放送技術の概要 NHKの放送技術の役割 放送の発展を先導 放送は、技術の進歩とともに発展するメディアです。NHKは、 放送技術の進歩に先導的に取り組み、ハイビジョンや衛星放送、 安全・安心・豊かな社会を築く、すべての人にやさしい放送 デジタル放送などの研究、実用化を行い、その普及と成熟により、 放送文化を発展させてきました。 「研究」 − 「実用化」 − 「普及・ 成熟」を繰り返すことによって、技術革新の成果が放送の中に 取り込まれ、新しい文化創造につながります。 空間像再生型立体テレビ 研究 放送 8Kスーパーハイビジョン 実用化 「研究」では、将来の放送サービス・放送システムに活用する 技術について、視覚はもとより人間科学の領域にまで踏み込 研究 ハイブリッドキャスト (Hybridcast) とです。NHKの放送技術は、この「研究」 − 「実用化」 − 「普及・ デジタル放送 研究 放送 ハイビジョン 研究 放送 カラー化 発展 普及・ 成熟 発展 実用化 研究 放送 テレビ 普及・ 成熟 発展 実用化 で正確な緊急報道、放送の安定送出と受信環境の整備・改善を 実行してきました。 普及・ 成熟 実用化 成熟」を一貫体制で重ねることで、新しい放送サービスを実現 し、視聴者の生活に役立ち、心を豊かにする番組の制作、迅速 発展 実用化 するものです。 「普及・成熟」は「実用化」 した設備や技術を使って、 番組やニュースを制作し、放送のサービスを広め高めていくこ 普及・ 成熟 放送 んだ研究を行っています。 「実用化」は、 「 研究」の成果を広く利 活用できるように規格化・標準化し、 また実際の設備として整備 普及・ 成熟 ラジオ 研究 放送 普及・ 成熟 発展 実用化 これからも10年後、20年後の豊かな放送文化の創造に貢 献していきます。 オリンピックと放送技術 遠くの出来事を生で感じたい。人々の要望が放送技術 遠くかの地のオリンピックを見てみたい。 人々のそうし を進化させてきました。 た願いが放送技術を進化させてきました。 1964年東京大会では、 1964年の東京大会ではオリンピック初となるカラー 五輪初のカラーテレビ放送、 る方々に8Kの魅力を存分に体感していただきました。 こ SHVのパブリックビューイング(PV)を行い、日本国内の の成功により、次世代放送メディアに対するNHKの取り 3会場では約20万人が視聴しました。 この成功により、 組みは世界中から高い評価を得ています。 次世代高画質放送に対するNHKの取り組みが世界中か そして、2020年の東京大会。世界の放送技術の最先 ら高い評価を得ました。 放送が行われました。 衛星生中継が行われ、 さらに、 多くの人がカラーテレビを購入し 衛星中継やマラソン全コー 端を歩んできたNHKにとっても、 最高の舞台であり、ま 世界の放送技術の最先端を歩んできた日本で開催さ ス生中継、 五輪を視聴しました。 スローモーションVTRなど、NHKが開発した た絶好の機会でもあります。 NHKは引き続き放送技術 れる2020年東京大会。NHKはさらなる放送技術の発 新たな放送技術が一斉に登場し、 世界各地で開催される五輪を衛星生中継で視聴でき 東京大会は世界最初の の発展に取り組み、さらに豊かな放送の実現を目指して 展を目指しまた一つ、 五輪の歴史を刻みます。 「テレビオリンピック」 ることでテレビが売れ、 と呼ばれました。 市場が活況になり、その次の大会 いきます。 で更に新しい放送技術が開発され、 今では当たり前となったハイビジョン放送も、 それに合わせてテレ その普及 ビも進化する様になり、 期にはオリンピックとともに技 放送技術は五輪と共に発展して 術 発 展が ありました。 きました。 1988年のソウル大会ではオリンピック初のハイビジョ ン放送を実施。 今では当たり前となったハイビジョン放送も、 1998年の長野大会では機動性に優れ 普及期に は五輪と共に技術発展がありました。 