プリント用PDF(会員サービス)

JMR からの提案
月例消費レポート 2014年12月号
足許で消費の低迷は続く-
一部指標でようやく見えてきた底打ちの兆しに期待
1.はじめに
11 月 21 日に衆議院が解散されたことで、今年も 2 年前と同様、選挙で暮れる年の瀬となった。ただ
メディアでは、事前の選挙予測として「自民党 300 議席超え」「自民党単独で 3 分の 2 をうかがう勢い」
などと報じており、2 年前と比べても今回の選挙に対する関心は明らかに乏しいとの声は、メディアだけでな
く選挙に臨んでいる各党からも漏れ聞こえる。政権与党は既に選挙後を見越して、年明けの通常国会
で提出予定の、最大 3 兆円規模の補正予算案や消費税再増税延期のための法案などの準備にも余
念がない。
11 月 17 日に公表された 2014 年 7∼9 月期 GDP 速報(1 次速報)で、GDP 成長率は前期
比で実質マイナスになったことに加え、12 月 8 日に公表された 2 次速報では GDP 成長率が下方修正
されたことで、4 月からの消費税増税後の景気の低迷ぶりが再確認されるとともに、景気や消費の先行き
に対する悲観論も一部では強まりつつある。日本銀行は先立って、10 月 31 日の金融政策決定会合に
て異次元緩和第 2 弾の実施に踏み切っているが、その後 11 月 18 日と 19 日の両日に開催された次
の金融政策決定会合でも、引き続き緩和のスタンスを堅持している。景気の基調判断も 10 月時点から
据え置きとしてはいるが、個別項目での判断の変化を見比べると、改善が示唆される項目と悪化が示唆
されるものとが混在しており、景気の先行きに対する判断に若干揺らぎが垣間見える。政府は、11 月
25 日に公表された 2014 年 11 月の「月例経済報告」の中で、景気の現状について個人消費の弱さを
明記するなど、下方修正含みの判断が示されている。更に、景気の先行きに対するリスク要因に関する
文言として、「駆け込み需要の反動の長期化」が外され、新たに「消費者マインドの低下」が盛り込まれて
いる。政策対応に向けた政府の関心は、消費増税による個人消費への下押し圧力と、それに伴う景気
への悪影響の方に移りつつあるようだ。安倍政権がいち早く消費税再増税延期を表明し、その是非を賭
けて解散総選挙に打って出たことも、消費の先行きに対する並々ならぬ警戒感を示唆するものといえよ
う。
消費税の再増税が 2017 年 4 月まで延期されたことで、消費を取り巻く悪材料のひとつが一旦、短期
的には取り除かれた格好となっている。夏場を境にスランプに陥っている消費や消費マインドにいつ頃底入
れのタイミングが訪れ、復調へのきっかけをいかに早くつかめるかが、総選挙後の景気や消費の先行きを巡
る次の関心事となろう。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
1
JMR からの提案
2.消費の現況
2014 年 9 月の INDEX の数値は 46.7 となり前月よりも上昇したが、水準は 50 を割っている。
INDEX の近似曲線は、2014 年 4 月以降の反動減に引っ張られ、下降トレンドが続いている(図表
1)。
図表 1.JMR消費 INDEX の時系列推移
INDEX の構成要素のうち支出水準関連では、2014 年 10 月現在で、消費支出は 7 ヶ月連続でマ
イナスとなったが、伸び率の値は 9 月よりも上昇している。平均消費性向は、前年同月比で悪化に転じ
ている。他方、預貯金は 8 ヶ月ぶりに、消費にマイナスに寄与する動きとなった。10 月は、支出水準関連
3 項目全てが悪化となっている。雇用・収入関連の 2 指標は、2013 年 7 月以降一貫して改善が続い
ている。販売関連項目では、2014 年 9 月は 10 項目中プラスが 4 項目に対しマイナスが 6 項目となっ
ていたが、10 月は現時点で判明している 9 項目中プラスが 2 項目に対しマイナスが 7 項目である(図
表 2)。
