設定したコスト目標である80円/Lを達成するとともに、化石エ
ネルギー収支2以上、GHG削減率50%以上の達成に目処がついた。
② 「早生樹からのメカノケミカルパルピング前処理によるエタノール一貫生
産システムの開発」(以下「木質系」):生長量等調査の結果から選定した
エタノール生産適性早生樹について、植栽方法(植栽密度、伐採時期、萌
芽更新等)の検討を行うため、国内(一部海外も含む)での圃場試験を実
施し、目標の乾物収量17t/ha/年を達成し、条件の違いによる生産
性の増減について知見を得た。また、エタノール生産プロセスについて、
パイロットプラントを建設し、前処理、糖化発酵、蒸留の一連プロセスの
一貫生産試験を実施した。その結果、投入エネルギー量6MJ/kg以下
と糖化率80%以上を同時に達成する前処理方法の確立、自己熱再生型蒸
留によりエネルギー消費量を従来の1/6にするなどの要素技術成果が
得られた。
これらの結果に対し、事後評価においては、開発目標は概ね達成しており、
要素技術に優れたものがあると評価された一方で、上記①②いずれの技術にお
いても、以下のような共通の課題についても意見が寄せられた。
・ 一貫生産システムとしての検討の遅れ
・ 規模の大きな商用プラントへのスケールアップに関する課題の抽出・対
策が必要
・ ①・②の事業の双方の強みを組み合わせたプロセスの検討の必要性
・ 更なる生産コストの低減が必要
これら意見を踏まえ、実用化につなげるためには、草本系・木質系の双方で
得られた有望な技術を選別し組合せ検討・最適化を行った上で、そのプロセス
を検証することが必要である。その検証結果に基づき経済性・ライフサイクル
評価を実施したうえで、1万kL/年規模のプレ商用実証プラントにより、実
用化に向けたシステムの検証・確立を図っていく。
2)目的
2013年度終了事業であるセル革事業においては、各事業者が設定した事
業終了時の開発目標は概ね達成したが、商用化を目指した大規模な商用プラン
ト(年産20万kL規模)を実用化するには、一貫生産プロセスの性能向上、
スケールアップ技術の確立などが加えて必要とされている。このため、セル革
事業で得られた草本系と木質系の成果を組み合わせることにより一貫生産プロ
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セスとしての性能向上を図り、その性能検証とスケールアップ技術を確立すべ
く、プレ商用実証プラントによる実証事業を実施する。
3)実施内容
2年度目までに、セル革事業で得られた木質系と草本系の成果を一本化した、
各工程要素技術の最適組合せ検討を実施するとともに、国内外の優良技術を調
査・検討する。これらと市場見通しを踏まえ、事業性評価(コスト評価、GH
G削減効果、エネルギー収支評価)を実施し、有識者の意見を参考にしつつ、
実証事業継続の可否を判断する。評価の結果、以後の研究を中止する場合もあ
る。
事業性評価の結果、実証事業を継続することとなれば、3年度目以降に、プ
レ商用実証プラントによる技術実証を行う。
(2)規模
総事業費(需給)
195億円(委託、助成2/3もしくは1/2)
(3)期間
平成26年度~31年度(6年間)
4.評価内容
(1)プロジェクトの位置付け・必要性について
1)NEDOプロジェクトとしての妥当性
2014年に改定された「エネルギー基本計画」において、バイオ燃料は
引き続き、導入を継続することとしており、NEDOの第3期中期計画にお
いても、食糧供給に影響しない第2世代バイオ燃料であるセルロース系エタ
ノールについては、2020年頃の実用化・事業化を目指すこととしている。
本プロジェクトはセルロース系エタノールの大規模生産と商用化を目指すも
のであり、本プロジェクトの成果により国産技術により生産されたエタノー
ルが普及することで、石油製品供給の一端を担える選択肢を確保することに
よるエネルギーセキュリティ向上効果と温室効果ガスの削減効果を得ること
ができ、国家的な施策において必要なプロジェクトと位置付けられる。従っ
て、NEDOが関与すべき事業として妥当である。
2)目的の妥当性
国内においては引き続きバイオ燃料の導入を進めることとなっており、今
後も相当量のセルロース系エタノールの消費が見込まれる。また、2013
年度末時点で、日本の一次エネルギーの約9割は化石燃料であり、エネルギ
ーセキュリティの観点からも、エネルギー源の多様化に資する本事業は重要
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かつ緊急性が高い。 セル革事業で得られたエタノール一貫生産技術の各要
素技術は世界のトップレベルにある。本事業の実施を通じ、実用化の鍵とな
る一貫生産プロセスとしての性能向上とスケールアップ技術を確立し、その
上でプレ商用実証プラントでの技術実証を行うことで、2020年頃のセル
ロース系エタノール生産の商用化を可能とすることが期待され、本事業の実
施は十分に意義のあるものである。
(1)プロジェクトの位置付け・必要性についての総合的評価
