2014 構造解析学 第 5 講 クラペイロンの定理 1. 構造力学におけるエネルギー理論 世に出回っている「構造力学」の教科書を見ると、エネルギーや仕事を用いた原理、定理などが 数多く載っていて、詳しい説明がなされているが、種類も多いし、どれをとっても「考えれば考え るほどわからなくなってしまう」というジレンマを感じている人も多いと思う。ここからは、これ らのひとつひとつを潰していくことにしよう。 大学の「構造力学」で習う、エネルギー理論 ・ クラペイロンの定理 「外力が行った仕事は内力の仕事(=ひずみエネルギー)に等しい」 ・ 仮想仕事の原理 「釣合状態にある弾性体では、外力の全仮想仕事と内力の全仮想仕事は等しい」 ・ 相反作用の定理=ベッティの定理 「同じ構造系に違う力系が作用した場合の二つの系において、第1系の力と第2系の変位によ る仕事は、第1系の変位と第2系の力による仕事に等しい」 ・ カステリアーノの第1定理 「ひずみエネルギーを変位で微分すると、その変位に対応する力になる」 ・ カステリアーノの第2定理 「ひずみエネルギーを力で微分すると、その力に対応する変位になる」 ・ 最小仕事の定理 「ひずみエネルギーの不静定力による微分はゼロになる」 ・ 全ポテンシャルエネルギー停留の原理 「釣合状態にある構造系では、全ポテンシャルエネルギーは極値をとる」 2. 仕事の定義とクラペイロンの定理 仕事の定義は、 力×作用点の移動量 この定義を、弾性のはりに適用した場合にどうなるか、について考えてみよう。 5-1 2014 構造解析学 演習 5-1 単純ばりの中央点に集中荷重 P が作用し L/2 たとき、中央点のたわみは y となった。 P= P 毎度おなじみのこの問題について、仕事と y= y エネルギーの関係について考えてみる。 L ① まずは、外力の仕事について考えよう。 静力学の範疇では、力は 静かに (徐々に) 作用するものとする。 最初の荷重 0 の状態 P=0 y=0 手で、このはりの真ん中を上から押していく 0<P< P ことをイメージしてほしい。 したがって、最初の荷重 0 の状態では P もyもゼロである。 0<y< y そして、力を加え始めると、たわみが y=0 から P 徐々に大きくなっていくのにつれて、P も 徐々に大きくなっていく。 このときの P とyの関係をグラフに書いてみよう。→ y ② 前のページにあるように、仕事は 力×移動量 なのだが、力は移動量の関数ということに なる。この場合だと P とyは比例関係にあると考えてよいので、比例定数をkとすれば、 ③ P が(手が)微小な変位 dy だけ動く間になす仕事は・・ ④ 力がゼロから P になるまでになす全仕事量、すなわちこの問題における 外力の仕事 量は、 WE = ちょっと別のはなし・・ ここでは、はじめにも言ったように、静力学の前提でのエネルギーを考えているが、 たとえば、同じはりの中央点に質量m(= P /g)のおもりを一気に載せたらどう なるだろう? 5-2 2014 構造解析学 演習 5-1 (つづき) x ⑤ では今度は内力による仕事を考えてみよう。 [L] そこでまた、あの物理量関係図を取り出してみると、 この図は、はりの一断面に関する 内力(断面力) →図の左半分 断面の変形 →図の右半分 たわみ 荷重強度 と 積分 の関係を表していて、図の左と右は ×-1 微分 微分 せん断力 それぞれ仕事の相手になっている。 積分 たわみ角 微分 したがって、 曲げモーメント 曲げモーメントの仕事の相手は曲率 積分 微分 部材力式 M(x)=EIφ(x) ということになる。 解析の流れ また、この場合も同様に、M とφの関係は M ×-1 積分 曲率 線形(グラフを描いてみよう)なので、 前ページの荷重 P が P=0 から P= P まで 増える間に、この断面(はりの左からxの 場所)で、内力がなした仕事は、 1 M ( x) ⋅ φ ( x) = 2 Wi ( x) = φ ということになる。 ⑥ !ここで考えよう。 外力の仕事を考えたときは、確かにはり全体にわたって、たわみは発生 しているが、作用しているのはあくまでも集中荷重なので、荷重に関しては載荷点にしか存在 しないので、荷重×載荷点の変位 で OK だった。ところが、内力に関しては、曲げモーメン トも曲率も、はり全体にわたって分布しているので、内力がなした仕事を計算するためには、 上の式をはり全体にわたって、積分しなければならない。 したがって、このはりが行った内力の仕事量は、 L WI = ∫ Wi ( x)dx 0 5-3 2014 構造解析学 ⑦ いよいよ最終段階!内力の仕事を計算して、クラペイロンの定理を確かめよう。 クラペイロンの定理: W E = WI P L/2 1)まずは、外力の仕事量をチェックしておこう。 y L 2)左端をx=0 としたときの中央点までの、 曲げモーメントの分布は、 3)同様に、曲率の分布は、 4) (1/2)×(曲げモーメントの関数)×(曲率の関数)を x=0 から x=L/2 まで積分、 これの二倍が内力の全仕事量 ここで、外力、内力それぞれに、仕事の相手をそのディメンジョンと共に確認しておこう。 外 力 内 力 力 分布荷重 [F/L] 集中荷重 [F] モーメント荷重 [F・L] 曲げモーメント [F・L] せん断力 [F] 応力 [F/L2] × × × × × 変形・変位 たわみ [L] たわみ [L] たわみ角 [無] 曲率 [1/L] たわみ角 [無] ひずみ [無] 5-4 はりの長さ方向に積分 作用点 作用点 はりの長さ方向に積分 はりの長さ方向に積分 はり全体にわたって 体積分 2014 構造解析学 前ページの表では、 (モーメント荷重)の仕事の相手は(たわみ角)、 (曲げモーメント)の相手は(曲 率)となっている。次の例題で、これを確認しよう。 演習 5-2 単純ばりの左端にモーメント荷重 M 1 が作用して左端のたわみ角がθ 1 となった。このとき、内力 の仕事が、外力の仕事 1 M 1θ1 に等しくなることを誘導せよ。 2 M1 1) まずは、弾性荷重法でθ 1 を求める。 θ1 L 2)外力による仕事量 1 M 1θ1 に 1)の結果を 2 代入して、W E を M 1 、EI、L によって表示 しておく。 3)曲げモーメントを x の関数で表すと・・ 4)曲率を x の関数で表すと・・ 5)(1/2)×(曲げモーメントの関数)×(曲率の関数)を x=0 から x=L まで積分して、W I を求める。 5-5
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