図表 2.最近における個別データの月次推移
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
2
JMR からの提案
個別指標についてここ 2∼3 年の変化傾向を確認する。INDEX の構成要素 15 指標のうちで、プラス
の動きが顕著なものの数とマイナスの動きが顕著なものの数とを対比すると、2012 年では前者が 6 項目
に対し後者が 3 項目、2013 年では 7 項目対 1 項目である。2014 年については、INDEX の数値が
確定している 2014 年 9 月現在で、プラスの指標の数が 8 項目に対し、マイナスの指標の数は 7 項目
である。プラスとなっている 8 項目中、改善の動きが顕著なものは 7 項目、マイナスとなっている 7 項目中、
悪化の動きが顕著なものは 3 項目である。過去 3 年分の項目別の得点合計をみても、プラスの指標の
数が 11 項目に対し、マイナスの指標の数は 4 項目である。プラスとなっている 11 項目中、得点がプラス
値で二桁台に乗せているのが 6 項目、マイナスとなっている 4 項目中、得点がマイナス値で二桁台に乗せ
ているのが 2 項目である。年別計の得点も、2012 年から 2013 年にかけて上昇している。ただし、2014
年の数値は 2014 年 9 月現在で、2012 年をわずかに下回っている。ここ 2∼3 年でみて、2014 年の
動きはいささか冴えない(図表 3)。
図表 3.個別データのここ 2∼3 年の変化傾向
2014 年 10 月は、雇用・収入関連指標で改善基調が続いてはいるものの、支出水準関連の指標で
は 7 月をピークに、悪化の動きが徐々に広がりつつある。販売関連指標でも、悪化の側が徐々に優勢と
なってきている。消費は足許で、低迷が続いているようだ。
3.今月のトピック
(1)スランプが続いてきた消費支出にもようやく底打ちの兆し
総務省「家計調査報告」(平成 26 年 10 月分)によると、二人以上世帯の勤労者世帯では、可
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
3
JMR からの提案
処分所得の名目伸び率は+100.9%で、5 ヶ月ぶりにプラスに復帰した。消費支出の名目伸び率は
99.9%となり、3 ヶ月連続のマイナスである(図表 4)。実質伸び率は 96.6%となり、7 ヶ月連続のマ
イナスである。ただ、2014 年 10 月は、名目と実質ともに、伸び率の値は上昇しており、名目ではプラス
転換へあともう一歩のところにある(図表 5)。支出全般では悪化の動きが続いてはいるが、2014 年
10 月は一部で改善への気配もうかがわれる。
図表 4.消費支出と可処分所得の前年同月比伸び率の推移
図表 5.消費支出の名目及び実質伸び率(前年同月比)の推移
消費支出 10 大費目別に、名目と実質それぞれの伸び率の動きをみると、名目伸び率は 10 費目中、
プラスが 5 費目に対しマイナスが 5 費目、実質伸び率は(同数値が元々算出されていない「その他の消
費支出」を除いた)9 費目中、プラスが 3 費目に対しマイナスが 6 費目である。名目と実質ともに、前月
9 月に比べ、プラスの費目の数は増え、マイナスの費目の数は減っている。各費目の伸び率の値を精査し
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
4
JMR からの提案
前月と比較してみると、名目と実質の双方で伸び率が改善しているのは(「その他の消費支出」を除い
た)9 費目中 5 費目、双方で伸び率が悪化しているのは 9 費目中 3 費目である。ちなみに、その他の
消費支出では、名目伸び率は前月よりも改善している。名目と実質の双方で伸び率がプラスとなってい
る 3 費目はいずれも、名目と実質ともに伸び率が改善している。他方、名目と実質の双方で伸び率がマ
イナスとなっている 4 費目のうち、名目と実質ともに伸び率が悪化しているのは 3 費目である。今月の伸び
