大槻先生コメント(その8)【PDF:796KB】

第11回評価会合を踏まえ,第12回評価会合に向けて
大槻コメント(その8)
**説明に時間の要する事項に関しては省略するので,コメント本文を参照
して下さい.
モンモリロナイトに関しての復習
徳山(1986)の
“I相”
“II相”
は
“III相”
“IV相”
層間水が2層
層間水が1層
層間水が3層以上
層間水が0層
に対応す
るので
⇒w2-M
⇒w1-M
⇒w>3-M
⇒w0-M
と書き表わす
徳山 (1986)の鍵となる主旨:
『w2-M試料を水漬してもさしたる膨張は起きないが,乾燥させて一旦
w1-Mにした試料を水漬すると体積が2倍以上に膨張する』
徳山(1986)の実験結果に基づく東北電力の “膨張”ストーリー:
-『MIS-5e の海進に伴ってM1段丘堆積物が堆積している間は地下水位が
高かかった.
-MIS-5dの海水準低下とともに地下水位が低下し,基盤岩の風化が進行
し,乾燥した.
-そのため,原岩に含まれていたw2-Mのモンモリナイトはw1-Mになった.
-その後のMIS-5cの海水準上昇とともに地下水位も上昇し,地下水に浸さ
れたw1-Mはw>3-Mになり,著しく膨張した』
ストーリーの誤り①: w1-Mが形成
されるほどまでに地下が乾燥したこと
が,実際にあったのか?
w2-M
そもそも,乾燥による脱水過程でw2Mがw1-Mになるためには,湿度P/P0
が0.5~0.6 (50~60%)以下になる
必要がある ⇒
水吸着量W
No!
w1-M
Fig.1 モンモリロナイトの底
面格子間隔d001,水吸着量W
の相対湿度P/P0依存性
(Cases et al., 1992)
相対湿度
②常温で,加水ハロイサイトが80%以下に
なるためには,相対湿度が60%以下になら
なければならない ⇒
③ 東通のほとんどのハロイサイトは加水ハ
ロイサイト
(X線回折角2θとピークの形から)
したがって,東通は湿度60%以下を経験し
たことがない
したがって,東通にw1-Mが形成さ
れたことはなかった
存在確率
ところが,
① ハロイサイトは層間水を1枚だけ含むこ
とが可能で,常温乾燥大気中で失われ,一旦
無水になると,元には戻れない(白水,
1998)
相対湿度
ストーリーの誤り②:
縮が繰り返したはず
ストーリーが正しければ,膨張/収
風化の指標であるハロイサイトは,被覆第四系にも含まれるが,基盤
岩劣化部では画然と多い(第9回有識者会合配布資料「理化学分析結
果」の添I-67~73)
だから,東北電力のストーリーが正しければ,
w2-M ⇒ w1-M (収縮)は,MIS-5d だけでなく,MIS-6 (リス氷期)
でも,起きたはず.
w1-M ⇒ w>3-M (膨張)は,MIS-5c だけでなく,MIS-5eでも起き
たはず.
すなわち,収縮と膨張が繰り返し起きたはず.
しかし,東通には無数の逆断層性小断層はあるが,正断層性小断層はほ
とんど無い.
だから,東北電力のストーリーは成り立たない.
トレンチの卓越方向のバイアスを補正すれば,
小断層の方向はランダムになるか?
NO!
Fig.10 a) トレンチの方向有効長分布,b) 断層の元々の走向別個数分布,c) トレンチの有効長で補
正を施した後の断層の走行別頻度分布.
断層の走向別個数分布(b)をトレンチの方向別有効長分布(a)で補正し
ても, NNE-SSW方向の卓越性は依然として変わらない(c).
断層のサイズ分布が示唆すること
*資料「東通・現調12-2」の4-1(2)-15の
データを解析
◎ 断層集団のサイズ分布はフラクタル的
で,フラクタル次元は1.6程度
↑ 新第三系中のテクトニックな小断層
と同じで,相対的に延性的な断層に属す
る
◎ 敷地がトレンチの総面積の30倍とすれ
ば,断層総数は数千個で,最大級の断層の
変位量は6,7m程度
Fig.11 東通敷地内断層の規模(鉛直変位成
◎ なぜ,このように多数の逆断層性小断層 分)と断層の積算個数との関係.
集団が発達しているのか.
正断層集団が形成された過去の小規模な歪集中帯
(大槻のコメント(その2)を参照)がhealしていず,
依然として第四紀でも歪が集中しているのかかもしれない.
青丸: 測定値
赤丸: 測定値を
30倍した敷地全
体の推定値