本事業は国の政策等を踏まえた世界トップレベルの取り組みであり、本技術
が実用化されれば、バイオ燃料利用産業の創出、我が国のエネルギーセキュリ
ティの向上、国際競争力の強化等に大きく寄与することになり、位置付け・必
要性は妥当と考えられる。
(2)プロジェクトの運営マネジメントについて
1)成果目標の妥当性
本プロジェクトの成果目標は、セルロース系エタノール生産の商用化に資
する技術の確立である。本プロジェクトの成果により、大規模なセルロース
系エタノールの生産と普及が促進されることになり、NEDOのプロジェク
トの成果目標として妥当である。
2)実施計画の想定と妥当性
提案時に目標達成までのマイルストーンを設定させ、外部有識者で構成す
る採択審査委員会でその妥当性を評価し、採択結果に反映することとするこ
とが検討されており、妥当である。
3)評価実施の想定と妥当性
研究開発の意義、目的達成度、成果の技術的意義、将来の産業への波及効
果等について随時確認を行い、必要に応じて研究開発内容の見直し等を行う。
また、外部有識者による事業性評価、中間評価を行い、実証事業継続の可否
を判断する他、事業終了後には事後評価を行う。以上のことから、評価実施
の想定、評価結果を受けた対応についても妥当である。
4)実施体制の想定と妥当性
将来の原料調達からエタノールの製造・販売までを見据えた事業である。
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原料調達が可能な企業とエタノールの市場供給が可能な企業の参加を想定す
ることにより、事業終了後の商用化が可能な研究開発体制を取ることとして
おり、妥当である。
5)実用化・事業化戦略の想定と妥当性
「エネルギー供給構造高度化法」にて、2017年には50万kLのバイオ
エタノールの導入義務が石油精製業者に課せられている。また、2014年
に改定された「エネルギー基本計画」にも、引き続きバイオ燃料の導入を継
続することとされている。
現在、本事業では2020年頃を目途に、年産10万~20万kLのバイ
オエタノール生産設備を建設することを目標としており、これを実現するこ
とにより、国内エタノール需要の一部を賄うことが可能となる。また、日本
国内へのエタノールを供給可能な事業者がメンバーとして参画することを想
定することにより、本事業終了後に商用化した際に円滑な国内マーケットへ
のバイオエタノール供給が可能である。以上より、実用化・事業化戦略は妥
当である。
6)知財戦略の想定と妥当性
必要に応じて、知財の取得及びその実施に係るルールの整備や知財運営委
員会の体制整備等を行うこととしており、妥当である。
7)標準化戦略の想定と妥当性
LCA評価方法(GHG排出量の計算方法、エネルギー収支計算方法)、遺
伝子組み換え体による生産プロセスの海外における規制動向等について、本
開発実証事業と連携し本事業期間中には一定の方向性を整理すべく官民合同
で検討することとしており、妥当である。
(2)プロジェクトの運営マネジメントについての総合的評価
本事業の目的、実施計画、予算等はバイオ燃料の普及拡大に向けた取り組み
として妥当と考えられる。
(3)成果の実用化・事業化の見通しについて
1)プロジェクト終了後における成果の実用化・事業化可能性
一定量のセルロース系エタノールの需要が存在し、それに対して原料調達
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の能力を有する企業とエタノールの市場供給能力を有する企業の参加を想定
している。また、事業性評価(FS)を行った上で、プレ商用実証プラント
をプロジェクト期間内に建設して技術実証を行うこととしており、円滑な事
業化への移行を可能とすることから、実用化・事業化の可能性は明確である。
2)成果の波及効果
本プロジェクトでは、バイオケミカルの技術以外に広範囲で高度な技術の
裾野を必要とし、かつ高度な生産技術も必要となる。したがって、多数の工
学技術者の育成ができる。
また、バイオマス原料からのバイオエタノール一貫生産技術の商用化が進
めば、国内におけるバイオエタノールの普及市場創出効果とGHGの排出削
減効果は大きい。同時に、本事業の成果は、バイオリファイナリーの基礎技
術としての応用が可能であり、同様の効果が期待される。さらに当該分野に
関連する業種は多岐にわたり、新たな産業・雇用を創出できる。世界に先駆
けて実用化を進めることで、当該分野の国際競争力を強化できる。
(3)成果の実用化・事業化の見通しについての総合的評価
目的とするセルロール系エタノールの大規模生産プラントを実用化するため
に、原料調達や市場供給に必要な能力を有する企業の参加を想定し、事業性評
価(FS)を実施した上で、プレ商用実証プラントによる実証に進む計画であ
る。従って、成果の実用化・事業化の見通しを常に意識した計画となっている。
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