率のマイナス幅が二桁台となっているものは、名目ではひとつもなく、実質では家具・家事用品の 1 費目
だけであり、その数はともに、前月よりも減っている。加えて、実質で唯一マイナス幅が二桁台となった家
具・家事用品でも、マイナス幅は-10%前後に止まっており、マイナス幅が-20%を超えるものが存在し
ていた前月までとは様相が異なる(図表 6)。10 大費目別にみると、名目と実質の双方でマイナスが
大勢を占めていた前月 9 月とは異なり、2014 年 10 月は名目と実質ともに、伸び率の改善が顕著に認
められる。
図表 6.消費支出 10 大費目別 名目及び実質増減率(前年同月比)
総務省「消費者物価指数」によると、総合、財、サービスの指数はともに、2013 年 6 月以降、プラス
が続いている。2014 年 4 月に入り、消費税率アップに伴う値上げの効果などで伸び率は一段の上昇が
みられたが、総合と財の伸び率は 2014 年 5 月をピークに緩やかな低下が続き、サービスの伸び率は
2014 年 8 月以降横ばいで推移している。これら 3 つの指数の伸び率が全て、17 ヶ月連続でプラスとな
ったのは、2007 年 1 月以降では初めてのことである(図表 7)。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
5
JMR からの提案
図表 7.消費者物価指数の前年同月比伸び率の推移
消費を取り巻く状況として、物価上昇の動きも徐々に落ち着きをみせつつある中で、2014 年 10 月の
消費支出は名目と実質ともにマイナスではあるが、伸び率の値は改善し、名目ではプラス転換まであとも
う一歩のところにあるなど、支出全般では一部で改善への気配もうかがわれる。10 大費目では、マイナス
が大勢を占めていた前月とは様相が一変し、10 月は改善の動きが顕著だ。足許でスランプが続いてきた
消費支出にも、ようやく底打ちの兆しが見えてきているようだ。11 月に入り安倍首相は、消費税再増税
の 1 年半延期を表明するとともに、衆議院解散・総選挙へと踏み切っている。安倍首相の大英断が消
費の転換の節目となるのか、今後の推移が注目される。
(2)雇用環境と収入環境は増税後も息長く堅調さを保っている
総務省「労働力調査」によると、完全失業率(季節調整済数値)は 2013 年 12 月以降、3%台
で推移し、2014 年 5 月にかけて値の低下が続いてきた。6 月と 7 月には若干上ブレしたものの、8 月以
降は 5 月並みまで値を戻している。直近の 2014 年 10 月では 3.5%となり、引き続き 2007 年 1 月
以降で過去最低の水準となっている。他方、厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、有効求人倍
率(季節調整済数値)は 2013 年 11 月以降、1.00 倍台に乗せつつ上昇を続けてきた。2014 年 6
月には 1.10 倍となり 2007 年 1 月以降での最高水準を記録、その後は(2014 年 9 月に一時 1.09
倍を落ちたのを除き)概ね横ばいで推移している(図表 8)。完全失業率は足許で改善の動きを取り
戻すとともに、有効求人倍率は引き続き好調さを保っている。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
6
JMR からの提案
図表 8.有効求人倍率と完全失業率の推移
厚生労働省公表の「毎月勤労統計」をもとに、給与支払い各項目の伸び率の推移を見ると、2014
年 10 月(速報値)の現金給与総額の伸び率は 100.5%となっており、8 ヶ月連続のプラスである。内
訳として、所定内給与額と超過給与それぞれの動きに着目すると、10 月の所定内給与額の伸び率は
100.3%となっており、5 ヶ月連続のプラスである。超過給与の伸び率は 100.4%となっており、19 ヶ月
連続のプラスである。現金給与総額、所定内給与額、超過給与の 3 つ全てで、5 ヶ月連続で伸びがプラ
