新春ごあいさつ

新春ごあいさつ
﹁先発品﹂と﹁後発品﹂
についての一考察
︵エーザイ株式会社
代表執行役CEO︶
謹んで新春のお慶びを申し上げます。
平素より弊社医薬品事業につきまして、格別のご高配を賜り厚く御礼を申し上げ
ます。
﹁先発品﹂と﹁後発品﹂は各々異なる役割を持つ医薬品と考えております。先発
品はまず新薬として登場します。新薬は特許を有しているケースもあれば、データ
保護期間を有しているものもあり、その期間中は後発品が登場することはありませ
ん。この間、承認された効能・効果について製造販売後調査等を通じて多数症例に
よる有効性や安全性の検討を実施し、当該成分の有用性を確認するのも新薬、すな
わち先発品の務めとなります。それらの期間が終了後にヒトにおける生物学的同等
性の証明に基づき後発品が登場します。後発品については発売時の薬価は先発品の
∼ %と定められています。本来処方の本義は患者様に接する臨床医家において
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決せられるべきであり、いかなるものもこれに干渉すべきではないとの議論もある
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中で、わが国においては行政により、医療費抑制の一環として、後発品のある先発
品については同成分の処方箋枚数の %を後発品とすることが目標とされ、これに
ひるがえって﹁後発品﹂の役割は何かと言えば、それは主として経済的便益であ
の収益をもってその一部に充当することが国内外を問わず必須となります。
の新薬開発は、いわゆる新薬からの収益のみで対応できるものでなく、先発品から
ための研究開発の原資を生み出すことにあります。莫大な先行的投資を要する現代
発品の努力によって達成されています。先発品の今一つの大切な役割は新薬創出の
るケースもあります。この適応症の拡大、結果としての患者様貢献の増大は全て先
は、場合によって用量の設定試験と大規模な治験を伴う本格的開発作業を必要とす
新規の適応症の可能性が生まれることもまれではなく、これらの承認取得について
いわゆる再審査期間が付されるものもあります。また薬剤のライフスパンの中では
また臨床医家の処方範囲の拡大や患者様の多様な症状に対応するための様々な新
たな剤形の開発も先発品がおこなっています。この中には新たな大規模試験を伴い、
す。
生が終了することはありません。この役割は医薬品として存続する限り続くもので
の決定と実施の役割は、主として先発品が担っています。特許満了後も副作用の発
﹁先発品﹂﹁後発品﹂の区別なく、医薬品の使用の長いライフスパンにおいて常
に発生する副作用をはじめとする安全性関連のデータの収集・分析及び適切な措置
向けて強力なる後発品への使用促進策が実施されている状況にあります。
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ります。新薬を生み出すためのはかり知れないリスクや承認のための有用性の証明
に向けての一品目一千億円以上の開発費用への財務的コミットメントなしに医薬品
として承認される後発品の役割は、品質、安定供給を確保する中で低価格な医薬品
を供給することにあります。現在、後発品使用促進の名の下に調剤報酬制度やDP
C︵ Diagnosis Procedure Combination
︶ 制 度 の 中 で 加 算 処 置 が 実 行 さ れ て い ま す。
これらの諸処置に要する財政的支出を含め、後発品の処方促進が後発品の使命であ
る経済的便益の増大や医療費効率化にどの程度貢献しているのか検証する必要があ
ります。
わが国医療は諸外国と比して著しい特徴を有しています。その最大なものは国民
皆保険制度の下、国民はあまねく均質なる医療を受ける権利を有していることだと
思います。この維持のために診療報酬制度が確立され、あらゆる医療行為と薬剤に
ついてはその価格が公的に決定されています。二年に一回の診療報酬・薬価の改定
において実態との乖離が調整されるメカニズムがあり、診療側、支払い側、そして
製薬産業も身を切るコミットメントを受け入れ、世界に冠たる日本の国民皆保険制
度の維持に努めています。また、薬事制度においては、ニセ薬の流通を許さない厳
格な薬事法の運用による監視、わが国医薬品流通産業におけるトレサビリティーの
向上やロット番号管理など、流通管理システムは世界に範を示しています。
日本の医薬品市場において、先発品は医薬品のライフスパンを通して有用性の拡
大や特許期間満了後の安全性の確保の面で大きな役割を果たし、わが国医療の質を
高める上で貢献しています。後発品についてはその経済的貢献が期待されています。
いたずらに海外の状況を真似てわが国の先発品と後発品のあり方もそれにならうべ
きだとする議論は、臨床医家の先生方や産業の努力によって支えてきたわが国医療
固有の状況を考えない短絡的なものと言わざるを得ません。今、
﹁先発品﹂と﹁後
発品﹂が各々の役割をしっかりと果たせるバランスがどのあたりにあるのか、わが
国医療のよって立つ基盤を熟視し、考え、見つめることが大切であります。もしこ
のバランスを著しく欠くことになれば世界第二位の新薬創出力を有するわが国医薬
品産業の衰退を招きかねないと憂慮しております。
製薬産業は患者様貢献に向けた価値創造に資する研究開発を一層推進するととも
にわが国医療の質の向上に寄与すべく、その使命を果たしてまいる所存です。
年頭にあたり、本年も引き続き臨床医家の先生方のご指導ご鞭撻を賜りたく、心
よりお願い申し上げご挨拶とさせていただきます。