FOMC>FOMC(12月16、17日開催分)

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平成 26 年 12 月 22 日発行
FRB、フォワード・ガイダンスを変更
●FOMC 声明
■フォワード・ガイダンスを変更
FRB は 12 月 16、17 日の両日に FOMC(米連邦公開市場委員会)を開催。事実上のゼロ金利の据え置きを決定す
ると共に、フォワード・ガイダンスを変更。来年中と見られている利上げに向け、一歩前進した。ただ、削除されるとみ
られていた「相当な期間」の文言も補足の形であえて残し、市場に量的緩和継続姿勢を示したバランス重視の折衷
案となった。
FOMC 声明では、ゼロ金利を「相当な期間(considerable time)」維持するとしたフォワード・ガイダンスを、金融政策
を正常な状態に戻し始めるのを「忍耐強く(be patient)」待つとの表現に修正。この判断は、10 月末の量的緩和終了
後もゼロ金利政策を「相当な期間」続けるとした従来の声明文と矛盾しないと説明すると共に、これまでの声明文を
一部引用する形で「相当な期間(considerable time)」と言う文言を残している。
米経済について、前回同様に広範な経済が「緩やかに拡大している(at a moderate pace)」と評価。雇用も「一層
改善した」とし、「労働力の活用不足は引き続き解消に向かっている」と指摘、これまでの声明にあった「徐々に」とい
う表現を削除し、就業者数の伸びや失業率の低下に言及した。
一方で、インフレについては「エネルギー価格の低下に伴い、目標
米国の失業率と PCE コアデフレーター
を下回り続けている」と指摘。一部の市場の指標は「一段と低下した」
ものの、調査に基づく長期見通しは引き続き安定しているとしてい
る。また、「雇用がさらに回復し一時的なエネルギー価格の下落が改
善すれば、徐々に目標の 2%に向かう」として、インフレの動向を引き
続き注視して行く考えを示した。なお、10 月の声明では「インフレが
2%を下回り続ける可能性は年初来、低減した」としていたものの、今
回の声明で同様の言及は無い。
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決定には 7 人が賛成、ミネアポリス連邦準備銀行のコチャラコタ総裁、ダラス連銀のフィッシャー総裁、フィラデルフ
ィア連銀のプロッサー総裁の 3 人が反対。反対理由として、コチャラコタ総裁は低インフレ下での今回の決定は FRB
のインフレ目標達成への信認を脅かすと指摘。フィッシャー総裁は、10 月以来の景気回復によって、利上げの時期
は FOMC の大多数が想定するより速まっている、プロッサー総裁は、フォワード・ガイダンスの変更について景気回
復を考慮すれば「前回の声明内容の流れに沿っている」と強調するのは不適当だとしている。
●イエレン議長の会見
声明後の記者会見でイエレン FRB 議長は、利上げ時期について「正常化に向けたプロセスが少なくとも今後数回
の会合で政策正常化を行う可能性は低い」としたものの、「今後数回」について問われると「2 回」と断言。「ほとんど
の参加者が 2015 年中の利上げを予測している」と説明したものの、「FOMC 内には様々な見方がある」とした上で、
「フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標の最初の引き上げ時期やその後の道筋は、経済情勢次第だ」とした。
2015 年前半の FOMC は 1、3、4、6 月に開催が予定されており、市場では「最速で 4 月」にも利上げに踏み切ると
の思惑が広がっている。なお、2015 年にイエレン議長の会見が予定されているのは 3、6、9、12 月。
●FOMC 声明後の FOMC メンバーの発言
・リッチモンド連銀のラッカー総裁は 12 月 19 日に、事実上のゼロ金利解除に向けて「忍耐強く」対応するとしたフォワ
ード・ガイダンスを支持すると表明。現時点では景気回復の状況を見守るとした一方で、インフレ圧力を確認するま
で待てば、対応に遅れる可能性があるとも指摘し、来年、利上げを始めると確信していると述べた模様。
・米ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁は 12 月 19 日に、FOMC の政策決定に反対した理由として、「FOMC は徐々
に金融緩和を解除していく意図を示した。これはインフレやインフレ期待への下向きリスクを生み出すもので、受け
入れがたい」と述べた。
・FOMC の政策決定に反対したフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁は 12 月 19 日に、フォワード・ガイダンスについ
「経済の大幅な進展を反映しておらず、政策対応の柔軟性も制約する」との見解を示している。
・サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は 12 月 19 日に、「少なくとも今後 2 回の FOMC で利上げする可能性は低
い」としたイエレン FRB 議長の発言を支持。また、ゼロ金利解除は来年半ばとする市場の予想は合理的との考えも
示した。
2015 年の FOMC メンバーと投票権
なお、表にある様に、2015 年の FOMC 投票権者
の顔ぶれは、タカ派が多かった 2014 年に対してハ
ト派が多くなる。そのため、FRB は慎重に利上げの
時期を探るとの見方が根強い。
※スタンスは市場の一般的な見方
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●米労働市場情勢指数(LMCI)
■ LMCI は前月比 2.9 ポイント上昇
FRB が 12 月 8 日発表した雇用回復の目安となる 11 月
労働市場情勢指数(LMCI)は前月比 2.9 ポイント上昇となっ
た。ただ、前月(改定値、同 3.9 ポイント上昇)から上昇幅が
縮小している。
なお、FRB は 5 月時点で、景気後退期には月平均 20 ポ
イント低下し、拡大期には 4 ポイント上昇してきたと説明して
いる。LMCI は失業率や就業者数の伸びなど 19 の指標から
算出する内部向けの参考数値。
●FOMC メンバー(17 人)の経済見通し
FRB は、FOMC 参加者 17 人の経済見通しを公表。政策金利見通し(中央値)は 2015、16 年末のいずれも前回の
9 月時点から小幅低下し、利上げ開始時期は 2015 年が 15 人と最多になった。2015 年末の政策金利見通し(ドットチ
ャート、中央値)は 1.125%(9 月時点 1.375%)、2016 年末は 2.500%(同 2.875%)、2017 年末は 3.625%(同 3.750%)
となっている。事実上のゼロ金利の解除時期予想は 2015 年が 15 人(同 14 人)、2016 年は 2 人(同 2 人)。
2014 第 4 四半期(10-12 月)の実質 GDP(国内総生産)伸び率は、前年同期比で 2.3~2.4%(同 2.0~2.2%)に上
方修正。2015 年は前回同様 2.6~3.0%。
失業率は 2014 年第 4 四半期が 5.8%(同 5.9~6.0%)と、11 月の失業
FOMC メンバーの政策金利見通し
率が 5.8%だったことを踏まえ、改善方向に修正された。2015 年は 5.2~
5.3%(同 5.4~5.6%)で、2015 年には長期目標(5.2~5.5%)に達すると予
想している。
個人消費支出(PCE)物価指数でみたインフレ率は、2014 年第 4 四半期
が 1.2~1.3%(同 1.5~1.7%)、2015 年は 1.0~1.6%(同 1.6~1.9%)といず
れも下方修正。2016 年は前回と同じく 1.7~2.0%と予想している。
コアは 2014 年が前回同様 1.5~1.6%、2015 年は 1.5~1.8%(同 1.6~
1.9%)に下方修正。2016 年は 1.7~2.0%(同 1.8%~2.0%)と予想してい
る。
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●米長期金利の動き
米 10 年債利回り
米 2 年債利回り
■早期利上げ観測が拡大し、米長期金利は上昇気配
12 月 2 日に FRB のフィッシャー副議長が FOMC(米連邦公開市場委員会)声明でフォワード・ガイダンスとして用
いているゼロ金利を「相当な期間(considerable time)」維持するとした表現を削除する時期が近づいているのは明ら
かだとした表現を削除する時期が近づいているのは明らかだ」と発言し、米国の早期利上げ観測が拡大する中、12
月 5 日に発表された 11 月米雇用統計は市場関係者から「非の打ち所がない内容」との声が聞かれるなど、好内容と
なったことを受けて、2.31%まで上昇。ただ、国際原油価格の下落が続く中で、新興国通貨不安や信用リスクが高ま
り投資家の「リスク・オフ」の動きが加速。そのため、「安全資産」とされる米国債を買う動きが強まり、12 月 16 日には
2.06%で終了となり、終値ベースでは 2013 年 5 月以来 1 年 7 ヶ月ぶりの低水準となった。
ただ、12 月 17 日の FOMC 声明で、ゼロ金利を「相当の間」維持するとの文言から「忍耐強く」対応出来るに変更さ
れたことを受けて、債券売り圧力が強まる中、12 月 18 日には 2.21%まで上昇している。
市場では 2015 年半ばにも利上げが実施されるとの見方が多くなっているが、「今回見込まれる利上げは、従来の
ようなインフレ抑制ではなく、金融政策の正常化を目的としているため、強い雇用統計の割には金利の上昇は比較
的落ち着いている」との見方もあるだけに、しばらくは米国の利上げ時期を巡る思惑が錯綜する展開になりそうだ。
■ FRB の動きは、2004 年の利上げ時に酷似か?