スとなるのは、2006 年 1 月以降ではでは初めてのことである(図表 9)。
図表 9.現金給与額の前年同月比伸び率の推移
雇用環境については好調さを保っており、収入環境についても改善の動きが続いている。雇用環境と
収入環境は消費税増税後も、息長く堅調さを保っている。目下、実質ベースでは、前年同月比でみて
収入の悪化が続いている。ただ、消費税再増税が 2017 年 4 月へと延期されることで、2015 年 4 月か
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
7
JMR からの提案
ら 2017 年 3 月までの 2 年間は、更なる増税に伴う実質所得への下押し圧力は働かないこととなる。今
後、円安が予想以上のペースで進行しない限りは、円安による物価上昇のインパクトも徐々に落ち着い
てくると見込まれる。現状のペースで収入の回復が持続すれば、次年度からは実質所得のプラス転換も
十分視野に入ってくるであろう。
(3)消費マインドは 7 月を境にピークアウトし、悪化に歯止めがかからず
内閣府公表の「景気ウォッチャー調査」によると、街角の景況感を示す現状判断(方向性)DI は
2014 年 4 月を底に 3 ヶ月連続で上昇していたが、7 月を境に低下傾向にある。(図表 10)。12 月
8 日に公表された 2014 年 11 月調査でも引き続き、DI の低下が確認されている。
図表 10.消費マインド関連指標の推移
同じく内閣府公表の「消費動向調査」によると、消費者態度指数は 2014 年 4 月を底に 3 ヶ月連続
で上昇していたが、7 月を境に低下に転じ、その後も低下の動きが続いている(図表 10)。12 月 10
日に公表された 2014 年 11 月調査でも引き続き、指数の低下が確認されている。
景気ウォッチャー・現状判断(方向性)DI と消費者態度指数の動きをみると、ともに 2014 年 4 月を
境に改善の動きが続いていたが、7 月をピークに悪化に転じ、足許においても悪化の動きに歯止めがかか
らない状況だ。消費税再増税の延期と衆議院解散・総選挙が、消費マインドの転換の節目となるのか
が、今後の消費の行方を見極める鍵となろう。
(4)販売現場では失速・低迷が目立ちつつある
経済産業省公表の「商業動態統計調査」をもとに商業販売額の伸び率の推移をみると、2014 年
10 月時点で、小売業計とスーパーは 4 ヶ月連続のプラスとなり、コンビニエンスストアは 20 ヶ月連続のプ
ラスである。ただし、百貨店は 3 ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表 11)。商業販売は小売業計で
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
8
JMR からの提案
改善が続いてはいるが、百貨店など一部業態で回復の動きに立ち遅れがみられる。
図表 11.主要業態別商業販売額の前年同月比伸び率の推移
乗用車・新車販売台数の伸び率の推移をみると、2014 年 10 月時点で、乗用車(普通+小型)
では 88.7%へと低下し、3 ヶ月連続のマイナスである。軽乗用車では 100.1%となり、2 ヶ月連続のプラ
スであるが、伸び率の値は低下している。(図表 12)。12 月 1 日に公表された 2014 年 11 月分の
新車販売速報によると、新車販売台数の伸び率は、乗用車(普通+小型)では更に低下して
84.1%となり、4 ヶ月連続のマイナスである。軽乗用車でも低下して 99.9%となり、わずかながらもマイナ
スに転じている。軽乗用車はゼロ近傍でぎりぎり踏みとどまっているが、乗用車(普通+小型)は 7 月を
ピークに悪化が続いている。
図表 12.乗用車・新車販売台数の前年同月比伸び率の推移
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
9
JMR からの提案
