1-1 ゲームとコンピューター まずはゲーム機とはどのようなものかという

■1-1
ゲームとコンピューター
まずはゲーム機とはどのようなものかというところから話を始めよう。
ゲーム機はコンピューターであり、コンピューターという“ハードウェア”の上で、ゲームという“ソ
フトウェア”が動いている。
コンピューターの機能は大きく5つに分かれており、それらは五大機能と呼ばれる。ゲーム機の機能
をコンピューターの五大機能と照らし合わせてみると、このようになる。
コンピューターの五大機能
ゲーム機の要素、機能
入力
コントローラー、タッチペン、タッチパネル、マイク(音声入力)など
出力
テレビモニターやLCD(液晶画面)、スピーカーなど
記憶
スコア、キャラクターの位置、パラメータなどを保持する機能(※注 1)
演算
ゲームルールの判定
制御
例:点数計算、物体の座標の計算、接触判定など
コンピューターは日々進化している。コンピューター機器であるゲーム機は、数年おきに各社から新
機種が発売され、その度に高性能化してきた。ゲーム業界の発展はコンピューターそのものの進歩と密
接に関わっており、コンピューターの世界で新技術が登場すれば、それがゲーム業界にも大きな影響を
及ぼしてきた。
ゲーム機の進化(高性能化)を見てみると、1980年前後、ファミリーコンピューター以前に登場
した初期のゲーム機は、画面のドット数は荒く、キャラクターは1色しか使えないというように、表示
能力が低かった。サウンドは「ピー」や「ブー」という単純な電子音、いわゆるBEEP音が鳴らせる
程度であった。プログラムやグラフィックなどの全てのデータは、ROMと呼ばれる記憶素子に入って
いたが、初期のROMは数キロバイト程度のとても小さな容量であった。
83年に、グラフィック、サウンド、処理速度とも、当時のゲーム機としては十分な性能を備えたフ
ァミコン(ファミリーコンピューター)を任天堂が発売し、これが大ヒットして子供達の娯楽の中心と
なる。
80年代後半になると、ゲームソフトに大容量のROM(※注 2)が使われるようになり、グラフィッ
クやサウンドというゲームの中身がどんどん進歩していった。
90年代になると、CDプレイヤーを搭載したゲーム機が主流となる。CDはROMカセットより大
容量かつ安価な媒体(※注 3)である。CDの採用でゲームの表現が大きく広がり、ムービー(アニメー
ションなどの映像)が再生できるようになり、登場人物が音声で話すなど、ROMカセットではできな
かった表現が可能となった。以後、家庭用ゲーム機のゲームソフトの媒体には、DVD、ブルーレイデ
ィスクと、より容量の大きな光ディスクが採用されている。
一方、携帯型ゲーム機ではROMが採用され続けている。ROM自体も進化し続けてきた。大容量の
ROMが安価に生産できるようになり、容量面では光ディスクより劣るものの、ゲームを起動したりデ
ータを読み込む時間は、光ディスクよりもROMが勝っている。
コンピューターの部品は高性能化されると共に小型化された。
80年代後半に携帯型のゲーム機が登場し(※注 4)、90年代になると、複数の会社が携帯型ゲーム
機を発売した。
そして2000年代には携帯電話でゲームソフトが動くようになった。携帯電話の性能の進歩も著し
く、小型コンピューターと表現しても良い機能を備えるようになっていく。2010年代になると、更
に機能が高性能化したスマートフォンが主流となり、スマートフォンで動くゲームは、家庭用ハードの
ゲームに見劣りしない内容となった。
インターネットの登場は多くの産業に影響を与えたが、ゲーム業界にも大きな影響を及ぼしている。
1995年に発売されたパソコン用OS、Windows95 の世界的ヒットがインターネットの普及を促した。
インターネットが普及していく中、まずパソコンでネットを介し複数のユーザーが同時に参加できるオ
ンラインゲームが登場した。2000年代にはインターネットにつながる携帯電話からゲームソフト
(アプリ)をダウンロードして購入できる仕組みが登場する。家庭用ハードもインターネットにつなが
るようになり、オンラインゲームが発売され、ネットからゲームソフトをダウンロードすることができ
るようになった。
今では映像認識や音声認識という技術もゲームに使われるようになっている。
以上、ゲーム機の進化の概要を説明したが、このようにコンピューター技術の発達に伴って、ゲーム
業界は目まぐるしい勢いで動き続けている。ゲーム業界は、コンピューター産業という超巨大産業の中
の一業態であるという認識を持つと、ゲームと、この業界に対する視野が広がるはずだ。
(※注 1)コンピューターの機能を厳密に考えれば、ゲームのプログラムはこの記憶領域で処理される。
(※注 2)当時の大容量はメガバイト単位であり、今のギガやテラという単位と比べれば小さい。
(※注 3) 現在のROMはCDより大きな容量となっている。
(※注 4)カセット交換方式のゲーム機、具体的には任天堂のゲームボーイ。実はゲームボーイが登場す
る前、1985年にエポック社よりカセット交換方式の携帯型ゲーム機が発売されているが、ヒットす
ることはなかった。またカセットが交換できない小型のゲーム機(ゲームウォッチなど)が80年代前
半にブームとなったことを記しておく。
コラム「任天堂派、セガ派」
ファミコンがヒットしたのは私が中学生の時である。男子の家ならどの家庭にもファミコンがあっ
たと言えるほど普及したが、中には同時期に出たセガの SG-1000 シリーズというゲーム機を買う少数
派がいた。私もその少数派であり、自分ではセガハードを所有し、ファミコンは友達や従兄弟の家で
遊んだ。今のように自宅に Wii も PS もある、あるいは個人で DS も PSP も持っているという時代では
なく、ゲーム機は一家に一台の時代であった。
セガ派は、クラスでセガハード所有者同士のネットワークを作り、誰かが新しいソフトを手に入れ
ると、その友人の家に行ってプレイしたり、ソフトの貸し借りを行った。今のように次々と新作ソフ
トを買ってもらえる家庭は少なく、子供がお小遣いをこつこつと貯めて1本買う、あるいは誕生日や
クリスマスに1本買ってもらえるという感じの時代であったから、ソフトの貸し借りで色々なゲーム
で遊ぶようにしていた。
テレビもまだ一家に一台という家庭が多かったので、私と同世代の方なら、ゲーム機の奪い合いで
兄弟喧嘩したり(苦笑)、お父さんがプロ野球を観る時間帯にゲームができなかった(涙)という思
い出のある方も多いのではと思う。