たVTR一体型のハイビジョンカメラが登場、 1988年のソウル 大活躍しま 1964年 東京大会 した。 大会では17日間連続HV実験放送を行いました。1998 年長野大会ではVTR一体型HDカメラも登場しました。 まだ記憶に新しい2012年のロンドン大会では、NHK が中心となって開発を進めている8Kスーパーハイビ そしてまだ記憶に新しい2012年ロンドン大会では ジョンが大きく飛 躍 。N H KはB B C（ 英 国 放 送 協 会 ）、 NHKが次世代放送方式として開発を続けている8K OBS（オリンピック放送機構） と共同で、日米欧の各会場 スーパーハイビジョンの飛躍がありました。 NHKはイギ で8Kのパブリックビューイングを実施し、 20万人を超え リス公共放送BBC、 OBS 1と共同で、世界中の7か所で 08 1988年 ソウル大会 「研究」−「実用化」−「普及・成熟」の成果 ∼音声認識による生字幕制作∼ 字幕放送はテレビ番組のナレーションやドラマのせりふ 方式）。 しかし、背景雑音があるスポーツ中継や明瞭に発話 などの音声を文字にして伝える放送で、テレビの音が聞き されないバラエティー（情報）番組等では認識精度が下が 取りにくい高齢の方や聴覚に障害のある方への重要な情報 ります。そこで、背景雑音のない部屋で別の話者（リスピー 提供手段となっています。この字幕には事前収録番組へ字 カー）が言い直した音声を認識させるリスピーク方式の生 幕を付けるオフライン字幕と生放送番組へ字幕を付ける生 字幕制作システムを開発しました。これらの方式と認識誤り 字幕があります。リアルタイムでの字幕制作については長 を効率良く修正できるインターフェースの開発により、さま い間技術的に困難でしたが、音声認識技術の進展や高速入 ざまな生放送番組に字幕を付与することが可能になりました。 力用キーボードの利用によって、生字幕放送の拡充が進ん この設備を実用化して放送局に整備し、現場のスタッフ がニュースをはじめとするさまざまな番組の字幕を効率的 でいます。 生字幕放送ではテレビの音声と字幕表示までの遅れを に制作して放送しています。また、地方局が放送する番組 できるだけ短くする必要があります。放送技術研究所では、 については原稿を活用して認識誤りの修正を省力化する 音響的な確率と言語的な確率を基に最も可能性の高い単 技術の開発も進めています。 NHKは字幕放送により、視聴者のみなさまにユニバー 語を短時間で出力する方式を開発しました。 この方式ではニュース番組であればインタビュー以外の サルな情報提供を行い、より豊かで質の高い放送を目指し 部分で高い精度で番組音声を直接認識できます （ダイレクト ています。 ダイレクト方式とリスピーク方式 ダイレクト方式 リスピーク方式 直接 復唱 音声認識 リスピーカー アナウンサー 字幕画面 字幕画面 誤り修正 原稿を活用して ・原稿を活用 省力化した字幕付与 省力化した た字幕付与 ・番組への字幕付与 認識誤り修正を省力化した ・認識誤り修正を省力 字幕制作方式の開発 ・音声認識アルゴリズムの開発 ・各種字幕付与方式の開発 ・認識誤り修正インターフェース 放送 の開発・検証 放送 普及・成熟 普及・成熟 熟 研究 用した字幕 ・原稿を活用した字幕 研究 制作システムの導入 実用化 字幕制作 ・音声認識字幕制作 システムの導入 実用化 発展 09 放送技術の概要 技術の仕事 番組やニュースの制作・送出、放送の送信と受信、放送設備・システムの開発と整備、そして放送技術の研究まで、NHKの 技術の仕事は多岐にわたります。信頼される公共放送として、放送サービスの確実な実施とさらなる充実に向けて、東京・渋 谷の放送センターをはじめ、全国の放送局で技術者が活躍しています。 