社団法人電子情報技術産業協会公表の「民生用電子機器国内出荷統計」や社団法人日本電
機工業会公表の「民生用電気機器 国内出荷実績」などをもとに、家電製品出荷の伸び率の推移を
みると、2014 年 10 月時点で、黒物家電に関しては、薄型テレビ(10 型以上液晶+PDP)と BD レ
コーダ/プレーヤはともに、再びマイナスに転じている。白物家電に関しても、電気冷蔵庫と電気洗濯機
はともに、マイナスへと大きく落ち込んでいる。2014 年 8 月に続き、採り上げている家電 4 製品全てで伸
びがマイナスとなった(図表 13)。白物家電と黒物家電のいずれも、反動減による落ち込みが長期化
しつつある気配だ。
図表 13.家電製品出荷の前年同月比伸び率の推移
国土交通省公表の「建築着工統計調査」より、新設住宅着工戸数の伸び率の推移をみると、2014
年 10 月時点で、全体は 8 ヶ月連続、持家は 9 ヶ月連続、分譲住宅・一戸建ては 6 ヶ月連続のマイナ
スとなっている。分譲住宅・マンションは唯一、9 ヶ月ぶりにプラスに転じている。ただこれは、消費税増税に
伴う駆け込み需要の反動減で前年 2013 年 10 月の分譲住宅・マンションの数値が大きく落ち込んだこ
との影響で、翌年 2014 年 10 月の前年同月比の数値が上ブレした側面が強いとみられ、着工戸数の
水準は依然低調との見方が有力だ(図表 14)。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
10
JMR からの提案
日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」より、外食業界売上高の伸び率の推移をみる
と、2014 年 10 月時点で、外食全体は 5 ヶ月連続のマイナスとなった。その内訳をみると、ファミリーレス
トラン売上は 18 ヶ月連続でプラスとなったが、ファーストフード売上は 5 ヶ月連続でマイナスとなり、パブレ
ストラン・居酒屋売上は 26 ヶ月連続でマイナスとなっている。伸び率の値を比べると、2014 年 9 月以降、
ファーストフード売上の伸びはパブレストラン・居酒屋売上伸びを下回っている(図表 15)。外食では、
ファミリーレストランが息長く好調さを保っている一方で、足許ではファーストフードの低迷ぶりが鮮明化しつ
つある。
図表 15.外食業界売上高の前年同月比伸び率の推移
販売現場での動きを総合すると、商業販売は全体では改善の動きが続いてはいるが、一部業態で立
ち遅れがみられるなど、回復の足取りは重い。自動車は、乗用車が 7 月をピークに悪化の動きが続いてお
り、軽乗用車も回復への勢いを失いつつある。家電販売や新設住宅着工では、反動減後の落ち込みが
長期化しつつある。外食も足許で一部業態の低迷に引きずられ、全体では不振が続いている。販売現
場では概ね、失速・低迷が目立ちつつあるようだ。
(5)輸出は回復に転じている
財務省公表の「貿易統計」より、日本の輸出・輸入総額(対世界)の伸び率の推移をみると、
2014 年 10 月時点で、輸出総額と輸入総額の伸びはともに、2 ヶ月連続のプラスとなっている。輸出と
輸入の伸び率の差は 3 ヶ月連続のプラスとなり、プラス幅も 2014 年 8 月を底に拡大を続けており、特に
直近の 10 月は大幅なプラスとなっている(図表 16)。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
11
JMR からの提案
図表 16.輸出・輸入総額の前年同月比伸び率の推移
輸出の主要商品として自動車、原動機、半導体等電子部品、鉄鋼、プラスチック、科学光学機器の
6 品目に着目し、2014 年 10 月までの各品目の輸出額の伸び率の推移をみると、2014 年 1 月以降、
科学光学機器は一貫してプラスを保ち、プラスチックは 6 月を除く 9 ヶ月間、自動車は 5 月と 8 月を除く
8 ヶ月間はプラスとなった。鉄鋼は 2014 年 4 月から 8 月までは 5 ヶ月連続でマイナスとなっていたが、9