FRB はフォーワード・ガイダンスを、金融政策を正常な状態に戻
し始めるのを「忍耐強く(be patient)」待つとの表現に修正したが、
FF 金利と米 10 年債・2 年債利回りの推移
(2003 年~2007 年)
FRB が前回FF金利を引き上げた 2004 年 1 月にも同様の表現が
出現。当時の声明では、「インフレ率が弱く、需給ギャップがある
ため、FRB は現状の金融政策を取りやめるか忍耐強くなり得る」と
し、市場に安心感を与える表現となっている。その後、同年 5 月の
声明でこの表現は削除され、翌 6 月に政策金利を 1%から 1.25%
に引き上げている。
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●発表を受けた NY 市場の動き
NY 金(日足、期近)
優良株で構成するダウ工業株 30 種平均(日足)
NY 金(期近)は、12 月 17 日の通常取引後に公表された FOMC 声明を受けて、米国の早期利上げ観測が拡大した
ことから、発表直後に急落。一時 1,182.0 ドルまで下げる場面も見られたものの、声明内容の消化が進むにつれて、
FRB は金融政策の正常化開始に依然慎重であるとの見方が拡大したことから、売り方のショート・カバー(買戻し)を
中心に買い拾われる展開となった。
ただ、50 日平均線がレジスタンスとして意識され始める中、終値で 1,200 ドル台を回復することは出来ず。イエレン
議長発言を受けて、「最速で 4 月」にも利上げに踏み切るとの思惑が広がる中、上値の重い展開が続いている。
優良株で構成するダウ工業株 30 種平均は、FRB が利上げを慎重に進める姿勢を示したことかが好感される中、
12 月 18 日は前営業日比 421.28 ドル高となり、2011 年 11 月 30 日以来、約 3 年 1 ヶ月ぶりの上げ幅を記録。翌 19
日も同 26.65 ドル高となり 3 営業日続伸している。
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●発表を受けた東京市場の動き
東京金(期先、日足)
米ドル円(日足)
米ドル・円は、FOMC 声明を受けて、来年中にも利上げに踏み切ると言う強いメッセージとの見方から、米金利が
上昇し、円売りドル買いの動きが加速。119 円台半ばまで円安が進み、再度 120 円超えを試す展開となっている。
東京金(期先)は、発表直後から円安が加速したことに加え、NY 市場が下げ止まりの動きを見せ始めたことを受け
て、12 月 19 日には一時 4,624 円まで買い進められ 4,600 円台を回復する場面も見られている。ただ、NY 市場が頭
の重い展開となる中、やや勢いに乏しい展開になりつつある。
(12 月 22 日 ERI 大湖 一樹 記)
本レポートは EVOLUTION 総研株式会社(以下「ERI」という)が情報提供を目的として作成したものであり、投資その他の行動を勧誘するも
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