ニュースセンタースタジオ ラジオセンタースタジオ 通信衛星 副調整室 海外中継 ニュース取材 衛星伝送中継車 無線受信基地局 回線センター 中継制作 中継車 方式変換 全国の放送局 スタジオ制作 スタジオ副調整室 データ放送 コンテンツ制作 CG制作 ロケーション （ロケ） 10 映像編集作業 （映像ポスプロ） 映像特殊効果 音声ポスプロ 放送衛星 映像／音声／データ 番組／コンテンツ 放送波 インターネット アップリンク 主局（渋谷） B-SATアップリンクセンター アップリンク副局 （菖蒲） テレビ 放送所 番組送出 （TOC） 視聴者のみなさま ラジオ・FM放送所 国際放送 コントロールルーム 緊急警報 送出装置 全国の放送局 生字幕制作 ファイルベース 送出設備 良好な受信環境の 維持・改善 電気・空調中央運用室 放送設備・システムの開発と整備 ハイブリッドキャスト コンテンツ制作 インターネット コンテンツ制作 NHKオンデマンド アーカイブス 技術研究 公開ライブラリー 11 放送技術の概要 技術の仕事 ニュース取材 ラジオセンター 災害や事件、事故などの緊急報道のときには、視聴 者のみなさまに迅速・的確に情報をお届けすることが 重要です。現地の状況をいち早くお伝えするため、衛 星伝送中継車、取材ヘリコプター、ロボットカメラなど、 さまざまな機器を活用して取材を行っています。 ＮＨＫラジオのニュース情 報 番 組や「ラジオ深 夜 便」は、放送センターにあるラジオセンターで制作・ 送出しています。ラジオ第１放送のほとんどの番組は ラジオセンターから生放送で送出しています。 回線センター 中継制作 スポーツ中継や劇場中継など、放送局以外の場所 で番組を制作することを中継制作と呼びます。中継 制作では、スタジオ副調整室の機能を車に搭載した 中継車を使用します。中継車の映像、音声を通信衛星 や無線回線、光ファイバーを介して放送局まで伝送し、 放送します。 緊急報道では災害、事件、事故の発生時に、現場の 映像と音声をいち早く放送局へ伝送することが重要 です。回線センターはスポーツ中継や一般番組も含 めた放送センター以外からの伝送を受信するととも に、海外を含めた全国の放送局と放送センターの間 における映像・音声素材の受配信を行っています。 方式変換 スタジオ制作 ドラマや歌謡番組などスタジオを使用して制作す る番組でも、 カメラ、音声、照明などの多くの分野で技 術者が力を発揮しています。スタジオ副調整室では、 カメラ映像の品質を管理するVE （Video Engineer） や、 複数のカメラを切り替えるスイッチャーなどが、ディレ クターなどの番組制作担当者と協力して番組を制作 します。 NHKでは、海外放送局が制作した番組を放送した り、NHKで制作した番組を海外放送局に提供するな ど、番組交換を行っています。これに伴い、各国のテレ ビ方式から日本の標準テレビ方式であるハイビジョン 方式に信号を変換しています。 データ放送コンテンツ制作 デジタル放送のサービスの一つであるデータ放送 用のコンテンツを制作・送出しています。 映像編集作業（映像ポスプロ） ロケーション （ロケ） ドラマやドキュメンタリー、紀行番組などでは、屋外 での撮影、収録を多く行います。カメラマンのみの小 規模なロケから、 カメラ、音声、照明など多くの担当者 で制作するドラマのロケまで、さまざまな規模のロケ を行っています。 スタジオやロケで撮影されたさまざまな映像・音声 素材の長さを変え、組み合わせ、並べ替えることで番 組は出来上がります。この一連の作業をポストプロダ クション （ポスプロ） と呼びます。 CG制作・映像特殊効果 ニュース送出 国内や海外で起こった事件や事故などの情報は、 ２４ 時間NHKに入ってきます。ニュースセンターでは、そ れらの情報を基に、映像や音声、 ＣＧなどを活用して ニュース・報道番組を制作・送出しています。 