月以降は 2 ヶ月連続のプラスである。半導体等電子部品は 2014 年 5 月から 7 月までは 3 ヶ月連続
でマイナスとなっていたが、8 月以降は 3 ヶ月連続のプラスである。他方、原動機は 2014 年 3 月以降、
7 月を除く 7 ヶ月間はマイナスである。2014 年 10 月時点での伸び率の変化をみると、プラスチック、原
動機、半導体等電子部品、科学光学機器の 4 品目では伸び率は上昇しているのに対し、鉄鋼と自動
車の 2 品目では伸び率は低下している(図表 17)。
図表 17.輸出主要商品シェア上位品目における輸出額前年同月比伸び率の推移
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
12
JMR からの提案
輸出では再び、回復の動きがみられる。主要商品により好不調が分かれてはいるが、好調組の方が多
数派となっている。為替相場は 10 月半ば頃を境に円安基調に転換し、10 月末の日銀による異次元
緩和第 2 弾によって、円安の動きに更なる弾みが付いている。今後、円安傾向が定着していけば、輸出
の回復は進むと見込まれる。
(6)生産は外需の好転を後押しに回復に転じている
経済産業省公表の「鉱工業指数」より鉱工業生産指数と在庫指数の推移をみると、2014 年 1 月か
ら 8 月にかけて、生産指数は上下動を繰り返しつつ低下傾向にあったが、8 月を底に上昇に転じている。
他方、在庫指数は、2014 年 2 月から 8 月にかけて上昇傾向にあったが、同じく 8 月を底に低下に転じ
ている(図表 18)。足許で、生産は回復に転じるとともに、在庫の積み上がりにもようやく歯止めがかか
った格好だ。
図表 18.鉱工業生産指数と在庫指数の推移
輸出関連の主要業種として鉄鋼業、はん用機械工業、業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、
輸送機械工業(除.船舶・同機関、鉄道車両、航空機)、化学工業(除.医薬品)の 6 業種に
着目し、2012 年 1 月を 100 として 2014 年 10 月時点までの鉱工業生産指数の伸びの推移をみる
と、特に 2014 年 1 月以降の時期は、鉄鋼業では、伸びの値は鉱工業のそれを一貫して上回り続け、
電子部品・デバイス工業、はん用機械工業、化学工業(除.医薬品)では、伸びの値は鉱工業のそ
れを概ね上回り続けている。他方、業務用機械工業と輸送機械工業(除.船舶・同機関、鉄道車両、
航空機)では、伸びの値は鉱工業のそれを一貫して下回り続けている。伸びの変化をみると、2014 年
10 月時点では、業務用機械工業、はん用機械工業、電子部品・デバイス工業、化学工業(除.医
薬品)の 4 業種で伸びの値は上昇しているが、輸送機械工業(除.船舶・同機関、鉄道車両、航空
機)と鉄鋼業の 2 業種では、伸びの値は低下している(図表 19)。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
13
JMR からの提案
図表 19.輸出関連産業における鉱工業生産指数の伸びの推移
内需関連の主要業種として窯業・土石製品工業、石油・石炭製品工業、食料品・たばこ工業、パル
プ・紙・紙加工品工業、繊維工業、印刷業の 6 業種に着目し、2012 年 1 月を 100 として 2014 年
10 月時点まで(ただし、食料品・たばこ工業については、2014 年 10 月の数値は本稿執筆時点では
未判明である)の鉱工業生産指数の伸びの推移をみると、2014 年 1 月以降、窯業・土石製品工業
とパルプ・紙・紙加工品工業の 2 業種では、伸びの値は鉱工業のそれを一貫して上回り続けている。印
刷業と繊維工業では、伸びの値は鉱工業のそれをほぼ下回り続けている。石油・石炭製品工業では
2014 年 5 月から 8 月にかけて、伸びの値は鉱工業のそれを一貫して下回り続けていたが、2014 年 9
月以降は鉱工業のそれを一貫して上回り続けている。食料品・たばこ工業では 2014 年 4 月から 7 月
にかけて、伸びの値は鉱工業のそれを一貫して下回り続けていたが、8 月以降は安定していない。伸びの
変化をみると、2014 年 10 月時点では、食料品・たばこ工業を除いた 5 業種中、窯業・土石製品工業、
繊維工業、パルプ・紙・紙加工品工業の 3 業種では伸びの値は低下しているのに対し、石油・石炭製
品工業と印刷業では伸びの値は上昇している(図表 20)。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
14
JMR からの提案
図表 20.内需関連産業における鉱工業生産指数の伸びの推移
生産はようやく回復に転じている。輸出関連の主要産業では好調組の方が優勢となっているが、輸出
関連の主要産業では不調組の方が多数派となっており、外需の好調と内需の不振との間で綱引き状況
にあるが、今のところ好調組の勢いの方が優っているようだ。輸出の回復を支えに、外需関連産業では引
き続き好調な推移が期待できそうなだけに、内需関連産業にも底打ちの気配が見えてくるかどうかが、今
後は注目されるところだ。
(7)11 月に入り円高・株安の動きに拍車がかかり、長期金利も若干の乱高下を経て低下基調に
円・ドル為替相場の推移をみると、8 月 8 日に 1 ドル 102 円 04 銭を付けたのを境に円安へと転じ、
1 ドル 103 円 70 銭を付けた 8 月 28 日以降、円安の動きに拍車がかかった。9 月に入ってからも円安
の流れは止まらずに推移していたが、9 月 30 日に 1 ドル 109 円 64 銭を付けたのを境に、円高へと反
転し、10 月 15 日には 1 ドル 105 円 90 銭まで進んだ。
その後、若干円安方向に振れた後わずかに円高方向へと戻すが、1 ドル 107 円 81 銭を付けた 10
月 27 日以降は円安の動きに拍車がかかり、11 月 28 日現在で 1 ドル 118 円 61 銭まで円安が進ん
だ(図表 21)。12 月に入ってまもなく 1 ドル 120 円を突破し、12 月 5 日には終値で 1 ドル 121 円
41 銭を付けた。その後は若干円高方向へと振れ、12 月 9 日時点では終値で 1 ドル 119 円 69 銭ま
で戻している。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
15
JMR からの提案
図表 21.円・ドル為替相場と日経平均株価の推移
日経平均株価の推移をみると、8 月 8 日に 14778 円 37 銭を付けたのを底に上昇傾向に転じ、9
月 19 日には終値で 16,321 円 17 銭を付けた。暫し横ばいで推移の後、終値で 16,310 円 64 銭と
なった 9 月 29 日を境に低下傾向に転じ、10 月 17 日には終値で 14,532 円 51 銭にまで落ち込ん
だが、その後は再び上昇傾向に転じ、10 月末には終値で 16000 円を突破し、11 月 11 日には
17000 円台に乗せ、11 月 14 日には終値で 17,490 円 83 銭を付けるに至っている(図表 21)。
その後は、若干の上下動を伴いつつも、株価は緩やかな上昇傾向を保ち、12 月に入ってからは一時、
18000 円台をうかがう気配もみせている。
新発国債 10 年物金利の推移をみると、8 月 28 日に 0.503%を付けたのを境に上昇傾向に転じ、
長期金利は暫く上昇が続いた。9 月 16 日に 0.572%を付けたのを境に再び低下傾向に転じ、9 月末
から 10 月初めにかけて金利は若干上振れするも、0.527%を付けた 10 月 1 日以降、10 月の間は
概ね低下の動きが続いた。11 月に入り、長期金利は上ブレの動きがみられ、11 月 12 日には 0.531%
まで戻したが、11 月 18 日に 0.512%を付けたのを境に再び低下傾向に転じ、その後は 0.4%台で推