12 コンピューターグラフィックス（CG）と特撮技術を 利用することで、カメラで撮影しただけでは得られな い創造性豊かな映像を制作できます。特撮技術を用 いてミニチュアを実物のように見せたり、映像合成技 術と併用することで、数十人のエキストラを数千人の 群衆に見せることができるなど、番組の表現をより豊 かにしています。 音声ポスプロ アーカイブス 音声ポストプロダクションでは、 より分かりやすく、感 動的な番組を作るため、素材の音声に音楽や効果音、 ナレーションなどを加える作業を行います。 これまで放送した番組など、かけがえのない映像資 産を最新のデジタル技術で一元的に管理しています。 放送現場を中心に多角的に利用するとともに、全国 の番組公開ライブラリーで、みなさまにご覧いただい ています。 番組送出（TOC） TOCでは、ニュース、スポーツ中継、 ドラマなどの 番組を、放送スケジュールに基づいて自動的に送出し ています。また、番組送出設備の運用や管理のほか、 全国の放送局間を結ぶネットワーク回線の管理や、 番組送出のための編成、報道、番組セクションとの連 絡、調整を行います。 国際放送 テレビ・ラジオ・FM放送所 全国の視聴者のみなさまにあまねく放送をお届け するため約2,200の地上デジタルテレビ放送所と、 約200のラジオ放送所、約500のFM放送所から 毎日、安定的に電波を送信しています。 良好な受信環境の維持・改善 NHKは海外のみなさまを対象に、テレビとラジオ、 インターネットで国際放送を実施しています。また、 世界各地の放送局やケーブルテレビ局などへ番組を 配信しています。これらの番組とニュースは、放送セ ンターの国際放送スタジオから送出しています。 番組を制作、送出、電波で送信する業務のほかに、 各家庭が良好な環境で番組を受信できるように支援 することもNHKの重要な仕事の一つです。電波障害 に対して、原因の調査や改善対策の技術説明を行い、 良好な受信環境を維持するための活動などを実施 しています。 B-SATアップリンクセンター 電気・空調中央運用室 NHKのBSデジタル放送は、NHKと （株）放送衛星 システム（B-SAT）が共同で建設した設備から放送衛 星に向けて電波発射（アップリンク） しています。BS デジタル放送のアップリンク業務は、民放分も含めて すべてB-SATが行っています。 電気・空調・給排水設備などインフラ設備の安定運 用が、 ３６５日、 ２４時間実施している放送を支えてい ます。放送センターの電気・空調設備は、すべて電気・ 空調中央運用室で管理・運用しています。 放送設備・システムの開発と整備 ハイブリッドキャストコンテンツ制作 放 送と通 信を連 携させた新しいテレビサ ービス 「NHK Hybridcast」のコンテンツを制作･送出して います。 将来の放送サービスを見据えた中長期設備整備計 画を策定し、制作現場ニーズの適切な把握や最新技 術の導入、コスト削減などの取り組みを進めながら、 さまざまな放送設備やシステムを効果的に開発、整備 しています。 インターネットコンテンツ制作 技術研究 NHKのパソコン向け公開ホームページや携帯サイ トに向けた、ニュース、経営情報、番組の広報などさま ざまなコンテンツを制作、提供しています。 将来の放送サービスや人にやさしい放送を実現す るための技術、 より優れた番組を制作するための機器 など、便利で豊かな放送を目指して、基礎から実用化、 デバイスからシステムまで、さまざまな技術の研究を 進めています。 NHKオンデマンド ブロードバンド回線を通じて、NHK番組をパソコン やスマートフォン、テレビなどで、有料でご覧いただけ るサービスです。よりお楽しみいただけるように、出演 者やあらすじなどの情報も付加して提供しています。 13
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