移している(図表 22)。その後も金利の低下は続き、12 月 9 日には 0.414%まで落ち込んでいる。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
16
JMR からの提案
図表 22.長期金利の推移
10 月半ば頃を境に再び円安・株高に転じているが、11 月に入ってからは、その動きにもより一層拍車
がかかっている。11 月に入り、当初は上ブレの動きをみせていた長期金利も、11 月下旬以降下げ足を
速め、歴史的な低水準にまで落ち込んでいるが、低下の動きに歯止めがかかる気配は今のところみられ
ない。10 月末の日銀による異次元緩和第 2 弾や 11 月 18 日に正式表明された消費税再増税延期・
衆院解散・総選挙が、円高・株安・低金利の流れを決定付けたようだ。
12 月 2 日の公示を経て選挙戦が本格的に始まった中で、12 月 8 日に公表された 2014 年 7∼9
月期 GDP 速報(2 次速報)で GDP 成長率は下方修正され、前回の 1 次速報に続きエコノミストの
予想は大きく外れた格好となっている。ただ、実態面での景気の弱さとは裏腹に、マーケット関係者は円
高・株安・低金利の流れを前提に、依然強気のスタンスを崩してはいないようだ。今回の総選挙を境に、
景気や消費の先行きに関する論調が、強気と弱気どちらの方向に振れていくのか、その動向の見極めが
より一層重要となるだろう。
4.今後の消費の見通し
公表された 2014 年 10 月以降の各種経済指標を踏まえると、足許でスランプが続いてきた消費支出
に、ようやく底打ちの兆しが見えてきてはいるが、販売現場では悪化の動きが優勢となっており、消費は総
じて低迷が続いている。消費マインドも 7 月をピークに悪化に転じており、足許においても悪化の動きに歯
止めがかからない状況だ。消費税再増税の延期と衆議院解散・総選挙が、消費や消費マインドの転換
の節目となるのかが、注目される。現状のペースで雇用や収入の回復が持続しているうちに、転換への足
がかりをつかめるかが、今後の消費の行方を見極める鍵となろう。
輸出は回復に転じており、生産も外需の好転を後押しに回復に転じている。在庫の積み上がりにもよ
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
17
JMR からの提案
うやく歯止めがかかりつつある中で、内需にも底打ちの気配が見えてくるかどうかが、今後は注目される。マ
ーケットの動向をみると、11 月に入り円高・株安の動きに拍車がかかるとともに、長期金利も若干の乱高
下を経て足許では低下基調にある。日銀による異次元緩和第 2 弾や消費税再増税延期・衆院解散・
総選挙が、目下の相場の流れを決定付けたようだが、2014 年 7∼9 月期 GDP 速報(2 次速報)で
の下方修正の動き含め、景気の先行きに関してはいまだ不確定要素がつきまとう。総選挙後の景気や
消費の先行きの見極めが、より一層重要となるだろう。
景気や消費の先行きには、上ぶれ要因と下ぶれ要因とが交錯している。安倍政権が踏み切った消費
再増税延期により、それまでは下ぶれ要因として消費にのしかかるはずだった重石が一旦外されることとな
る。重石が外れた反動で、短期的には、消費に上ぶれの力が働きやすくなるだろう。ただし、再増税延期
により、財政不安や年金不安が高まり、将来における税や年金の負担増加予想も強まることで、消費マ
インドを冷やし貯蓄意欲を高める方向に作用する場合には、消費の下ぶれ要因となるおそれもある。勿
論、中期的には、延期されていた消費再増税が実施されるため、再び消費の下ぶれ要因として作用する
ことは否めない。再増税が実施される 2017 年 4 月までの時間的ボーナスを得て、消費の上ぶれ要因と
なるチャンスをどう活かし、下ぶれ要因となるリスクをどう解消していくのか、安倍政権の手腕が問われてく
る。
copyright (C)2014 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
18